山田詠美のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
「何だかよく分からないけれど哀しく、切なくなる」9つの短編集。
チャラ男との恋、SM女王様との恋、マンションの隣人との不倫…普通に見えない恋愛は、その実至るところに転がっている。特殊に見える立場の人間だって、普通に食事や排泄もすれば、普通に恋愛だってするのだということ。
そんな中、小さな頃事故で右手を失った渚子が姉の夫に恋をする「天国の右の手」と、性的に変わった抑圧を自分に課している友人の男がその抑圧によって失敗する様を見ている「高貴な腐食」がとくに好きだった。
人間はどうしようもない。表面を良く見せても根底にあるものが不意に表に出てしまうことがある。
そして似たような傷を感じで惹かれ合ってしまう、理屈ではない感情。
昔一度読んだ本だけど、当時よりも大人になった今、このよく分からないけれど哀しく切ない余韻が心に残った。乾いていて、淋しい感じ。 -
Posted by ブクログ
恋人と同棲しながら、二人の冷え切った愛を見つめ直す日本人女性のココ。ただ見つめ合い、同じベッドで寝るだけでいいのに、決してココが望む愛を与えてくれない黒人男性である同棲相手のリックは、ココが与える愛を純粋に受け止められずに酒に逃げる毎日を送っていた。
恋人同士の愛、同性愛、家族愛等の多様な恋愛観を、主人公1人の目線からだけでなく、ココを取り巻く様々な人々を交えて語られている。私は愛情を求めるココの気持ちがよく分かったが、それを拒むリックの心情がよく分からなかった。そのリックからの目線でもココに対する愛が語られており、その気持ちは、ただ愛を与える事を求められ疎ましいという気持ちだけでない、歪な愛情があった。
この一冊で、恋愛に対し多種多様な目線で見つめられる。
【好きな小説内での言葉】
・求めているように語りながら、実は、求められることを切望している
・愛の言葉を言い出した方が、その重みの分だけ不幸になる。
・その瞬間、彼は初めて女の体の上で「愛している」と呟いた。
・憎んで憎んで、そして愛し抜いてやる。
・すべてを忘れることから始めなくては、どうしようもなかった。 -
Posted by ブクログ
お金持ちで天涯孤独のわがまま娘・ゆりと、米軍基地に勤める大らかな黒人男性・ロバちゃんの恋物語。
雰囲気的にはポップなラブコメ。
ゆりの巻き起こす事件(?)のせいかドタバタでハチャメチャだけど、結局はラブラブ。
(“すあま”を育てる章はとくに可愛らしかった!)
ゆりはわがままだけどいちいちキュートで魅力的。
短編集のようなつくりで、さらっと読みやすい。
でもその中には重苦しくない哲学がたっぷり詰まっていて…
誰かを好きになると、相手のためを思って我慢したり、相手に合わせるために自制したり、嫌われたくないから良いところばかりを見せようとしたりする。
でも本当はそうじゃなくて、お互いの違いを認めて“変に我慢をしない”のが大人の恋愛で、ゆりとロバちゃんは一見子どもっぽい二人に見えるけれど、芯の部分でそういうことを解ってる大人の関係なのかもしれない。
変に我慢し合わなくていい。それって実は最強の気遣いだと思う。
でもこれは一方が外国人だからとくにいいのかも。
どちらかというと日本人は、忍耐とか我慢とか自己犠牲とか、そういう精神を美しいとするだろうから。
兎にも角にも、ゆりちゃんロバちゃんが大好きになる物語です。装丁もキュート! -
Posted by ブクログ
漱太郎の数々の卑劣な行為は女として到底受け入れがたく、嫌悪感だけが残った。彼を愛する男、夢生も翻弄され終には破綻してしまう。そして彼らに深くかかわる二人の女は一見脇役であるように思えたが、終盤クライマックスでその存在の凄みを知ることになる。哀しくて残酷で、滑稽で、まぎれもない悪夢なのだけど、沈美的で永遠の夢のようでもあって。。どちらかというと嫌な読後感の類。ただ、ここまで登場人物たちに感情移入できたのは、やはり作者の持つ魅力なんだと思う。例えば「人の行動に伏線なんかない。衝動しかないんだ。あと、運命しか…」こんな風にさらっと主人公に言わせる詠美節。相変わらず、洗練された文体は読み手の心と脳を大いに刺激してくれる。