九段理江のレビュー一覧
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購入済み
うまい、と思わず唸る二作。東京都同情塔から九段作品に入り、彼女の魅力に取り憑かれています。芥川賞候補だったschool girlの現代的な作品世界に驚かされ、文學界新人賞受賞作品の悪い音楽には声を出してわらってしまった。
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最っ高。①『Schoolgirl』、②『悪い音楽』の二作品。
①太宰治の『女生徒』を読んでからすぐ読んだら、かなり対比が分かりやすく、読みやすかった。
とはいえ、30ページくらいでおなかいっぱいなほど現代で母親になることの難しさ(?)に心が限界を感じ始めた笑
今回は主人公は大人の「元女生徒」で、14歳の娘がいる。
「何気ない雑談を額面通りに受けとってくれる素直な人って、最近はもうどこを探してもいない。」
これを30ページで既に痛いほど丁寧に言語化してくれてる。
②これは本当に素敵すぎる音楽教師のはなし。子どもの頃、「社会経験を通してない、子どもの社会に居続ける教師」という存在がほんっとうに -
Posted by ブクログ
めっちゃくちゃ面白い
私のこういうのを読みたかったって気持ちに応えてくれる小説
ザハ案の国立競技場が建てられた世界線の東京
一人の建築家女性が新宿に東京都同情塔(刑務所)を設計する話
刑務所と言っても従来の価値観とは違う意味づけをされた囚人が入居し、そこはさながらユートピアのよう
新しい価値観への馴染めなさ、頭の中でされる検閲、繰り返されるAIとの対話、日本語や日本人の気持ち悪さ、寛容、キレる白人笑、性的同意、今直面してる事をこれでもかと盛り込むのにすんなり頭に入ってきて頷かされる
東京都同情塔は、ユートピアかディストピアか
恐ろしい場所だよ
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Posted by ブクログ
言語化するのにとても時間かかった
なんとなくこの本を読んで考えたことを書く
全体的な本の命題みたいなものが、
この社会の中にある答えのない問題だったように感じた!大きくは以下3つのことがあるかなと
・犯罪者について
・言葉について
・AIについて
どれも本当に人によって異なる答えがあるから、この本を読んでたぶん思うことは読者によって全然違うんだろうなと面白かった
個人的には、主人公が建築家女性という同じ肩書だからこそ下二つの問題について考えた。
そして、日本に唯一のザハ作品新国立競技場ができたという世界線の設定とそこに建つ東京都同情塔のあり方を考えるストーリーがものすごく興味深かった。
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Posted by ブクログ
「しをかくうま」(九段理江)を読んだ。
ぶっ飛んだよ。 まさに《言葉の魔術師》の降臨であろうか。
ひとと馬と詩の物語。
九段理江さんほど言葉の持つ力を存分に発揮してガツンと読者の頭をぶん殴りにくる作家はそうは居ないね。
彼女には日本語の未来が見えているに違いない。 少し長いけど引用する。 (「東京都同情塔」からも併せて引く)
『とはいえ、一貫性と政治的正しさと共感を集めることに徹した言葉を選んでいくとなると、最後は誰もが同じ言葉を喋る未来しかないんだよね。つまり言葉は死んでいくしかないんだよね。』(本文より)
『言葉は私たちの世界をばらばらにする一方です。勝手な感性で言葉を濫用し、 -
Posted by ブクログ
意味は全然わかんないけど、読んでてとっても楽しい。作品全体が詩みたいだし、馬みたいでもある(今わたしたちが持ってる"ブレイン"とは全く違う基準で動いているような、という意味で)。
根安堂(ネアンドウ)家おもしろすぎるし、途中で出てくる順番記号は競馬の順位や予想も連想させるし、あとヒとビの話は普通にすき。
「彼の頭上にまず降りかかってきたのは不幸の極致にあるものだった。雨だ。」
読んでる途中から、どうしても馬に乗りたくなってホーストレッキングを予約しました。ということは、この詩は概念を書いてるんじゃないんだな、だからこんなに面白いんだなと思いました。
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Posted by ブクログ
『School』
“みんなを愛したい”
からの
“美しく生きたいと思います”
が良かったです。
あと、少女のうちに死にたかった、、、ってところも。
上記だけでなく、冒頭から太宰治『女生徒』のオマージュを彷彿とさせるはじまり。
太宰治『女生徒』が十代の少女の日記をベースにした小説であり、語り手というか本来の日記の書き手の少女は当然ひとり。
それに対して『Schoolgirl』は母と娘が、母のモノローグと娘が一方的に社会派YouTuberとして配信する動画で語っている。
娘になめられている母親も読み進むにつれて母親然としている。
偉そうなことを言っている娘もお母さんお母さんと繰り返す -
Posted by ブクログ
グレタさん風社会派中学生YouTuber × 文學が好きな専業主婦の母を描いた「School girl」、音楽で食べていく道を断念した元音大生の音楽教師×合唱コンクールで優勝したい熱心な生徒を描いた「悪い音楽」の2編から成る作品。
社会に揉まれていく内に諦めと限界と妥協を知った大人と、そんな大人の冷めた態度に純粋な気持ちで真っ向から反抗する子供の対立構造。軽快な文章とその表現力、時に皮肉が込められた台詞などそのどれもが面白く飽きない。
九段理江先生の感性はめちゃくちゃ新しい発見になる。
School girl|変な反抗期を迎えると子供はこうなるのか。太宰治の「女生徒」など小説を愛読する母