九段理江のレビュー一覧
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さらっと読んだだけでも面白かったが、内容は重層的にいろいろな問題を扱っているようで、じっくり読んで考えたい本だ。
ザハ案の国立競技場が立っているという設定自体が強烈な印象。
建築と言葉という二つの大きな題材も、「バベルの塔」で私の頭の中にも一応結びつくのだが、それぞれが大きすぎて私には消化しきれない。
AIについても同様だ。
「自分自身が心から同意していないプロジェクトに協力するべきではなかった」と後悔しているところに惹かれてしまった。意にそまない仕事をやり遂げて、「死ね」とか批判されたら、あるいは賞賛してくれている人の方が多かったとしても、どっちにしてもやり切れない。つまりは彼女の言うよう -
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変人なのに自分が真っ当だと思っている、っていう点で、『成瀬は天下を…』の成瀬もそうなのだが、成瀬はジェダイで九段理江の人物たちはダースベーダーみたいな。
勝手にそんなイメージ。
『Schoolgirl』は太宰『女生徒』と対だが、短編のもう一作『悪い音楽』とも対になっている。短編内二作の主人公二人は似ている。対する「娘」と「教え子の女子」も似ている。後者たちは「正しさ」を振りかざし、文学や音楽(といっても高度な音楽)を否定(もしくは理解しない)。前者は敗北者。女の敗北の対として、普通は「権力者=男」みたいな構図で話を進めていく女性作家が多い中で、九段理江は特殊。また自己(=私、あなた)を深追いし -
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私の中で、九段理江さんは新しもの好きなイメージがあったものの、本書を読めば決してそれだけではないことが分かる、過去も現在も未来も縦横無尽に行き来した、その一見突拍子と思われる物語も、最後まで読むと伝わってくるものがありながら、毎度の如く、その豊富な知識量や興味のあるものに対する飽くなき姿勢には感服させられる。
そして、その様々な視点から現在に於ける常識と思われるものを揺さぶってくる作家性は、時に大胆で痛烈でありながら肯けるものがあったのも確かで、それは『多様性を求めながら同時に平等性をも要求するようになった』のような皮肉を効かせる一方で、『一貫性と政治的正しさと共感を集めることに徹した言 -
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直前に太宰治の「女生徒」を読んだのは、本書を読む事前情報収集のためでした。なにしろ本書には、〈令和版「女生徒」〉〈「女生徒」を大胆に更新〉等のキャッチーな宣伝があり、本作も芥川賞候補だったこと、さらに九段さんがBS番組で、かつて三島由紀夫にのめり込む前に太宰治にハマっていた(真逆な二人と思うのですが…)と話され、興味が増したのです。表題作の他、デビュー作「悪い音楽」も収録されています。
表題作「Schoolgirl」の主人公「私」は、母親と娘で視点が交互に切り替わります。タワマンで暮らす母親は専業主婦(夫は出張中)で、大の読書好き。一方、14歳の娘はインターナショナルスクール生で、環境や -
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九段理江さんといえば、なんといっても、芥川賞受賞作品である「東京都同情塔」だとは思うのだが、捻くれている私は先に初小説集である、こちらから読んでみて、どんな感じなのかを確かめたくなってしまう衝動に駆られてしまったと思ったら、こちらも表題作が芥川賞候補作だったのですね。
そして、読んでみて驚いたのは、このタイトルが若い頃に読んだ小説(内容は殆ど覚えていないが)の英語版だということで、帯にも「令和版『女生徒』」と書いてある通り、現代の多様化した社会に於いても依然変わらずに残り続ける、鬱屈とした雰囲気をシニカルに描きながらも、元の作品に於ける当時の空気感漂う文体との邂逅を果たすことで、それが母 -
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犯罪者は憎むべき存在か。服役生活は苦痛を伴うのが当然なのか。その問いに対する新しい考え方に基づく施設が建設された。
シンパシータワートーキョー。またの名を「東京都同情塔」と言う。
2020年の東京オリンピックの閉幕後、都心に建造された地上70階建ての高層刑務所に纏わる光と陰。人間の不安定さを描く近未来ストーリー。
第170回芥川賞受賞作。
◇
東京都心に現代版バベルの塔が建設されようとしている。日本の最先端都市東京の中心にあって、さらに最新技術の粋を尽くした超豪華高層ビル。
設計コンペの段階では「タワー」程度の認識だったが、有識者たちの検討会を経て「シンパシ -
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ネタバレグレタに憧れる女子中学生と文学を愛する母親。
フィクションは時間の無駄だという娘と
戦時中ですらフィクションこそ生き残るという母。
九段さんと小川哲さんの文章に共通点を感じ、この人の文章が好きだと直感が働いた。
太宰治の女生徒を基に書かれたそうだが、知識がないせいか「なるほど、女生徒はこういう作品なのか」としか思わなかった。
AIスピーカーやYouTubeのない時代、女生徒はどんなふうに書かれていたのだろう。
娘がフィクションを信じていないにも関わらず、母の本棚をどんどん散策していき、遂に「女生徒」にたどり着く。
そして。。
母を毛嫌いし、馬鹿にしつつも、母の世界に入りたい娘の気持ち。 -
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少女ゆえの全能感、自分以外のみんな、特に自分の世話を焼く母親が馬鹿に思える。そんな少女期を通過していく様子が、読んでいて痛みを感じるほどよく描かれている。母親に愛されているからこその辛辣な言葉と、赤の他人に向けて吐露される本音。「明日から戦争が始まるっていう日でも、お母さんは小説の話をするの?」母親の答えに少女が気付きを得るのと同じように、私もハッとさせられた。
「悪い音楽」にも、全能少女が登場するが、対する音楽教師もなかなかのものである。行き過ぎた音楽ファーストによって、教師として窮地に立たされることになる。こちらは「Schoolgirl」とは違って笑いながら読めた。面白い。