九段理江のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
私は紙の本も電子書籍も読む。
媒体にあんまりこだわりはない。
でもこの文芸誌を作る過程の様子をYouTubeで見て、いまだに紙の本好きが一定数いる理由がわかった。
私にとって読書は文字を情報として捉えるだけだった。でも本当に本が好きな人は、ページをめくるという行為そのものも読書体験の中に含んでいる。
作り手はそこをいちばんわかっていて、こだわり抜いてできたのがこの文芸誌。
本屋で見つけて手に取ったらすぐに理解できた。
内容も、普段本をあまり読まない層にも届かせようと完結型の短編にしている。
派手な展開はなくとも日常の中でじわじわ人の心理に訴えかける話が多くて楽しめた。
ミステリー好きとしては『ヴィンテージ』がいちばんお気に入りかな。
“美”という本誌の共通のテーマから、“プライド”という人間の中でかなり人間らしい要素がどの作品にも見え隠れしてたのも好みに刺さったと思う。 -
Posted by ブクログ
ネタバレyoutubeで紹介されてて気になってたので初めて文芸誌なるものを買ってみた。
思った以上にボリュームあってこれで510円!?大丈夫か?と思ってしまった。
これで好きな作家見つけて長編を読むのが良さそう。
文芸誌って連載ものがほとんどでいきなり読み始めてもついていけないことが多そうなイメージだったけど、ほぼ全部読み切りで楽しめた。
読んだ順でメモ。記号の意味は以下の通り。
◎=めっちゃよかった
〇=結構面白かった
×=途中で読むのやめた
◎永井紗耶子/そとばこまちの夜
一応近代よりだけど時代小説。横浜にいるジャズシンガーの話。
木挽町のあだ討ちのイメージがあったからカタカナがたくさん並んでて新鮮。
そしてちょっと幻想的なオチもありめちゃくちゃ新鮮だった。
こういうのも書けるのね…。
◎高瀬隼子/ふたえ
単身赴任している父親が整形しちゃってた話。
ただそれだけなのに読ませる筆力。
孤独とか無関心とかがちょいちょい顔を出すのがいい。
◯九段理江/Beauticide
バレエダンスに通う女の子と先生の話。
まさに美についてのストーリー。
女性ならではの描写が光る。
めちゃくちゃ舞台が現代だから新鮮な気持ちで読めた。
◎山口未桜/美しい家族
短いのに起承転結がはっきりあって読み応えがある。
警察2人が主人公なのに全然自力で真相にたどり着けてないのもなんか新鮮。
キツネにつままれたようなオチでハッとした。
〇井上先斗/ヴィンテージ
古着屋の飛んだバイトを探すという珍しいプロット。
簡単に見つかるもののその裏に隠れたストーリーがホロ苦い。
自尊心を守るためにいろいろやってしまうところは山月記に似たようなものを感じた。
◎芦沢央/父の輪郭
物が多い家に住んでいるから直美の父の言葉がめちゃくちゃ刺さる。
自分の把握できないものをもつと自分の輪郭が分からなくなるっていうのは分かる気がするなあ。
でも捨てるために物を増やす人と結婚したのかもと思うとなかなかなアレな人だな。
補い合っているといえば聞こえはいいけど。
両親が死んでいるから確かめようかないけどその宙ぶらりん感のある結末もよかった。
◯大前粟生/いつになったら大人になれる?
見た目を気にしてうじうじしていたが着ぐるみに入って違うペルソナをまとうことでなんとなく前向きになれるストーリー。
金指さんを疎ましく思う一方でこんなに気にしなくてもいいのは羨ましいだけどこうなりたくはないみたいな葛藤がよかった。
あと擬音が独特のセンスを感じる。
〇柏井 壽 / 檜扇
続き物ぽいけどまあ入り込めた。
母親の月命日に母親のリクエストがあったものを作って食べる話。
何回も思い出話やめてねといいつつモウ違う話はできないからという返しがなかなかくるものがある。
でも料理はめちゃくちゃおいしそうだったなあ。
◎夏夜米子 / 旬
ピアニストの女の人と芸術家を目指してなれなかった男の話。
いきなり右手が送られてきてホラーなのかと思ったけどそんなことはなこった。
終わってしまったあの頃とその残滓でなんとかやっている切なさが染みる。
時間を取り戻そうとしてももう遅い。
もう二度と交わることのない二人の未来にほろ苦さを感じる。
〇村崎キコ / simeoウイルス
顔がシメオというおじさん俳優になってしまうウイルスが蔓延した世界。
すごい設定だけど顔ってみんなと同じになってしまえばそれはそれで慣れてしまうのかな。
あと声とかは変わらないのかなとか色々考えてしまった。
目に見える美しさとは一体なんだろうと考えさせられた。
〇金子玲介/ ハッピーエンドの小説
ハッピーなのかと気になりながら読んだ。
いい意味ですっきりするオチがなくて裏切られた。
主人公の心理描写がよくて、でもなんかイカれたような感じもして不思議な読後感。
◯貴志祐介 / 天国への13階段
こんなバカミスみたいなのも書けるのかという驚き。バカミスを書かされる作家の話なんだけど登場人物の名前のふざけ方とかフランスかぶれの刑事が出てくるからそれに引っ張られる形で地の文もカメラのド・アップ、ド・タマをかち割るとか変なところにド・が入っててワロタ。
◯八木詠美 / 家になった男
若い建築家Hに嫉妬する老年の建築家Jの話。
なんやかんやあってHの家に侵入するところから予想外の展開に舌を巻いた。
途中からもしや、という予感はあったけどこんな形で伏線回収されるとは。
◎佐原ひかり / 魔法の咲く丘
教科書に載ってそうな柔らかな文体でスラスラ読める。でもシホの心理描写とかシホから見た大人がどう見えるのか繊細に描かれててめちゃ良かった。
◎遠田潤子 / 少女は椅子に座っている
また叙述トリックに引っかかってしまった。
母に逆らえず義妹を救えなかった罪悪感と結ばれぬことは決してない同性の想い人を抱えている主人公の話。ホラー風味もあってワクワクした。
✕井上真偽、間宮改衣、児玉雨子、蝉谷めぐ実 -
Posted by ブクログ
大掃除・小掃除が終わったら、「美」をテーマにしたGOAT第3号(2026 Winter)を読んでみましょう。
表紙ではゴートくんが手鏡でお顔を映しています。
表紙を開くとゴートくんと羊くんが美について話していました。
「美ってなんだろう
大きな羊?
羊の角を頭に飾った人?」
「由来は所説あるけど、
ヤギじゃなくて羊なのか・・・」
ちょっと残念そうなゴートくんです。。。
最初の小説は、高瀬隼子さんの「ふたえ」でした。
67歳のお父さんが、二重まぶたに整形したのに飽き足らず、顎やら頬やらを全身麻酔の手術を受けて整形するというお話です。
思えば、美しい顔の基準は個々人によって異なりますし、また、理想とする自分の顔と実際の自分の顔とのギャップに悩む人も当然にいらっしゃるでしょう。
そのギャップを埋めるために美容整形手術の費用やリスクを受け入れるかどうかもまた、個々人の美意識というものでしょうか。みなさまは、このお父さんをどう評価なさるでしょう?
人は美の中に醜を見たり、醜の中に美を見たりします。
美が何たるかを語りながら、人類は1万年を過ごしてきたのかもしれません。。
今年、みなさまはどんな美しいものをご覧になったでしょうか?
来年、どんなものを美しいと思われるでしょうか?
そんな対話をご自分と交わしながら、美しくなった居心地の良いお部屋で、本書をちょっとずつお楽しみくださいませ♡
本号もお得な税込み510(ゴート)円です♡ -
Posted by ブクログ
ネットと繋がって自己発信することが当たり前、生まれながらに多様な価値観に触れて生きてきた「娘」と、時代の流れには乗らず「少女時代」から触れてきた文化を大切にしている「母」が対照的に描かれていて、序盤、娘の強さに圧倒されて母の気持ちや境遇を考えるといたたまれない気持ちになるのだが、終盤立場がガラリと変わる。結局、体験せずに見聞きしただけの情報から「自分」を方向付けるよりも、自分の世界にとっぷり浸かって、考え、感じたことの方がリアルで、重みがあって生きた価値観なのかなと思った。
九段先生は、現代社会に新たに発生した価値観を否定したいわけじゃないのだろうけれど、メスを入れるのが上手いと思う。とてもおもしろかった。 -
Posted by ブクログ
変人なのに自分が真っ当だと思っている、っていう点で、『成瀬は天下を…』の成瀬もそうなのだが、成瀬はジェダイで九段理江の人物たちはダースベーダーみたいな。
勝手にそんなイメージ。
『Schoolgirl』は太宰『女生徒』と対だが、短編のもう一作『悪い音楽』とも対になっている。短編内二作の主人公二人は似ている。対する「娘」と「教え子の女子」も似ている。後者たちは「正しさ」を振りかざし、文学や音楽(といっても高度な音楽)を否定(もしくは理解しない)。前者は敗北者。女の敗北の対として、普通は「権力者=男」みたいな構図で話を進めていく女性作家が多い中で、九段理江は特殊。また自己(=私、あなた)を深追いしていく。文体はめちゃくちゃ読みやすいが、後から考えると脳が割れそうになる…。