九段理江のレビュー一覧

  • しをかくうま

    Posted by ブクログ

     私の中で、九段理江さんは新しもの好きなイメージがあったものの、本書を読めば決してそれだけではないことが分かる、過去も現在も未来も縦横無尽に行き来した、その一見突拍子と思われる物語も、最後まで読むと伝わってくるものがありながら、毎度の如く、その豊富な知識量や興味のあるものに対する飽くなき姿勢には感服させられる。

     そして、その様々な視点から現在に於ける常識と思われるものを揺さぶってくる作家性は、時に大胆で痛烈でありながら肯けるものがあったのも確かで、それは『多様性を求めながら同時に平等性をも要求するようになった』のような皮肉を効かせる一方で、『一貫性と政治的正しさと共感を集めることに徹した言

    0
    2025年03月16日
  • Schoolgirl

    Posted by ブクログ

     直前に太宰治の「女生徒」を読んだのは、本書を読む事前情報収集のためでした。なにしろ本書には、〈令和版「女生徒」〉〈「女生徒」を大胆に更新〉等のキャッチーな宣伝があり、本作も芥川賞候補だったこと、さらに九段さんがBS番組で、かつて三島由紀夫にのめり込む前に太宰治にハマっていた(真逆な二人と思うのですが…)と話され、興味が増したのです。表題作の他、デビュー作「悪い音楽」も収録されています。

     表題作「Schoolgirl」の主人公「私」は、母親と娘で視点が交互に切り替わります。タワマンで暮らす母親は専業主婦(夫は出張中)で、大の読書好き。一方、14歳の娘はインターナショナルスクール生で、環境や

    0
    2024年11月20日
  • しをかくうま

    Posted by ブクログ

    人間が進もうとしている未来について、漠然と持っていた違和感や不安を、書き表してもらったような感じがして、たくさんのフレーズを書き留めた。

    特に印象に残ったのは、
    「一貫性と政治的正しさと共感を集めることに徹した言葉を選んでいくとなると、最後は誰もが同じ言葉を喋る未来しかないんだよね。つまり言葉は死んでいくしかないんだよね。」

    言葉を死なせないように言葉を使っていきたい。

    0
    2024年10月24日
  • Schoolgirl

    Posted by ブクログ

     九段理江さんといえば、なんといっても、芥川賞受賞作品である「東京都同情塔」だとは思うのだが、捻くれている私は先に初小説集である、こちらから読んでみて、どんな感じなのかを確かめたくなってしまう衝動に駆られてしまったと思ったら、こちらも表題作が芥川賞候補作だったのですね。

     そして、読んでみて驚いたのは、このタイトルが若い頃に読んだ小説(内容は殆ど覚えていないが)の英語版だということで、帯にも「令和版『女生徒』」と書いてある通り、現代の多様化した社会に於いても依然変わらずに残り続ける、鬱屈とした雰囲気をシニカルに描きながらも、元の作品に於ける当時の空気感漂う文体との邂逅を果たすことで、それが母

    0
    2024年08月18日
  • 東京都同情塔

    Posted by ブクログ

     犯罪者は憎むべき存在か。服役生活は苦痛を伴うのが当然なのか。その問いに対する新しい考え方に基づく施設が建設された。
     シンパシータワートーキョー。またの名を「東京都同情塔」と言う。

     2020年の東京オリンピックの閉幕後、都心に建造された地上70階建ての高層刑務所に纏わる光と陰。人間の不安定さを描く近未来ストーリー。
     第170回芥川賞受賞作。
              ◇
     東京都心に現代版バベルの塔が建設されようとしている。日本の最先端都市東京にあって、さらに最新技術の粋を尽くした超豪華高層ビル。
     設計コンペの段階では「タワー」程度の認識だったが、有識者たちの検討会を経て「シンパシータワー

    0
    2025年11月10日
  • しをかくうま

    Posted by ブクログ

    続けて九段理江さんの作品を。最初はとってきにくかったが、どんどん引き込まれました。現代文学は面白いなあ。

    0
    2024年08月10日
  • Schoolgirl

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    グレタに憧れる女子中学生と文学を愛する母親。
    フィクションは時間の無駄だという娘と
    戦時中ですらフィクションこそ生き残るという母。
    九段さんと小川哲さんの文章に共通点を感じ、この人の文章が好きだと直感が働いた。


    太宰治の女生徒を基に書かれたそうだが、知識がないせいか「なるほど、女生徒はこういう作品なのか」としか思わなかった。
    AIスピーカーやYouTubeのない時代、女生徒はどんなふうに書かれていたのだろう。

    娘がフィクションを信じていないにも関わらず、母の本棚をどんどん散策していき、遂に「女生徒」にたどり着く。
    そして。。

    母を毛嫌いし、馬鹿にしつつも、母の世界に入りたい娘の気持ち。

    0
    2024年08月05日
  • しをかくうま

    Posted by ブクログ

    結構好きなんだけれど、なんというか、さらなる踏み込み方がありそうというか、もっと馬自体の美に踏み込んでいたほうが私はこの小説を好きになっていただろうと思う

    0
    2024年06月16日
  • しをかくうま

    Posted by ブクログ

    おしゃれすぎる。
    ミステリの後に読んだからなおさら文章に酔いしれた。
    最近の本ではお決まりとなっているが、もう一度読みたい。特にこの本は、もう一度読まなければならない。

    0
    2024年06月10日
  • Schoolgirl

    Posted by ブクログ

    少女ゆえの全能感、自分以外のみんな、特に自分の世話を焼く母親が馬鹿に思える。そんな少女期を通過していく様子が、読んでいて痛みを感じるほどよく描かれている。母親に愛されているからこその辛辣な言葉と、赤の他人に向けて吐露される本音。「明日から戦争が始まるっていう日でも、お母さんは小説の話をするの?」母親の答えに少女が気付きを得るのと同じように、私もハッとさせられた。

    「悪い音楽」にも、全能少女が登場するが、対する音楽教師もなかなかのものである。行き過ぎた音楽ファーストによって、教師として窮地に立たされることになる。こちらは「Schoolgirl」とは違って笑いながら読めた。面白い。

    0
    2024年05月27日
  • Schoolgirl

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    つい最近芥川賞を取ったばかりでマスコミに露出も多くなった作家なので受賞作はまだだが先ずは本作から読んでみた。2作の短編だがどちらも女性が主役だ、文章に区切りがなく読みにくい作風だが、そのたたみ掛けが良いのかもしれない。一人は主婦そしてその娘、もうひとつは音楽教師とその生徒。どちらもその役割を実際の行いとその思想に問題はあるが必死にその役割を果たそうとしている、何故か生きるのがつらそうだ、世の中の女性は皆そうなのかと疑ってしまう、その点男の単純なこと、なぜだか悲しくなってしまう。

    0
    2024年05月25日
  • Schoolgirl

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    新人賞受賞作「悪い音楽」から読みました。
    人の心がわからない教師の話。
    音楽家の父につけられた名は「ソナタ」。
    もうこれは呪いだな。

    確かに、心に寄り添うとか感情を揺さぶるとか、やたら共感を求められる時代にあって、他人の感情を忖度しない人は悪者扱いされてしまうのかも。

    ソナタ先生は感情が無いわけではなく、自覚が薄いだけで喜怒哀楽の末に苦しんだり傷ついたりもしている。サエはちゃんとそれを感じとっているのだとラストシーンを解釈しました。


    「Schoolgirl」はステレオタイプな思考が並び実態がつかみづらい。世界は大小のさまざまな説でできている。良い意味で最初の印象が裏切られていきます。

    0
    2024年05月23日
  • しをかくうま

    Posted by ブクログ

    盛り沢山すぎて頭の中がまだ整理しきれていない。
    感情や思考が言葉によってラベリングされることで腑に落ちると言うのは納得。
    今回も登場人物ヒやビやマがもはや男女どころか人かどうかも初めはわからないので感情移入できず、俯瞰で物語を眺めることとなった
    もう一度読みたい。

    0
    2024年04月25日
  • しをかくうま

    Posted by ブクログ

    表紙のデザインはエドワード・マイブリッジが複数台のカメラを使用して撮影したギャロップの連続写真に由来する。時間がテーマの一つとなる本作に即した的をいた装丁である。

    0
    2024年04月24日
  • Schoolgirl

    Posted by ブクログ

    「School girl」では、14歳の娘をもつお母さんの想いと映像で語っているyoutuberの娘の想いを交差しながら読むことが不思議な感覚でした。
    さらにそこに太宰治「女生徒」の話しが出てきて、時間軸的にも面白く描かれていました。
    まだ「女生徒」読んだことないので、読んでからまたこの本を読み返してみたいです。何かまだトリッキーな仕込みがありそうです。

    そしてもう一つの「悪い音楽」ですが、癖があり、新しい視点であり、そしてつい笑ってしまう場面あり、音楽で例えるとロック?いやカートコバーンやビリーコーガンを思わせるオルタネイティブ的な気持ちを感じました。
    わたしも心当たりがあるのですが、笑っ

    0
    2024年03月15日
  • しをかくうま

    Posted by ブクログ

    「詩を書く馬」「死を欠く馬」と書けるタイトルをはじめ、全編に仕掛けが隠されていて難解だけど、その難解さも含めて面白い。詩人、哲学者、映画監督、競走馬などの膨大な固有名詞と、物語の広がりに圧倒された。

    九段さんの作品はどれも主張の強い女性が出てくるけど、根安堂太陽子・千日紅は特に突拍子もない言動が強烈で笑いました。

    0
    2024年03月15日
  • Schoolgirl

    Posted by ブクログ

    表題作の【女生徒】は、私も大好きな太宰の女生徒を本歌取りしているということで、どんな小説になるんだろうと芥川賞ノミネート作の中でもとりわけ気になっていた。

    バイリンガル社会派Youtuberとして意識高く活動する14歳の娘から、“小説ばかり読んで頭がおかしくなった空想癖のある母親”と見下されている34歳の「私」。
    彼女と同様、なぜ私も女生徒が好きかというと、ありのままの少女がありのままに描かれているからなんだよね。純度100%の共感があって、だからこちらの小説でも私はきっと14歳の娘の方に理解できるものがあるかと思ったんだけど、全然そうじゃなかった。驚愕。
    娘から馬鹿にされ冷たい目を向けられ

    0
    2024年11月20日
  • Schoolgirl

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    ◯Schoolgirl
    34の母と、環境保護などのyoutuberをしている14歳の娘。母はその母から虐待を受けていて、娘の気持ちを優先するが娘の意識が高く噛み合わない。母視線と、娘は母の見るyoutubeの中で想いを語る。太宰の女生徒をきっかけに会話の兆しができて終わる。
    巧みな文章で娘と分かり合えない母の感情が描かれているけど、なぜ娘はその高い意識に反して「本当はお母さんだけを助けたい」までの感情があるのか、たぶんそのために嫌いな小説、女生徒に興味を持ったのかがわからない。そこの葛藤を書くのが小説じゃないかしら、それが芥川賞の選評にある「ここから小説は始まるのでは」に繋がるんじゃないないか

    0
    2025年11月22日
  • 東京都同情塔

    Posted by ブクログ

    コンプライアンスの時代に代表されるような、気を使って言葉を発しないといけない現代が持ち得る危うさが、空想的な予測をはらんで未来に向かった結果を表現したような作品に感じた。看護婦という言葉が使われなくなったのと同じベクトルで、犯罪者はホモミゼラビリスに、そしてそこにいたるまでのバックグラウンドにまで気をつかわないといけなくなっている表現方法が面白かった。随所に性を象徴する比喩表現や構造の配置が見られたが、それが何を表現しているのか、自分には深く理解できなかった。テーマは理解できたと思うがそれに深みを与える表現が自分の理解を超越していたので、もっと読解力か感受性を高めてまた読み直したいと感じた。

    0
    2025年11月18日
  • 東京都同情塔

    Posted by ブクログ

    「自分の言葉で書かないと彼女の自伝にならない」と言いながら他人の言葉を借用する男の子。コロナが明けたと思ったら、正しい言葉を並べないと他人と対峙できない病気が蔓延しているよな。
    本のレビューをかくにしても、他人の評価を見て、自分の見立てが正しいのか確かめないと怖いと感じる。
    はっきり言って全然物語は面白くないし、登場人物もイケすかない。ただ黙っていたらその方向に向かっていく未来がある一種の預言書。ただ、日本人はもっと流されやすくて、トランプの再登場でまた違う未来を見てる気もする。

    0
    2025年11月13日