あらすじ
第45回野間文芸新人賞受賞作
「東京都同情塔」が芥川賞を受賞して更なる注目を集める著者が、
ほとばしる想像力で描く、馬と人類の壮大な歴史をめぐる物語。
太古の時代。「乗れ!」という声に導かれて人が初めて馬に乗った日から、
驚異の物語は始まる。この出逢いによって人は限りなく遠くまで
移動できるようになった――人間を“今のような人間”にしたのは馬なのだ。
そこから人馬一体の歴史は現代まで脈々と続き、
しかしいつしか人は己だけが賢い動物であるとの妄想に囚われてしまった。
現代で競馬実況を生業とする、馬を愛する「わたし」は、人類と馬との関係を
取り戻すため、そして愛する牝馬<しをかくうま>号に近づくため、
両者に起こったあらゆる歴史を学ぼうと
「これまで存在したすべての牡馬」たる男を訪ねるのだった――。
感情タグBEST3
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この人の書く本が本当にすきだと再確認。
名前のくだりは本当に不意をつかれるような感覚になった。
女性としての視点を交えながら、色んなものをみて、考えられる人なのだろう。村上春樹くらい偉大な作家さんになりそうだし、ずっと読み続けたい作家さん。
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独特の世界観に引きずられて一気読みした
嵐の様な速度で読んだ、グイグイ引っ張られて掴まれて囚われて仕方なかった
作家の想像力が暴力的でそのストームの中にいるような読書体験
あまり頭で考えずに感覚で読むとよい気がする
物語のようであり散文のようでもある
聴覚的な読書体験だった
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「しをかくうま」(九段理江)を読んだ。
ぶっ飛んだよ。
まさに《言葉の魔術師》の降臨であろうか。
ひとと馬と詩の物語。
九段理江さんほど言葉の持つ力を存分に発揮してガツンと読者の頭をぶん殴りにくる作家はそうは居ないね。
彼女には日本語の未来が見えているに違いない。
少し長いけど引用する。
(「東京都同情塔」からも併せて引く)
『とはいえ、一貫性と政治的正しさと共感を集めることに徹した言葉を選んでいくとなると、最後は誰もが同じ言葉を喋る未来しかないんだよね。つまり言葉は死んでいくしかないんだよね。』(本文より)
『言葉は私たちの世界をばらばらにする一方です。勝手な感性で言葉を濫用し、捏造し、拡大し、排除した、その当然の帰結として、互いの言っていることがわからなくなりました。喋った先から言葉はすべて、他人には理解不能な独り言になりました。』(「東京都同情塔」本文より)
今年一冊目として素晴らしいスタートをきることができた。
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意味は全然わかんないけど、読んでてとっても楽しい。作品全体が詩みたいだし、馬みたいでもある(今わたしたちが持ってる"ブレイン"とは全く違う基準で動いているような、という意味で)。
根安堂(ネアンドウ)家おもしろすぎるし、途中で出てくる順番記号は競馬の順位や予想も連想させるし、あとヒとビの話は普通にすき。
「彼の頭上にまず降りかかってきたのは不幸の極致にあるものだった。雨だ。」
読んでる途中から、どうしても馬に乗りたくなってホーストレッキングを予約しました。ということは、この詩は概念を書いてるんじゃないんだな、だからこんなに面白いんだなと思いました。
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タイトルも意味不明だが内容もぶっ飛んでいた。静かに。そしてその世界観が何故かとても心地よかったのだ。何故だ。
松浦理英子の犬身を読んだときも同じように心震えるものがあったことを思い出した。
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ウマとヒトと言葉と時間がぐわーーと押し寄せてくる本
分からないままに読んでるとグッと面白くなる
最後はディストピア的なんだけど、コトバを探す苦しさが伝わってくる
もう一度最初から読み直したい
Posted by ブクログ
私の中で、九段理江さんは新しもの好きなイメージがあったものの、本書を読めば決してそれだけではないことが分かる、過去も現在も未来も縦横無尽に行き来した、その一見突拍子と思われる物語も、最後まで読むと伝わってくるものがありながら、毎度の如く、その豊富な知識量や興味のあるものに対する飽くなき姿勢には感服させられる。
そして、その様々な視点から現在に於ける常識と思われるものを揺さぶってくる作家性は、時に大胆で痛烈でありながら肯けるものがあったのも確かで、それは『多様性を求めながら同時に平等性をも要求するようになった』のような皮肉を効かせる一方で、『一貫性と政治的正しさと共感を集めることに徹した言葉を選んでいくとなると、最後は誰もが同じ言葉を喋る未来しかない』には、まるで前者とは相反するような『右へ倣え』の姿勢が未だに根強い、現代社会の矛盾を批判しながらも、寺山修司、谷川俊太郎、ゴーギャン等の言葉を引用する点に、彼女の作品に於いて時折テーマとなる『言葉』の持つ力や可能性への真摯な一面も垣間見えたことから、単に登場人物に自由に語らせるだけではない、現実に存在した人物のリアルな言葉を小説に取り込むことで生じる、現実とフィクションとが入り乱れた感覚は、どこか滑稽とも思われながら真実が埋没しているような気にもさせられて、それは夢を見ているような足下の覚束ない浮かれた気分の中、不意に冷水を浴びせられて目が覚めた感覚とでも言えばいいのだろうか。
そう考えると、『しをかくうま』には様々な思いが込められた良いタイトルだと思い、そこに漢字を当てはめてみて、そんな馬鹿なと嘲笑する人が、もしいるのであれば、それこそが『君たちがつくったわけでもないこの世界』に於いて、『己がいっとう賢い動物であるという妄想』を抱いてしまうのは何故なのか、よく考えた方がいいと思うと言いたくて、それは馬が人間と初めて出会ってから、どれだけ時が経過しているのかという歴史的背景を知ることで、馬のことをどれだけ知ったつもりでいるのかという思いにさせられながら、初めて人間が馬に乗せてもらえた時の心境とは如何ばかりのものであったのかという感慨深いものもふつふつと湧き上がってくるようで、そうした思いと、彼女があるべき未来を見るために過去の歴史も見ながら本書を書いたことには、過去とは決して切り離して良いものではなく、過去を謙虚に受け止め大切にしてこそ明るい未来があるのだという、そんなメッセージをそっと忍ばせていたのかもしれない彼女の姿勢は、エドワード・マイブリッジの偉大な功績の一つである連続写真『動く馬(The Horse in motion)』を表紙に採用したことにも、よく表れているのだと思う。
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人間が進もうとしている未来について、漠然と持っていた違和感や不安を、書き表してもらったような感じがして、たくさんのフレーズを書き留めた。
特に印象に残ったのは、
「一貫性と政治的正しさと共感を集めることに徹した言葉を選んでいくとなると、最後は誰もが同じ言葉を喋る未来しかないんだよね。つまり言葉は死んでいくしかないんだよね。」
言葉を死なせないように言葉を使っていきたい。
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結構好きなんだけれど、なんというか、さらなる踏み込み方がありそうというか、もっと馬自体の美に踏み込んでいたほうが私はこの小説を好きになっていただろうと思う
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おしゃれすぎる。
ミステリの後に読んだからなおさら文章に酔いしれた。
最近の本ではお決まりとなっているが、もう一度読みたい。特にこの本は、もう一度読まなければならない。
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盛り沢山すぎて頭の中がまだ整理しきれていない。
感情や思考が言葉によってラベリングされることで腑に落ちると言うのは納得。
今回も登場人物ヒやビやマがもはや男女どころか人かどうかも初めはわからないので感情移入できず、俯瞰で物語を眺めることとなった
もう一度読みたい。
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表紙のデザインはエドワード・マイブリッジが複数台のカメラを使用して撮影したギャロップの連続写真に由来する。時間がテーマの一つとなる本作に即した的をいた装丁である。
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「詩を書く馬」「死を欠く馬」と書けるタイトルをはじめ、全編に仕掛けが隠されていて難解だけど、その難解さも含めて面白い。詩人、哲学者、映画監督、競走馬などの膨大な固有名詞と、物語の広がりに圧倒された。
九段さんの作品はどれも主張の強い女性が出てくるけど、根安堂太陽子・千日紅は特に突拍子もない言動が強烈で笑いました。
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人が発語し書く詩の語順、字数、語の意味(どこまでを一つのモノとして区切りどう名付けるか)にとことんこだわる姿勢は強烈。太文字表記やわざと通常通りではない表記を選ぶ語と文は視覚的にも強く残る。他の小説にはない唯一無二の独自性があると思う。馬(マ)/人(ヒやビ)が今に至るまで歩んできた歴史が物語に一貫した主題になっている。人間にとって神々しい馬、そして馬を始めとして様々な箱を発明して遠く遠くへ移動しようと努力してきた人。人間のこれからはどうなるのか?遠く遠くへ向かい、人類がこれまでに苦労して見つけ出してきて累積した知恵や知識へ一瞬でアクセスして、自分で動いて考える必要がなくなっていくこれからの人間には二度と「詩」は書けなくなるだろう。…という批判的なメッセージが込められているように感じた。これは、近年のAI技術進歩によって、人がこれまでの進歩と思考、感情を外部に委託し自我を放棄することの危険性に警鐘を鳴らし、目をそらされているネガティブ面を鋭く指摘していると思う。同時に、いま一度原始、自然しかなかったころからの人間の歩みを振り返り、再評価するべきではないかという作者の愛のムチを感じた。
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人も馬も言葉も、止まることなく走り続けてきた生き物だ。今までもこれからもそこに優劣などないはずなのに、傲慢な我々が一番上に立とうとするから世の中めちゃくちゃになっている。生き物は死ぬ。それを突きつけられて、そうならないように頑張ろうよと手を握られた気がして、なんだかちょっと涙が出た。
Posted by ブクログ
レビューにある通り?よくわからんかった
けどそれでも読んで良かったと思っている
え?このアナウンサーはAIなの?ロボット的な?いやけど生活してるな?意志を持ったAI?え??キャロットラペに頭を突っ込んでる!!??馬なの??
楽しくなってきたww
名前とは一種の詩である、と言っていた。
Posted by ブクログ
よくわからないまま読み終えてた。過去のヒとビとマの描写は想像が掻き立てられわくわくした。現在(といっても近未来感がある)は不思議だらけ、ターレンシスは何者?未来が一番難解だった。また読んでみたい。
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「東京都同情塔」が面白かったから読んでみたが、両方ともテーマが言葉とAIについてなので、どちらかを読めばいいかなと思った。こっちを先に読むなら星4。
「同情塔」よりテーマ以外の部分で楽しんでいるので、その部分はわかりづらくなっていると思う。
この作者を追っていこうと思っていたけど、次の作品も同じテーマだったらもういいかな。
Posted by ブクログ
独特な文章の運びで読みやすい本ではない、でもだからと言って途中で読むのをやめる気にもならなかった。話の終わりが気になって読み続けた。
現在と過去が交錯しながら話は進み、未来の場面で、こんな未来が来るのかなと思うような…漠然と末恐ろしいような、なんとも言えない気持ちがした。著者が言いたいことが根底に流れているようで、よくわからない。今後何度か読み返してみようかと思う本だった。
Posted by ブクログ
序盤に、これは何かの修行か?と思うぐらい読み難いパートがあるけど、その後ネアンドウファミリーの登場から一段と面白くなる。どこまでも馬ファーストの世界線。
Posted by ブクログ
【言葉を使うヒト、の行く先…】
主人公がTV局での競馬の実況の仕事をしている世界と、もう一つの異次元的な世界とが、交ざり合っていく。
この題名が平仮名なのは、あえてその意味を固定せずに言葉で遊んでいる節があるー「詩を書く馬」「死を欠く馬」。
詩や言葉について、幾度も触れられている。
一頭でも多く馬の名前を電波に乗せるという使命感。
馬に付けられる名前。その言葉の重み。
語順。
ヒトが言葉を生み出す過程。生物としての進化、分岐。
人工知能を内在化する未来のヒト。
結果と意義。なんのための言葉?何のための進化?みたいなところを問うているような、でもはっきりとは示さない構成。ニーチェとかサルトルとかの思想を知っていると理解が深まるのかな。そういった部分が難しかった。
とにかく私にはまったく新しい切り口で、言葉を持つ人間界を少し相対化するような、逆に馬を少し神聖化するような、ユニークな視点で描かれた作品。
正直最終的に、漢字をずっと見てたら漢字じゃなくなる現象の、言葉バージョンみたいになってしまったような部分がある。
Posted by ブクログ
『東京都同情塔』で芥川賞を受賞した九段理江さんが、それ以前に雑誌に発表していた作品。第45回野間文芸新人賞受賞作である。『…同情塔』はすばらしい作品で一気に読んでしまったが、こちらは手こずった。
いやあ、わからん(笑)。ちょっと衝撃的にわからない作品だった。
出だしはファンタジー、そこから競馬を実況するアナウンサーの話に変わり、胡散臭い奴らも登場する。だいたい、競走馬の命名ルールなんて知らないし、それが変更されたからどうだというのか?
でも不思議と投げ出そうという気にならず、最後まで読んでしまった。時間はかかったけれど。
Posted by ブクログ
芥川賞おめでとうございます。
受賞作より競馬をテーマにした本ということでこちらの方が気になって文学界を拝読しました。
途中までなかなか物語の中に入り込めず、言葉遊びの部分が多いなという感想でした。
途中から怒涛の展開に傾れ込んでからは引き摺り込まれるように入り込めましたが、やはり最後の結末のあたりはなかなか私には理解が及ばない内容でした。
でも馬がどの実況が上手いとか話題にしてたら。。とか思うと何か競馬を見る目も少し変わるように思います。そういった競馬に対するお声なんかもぜひお聞きしてみたいですね