あらすじ
第45回野間文芸新人賞受賞作
「東京都同情塔」が芥川賞を受賞して更なる注目を集める著者が、
ほとばしる想像力で描く、馬と人類の壮大な歴史をめぐる物語。
太古の時代。「乗れ!」という声に導かれて人が初めて馬に乗った日から、
驚異の物語は始まる。この出逢いによって人は限りなく遠くまで
移動できるようになった――人間を“今のような人間”にしたのは馬なのだ。
そこから人馬一体の歴史は現代まで脈々と続き、
しかしいつしか人は己だけが賢い動物であるとの妄想に囚われてしまった。
現代で競馬実況を生業とする、馬を愛する「わたし」は、人類と馬との関係を
取り戻すため、そして愛する牝馬<しをかくうま>号に近づくため、
両者に起こったあらゆる歴史を学ぼうと
「これまで存在したすべての牡馬」たる男を訪ねるのだった――。
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Posted by ブクログ
【言葉を使うヒト、の行く先…】
主人公がTV局での競馬の実況の仕事をしている世界と、もう一つの異次元的な世界とが、交ざり合っていく。
この題名が平仮名なのは、あえてその意味を固定せずに言葉で遊んでいる節があるー「詩を書く馬」「死を欠く馬」。
詩や言葉について、幾度も触れられている。
一頭でも多く馬の名前を電波に乗せるという使命感。
馬に付けられる名前。その言葉の重み。
語順。
ヒトが言葉を生み出す過程。生物としての進化、分岐。
人工知能を内在化する未来のヒト。
結果と意義。なんのための言葉?何のための進化?みたいなところを問うているような、でもはっきりとは示さない構成。ニーチェとかサルトルとかの思想を知っていると理解が深まるのかな。そういった部分が難しかった。
とにかく私にはまったく新しい切り口で、言葉を持つ人間界を少し相対化するような、逆に馬を少し神聖化するような、ユニークな視点で描かれた作品。
正直最終的に、漢字をずっと見てたら漢字じゃなくなる現象の、言葉バージョンみたいになってしまったような部分がある。