九段理江のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ【言葉を使うヒト、の行く先…】
主人公がTV局での競馬の実況の仕事をしている世界と、もう一つの異次元的な世界とが、交ざり合っていく。
この題名が平仮名なのは、あえてその意味を固定せずに言葉で遊んでいる節があるー「詩を書く馬」「死を欠く馬」。
詩や言葉について、幾度も触れられている。
一頭でも多く馬の名前を電波に乗せるという使命感。
馬に付けられる名前。その言葉の重み。
語順。
ヒトが言葉を生み出す過程。生物としての進化、分岐。
人工知能を内在化する未来のヒト。
結果と意義。なんのための言葉?何のための進化?みたいなところを問うているような、でもはっきりとは -
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「多様性」という耳障りの良い言葉の上澄みだけをすくったようなタワーが日本で建設されるという設定は、日本人の国民性が反映されていて面白かった。表面だけ取り繕って、中身がスカスカのカタカナ英語を多用する近年の傾向に対する問いかけのような内容になっているのではないかと思う。
心が動かされる、感動する、という類の小説ではなく、作者が淡々と疑問を投げかけてくるので、個人的には物足りなさを感じた。AIのような、当たり障りのない言葉しか話さなくなった人間をデザインしたのかもしれないけれど、それならば一人称小説にした意味を考えてしまう。
タクトの出自については、いささかご都合主義なところが気になった。