永井玲衣のレビュー一覧

  • 世界の適切な保存

    Posted by ブクログ

    『水中の哲学者たち』は気になっていたまま読んでなかったんだなと、エッセイとしても独特な書き口に触れて思い返した。哲学対話などの活動についてラジオ出演で耳にしていたイメージだけだったが、語る人という印象だが文体も個性がいい意味で現れている。
    なにか純なる透明性のようなものを掲げる姿勢が胡散臭くもあるのだが、一見すると掴めない表題の真意といったものはときに後継に退きながらも全編を通して語り尽くされていて、高遠な理想とは隔たった実生活的な感性として「世界の適切な保存」という視点は、古くもあり現代において新しくもある議論設定だと思われた。

    0
    2025年09月13日
  • 世界の適切な保存

    Posted by ブクログ

    前半部分は、著者の永井玲衣さんが、忘れることを嫌がっている事から「世界の適切な保存」だと思って読んでいましたが、後半にヒロシマの原爆や東日本大震災など、忘れてはいけないことを忘れないように、言葉を使って、世界を保存しようとして葛藤している様子を感じることができるようになってきました。僕は、個人的に写真を撮ることが趣味なのですが、「時が流れていかないように」というwebsiteを作って、撮った写真を公開していました。(閉鎖しました)永井さんが考えていたことと、同じようなことを僕も思っていたことが、共感を覚えました。日々消費されるコンテンツを、僕もただ保存したいと思います。

    0
    2025年09月12日
  • さみしくてごめん

    Posted by ブクログ

    ほのぼのとしてるが時折りさみしくなる日記パートでの日常風景、サッカーについて色々と試みる過程も良かったが、特に『見られずに見る』が印象に残った。
    あまり作者が何かを論じたり、考えを述べると言うことは無く、感じたことがつらつら書かれた本書だが、最後にここを読み返すと、仲の良かった友人とより深く繋がれたような気持ちになる。(それがまあ、ホントにそう思っていいかは置いといて。。)

    0
    2025年09月11日
  • 選挙との対話

    Posted by ブクログ

    この本を手に取ったきっかけは、情報番組で「自民党がなぜ強いかをデータで分析している」「選挙とは何かを座談会形式で考えている」と紹介されていた点に惹かれたからである。

    本書によれば、自民党が強い理由としては、①小選挙区制において効率的に議席を獲得できる制度構造、②公明党との選挙協力、③野党が候補者を統一できず票が分散すること、④非都市部で組織団体や保護政策を通じて基盤を固めていること、⑤政治に不満を抱えながらも与党に投票する層が一定数いること、などが挙げられている。

    また、(本書の説明を踏まえつつ私の理解を交えて言えば)投票率の低さも自民党に有利に働いている。特に「選挙に行かない層の中には野

    0
    2025年09月11日
  • 水中の哲学者たち

    Posted by ブクログ

    永井玲衣さん。先に『世界の適切な保存』を読んだ。

    文章の距離感が、一人称なんだけど、どこか自分には他人事のようなふわついた感じがあったり、かと言って、傷ついたときは、泣くらしい。
    自分が自分でいることを不思議に思い、不可解に思い、驚き、戸惑う。
    みんなわかったようなことを言いながら、本当の本当にわかってるのか。
    それって本当だったっけ?
    本当だとしたらなんでなんだっけ?
    そういうことを考える。
    本書は、哲学対話というものをワークショップみたいにやっている活動日誌でもある。
    小学生たちに、考えたいことを考えてもらう。
    会社のイベントごとに呼ばれて対話のためのファシリテーションをする。
    そういう

    0
    2025年09月07日
  • さみしくてごめん

    Posted by ブクログ

    永井玲衣さんの著作のなかでいちばん好きかも。
    淡々とした語り口にときおり顔を覗かせるユーモアが絶妙で、哲学者の日常をさまざまな角度から見せてもらうことができた。

    中学生のとき自身を山椒魚だと認識して青ざめた、というエピソードが可愛らしかった。本文中の表現を借りればそれこそ、〈深刻で切実だが、悲哀に満ちたおかしみがある。それにどこか、筆者がふざけている。真面目なふりをしているが、ふざけているのである〉。
    井伏鱒二の『山椒魚』、ずっと積読になったままだからこれを機に読んでみよう。

    こうして一人ファミレスのモーニングで感想を書き綴りながら、さみしいのも悪くない、と思った。
    読み終えたあとは、自分

    0
    2025年08月29日
  • 世界の適切な保存

    Posted by ブクログ

    “あまりに物事がしんどくて、何もかもが立ち行かない時に、友人に「降伏だ」とメッセージを打とうとした。機械は、わたしの状況などつゆ知らず「幸福だ」と変換した。わたしは自分で自分のことを幸福と言ったことがなかったから、それを真新しい目で見ることになった。”(p.94)



    “見ることは、変えることだ。自分自身を超え、変えていくことだ。世界は不適切に保存され、手渡される。それを、もっと見ようとする。見ることによって、知っていたと思い込んでいたものが変形する。知っていたと思い込んでいた自分が変わる。ならば、どうするかだ。
    見るだけで終わることはできない。見ることは、わたしを当事者にする。共に生きるひ

    0
    2025年08月21日
  • さみしくてごめん

    Posted by ブクログ

    まるで人の頭の中を覗いているような感覚になる。
    そして、すごく眠くなる。
    何故なら私が寝る前によく考えるようなことが、この本には延々と書かれているから。

    「相手の気持ちを完璧に「わかる」なんてことはかなわない。誰もが知っていることだ。それなのに、大変な苦労をした人に、無責任にも感情移入して涙を流してしまうことがある。なんという無神経な感受性なのか。(p129)」

    この一文がすごく好きだ。
    無責任な感受性。
    茨木のり子さんの「自分の感受性くらい」の香りを感じる。

    哲学って日常だなぁ、と再確認出来る。

    0
    2025年08月15日
  • 水中の哲学者たち

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    当たり前のことに疑問を持ち人と対話する。人の考えを聞き疑問を深めていく。おもしろい学問ですね。まさに「学んで問う、問うて学ぶ」

    腹にストンと落ちることが気持ちいいことを思い出させてくれました。

    それから変な敬語も笑いました。言いたくなる気持ちも含めて。

    お笑いをみてみようかな、なんでやねんと哲学。

    0
    2025年08月15日
  • 水中の哲学者たち

    Posted by ブクログ

    読みやすく、面白かった。
    著者のあっけらかんでひょうきんな文章で、なんだか、完璧でなくていいし、弱くてもいい、という至極当たり前のことを思い出した。
    今後の思考の足がかりに

    0
    2025年08月09日
  • 世界の適切な保存

    Posted by ブクログ

    とりとめもないことを見てどんどん思考、いや妄想が広がっていくのが好きなんだけれども、それを保存したいなと思った。適切に保存できるかな

    0
    2025年08月03日
  • 世界の適切な保存

    Posted by ブクログ

    「記憶とは不完全なもので、もどかしいもの。また言葉も完全であろうとしても完全になりえることは不可能だ。言葉は他者にむけて手渡されるべきものであるから、言葉ゆめゆめ手放してはならない、たとえ言葉を見失うようなことが目の前に立ち現れたとしても。そしてその感情を適切に保存する。わたしたちが人間であろうとするのなら、その忘却と無邪気な残虐さも、だ。経験することでしかわからないことはあるが、経験してもわからないことはある。見ることは、変えること。自分自身を超え、変えていくことだ。見るだけで終わることはできない。見ることはわたしを当事者にする。共に生きるひとにする。そういうことが問われている」そんなことが

    0
    2025年07月17日
  • 水中の哲学者たち

    Posted by ブクログ

    日常を細部まで見落とさないにしているような、繊細で純粋なとても優しい綺麗な文章だなと思って読んでいた。電車の中や学校の教室、誰かとの会話の中に流れる空気感が柔らかい感じがしてとても素敵だった。

    0
    2025年06月30日
  • 水中の哲学者たち

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    哲学研究者のエッセイ。著者は哲学対話をたくさん主催しているようで、哲学対話の会での体験が多く綴られている。漢字をひらいた柔らかい文体を使っていて、繊細でみずみずしい感性でときにユーモアを交えながら人間や世界のわからなさ、こわさ、うつくしさに相対していく様子を素朴に書いていて良かった。本をゆっくりじんわりと読みたい気分だったのでちょうどその気分にマッチしていたというのもあるが、かなり好みの文章だったので心が安らいだ。

    著者は、哲学対話などで問いについて深く考えていくことを「水中に潜る」というように表現する。

    「わたしはあなたの苦しみを理解しない。あなたのかなしみを永遠に理解しない。だから、共

    0
    2025年06月24日
  • 世界の適切な保存

    Posted by ブクログ

    言葉や映像では拾い切れない様々な感情、思考、感覚。無駄な情報として削ぎ落とされてしまう風景や呟き…。世界には必要とされないけど、間違いなくそこにあったものたちに思いを馳せ、保存を試みる行為はきっと目の前の誰かや世界を理解するための大切なピースになると教えてくれた。

    0
    2025年06月12日
  • 世界の適切な保存

    Posted by ブクログ

    世界が無くならないように、形を変えないように、正しく「保存」することがテーマ。
    永井さんが日々考えていること、感じていることが瑞々しい言葉で語られる。
    「水中の哲学者たち」と同じく、永井さんの言葉を通して自分自身の思考がぽつぽつ浮かんでは消えて、を繰り返しているような感覚だった。

    「保存」といえば私は昔から、人生の全ての項目を記録してくれるような仕組みがあれば良いのに、と感じていた。
    ゲームのエンディングの後に出てくる全編を通してのresult。
    コインを取った総数、死んだ回数、集めたアイテム○個/100個...
    そんな風に、「友達の人数」「喋った単語の数」「使ったお金の総額」「ウニを食べた

    0
    2025年06月02日
  • 世界の適切な保存

    Posted by ブクログ

    人がぽろりとこぼしたことばの新鮮な響き、どこにも記されない日々のなかで起きた出来事や感情、忘れてはいけないことをどうやって適切に保存するのか。読みながら、ぐるぐると考えて、いまもまとまらないまま考えている。頭の中に浮かんで消えていく思考も感情も生きている日々も、そのまま保存されることはない。それでもささいな日常のにおいや手触りやだれかの呟き、本を読んで生まれる自分の心のさざ波を、じっと見つめてみたいとも思った。

    0
    2025年05月31日
  • 世界の適切な保存

    Posted by ブクログ

    読んで良かった本
    ただ「見る」ことの難しさは、共感もしたし、私は全然できてなかったなとも気付かされた
    瞬間や体験、記憶を保存しなければという強迫観念めいたものに見覚えがあって購入したけど、
    永井さんのそれと私のものは真剣さが違ったなー
    簡単に、分かった。と言いたくなくなった

    0
    2025年05月11日
  • 世界の適切な保存

    Posted by ブクログ

    日常における哲学的な瞬間「哲学モメント」について記述した永井玲衣さんのエッセイ集。『水中の哲学者たち』と表紙の雰囲気も似ているけれど、別の連載をまとめて別の出版社から出ているもの。でも、前作の正統進化版という感じでとても良いです。『水中』が永井さん自身の生活や人生における哲学モメントを多めに切り取ったものだったのに対して、本作では永井さん自身の視点で構成されているのは変わらないですが、題材として詩や短歌など詩人たちの目線を引用しつつ話が進んでいくので、哲学モメントを感じる目線や視点が永井さんだけでなく、他の人にも、そして自分にも拡張されてくる感じ。二作続けて読むことで哲学モメントを感じる視点や

    0
    2025年04月16日
  • 世界の適切な保存

    Posted by ブクログ

    「哲学モメント」「いい感じ」「適切な保存」「余計な心配」
    当たり前にあるもの、他の人が気にとめないもの、ひっそりと存在するものに想像をめぐらせて考える。
    いつも、適切を意識して行動しているけれども、本当のところは適切なのかも分からない。
    でも、考えるのを続けていこうと思う。
    そんな気持ちになりました。

    0
    2025年03月30日