永井玲衣のレビュー一覧
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前半部分は、著者の永井玲衣さんが、忘れることを嫌がっている事から「世界の適切な保存」だと思って読んでいましたが、後半にヒロシマの原爆や東日本大震災など、忘れてはいけないことを忘れないように、言葉を使って、世界を保存しようとして葛藤している様子を感じることができるようになってきました。僕は、個人的に写真を撮ることが趣味なのですが、「時が流れていかないように」というwebsiteを作って、撮った写真を公開していました。(閉鎖しました)永井さんが考えていたことと、同じようなことを僕も思っていたことが、共感を覚えました。日々消費されるコンテンツを、僕もただ保存したいと思います。
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この本を手に取ったきっかけは、情報番組で「自民党がなぜ強いかをデータで分析している」「選挙とは何かを座談会形式で考えている」と紹介されていた点に惹かれたからである。
本書によれば、自民党が強い理由としては、①小選挙区制において効率的に議席を獲得できる制度構造、②公明党との選挙協力、③野党が候補者を統一できず票が分散すること、④非都市部で組織団体や保護政策を通じて基盤を固めていること、⑤政治に不満を抱えながらも与党に投票する層が一定数いること、などが挙げられている。
また、(本書の説明を踏まえつつ私の理解を交えて言えば)投票率の低さも自民党に有利に働いている。特に「選挙に行かない層の中には野 -
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永井玲衣さん。先に『世界の適切な保存』を読んだ。
文章の距離感が、一人称なんだけど、どこか自分には他人事のようなふわついた感じがあったり、かと言って、傷ついたときは、泣くらしい。
自分が自分でいることを不思議に思い、不可解に思い、驚き、戸惑う。
みんなわかったようなことを言いながら、本当の本当にわかってるのか。
それって本当だったっけ?
本当だとしたらなんでなんだっけ?
そういうことを考える。
本書は、哲学対話というものをワークショップみたいにやっている活動日誌でもある。
小学生たちに、考えたいことを考えてもらう。
会社のイベントごとに呼ばれて対話のためのファシリテーションをする。
そういう -
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永井玲衣さんの著作のなかでいちばん好きかも。
淡々とした語り口にときおり顔を覗かせるユーモアが絶妙で、哲学者の日常をさまざまな角度から見せてもらうことができた。
中学生のとき自身を山椒魚だと認識して青ざめた、というエピソードが可愛らしかった。本文中の表現を借りればそれこそ、〈深刻で切実だが、悲哀に満ちたおかしみがある。それにどこか、筆者がふざけている。真面目なふりをしているが、ふざけているのである〉。
井伏鱒二の『山椒魚』、ずっと積読になったままだからこれを機に読んでみよう。
こうして一人ファミレスのモーニングで感想を書き綴りながら、さみしいのも悪くない、と思った。
読み終えたあとは、自分 -
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“あまりに物事がしんどくて、何もかもが立ち行かない時に、友人に「降伏だ」とメッセージを打とうとした。機械は、わたしの状況などつゆ知らず「幸福だ」と変換した。わたしは自分で自分のことを幸福と言ったことがなかったから、それを真新しい目で見ることになった。”(p.94)
“見ることは、変えることだ。自分自身を超え、変えていくことだ。世界は不適切に保存され、手渡される。それを、もっと見ようとする。見ることによって、知っていたと思い込んでいたものが変形する。知っていたと思い込んでいた自分が変わる。ならば、どうするかだ。
見るだけで終わることはできない。見ることは、わたしを当事者にする。共に生きるひ -
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「記憶とは不完全なもので、もどかしいもの。また言葉も完全であろうとしても完全になりえることは不可能だ。言葉は他者にむけて手渡されるべきものであるから、言葉ゆめゆめ手放してはならない、たとえ言葉を見失うようなことが目の前に立ち現れたとしても。そしてその感情を適切に保存する。わたしたちが人間であろうとするのなら、その忘却と無邪気な残虐さも、だ。経験することでしかわからないことはあるが、経験してもわからないことはある。見ることは、変えること。自分自身を超え、変えていくことだ。見るだけで終わることはできない。見ることはわたしを当事者にする。共に生きるひとにする。そういうことが問われている」そんなことが
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ネタバレ哲学研究者のエッセイ。著者は哲学対話をたくさん主催しているようで、哲学対話の会での体験が多く綴られている。漢字をひらいた柔らかい文体を使っていて、繊細でみずみずしい感性でときにユーモアを交えながら人間や世界のわからなさ、こわさ、うつくしさに相対していく様子を素朴に書いていて良かった。本をゆっくりじんわりと読みたい気分だったのでちょうどその気分にマッチしていたというのもあるが、かなり好みの文章だったので心が安らいだ。
著者は、哲学対話などで問いについて深く考えていくことを「水中に潜る」というように表現する。
「わたしはあなたの苦しみを理解しない。あなたのかなしみを永遠に理解しない。だから、共 -
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世界が無くならないように、形を変えないように、正しく「保存」することがテーマ。
永井さんが日々考えていること、感じていることが瑞々しい言葉で語られる。
「水中の哲学者たち」と同じく、永井さんの言葉を通して自分自身の思考がぽつぽつ浮かんでは消えて、を繰り返しているような感覚だった。
「保存」といえば私は昔から、人生の全ての項目を記録してくれるような仕組みがあれば良いのに、と感じていた。
ゲームのエンディングの後に出てくる全編を通してのresult。
コインを取った総数、死んだ回数、集めたアイテム○個/100個...
そんな風に、「友達の人数」「喋った単語の数」「使ったお金の総額」「ウニを食べた -
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日常における哲学的な瞬間「哲学モメント」について記述した永井玲衣さんのエッセイ集。『水中の哲学者たち』と表紙の雰囲気も似ているけれど、別の連載をまとめて別の出版社から出ているもの。でも、前作の正統進化版という感じでとても良いです。『水中』が永井さん自身の生活や人生における哲学モメントを多めに切り取ったものだったのに対して、本作では永井さん自身の視点で構成されているのは変わらないですが、題材として詩や短歌など詩人たちの目線を引用しつつ話が進んでいくので、哲学モメントを感じる目線や視点が永井さんだけでなく、他の人にも、そして自分にも拡張されてくる感じ。二作続けて読むことで哲学モメントを感じる視点や