永井玲衣のレビュー一覧
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コロナ禍で書かれた日記(第1章)とエッセイ集。作者は哲学者さんであるらしく、文章をこねくり回して結論らしきものや、問いらしきものを捻り出していく。ほむほむ(詩人、穂村弘)さんに文章が似ているなと思っていたら、ほむほむの読者さんであった。出だしで北海道の地名が出てきたので、北海道在住かと思いきや、渋谷の人とのことで大変な都会人であった。引用されている「空席がすばやく埋まる東京で誰が消えたか思い出せない」という感覚はわかる気がする。そんな都会人ではないのだけれど。
あとがきに
この本を手にとってくださったあなたにも、ありがとうございます。あなたの、ただ考えてしまったことを、ぜひ押し込めないで、 -
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永井玲の著書は全て読んでいる。新しい感覚に目覚めさせてくれたり、ことばにならなかった物事に気がつかせてくれる、私にとってとても大切な存在だ。(あ、『さみしくてごめん』は積読中でした)
今回もとても良かった。しばらくはその余韻にぼーっとしてしまう。
第一部は『問いはかくれている』。新しいことばや気になることばに潜む問いを考える12篇。
第二部は『これがそうなのか』。著者が幼い頃から読んで強く感じたことばたちを深く掘り下げる、12篇。
第一部ではクスッとしたり、あーそうそう、でもそこまで考えたことなかったな、なんて、比較的軽く読み進めることができる。『若者の喫茶店のマスター化』なんて言い得て -
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spotifyの夜更かしの読み明かしで初めて永井さんの事、哲学対話の事を知って、どハマりして配信が終わってしまってからもいまだにリピートして聴いている。この人の物事を深く探求していく姿勢も、ありふれたものや人でも決めつけをせずに対峙する姿勢も好きだな。
もっと永井さんの哲学対話を知りたいと思って本を読んでみた。
前半は短めの日記、ユーモアがあってなんか人生楽しんでるなぁって笑ってしまうところがたくさん。
後半は抽象的で難しい所もあったけど面白く読ませてもらった。哲学モメントが印象的だった。
見慣れていたものやわかったつもりで漠然とみていることが突然よくわからないものになってしまう体験。世 -
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子どもとの哲学に関する話が特に、胸が締め付けられるような、涙が出そうな、そんな気持ちになる。
言葉にすることができなかった問いに、みんなで向き合い考えることのできる彼らが羨ましく、向き合えない彼らが疎ましく思う。
子どもの頃の自分がその場にいたら、きっとうまく言葉にできないまま考え続けていただろうこと。
大人になった私が、彼らに問いを投げかけられたら、きっと狼狽えてもごもごとありきたりなことしか言えなくなって、また考え続けてしまうだろうこと。
一つひとつ読むたびに、息を長く吐いて、心を落ち着かせる。私も哲学的なことばかり考えている子どもだったと思い返す。そして、今もずっと考え続けていて、たまに -
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発刊当初、初めて書店で見た時から、「これはきっと良い本だ」と思った事を覚えています。
なにしろ装丁に作り手の愛が溢れている。
それから3年ほどの月日が経ち、ようやく本書を開きました。
思った通りの素晴らしい本でした。
哲学研究者としての探究の深さを感じつつ、エッセイ調のため言葉選びの優しさや繊細さも魅力で、哲学慣れしていない人もこの本から哲学の面白さを味わえるのではないでしょうか。
著者本人の「世の中にうまく嵌まっていない」という告白が個人的にとても好きで、仲間を見つけたような安心感をくれました。
私も哲学対話の世界に足を踏み入れたくなりました。 -
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永井さんのこれまでの単著は全て読んでいますが、「この人にはどれだけの言葉の埋蔵量があるのだろうか?」と毎回圧倒されます。全く底が知れません。
本作で心に残ったのは、あとがきにあった以下の部分です。作家・建築家の坂口恭平さんが最近読んだインタビューで近い趣旨の発言をされていたので、自分の中で思わぬ共振を起こしました。
たった一言でも「これは!」という言葉に出会えれば人は生きていける、と。
『本を読むことも、対話の場をつくることも、言葉に出会うことだ。そこで起こること、起きていること、すべてを「わかる」必要はなかった。たった一言、たった一行、身体をつらぬく言葉に出会えれば、それだけで十分だった -
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「ことば」についてのエッセイ、と簡略化してしまうことが激しく憚られるほど、厚みのある、幾重にも「ことば」が積み上げられた、そんな一冊。
自分はインプット型だから、と半ば折り合いをつけていた私自身に、「自分のことば」を発見し、出会ってしまったそれにおそるおそる触れてみる勇気を授けてくれた。そう、誰かのことばを知るだけでは、不十分だったのだ。私が「私のことば」に出会うこと、出会うために必要不可欠である他者という存在、そこからまた生じる世界の奥行き。
ことばに支えられ、裏切られ、翻弄される私たちが、私たちのことばを手にして、他者にそれを手渡すとき、私とあなたの隙間にそれをおずおずと注ぐとき。希望 -
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学生時代は数式で生きてきた理系なので言葉が分からなすぎて読書をしてこなかったけど、世界がグレーだと思い始めてから、本を読んでモヤモヤを漂う時間に心を揺さぶられつつ落ち着かせる日々。土を耕してならすような感覚。
言葉が、他人が、
理解できないことがあるが、きっとそれは開かれた可能性ということなのだろう。何気ない他者の言葉の中に含まれる絶望や祈りや希望、もしくは虚無。当たり前のように普通に発せられる言葉の中にいかなる問いを見つけるか、そこに物語を続けるケアというのもあるのではないかな
永井さんの本は前半で問うことをウォーミングアップして、後半でどっぷり深海の中に引き摺り込まれて彷徨って漂う感じ -
Posted by ブクログ
ただ考えたい、って!!おぉ。世間では時間の無駄とか、生産性とか将来とか、そればかり言われるから、どうでもよいことばかり考え気味な私おかしいんかなって心配だったのでなんていうか気が楽になった。有名な哲学者さんがいいっていうなら、きっと許されるでしょ…って。ちょっと気が大きくなってる。
日記のパートはほんとに親近感湧きまくりで日常をすてきに文章にできるってうらやましいなーって思った。2から難しい言葉が出てきて、やっぱり賢い人が書いてるんやなーと我にかえる。
昨日、職場で私ともう一人だけディズニーのお土産クッキーがもらえなかった。さみしい。さみしくてごめん!これじゃないか…でも。何をどう思っても、正