永井玲衣のレビュー一覧
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【若き哲学者が考えるさみしさの正体とは】長年、わたしにはわからないものがある。それは、さみしさだ。さみしさとはなんだろう。友達とごはんに行った帰り、大きなプレゼンをやっと終えた瞬間、あてもなく街を歩いている時。わたしはきまって"さみしく"なる。しかしその正体が何者なのか、ずっとわからなかった。なんか最近寂しくない?と友達に話したことも記憶上ではない。だから余計にわからない。そしてわからないと、ひとは自分を誤魔化しはじめる。
コロナ禍では、世界がさみしさに覆われていた。やることがないから散歩する、本屋に行くのはok?、リモート飲みしようよ、毎日お酒を飲んじゃうんだよね。ひと -
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前半は「ただ生きているだけ日記」。これが面白い。思わず声を出して笑ってしまうことも。普段ならそのまま素通りしてしまうような(気にも留めなかった)何気ない出来事や不条理への感情を、こんなにも鮮やかに切り取ることができる感性と、巧みに文章化できる筆力に感心しました。まあしっかり哲学してる故の感性ということなのかもしれません。
後半はエッセイ。常に探求し続ける(考え続ける)とても謙虚な哲学者という印象でした。
「やさしさ」は「親切」とは違うという話はストンと腑に落ちました。サッカーの話はどこが真実でどこがふざけて書いているのか微妙だけれど、「サッカーは文脈のある全体性」と評するあたりは、さすがだな -
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地面から数センチの場所に漂う香水の香りのように、普段なんとなく不意に浮かぶけど簡単に忘れてしまうような、いつでもそこにあるけど強く意識しないと忘れてしまうような、そういうものについて書かれている
そういう考えや疑問の答えがほしいと思って読む人にはおすすめしない
そういう考えや疑問、記憶の「適切な保存」について書かれているから。
行間に自分の記憶が不意に立ち現れて脳がトリップしたり、はっきりと答えが示されないまま考えを巡らせる文章にふわりと眠気が襲ったりして読むのに少し根気がいった それも心地いい疲労やった
終盤は実際の経験についての「保存」が試みられていて、事実に目を向けることで一気に読めた
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Posted by ブクログ
本書にもあるように、「哲学」と聞くとやはり難しいものという印象はありますが、日常生活を送る上でふと心に浮かぶちょっとした疑問や問いかけなどを「手のひらサイズの哲学」として身近な存在として楽しむ事ができました。
おそらく特定の世代や対象に向けて書かれたものではありませんが、「考えることは楽しい」という根っこの部分や、それをワークショップなどで多くの人(特に社会に出る前の10代の若者)と共有したいという想いは、山田ズーニーさんの本や活動と通じるものがあるように感じました。
内容ももちろんですが、水中の透明感や涼しさを表現したような装丁が素晴らしい。電子書籍ではなくモノとして持っていたい一冊です -
Posted by ブクログ
哲学者である著者が書いたエッセイ本。文体がやわらかくて読みやすいのに哲学的な視点が散りばめられていて、題材も幅広く、読みながらたくさんのことを考えた。もっと考えたいと思った。問いを持つこと、対話すること、見て聴いて嗅いで体験すること、そしてその体験を保存しようと試みること、それを諦めずに続けてくれている人がいるということが安心感を与えてくれたし、私もそうしていきたい。
【読んだ目的・理由】哲学エッセイというジャンルが気になったから
【入手経路】買った
【詳細評価】☆4.5
【一番好きな表現】言葉と生きることを手放さないように決めたひとは、書かねばならない。(本文から引用) -
Posted by ブクログ
永井さんの言葉は断片的で、ふわふわと不安定な世界に漂いながらも、いつも光を伴って帰ってくる。
不安やストレスに立ち向かう方法や、考え方を変えましょうって内容の本は数多くあるけれど、
この本は一緒に向き合おうよ、みんなで奥底まで潜って考えようよって言ってくれている感覚で、
自分の思考や感情を否定せず両手で掬い上げて向き合える感じがした。
私も普段、駅で足を踏まれてイラっとしたこと、アイスの美味しさに感動したことなど日々ちょっとした事で感情が動くけれど、
そんな一つ一つの感情の機微を何だろう?何で自分はこんな風に思ったんだろう?って心の奥底を覗きにいくような感覚、すごく好きだった。心の奥行を広 -
Posted by ブクログ
永井玲さんの本を初めて読んだ。
一節のエッセイの中だけで、冒険しているみたい。
迷子になりそうになりながらも、あぁここに辿り着くのか、みたいな文章を書く。
ユーモアも素晴らしい。
そうだよ、考えるとは海の中に潜ってるみたいなんだ。苦しい時間の方がたぶん長くて、でも光が差したり、みたことのないものに出会える時があるから、次もまた潜るんだ。
その海が繋がってるって考えは、とっても素敵で、ロマンだ。
哲学って、どこかむつかしくて、遠い存在だと思っていた。自分で遠ざけてた。カントとか知ってるけど知らんしって。何言ってんだって。
でも、こんなに身近だったし、自分は哲学をしていた。ずっと隣にいたんだ