アレステア・レナルズのレビュー一覧
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いやぁ、きたね、これ。めっちゃおもろい。
事前情報なしで(+あまり期待せずに)読み進めましたが、いい意味ですごく裏切られました。これ、映画やドラマ、アニメにしたらとても合うんじゃないでしょうか。
序盤は大航海時代を彷彿とさせる冒険譚。と思いきやの急展開。そこからは物語の方向性を探りながら読み進める感じ。終盤の手前で全貌は明らかになるのですが、どこかどんでん返しがある気がして、結末を迎えるまでは半ば疑心暗鬼のまま。結局は、行儀良く、スマートに幕は閉じるので、杞憂に終わるのですが。。
序盤〜中盤までの不安と謎が蠢く雰囲気とは打って変わって、全貌が明らかになってからはドラマ性が高く、心揺さぶる熱い展開でした。そう思うと、序盤の海洋冒険小説的な雰囲気を引き立たせる修辞的技法は終盤で鳴りを潜めていたりと、構成含めよく練られていた作品なのかな。
物語の性質上、スッキリしない箇所もあるにはあるのですが(ラモスたちは生還できたのか、結局大建築物とは何なのか)、個人的にはその辺は全く気にならず、むしろ最後の余韻の残る締め方が美しくって、それだけでも満足できる作品でした。 -
Posted by ブクログ
ネタバレいやー、これは久々にやられましたわ。面白かったです。
時は19世紀、探検隊を乗せた帆船が北極圏を目指すシーンで幕を開けるこの作品。徹頭徹尾、主人公の目線で描かれていて、主人公と共に冒険を進めるうちに読者の視界も開けていく巧みな構成。
「あれ、これ、SF・・・?」と訝しみながら読み進めると、あっと驚く展開が待ち受けています。細かく章分けされていて、ざっと並べると
第1章:ふーん・・・
第5章:?
第6章:!?
第9章:これはまさかの「果しなき流れの果に」パターン・・・!?
第10章:!?
第11章:!!
第15章:・・・(ドキドキ)
第16章:えぇっ!?
第17章:戻ったぁ!?
第19章:これは伏線・・・?
第20章:ちょっと待てぇっ!
第21章:伏 線 回 収 やっぱり・・・
第24章:あわわわわわわ
第25章:これがメインということで良いんだな?良いんだな!?
第28章:結局そうなるのか・・・(泣)
第32章:えぇ・・・切ない・・・
第33章:や っ ぱ り「果しなき流れの果に」 か よ
てな感じで、視点も感情もジェットコースター状態でした(一部、極めて乱暴なメタファーですみませんヽ( ´ー`)ノ)。この雑な流れの紹介だけでもかなりのネタバレになると思いますので、「ネタバレ」欄にチェックしておきますねー。
SF慣れしている読者なら、この物語の真相については途中で薄々勘付くと思います。散りばめられた伏線が比較的わかりやすく、求められるSFリテラシーはそれほど高くありません。
むしろ、鴨がこの作品に関して最も感じ入ったのは、最高に面白いSF活劇であると同時に、その存在自体がSFという文芸ジャンルの自己批判たり得ていること。辛い現実を直視したくなくて、ついつい”現実から遠く離れた”SFの世界に飛び込んで読み耽ってしまう・・・そんな場合じゃないのに・・・という経験、SF好きなら誰もが身に覚えがあると思うんですよね。そんな時、現実を見据える勇気をそっと心の中に燃やしてくれる、それもまたSFの存在意義の一つなんだよなー、ということを、しみじみと思い出させてくれる良作です。 -
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ネタバレ自分が人間であることを、どうやって証明できるのだろう?
人間でありたいAIが人間らしさを獲得していく過程と、人が幼少期から他者との関わりの中で、協調性や倫理を身につけていく過程は、本当に決定的に違うのだろうか。
違いがあるとすれば、それは
有機物かそうでないか、肉体があるかないか、
その程度の差なのではないか。
作中で描かれる、体内に遺骨を抱え、歩くたびにカラカラと音を立てる描写は、その違和感を象徴しているように思えた。
医師であるサイラスは、最後まで患者の側に居続け、役割を全うする。
それは一般的に想像される「人間らしい優しさ」や「感情移入」から来る行動とは、少し違う。
感情に揺らがされることなく、ただ純粋に“医者”であろうとし続ける姿は、
本当の人間にはなれない存在の切なさを感じさせる一方で、私には「医者の中の医者」にも思えた。
余計な迷いや自己正当化を挟まず、役割そのものとして存在し続けること。
それは、“人間”である私からすると、どこか羨ましくもある。 -
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★5 ラストの感動は理屈じゃない! 海洋冒険小説と思いきや想像のナナメ上を行く衝撃SF #反転領域
■あらすじ
小型帆船の船医であるサイラスが乗船するデメテル号は、ノルウェーの沿岸部を航行していた。彼は航海に疲労しながらも、船員たちの怪我を治癒していた。さらに彼は趣味で小説を書き、娯楽のない船員たちの海上生活に好評であった。
船員たちはフィヨルドの裂け目を見つけると、目的地である大建築物を発見。しかし同時にこの情報をもたらした船、エウロパ号も残骸となって発見されてしまう。そんな中、強い波の揺れに襲われたサイラスは…
■きっと読みたくなるレビュー
★5 評判を聞いてた作品、予想通りおもろかったー
SFなのに海洋冒険小説ですか? しっかりと読ませるな~と思いながらストーリーを楽しんでると、第一幕が終わるあたりで衝撃の一文が目に飛び込んでくる。 はぁああぁ?
これからどんな展開になるんだろう?と思ってると、意外や意外、舞台は微妙に変化しつつも冒険小説の体は変わらないのです。その後も丁寧な筆致で読ませてくれる冒険譚なんですが、やっぱり奇妙な変化が起こり… といった物語です。
冒険小説ではキャラクターの繋がりが重要ですよね、本作でも例外ではありません。
まず語り手であるサイラスとラモス大佐や船員モートロックとのやり取りが地味に熱いんすよね~ いきなり大手術シーンから始まり、緊張感があるんですよ。ただし船員それぞれ優先事項があるってのも興味深く、もうこれだけで面白い。
そして何と言っても気になる女性、エイダですよ。サイラスを覚醒させるようなセリフを投げかける謎のキャラ。なんとなく想像するに見た目は勝ち気な美人、どんなことでもクールに知的にこなしていくって感じ。
彼女とのからみは、序盤は何のことかさっぱりわからないんだけど、終盤になると激アツなんですよねー! まぁ最後まで意味はよくわかんないんだけど…、この情熱的な関係性を読んでると、体の中から元気が湧き出てくるんすよね。本作一番の読みどころです。
そして物語が進行するうち、ストーリーの枠組みが明確になってきます。序盤で想像していた舞台からは100倍くらい飛躍することになるんですが、実は描かれているのは同じで「人間ドラマ」なんです。
人と直接的な繋がりが希薄になったと言われている現代、これからもさらに進むことになるでしょう。しかし最後の一章があまりに胸をうつんです。感動ってのは理屈じゃないですね、私はひたすら涙が止まりませんでした。
■ぜっさん推しポイント
普段ミステリーばっかり読んでると、自分でも面白い謎解きネタを考えちゃうことがあるんです。アレをテーマに、とある設定・切り口でストーリー展開させてみると、面白いミステリーがつくれるんじゃないかと。
まさしく本作なんです、やられたー
やっぱり世界は広い、しかも3年前の2022年に出てるんですね~。速いってのは正義ですよ。そしてアイデアの奇抜さはもちろん、冒険小説の読み物としても高品質ってのがスゴかったわ。そうそうビジネスでも同じですよ、速さと品質は重要なんです。肝に銘じたい。 -
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SFってやっぱ面白い、と思わせてくれる16編と盛りだくさんの短編集。文庫も物価高騰のあおりを受けてこんなに高くなったか・・・と思いつつ買ったが、元は取れたと思う。
どの作品も味わい深いのだが、意識を持ったAIは物理的につながりさえできれば、ハード(シャーシ)を乗り換えていけるって設定が興味深い。人間が求めてやまない不死不老をAIなら実現できるという夢。
究極は「罪喰い」の世界で、人間はみな仮想空間(天国)に旅立ち、荒廃した地上にはロボットだけが残る。遺していく記憶を選べるってとこが業だ。
一方で、製品が成長したり、メンターがいたり、ロボット同士のいじめがあったりって世界の作品もあって、自意識を持つようになって社会のなかで生きていこうとすると、AIも人間も変わらないのはそうだよなと思う。
生存権をはじめAIの権利が認められる日が来るのだろうか? -
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ネタバレ北極にある古代に製造された謎の巨大建築を探索するために向かう一向。しかし途中にトラブルがあって探検隊は全滅する……。目覚めた主人公は少し先の時代の蒸気船に。同じ一向に同じ展開。ループする謎とは?巨大建築の正体とは?
冒頭の古代遺跡を目指す海洋冒険SFの読み味は面白かったものの、随所にある不穏さや建築物の正体を予想しながら読んでると唐突なループ突入で唖然としてしまった。当初は帆船を舞台にした海洋冒険SFだったのが、スチームパンクめいた蒸気船、地球空洞説SFのような飛行船、そしてスペースオペラの宇宙船と移り変わっていく。この舞台設定そのものがSF近代史と言っても過言ではなく、馴染み深いものであると同時にメンバーの顔ぶれや謎の巨大建築が変わらないことの異常性が浮き彫りになってくる。
ぶっちゃけた話、主人公の医師であるサイラス・コード=単なるコードでありプログラムに過ぎないというネタはそこまで響かず。舞台が入れ替わっていくことで『マトリックス』のような仮想現実であることは想定内だったわけだし、そこからエイダの「残酷な真実」というのもあらかた想像がついてしまった。ただ、中盤をかなり過ぎるまでこのネタをだいぶ引っ張ったわりには中弛みすることなく読み進められたのは素晴らしいし、全体的なリーダビリティの高さを感じる。そしてループを重ねたことによるメンバーの一人であるラモス大佐との信頼関係と、脱出のためにデュパンを犠牲にしなければならなかったという機械的な残酷な選択。これが人間性に悩むコードの主人公の下した機械ならではの選択というのが面白く、それ自体が医学で言うところのトリアージやトロッコ問題に近しいものがあるというのもいい。そこからのラモス大佐との対立など、ドラマティックな展開は後半の救出劇で全て描くという独特な構成ながらもクライマックスの熱量は凄まじかった。
そしてラスト。船そのものである主人公は脱出することができず、帰還するラモス大佐の可能性を信じるしかないという落とし所もとても良い。ヒトか機械か?の二律背反の中で、信じるという人間的な選択をすることに味があるのだ。そして残された時間を限りなく引き伸ばしてのエイダ・コシルとの人間的な仮想空間での日々。このラストはとても美しく、感じ入ってしまった。ネタバレ厳禁!であることに間違いはないものの、それに相応しい衝撃は受けなかった代わりにエンタメとしては文句なしに面白い一冊だった。
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ネタバレ物語に救いを求める人間くさいAIの話
ループものだけど、ループごとに少しずつ設定が変わる。でも、物語の根幹をなす構造は同じらしいっていうのが、読み進めるうちに少しずつ分かってくるのが面白い。構造を読み取ることに自然と誘導されるのがいい。
ところどころ印象残るフレーズが後々の伏線になる
「いつも雷が鳴っている・・・・・・」
「船はささやき声がみせる夢」
主人公は宇宙船に搭載されたAI。ループは危機的状況に陥ったAIが現実逃避で作った夢だった。本来の目的を思い出したAIは自分を犠牲にして人間を救う。最後は切なくもいい終わり方。人間に近づけて作られたAIは物語に救いを求める。
結局大建築物がなんだったのかは分からぬまま。 -
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ネタバレLed ZeppelinのDazed and Confused(幻惑されて)を聴いているような感覚になる。
文章に幻惑されるというのは、変な表現だが、物語の途中まで「?」の連続である。
語り手の医師サイラス=コードはAIサイラスのコード、つまりはプログラムであり、AIが作った物語に読者もだまされる。SFファンではないので、初めて読むタイプのSF小説だった。400頁の240頁まで来て、やっとSFらしい宇宙船が登場し、308頁から徐々にAIである種明かしが分かる。
それでも、尚、人間らしい葛藤に悩まされるサイラス。
そして、ラスト。夢のようなプリマスの情景は、夢なのか現実なのか、最後まで物語に幻惑される。見事。