鳴庭真人のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
不肖鴨、長年SFを愛読してきて、この文学ジャンルはある側面において「アイディア勝負」なところも強いので、インパクトのある新規性の高いアイディアをネタにするのはそろそろハードルが高くなってきているのかなー、などと感じておりました。
しかしながら、いやいやどうして。まだまだ面白いアイディアが出てくるもんですねー。その名も「反ミーム」。
このアイディアの出所である「SCP財団」なるサイト、鴨は不勉強でお恥ずかしながら知らなかったのですが、とある研究団体の報告書の体を借りた創作ホラー投稿サイトみたいなもので、まぁ要するに「洒落怖」的なネタサイトですね。その中でも評価が高い作品をSF小説として再構築した経緯があるそうです。
この作品のテーマでもあり重要なガジェットでもある「反ミーム」という概念が面白くて、それを説明すること自体がネタバレになってしまう類のモノなのでここでは省略。ただ、こいつのせいでストーリー展開が複雑となり、かつ登場人物の関係性や時系列の把握も難易度高めになるので、これまでの読書経験に照らしても次の展開がどうなるか予測不可能なところが、お化け屋敷的なホラーテイスト満載。出所の特殊性もあって、ある程度のとっつきにくさは否めませんが、読んでみて損はないと思います。
ただまぁ、ネタが面白いからストーリー全体も面白いかというとそこは読み手の好みの問題で、鴨個人の印象としては、後半のクライマックスシーンが急に抽象絵画のような解像度になってしまって、カタルシスは感じるけど、うーん・・・といったところ。
ネタ一発が勝負を決めることもあるSFという文学ジャンルならでは、の作品なのかもしれませんね。 -
Posted by ブクログ
むっず。
なんとなく話は分かりましたし、面白かったのですが、とにかく難しいですね。
翻訳もの特有の読みにくさもあるように感じました。
でも、反ミームっていう発想が面白かったです。『領怪神犯』にも、本作でいう「反ミーム」的なものが出てきましたが、それをめちゃくちゃ大きなスケールで深掘りしまくったお話という印象でした。
本作はSCP財団を源流とした作品のようです。私はこの存在を知っている程度の見識しかないのですが、たしかSCP財団ってホラーに分類されるコンテンツだったかと思います。
となると、本作はホラーになるのかもしれませんが、読んだ印象としてはどちらかというとSFに近いのでは無いかと思いました。
スケールの大きさはまさにSFです。
少なくともホラーでは無いかなぁと思いました。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ存在を知覚できない、覚えていられない反ミームの性質を持つアノマリーと戦うscpSF
序盤は面白かった。異常な現象の断片を通して何か巨大な悪意を持つアノマリーの存在を感じさせるやり方。
ここから期待していたのは、断片がだんだん集まってきて次第に敵の存在が明らかになり、対峙する。より具体的な話になるのかと思っていた。
だが実際は物語が進むにつれて抽象度が増していき、ぼんやりした形で終わった。反ミームという設定上、詳しく書かない/書けない方が良いということなのかもしれないが、それだと小説としての面白さに欠ける。
あと作中に出てくる機密文書などに黒塗りで隠されている部分がある。このやり方はネットで発表する形式なら有効だと思うが、小説でやるとなんかアンフェアに感じる。そこを言葉で書いてこその小説というかね... -
Posted by ブクログ
・ケン・リュウ編「金色昔日 現代中国SFアンソロジー」(ハヤカワ文庫SF)は「折りたたみ北京」に続く中国SFの第2弾である。登場人物等、さすが中国である。カタカナでではなく、漢字の名前が多い。ま づこのことに感心してしまつた。それほど私が中国とは無縁の読書生活を送つてゐるといふことである。さういふ内容の作品もあればさうではない作品もある。実に様々である。「本アンソロジーには、全部で十四名の作家による十六篇の作品が収録されて」(「序文」12頁)をり、「作品渉猟の場を拡大する方向に目を向けて」(同前)編まれたといふ。ただし、「本プロジェクトは、中国現代SFの代表的な作品を集めるという意図は」(同13頁)持つてゐないといふ。私にはいかなる作品が「中国現代SFの代表的な作品」か分からない。「中国SFと呼びうる作品の多様さと中国SF作家界の雑多な構成」(同前)といふことは、中国SFといつたところで、決して一つにくくれるものではないといふことなのであらう。
・表題作宝樹「金色昔日」はおもしろい作品であつた。私は現代中国の歴史を知つてゐるわけではないが、 それでもこの作品が現代中国の歴史をさかのぼつてゐることは分かる。主人公の「いちばん古い記憶はオリンピックの開会式だ。」(222頁)といふのが北京五輪であれば、彼は私達の同時代人であると言へる。 「三年生のときに感染症のSARSが流行し」(226頁)た。次にサダム・フセインやビン・ラーディンが出てくる。例の9・11もある。かうして様々な出来事があり、ゴルバチョフがソ連邦を作り、「?小平の計画経済改革が失敗し、経済は悪化の一途をたど」(243頁)る。さうして共産党内部抗争から天安門事件が起きる。主人公は学生側の指導部に加はるも、最後は軍隊に掃討される。……ここまで書けば十分であらう。この作品は歴史を改編しつつさかのぼつてゐる。従つて、最後は日独伊の三国同盟対米ソ同盟であ り、この中国側の動きとして国共内戦と国共統一戦線による抗日闘争である。この間に幼なじみの恋人が登場する。この女性の運命は歴史に弄ばれてゐる。最後は日中戦中に主人公に会ふことかなはず死ぬ。「ある意味で本書の作品中最も中国的な物語であ」(ケン・リュウ解説218頁)り、「人民共和国の歴史を知れ ば知るほど、この物語の意味もはっきりと見えてくる。」(同前)といふ。私に見えたものが宝樹の見たものであるなら、これが中国国内で発表できるのかと思ふ。「最初の公式な出版が英語版と」(同前)なるさうである。原典には"No Chinese publication"とある。中国語版なし。訳者はケン・リュウである。「公式な出版が英語」であるなら、非公式な中国語もあるのであらうか。中国国内で出せないから英語版を出したのではないのか。中国の現状を見る限り、危険を顧みずに敢へて出版するとは思へない。宝樹はいかなる人かと思つても、フリーライターであるらしいとしか分からない。web上 にもこれ以上はなささうである。この人、中国で現役の作家としてやつてゐるのだらうか。天安門事件や文革を描き、?小平の経済改革を失敗といふ。かういふことが許されるのなら、中国は今少しまともな国にな つてゐさうでる。しかしさうではない。あくまで習某の中国である。かうして日本語版が出るからには、この人の現在を心配する必要はないのかもしれない。もちろんこれは例外的な作品である。本書は普通のSFばかりである、とは語弊があるか。しかし、ここに様々な傾向の作品があり、様々な内容の作品があると知れる。おもしろい作品集であつた。 -
Posted by ブクログ
近年スマッシュ・ヒットを飛ばし続けている現代中国SFのアンソロジー、2019年に発売された「折りたたみ北京」に続く第二弾が満を侍して発売。SF者の期待感を表すかのような分厚さ。「折りたたみ北京」の1.5倍ぐらいになっている・・・(^_^; 早川書房さん、紙の文庫本は上下巻に分かれても構いませんので一冊あたりの厚みを抑えていただけないものでしょうかね〜。紙の文庫本にとって、「携帯性」ってとても重要なポイントだと思うんですけどね〜〜。
閑話休題。
一通り読んでみて、「折りたたみ北京」を読んだ時ほどの衝撃は、正直感じませんでした。読むこちら側の期待値の違いかもしれません。「よーし、面白いSF読むぞー!」と鼻息荒く読み始めたら、肩透かしを食った感じ。SFというよりも、「幻想小説」または「実験小説」といった趣の作品が多い印象です。
ただ、面白くないわけではありませんので念のため。SF風味は薄めかもしれませんが、ひとつの小説のとしての完成度はどれも高く、読後感は良いです。これ、中国の商業作家たちが、クロスオーバーにレベルの高い作品を輩出し続けている、ということですよね。中国の文壇は今、とてもエキサイティングな状況にあるのだと思います。SFの枠に囚われることなく、もっと読まれても良い作品集だと思います。
鴨的お気に入りは、劉慈欣「月の光」、宝樹「金色昔日」、張冉「晋陽の雪」あたり。いずれもSFとしてレベルが高いです。そして、やたらとインパクトがあったのが馬伯庸「始皇帝の休日」。「どこの野崎まどだよ」とツッコミを入れたくなる斜め上のぶっ飛びぶりで、どのような心構えで読めば良いのか最後までよくわかりませんでしたヽ( ´ー`)ノ
いやー、相変わらず肩幅広いですねー。中国SF、当たり外れはありますが、この先も引き続きチェックしていきたいです。