キムチョヨプのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ読書ノート
作品:『キャビン方程式』
⸻
P116
「ローラ。あなたがいなくなったら、私はとても悲しいと思う。あなたを愛することは、私にとって幸せなことだから。でも、だからといって、自分らしくなることを諦めるわけにはいかないの。自分らしくあることは、人生をかけた冒険だから。」
感じたこと
この言葉が心に残ったのは、誰かを愛することと、自分自身でいることは両立できると感じたから。
大切な人がいると、相手のために自分を変えたり、我慢したりすることもある。でも本当の意味で相手を大切にするには、自分自身の人生も大切にする必要があるのかもしれない。
「自分らしくあることは、人生をかけた冒険」という言葉から、自分を探し続けることの難しさと、それでも進んでいく強さを感じた。
⸻
『プレスシャドー』P147
「どうして私を蘇生したの?」
感じたこと
生き返ったことへの喜びではなく、最初に出た疑問が「なぜ?」だったことが印象に残った。
出来事そのものよりも、その裏側にある「なぜそうなったのか」「自分はどう存在するのか」という葛藤が感じられた。
人の心の奥にある迷いや切実さに心を動かされた場面。
⸻
『キャビン方程式』P283
「また、同じ時間を記録はできなくても。一緒に生きていくことはできそうだった。」
感じたこと
主人公の切実な思いを感じた。
過去と同じものを取り戻すことはできなくても、それでも一緒に生きていく道を選ぼうとする気持ちが伝わってきた。
「同じ時間」ではなく「一緒に生きる」という言葉に、失ったものを受け入れながら、それでも相手を大切にする覚悟を感じた。
⸻
『キャビン方程式』P306
「そうだった。姉さんはこの方程式を見たかったんだよね。私たちが今、全く違う風景を見ているんだということも。姉さんを解き放ってあげるべき時が来たのだった。私たちの世界はある時別々に別れてしまったのだと認める時が。」
感じたこと
大切な人との関係が変わってしまうことを、受け入れる瞬間が描かれているように感じた。
嫌いになったから離れるのではなく、相手を大切に思ったまま、別々の道を認める。
「解き放つ」という言葉から、愛情とはそばに置いておくことだけではなく、相手の人生を尊重することでもあるのだと思った。
⸻
全体を通して感じたテーマ
この本で心に残ったのは、
「大切な人を愛しながら、自分自身の人生も生きること」
というテーマ。
人との関係や時間は変化する。
ずっと同じ形で続くものばかりではない。
それでも、過去の大切さを否定する必要はなく、変化した関係を受け入れながら前に進むことができる。
この本は、愛すること・失うこと・自分らしく生きることについて考えさせられた。 -
Posted by ブクログ
私は宇宙が怖い。もし放り出されたらどうしていいか分からない(当たり前)。上も下もない無重力空間で地球を見失ってしまったら、もう二度と戻れない。ただただ広い空間にひとり…怖すぎる。
地球外生命体がいる星に放り出されるのはもっと怖い。知識も経験も通用しない場所で赤ちゃんからやり直すようなものだ。その星の「当たり前」に順応できなければ即死……怖すぎる。
けれど得体のしれない怖さを感じる宇宙に、本作では温かさやノスタルジー、言葉にできない美しさを感じた。どれだけ願っても触れられないほど遠い場所に大切な人がいる。だからこそ生まれる物語があるんだなぁ。
なかでも私が好きなのは「スペクトラム」。
ヒジンが出会った景色や地球外生命体たちは、読んでいる私の頭のなかで静かに、けれど確かに存在していた。文字で読むからこそ広がっていく想像の世界はとても魅力的だった。映像化したら感じ方が変わりそうでそれはそれで楽しみでもある。
SF作品も海外文学もほとんど読んだことがなかったけれど、本作が良かったから他の作品も少し親しみを持って手に取れそう。 -
Posted by ブクログ
キム・チョヨプさんの読書エッセイ。
気軽に読み始めたら難解で哲学的。
キム・チョヨプさんの創作のルーツや、試行錯誤にも触れられていてSF世界の拡がりになるほどなるほどと思いながら読んでみたい本がどんどん増える。
ある分野で科学的で論理的な立場にある人も別分野においては差別的だったり非科学的な主張をしている、という指摘に、何故この人はこの分野ではこうなんだろうと疑問に思っていたことが腑に落ちた
キム・チョヨプさんのSF小説には切なさやノスタルジーを感じるけれど、彼女自身がテクノロジーの中での存在や普遍的な人間性を見続けていたい人なのかなと感じた -
Posted by ブクログ
ネタバレ『サボテンを抱く』『惑星語書店』『外から来た居住者たち』が特に好き。
『サボテンを抱く』
胸が痛んだ。パピラの「もういない」という言葉がとても苦しいし寂しい。
『惑星語書店』惑星語って文字は、音韻はどんなのだろう。異国の地にて母国語で話しかけられたために心を開く人というのを動画でよく見かけるが、その時のまるで友人に再会した時のような嬉しそうな顔が頭をよぎった。
『外から来た居住者たち』おいしいと感じられない、という感覚の理由が地球外星人だからという設定が面白い。ダヒョンと店長が美味しさを分かち合えた瞬間をこうやって見せてもらえて嬉しい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ韓国SFの新星、というよりも代表格と言って差し支えないぐらいの貫禄が出てきたキム・チョヨプ氏の本邦第二短編集。
一読しての印象は、第一短編集「わたしたちが光の速さで歩めないなら」と同様の、淡々としながらもしっかりとそこにある切なさ、それを乗り越えようとするほんの少しの勇気です。本短編集は、タイトルでも端的に表現されている通り、”この世界”に対するちょっとした疎外感と、そこから抜け出そうとする女性たちの姿を描いている作品が収められています。
この、「女性性と社会との関係性」というテーマに触れて、鴨がふと想起したのは、ジェイムズ・ティプトリー・Jr。本名アリス・シェルドンという、聡明で社会的にも恵まれた立場にあった彼女が、敢えて男性名のペンネームで綴った数々のSF作品は、21世紀の今読んでも相当に衝撃的な、性と社会との軋轢/衝突を強い筆致で描写しています。特に、女性が社会に感じる強烈なまでの違和感を描き出す筆致は、悲壮感すら漂わせています。
他方、キム・チョヨプ作品での女性キャラは、そこまでの「強さ」は感じません。むしろ、社会に対する爽やかなまでの「諦観」「疎外感」を感じさせます。アメリカ社会と韓国社会の土台の違いが大きな要素なのだろうとは思いますが、この差異に注目すると、SFというフォーマットを通して提議しうる課題とその表現方法の多様性に興味を惹かれますね。 -
Posted by ブクログ
2026 03/06
掌編小説。初めての韓国文学。『沼地の少年』『汚染区域』『最果ての向こうに』が好み。地球外植物に汚染されていく地球。人類なんて儚くて頼りない存在だな、としみじみ思う。植物の逞しさにはとうてい敵わない。なすすべもなく滅んでしまうのだろうか。
『みんなのココ』は一見無害そうに見える地球外植物ココに人類が魅了される。全人類が愛してやまない伴侶種ココ。静かな侵略って感じで恐い。
物悲しさと切なさに彩られた世界観に入り込みました。ノスタルジックな気持ちが湧き上がってくる話もあり、軽やかな文章とSFがとても相性が良いと思いました。
この著者の他の作品も読んでみたくなりました。