吉田知子のレビュー一覧

  • 変愛小説集 日本作家編

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    さまざまな形の「愛」が収められたアンソロジー。どれも一般の恋愛観からは少し外れた愛で、しかしそんな奇妙な愛こそが恋愛であるような気がする。どこか変でなきゃ恋愛なんてできないな、と感じた。

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    2019年09月14日
  • お供え

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    ネタバレ

     本書に収録されている『お供え』は、一見すると穏やかな中年女性の日常の中に、不可解で幻想的な事象が入り込む作品である。毎朝、主人公の家の前に花や菓子が供えられるという奇妙な出来事から物語は始まり、やがて彼女自身が「神様」なる存在に輿入れさせられる──つまり自らが“供え物”であったという構図が暗示される。これは単なるホラー的仕掛けでなく、日常と非日常の連続性を保ったまま読者を不可視の恐怖へと導いていく、極めて純文学的な手法だといえるだろう。
     では、作中で「神様」と呼ばれる存在は何を指しているのだろうか。具体的な姿も語りも持たないがゆえに多様な解釈が許されるが、もっとも明快な読みの一つは「神=家

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    2025年05月10日
  • 変愛小説集 日本作家編

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    岸本佐知子さんの編んだ書き下ろしアンソロジー、タイトルに惹かれてまず読んだ津島佑子の短編「ニューヨーク、ニューヨーク」が素晴らしかった。読みながら、読み終わってから、幾つものことを思った。
    「ニューヨークのことなら、なんでもわたしに聞いて。それがトヨ子の口癖だった、という」冒頭のセンテンスを読んで、わたしも数年前の夏に数冊の本を読むことで行ったことのない「ニューヨークのことはもう分かった」と嘯いたことを思い出す。そこには彼女がニューヨークを思うのと同じように個人的で特別な理由があったのだけど。
    その後に元夫と息子がこの世にいない彼女について語り合うことで明らかになり“発見”される、今まで知り得

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    2024年11月13日
  • 変愛小説集 日本作家編

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    ネタバレ

    12編のアンソロジー。
    どの作品も変愛の名に相応しかった。この一冊に密度濃く詰め込まれたそれぞれの変愛。愛と一口に言っても当たり前ながら1つも同じものはない。
    その中でも特に好みだった2つについて書きたい。

    『藁の夫』
    2人の間に嫌な空気が流れる、その始まりはいつも些細なことなのだと思い出させる自然な流れだった。あんなに幸福そうだったのに、藁に火をつけることを想像させる経緯、鮮やかな紅葉にその火を連想させるところがたまらなく良かった。

    『逆毛のトメ』
    シニカルでリズムのいい言葉選びが癖になる。小説ってこんなに自由でいいんだと解放して楽しませてくれた。躊躇なく脳天にぶっ刺す様が爽快だし、愚か

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    2022年04月21日
  • お供え

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    二ヶ月くらいかけてぼちぼち読み終えた 昭和50年代くらいの日本の田舎の空気がことこまかく描写されていて、その中で少しずつ違和感が増殖してゆくような作品群 ホラーではないが、悪夢的な世界 個人的には「海梯」が良かった なんともない落書きが増殖するかのようにふえてゆくのがよい

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    2020年07月21日
  • 変愛小説集 日本作家編

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    タイトル通り変愛を集めた短編集。

    「お、おう、そんなところに」「そんなのと」「え、何この設定」とか本当にそれぞれ変な愛ばっかり笑

    吉田篤弘目当てだけど、電球交換士が出てきていたとは。

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    2020年04月16日
  • 変愛小説集 日本作家編

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    「恋愛」ではなく「変愛」…変わった形の愛が描かれたアンソロジーです。
    面白かったです。
    ディストピア文学が大好きなので、「形見」が好きでした。工場で作られる動物由来の子ども、も気になりますが、主人公の子どもがもう50人くらいいるのも気になりました。色々と考えてしまいます。
    「藁の夫」「逆毛のトメ」「クエルボ」も良かったです。藁の夫を燃やす妄想をしたり。クエルボはラストは本当に名の通りにカラスになったのだろうか。。
    多和田葉子、村田沙耶香、吉田篤弘は再読でしたがやっぱり良いです。
    岸本佐知子さんのセンス好きです。単行本から、木下古栗さんの作品だけ再録されなかったようですが。
    表紙の感じに既視感が

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    2019年08月30日
  • 変愛小説集 日本作家編

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    いくつか読んだことがある作品も収録されていましたが、今までの愛に対する見方を思いっきり揺さぶられる一冊であることは間違いなし。
    どれもこれもお勧め?
    「韋駄天どこまでも」は漢字遊びの要素なので、編者も書いているように翻訳は超絶技巧が必要だなぁ。
    単行本にしか収録されていない作品があるそうなので、単行本も読まねば。

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    2018年07月21日
  • お供え

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    どれも不穏な作品。どれも設定が似てるように思うのは同じ頃に書かれたものだからか。気に入ったのは『迷蕨』『門』『お供え』。『迷蕨』と『門』はどちらも死者と生者が同じ場所にいて時間と空間が歪められ閉じる。どこへも逃れられない。こうやって百年歩いている。階段はもう決してみつからないだろうということだけだった。この文章でふたつの物語は閉じられる。伯母や祖母がいる。死者として。平穏ではない世界に主人公たちは絡めとられ、諦めてしまう。なんとも奇妙な読後感だ。『お供え』いつの間にか神にされてしまう初老の女性。女性のせいなのか、それとも土地のせいなのか。石を投げられる神様になんかなりたくないと思う。

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    2015年04月15日
  • お供え

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    怖いような、嫌な感じのような話の連続。しかも感覚でいえば水を吸った畳に寝ているような、映画でいえばJホラー前の昭和の角川映画のような雰囲気が漂っていて気持ちがざわつくが、それを求めて先へ先へと読み進めてしまう。

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    2025年05月31日
  • 変愛小説集 日本作家編

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    純文学作家の発想
     ひとつづつ評していく。

     川上弘美。未来SF。
     発想が陳腐だと思ふ。書きたいことを意識的に書いてはゐるが、予定調和的で凡庸から突き抜けない。
     人間由来の人間を工場で作らず、多様な動物由来の人間どうしが結婚し合ふ未来観(近親交配によるホモ接合型を減らすためだらう)。そこでの恋愛。
     厳密にいへば、人間と他種ではゲノムの相補性が少ないからありえない。遺伝子組換かもしれない。まあそこは目をつむることにしても妙だ。
     未来でも入籍といふ制度は残ってゐる。人間に本能の性欲が残ってゐるんだらうけど。結婚しない人や、核家族がどうなったかも書いてない。
     妙にSFが現実路線のわりには

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    2024年10月10日
  • お供え

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    2冊目の吉田知子。
    お供えだけは先に読んでいた。

    こちらは、わりと似たかんじのストーリーが多い気がした。
    迷蕨、海梯がなんとなく良かった。
    でもどれも怖い。怖いの強さはこの一冊はなかなか大きかった。生と死の堺も、夢と現実の堺も、過去と今の境も移動するうちに全て溶けていき、自分がとろとろと消えていく。やっぱり怖いし、この人の文は凄い。
    本人によるあとがきというか、読者へのメッセージが読めて得した気分。

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    2023年08月11日
  • 変愛小説集 日本作家編

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    普段、ほとんど読むことのない現代の日本人作家のアンソロジー。
    興味深く読んだ。
    もとは、深堀骨 の作品を読んでみたかったから手に取ったが、どれもなかなか良かった。ありそうでない話というファンタジーというか、不気味な話が多い。恋愛要素はどれも少なく見えるが、一応恋愛ものという括りらしい。

    一作だけ、多和田葉子の漢字の話はすでに読んでいた。

    特に印象的だったのは、
    本谷由希子、迫力とリアリティと奇想天外で面白かった。
    村田沙耶香、細かく書き連ねて積み上げるのがうまい。
    吉田知子、多分この中で一番好きなタイプの作家。
    小池昌代、切れ味がよい。
    星野智幸、描写がうまい。

    というかんじ。
    編者は岸

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    2023年03月22日
  • 変愛小説集 日本作家編

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    川上弘美さんの、愛した人の骨の話が、秀逸だった。自分には、強烈な作品もあったが、面白い企画だと思う。

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    2021年11月18日
  • 無明長夜

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    芥川賞を受賞した表題作、他6編。

     寓話(1966年)
     豊原(1967年)
     静かな夏(1967年)
     終りのない夜(1968年)
     生きものたち(1970年)
     わたしの恋の物語(1970年)
     無明長夜(1970年)

    巻頭、1966年のデビュー作「寓話」と、
    次の「豊原」は素晴らしく面白かったが、
    読者としてはページを捲るごとにトーンダウン。
    ともあれ、個人的に特に重要と思われる3編について。

    ■寓話
     偏屈な書家・桑木石道はカルト的な人気を誇りつつ、
     奇行で知られていた。
     年の離れた若い妻・裕子と、
     結婚前からの住み込みの家政婦・浜と共に
     静かに暮らしていたが、
     あると

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    2020年11月08日
  • 変愛小説集 日本作家編

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    恋愛でも偏愛でもなく、変愛。変な愛の短編集。変だけど当人たちにとっては大真面目。
    幻想小説を読んでいるときみたいな、いつの間にか背後にこことは違う世界の気配がぶわっと広がって迷い込んでいくような没頭感を覚える作品が多め。
    一部文章が合わなくて読みづらい作品もあったけれど、そこを乗り越えたらすいすい読めた。
    形見…川上弘美さん
    梯子の上から世界は何度だって生まれ変わる…吉田篤弘さん
    クエルボ…星野智幸さん
    あたりが好み。

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    2020年04月06日
  • 変愛小説集 日本作家編

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    恋愛ではなく「変」愛を集めたアンソロジー。 
    どこへゆくやら全くわからない。
    予想も付かない展開、意味さえわからなくなるけれど、なぜか読むのを止められない引力。
    奇妙な、強烈な印象を残す読後感です。
    面白かった。

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    2018年08月16日