内澤旬子のレビュー一覧
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「世界屠畜紀行」を読み終えた私に、akikobbさんから「次は『飼い喰い』を熱烈にオススメします!」とあったので紐解いた。なんやかんやで、ここまで遅くなったけど、安定の内澤節が、クセになりそうな読書だった。中毒にならないうちに撤退したいと思う程に。
屠畜工程に世界の誰よりも詳しくなった内澤女史は「次はその前の段階、種付けから飼育、売って食うまで全部体験してみたい」と理の当然の如く発想して実行に移す。もとは革製品を作りたいという欲望から此処迄来たらしい。その泥縄的人生は、私もわからないことはないけど、行動力とコミニュケーション力、楽天性で、人生の指針にはしたくないと思う。
馬の種付けなどは未 -
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「この本は、二〇〇八年一〇月から二〇〇九年九月までの一年間をかけ、三頭の肉豚を飼い育て、屠畜場に出荷し、肉にして食べるまでを追ったルポルタージュである。」
本の紹介としては、冒頭のこの一文に尽きるが、まあ壮絶である。当たり前のことながら、「豚飼養体験サービス」なんて商品が世の中にあるわけではない。自分で育てた豚の肉を食べたい、という企画を実現するために、各方面に説明し協力を仰ぎ、環境をゼロから構築するところから始めるのである。
実際、豚と暮らし始めるまでが長い!豚を提供してくれる農家を探したり、受精や出産に立ち会ったりと豚との接触もあるが、それと並行しての、豚を飼える物件探し、そして豚小 -
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『カヨと私』に続く小豆島でもヤギたちとの暮らし。
『カヨと私』には一対一の濃密な時間があったが、カヨが何度か出産しヤギが増えて、カヨパレス(ヤギ舎)もできてヤギ社会ができた。カヨだけではわからなかったヤギという生き物の生き方が見えて興味深い。内澤さん自身も、カヨ一頭の頃より人間として関わっている気がする。(カヨだけの頃は恋人同士のような感じだった。)
群れで暮らす生き物は、やっぱり群れの方が落ち着くんだなと思うし、人間が思っている以上にヤギどうしの関係は複雑で、ヤギも人間と同じく一筋縄ではいかない心を持っているのだなあと感じる。人間は食べたり使役したりするから、家畜が思考したり感じたりするとは -
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以前著者の「カヨと私」という本を読んだ。
都会暮らしを捨て、小豆島に移住してカヨというヤギと暮らす女性の話、だった。
今回の本はその続き。
それも、カヨを中心とした5頭のヤギ家族に、いかに食事を与えるか、
一年を通して取れる植物をカラーイラスト付きで紹介する本になっている。
ヤギの生態を詳しく知ることができる。ほのぼの。
著者は一年中ヤギのエサの確保に追われているような、、
本人はどうやって食べているんだろう。収入も、実際の食糧も。
そちらが気になってしまった。
色々大変なのだろうけれど、気楽に読める本。
四月/卯月嬉しや待望のご馳走を刈りとる
五月/皐月あおめき浮かれて噛め呑め若葉は甘露
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本を開いたとき、文字の大きさや行間から、さっくり読めそうな気がしましたが、結構時間がかかりました。
というのも、ストーカーが気持ち悪いんですよ、読んでいて。
直接暴力を振るわれたりしなくても、行動を監視され、一方的に「見ている」ことをアピールされ、何なら個人の秘密を不特定多数の人に公表されたりするのは、吐き気がするほど恐ろしい。
無視すればしつこくつきまとい、相手をすれば調子に乗る。
しかし、直接の被害がなければ警察は動かないし、誰かに相談しようにも巻き込んでしまうわけにはいかないため、うかつに相談に乗ってもらうわけにもいかない。
さらに、引かれてしまったり、「あなたにも悪いところがあった -
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生き物がどう殺されていくのか知りたくて読んだ。
主題としては「なぜ日本では屠殺業を営む人が差別されているのか、他の国でもそうなのか」というルポ。
私自身は「人間に殺されて可哀想だな、でも私も肉好きだしな…」という想いはあり、ただ屠殺業に従事する人に対して残酷だとか感じたことは一度もない。本書が書かれてからだいぶ時間も経っているから、差別意識も少しずつ無くなってきているのではないかと思うけど。
家畜がどういう風に私たちの目の前に肉として運ばれてくるのか全然知らなかったので、本書はイラスト付きでわかりやすく解説されているためとてもイメージしやすかった。自分が読んできた本の中でも珍しいジャンルなの -
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読もう読もうとずっと先延ばしになってた本。
千葉に土地を借り、家を修繕しながら、豚3匹を飼って、
肉にして食べるまでの1年間の緻密なレポ。
今まで読んできた内澤さんの本の中にもこの時の話はたびたび出てきたが、
『身体の言いなり』『捨てる女』と並行して、豚を飼う生活があったのかと思うと驚く。
これまで読んだ本を読み返してみたらまた発見がありそう。
温度の変わらない淡々とした文章の中に、
ハプニングやら養豚業の内情やら豚の可愛さやらが書かれている。
内澤さんの凄さは実際に行動してしまうことだけど、
豚との生活が半年程度だったのはなんだかもったいない。
短期間の中で得た、圧倒的な経験の濃さ。
なのに -
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・私が食べているお肉が生きている動物からどのように作られているのか
・屠畜場の重要な役割
動物には病気や不衛生な個体がおり安全に屠り食肉にするには技術や設備が整う屠殺場が重要な役割を担っている。日本で獣畜(牛豚馬羊山羊)を勝手に解体してはいけないのも食中毒や病気の蔓延を防ぐためである。ただ少し前の沖縄では羊と山羊は捌けたらしい。
・屠殺やその職に関わる労働者に対する国毎のイメージや考え方
面白いなと思ったことが国や宗教によっては屠殺にとても肯定的な考えがあること。
例えばバリのヒンドゥー教徒の考えにお供えとして殺された植物や動物は位が上がり天国に行けたり生まれ変わったらより -
購入済み
面白かった
養豚のドキュメンタリーだと思って読んだら
ドタバタ奮闘記だった。
そういう意味では期待外れだったかなと思うけど
物語的な面白さで一気に読んでしまった。 -
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筆者がモンゴルにて、羊を目の前で解体され振る舞われたことをきっかけに「屠畜」に興味を持ち、海外と国内の屠畜の現場を回ったルポです。文庫で450P以上と長いですが、各国の屠畜を通じて文化人類学、歴史、動物の情動、宗教観、日本特有の差別の構造にも触れ、興味が途切れることなく読めました。
オリジナルの単行本は2007年に発表されてますが、それ以前にも屠畜・屠殺を題材にした本は多く出版されています。しかし屠畜をこのようなポップな装丁、感性、文体で本にしたことは凄いと思います。当時話題になりましたし、多くの人の価値観への見事なカウンターとなったのではないかと想像します。
文体および文中の著者の振る舞 -