マルクス・ガブリエルのレビュー一覧
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「あらゆるものを内包する存在」としての世界は存在し得ない。
世界とは、無限に存在する事物、そして、それらに連関する無限の意味の現れ方なのであり、「単一の何か」ではあり得ない。
私自身が科学主義に陥っていたことに気づかせてくれた一冊。
科学主義では、一切を自然と見なし、そこに精神は存在しなくなる。ひいては、人生の意味も失われてしまい、虚無に至る。
しかし、世界とは科学で観測できることがすべてではないのであった。非科学的と退けられがちな宗教や、科学主義では意味を持ち得ない芸術などは、それぞれの対象領域で意味を持つのであり、意味を持つ以上それらは現に存在しているのである。
人間も、現に存在している以上、無限の意味の現れ方を有しており、それを人間自身が意識することで自身が存在する意味を千変万化させるのである。
人が存在する意味は、結局のところ、生きることなのであっあ。 -
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ネタバレ科学の考えというのは、原始的な宗教のようになってしまいました。
こうなると、もう真正の迷信です。我々はこうした科学主義の
「科学の進歩が人類を救う」という迷信と闘わなければならない。
仮にガン撲滅の日が近いとして、それならなぜ我々は未だに飛行機に乗っただけで中耳炎にかかるのか?
中耳炎が解決できないのにガンはなくせるなんて、どう考えてもおかしいでしょう。
本書中にある内容だが、まさに同意する。
ガンとは事故的な物を除いては老化現象、つまり死へ向かうまでの過程である。
ガンが克服できる、という事はすなわち死を克服できる、ひいては自然現象を人間の力で変える事ができる、と言っているのと同義である。
このような情報に惑わさらないために学ぶメディアやSNSではなく、書籍で学ぶ姿勢が大事である。
インターネットが見ず知らずの愚者の推奨情報を流し、それに支配されている、という点も同意できる。
私たちは見ず知らずの人が作り出したネットの情報を安易に信用し過ぎている。 -
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コンピュータは思考するか?
人間の脳と何が違うのか。
人間はどう感覚し、どう思考しているのか?
実に興味深い。
文章も平易、というか、ピンとくる、というかわかりやすい、というか、
頭に入ってくる。
自分は脳の働きに興味があるんだなあ、と思う。
しかし、、
情報量が豊富すぎて、結論、というか、著者が何を言おうとしているのかが、
本全体としては入ってこなかった。
これは斜め読みの欠点と、結局は私の理解不足。
ただ思うのは、
コンピュータが思考のまねごとをする、というのであれば、
人間も同じ部分があるような気がする。
ただ人間は生き物だから、理屈にない感覚、肌感覚、肉体的感覚で、
衝動的に思いもよらぬことを考えたり行動したりする、ということではないか。
コンピュータにはそれはないはず。あったとしたらそれは暴走か。
基本は人間もコンピュータ同様、学習して少しずつ思考のレベルを上げる。
赤ちゃんのそれと、63歳の自分の思考は明らかに違う。
この積み重ねはコンピュータにも可能な気はする。
ただ、それ以外の部分を人間は持っている、ということではなかろうか、
ガブリエルの言ってることと違うかもしれないけど。
なぜ世界は存在しないのか、「私」は脳ではない に続く三部作の完結作。
二つ、読んでたかどうか、、
まえがき
序 論
第1章 考えるということの真実
無限の複雑性/考える? それはいったい何だ/考えることができるのは人間だけではない/宇宙の範囲/アリストテレスの感覚〔Sinn〕/コモンセンスは時に感覚的/「感覚〔Sinn〕」の意味〔Sinn〕、あるいは思い違いの仕方あれこれ/宇宙に亡命し、そこから眺めているのは誰だ/すべての対象が物なのではない/赤い蓋は(現実に)存在するか/思考は神経の興奮ではない/真理以外の何ものでもない/世界はお望みのままに/フレーゲの「思想〔Gedanke〕」/意味と情報、そしてフェイクニュースのナンセンス/私たちの第六感
第2章 考えるという技術
地図と領土/コンピューターは中国語ができるか/写真はクレタ島を覚えていない/一匹のアリが砂の上を這いまわることは、なぜウィンストン・チャーチルと無関係なのか/インターネットという神/文化の中の居心地悪さ/感情的知性と、記号のデジタルジャングルに隠された価値/「機能主義」という名の宗教/思考はタバコの自動販売機ではなく……/……心はビール缶の山ではない/ステップ・バイ・ステップで脳をぺースメーカーに?/技術という理念、あるいは、どうやって家を建てるか/総動員/社会はビデオゲームではない/機能主義のアキレス腱
第3章 社会のデジタル化
論理的でしょ?/集合とのピンポンゲーム/いずれすべてがクラッシュする/そもそもコンピューターにできることはあるのか/ハイデガーのつぶやき/奇跡も多すぎると不安になる/「完全なる用立て可能性」の時代に/『サークル』に捕まった?/ヴィンデンへの寄り道/意識一つ、テイクアウトね/ここでは誰が問題を抱えているのか
第4章 なぜ生き物だけが考えるのか
ヌースコープ/魂とカードボックス/「さあ、来い、古箒!」/照らし出された脳/意識ファースト/内、外、それとも、どこでもないところ?/湿っぽくて絡み合った一個の現実
第5章 現実とシミュレーション
空想はスマホと出会う/避けられない「マトリックス」/追 悼/ホラーとハンガー(ゲーム)/美しき、新しき世界/あなたは目覚めているのか、それとも、夢と独り言の中に囚われているのか/あなたはオランダを知っていますか/物質と無知/現実とは何か/どっちつかずの現実/魚、魚、魚/つかみどころのない現実の変動幅/カエサルの髪とインドのマンホールの蓋とドイツ/フレーゲのエレガントな事実理論/私たちの知の限界を超えて/思考の現実は頭蓋基底のレッスンではない/マッシュルームとシャンパンと思考‐思考との違い/人間は人工知性だ/人間の終焉
本書のおわりに
謝 辞
原注
文献一覧
語彙集
人名・作品名索引 -
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考えることの重大性を様々な角度から検討している。前2作とも関連するが必須ではない。
問題意識の一つに人工知能の万能性への懐疑がある。人間性、生きることを取り戻す試みだ。思考とチューリングマシン(あたかも思考しているように思える)は位相が違う。
また、より大きな文脈としては、社会構築主義と科学至上主義への反駁がある。わかりやすく言うと、この世は有意味であると言う主張だ。
プラトン、アリストテレス、カント、ウィトゲンシュタイン、フーコー、ボードリヤール、サール、ブランダム、クワインなどが縦横に引用される。本書で最も重要なのはフッサールだろう。また、SF的な映画、小説の引用も豊富だ。
リルケの詩の紹介は中でも最も印象的な部分だった。また、ゲーテのファウスト博士の嘆きを理解できたのも大きかった。p340 -
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ネタバレはじめに
1戦争、ニヒリズム、耐え難い不平等を超えて
エマニュエル・トッド
現代世界は「ローマ帝国」の崩壊後に似ている
・私たちの生活を変えるでしょう。存在しなかったら、私たちはより悪い状況におちいっていたでしょう。
・人類には「歴史」の感覚が必要。
・私たちは謙虚でなければいけません。
・長期的な視点で物事を考えなくなりました。「自分たちがどこから来たのか:「何を生き延びてきたのか」「何を成し遂げてきたのか」といったことを考えるのをやめてしまいました。
・ある種の健忘症のようなもので…ショックが容赦ないほど大きすぎたのでしょう。…ショックが大きすぎました。そのため、私たちはかっての自分との接点を失ってしまったのです。・先進国の出生率の低さは本当に恐ろしく、…気候変動よりも恐ろしく感じています。・・・人間の知性の低下にもつながるからです。
・人は知性の担い手です。
・歴史は続いていくからです。人間の歴史はすべて、崩壊と生き残りの連続です。
・「民主主義は存続するのか」という問いに集約するのは、私には一種のジョークに聞こえます。
・・・死亡率の上昇は本当に恐ろしいことですし、西ヨーロッパでは、生活水準が下がり始めています。たくさんのネガティブなことは指摘できます。知性の低下も問題です。
・人間は人間で、火の発明、農業、街の発明などの偉大なことを、成し遂げてきました。
フランシス・フクヤマ氏
「歴史の終わり」から35年後 デモクラシーの現在地
・リベラリズムは国によって捉え方が違います。
■全地球規模で起こり始めている「分断」
・今の世界には、新たな分断があります。
・われわれが目にするのは、多極的な世界です。
・米国の覇権国家としての役割が戻ることは決してありません
・力は分散されるでしょう。今後直面する課題ごとに、異なる同盟関係が形成されて行くことでしょう。
・歴史は単に繰り返したりはしません。
・生成AIの技術は、平等を促進するかもしれません。スキルや教育水準が低い人にとっては大きな力になるかもしれません。生成AIがどのようなインパクトをもたらすかについては、まだわからないことの方が多いのです。
・とても重要な人間の欲望とは「自己決定の欲望」です。
つまり、自分の意志で選択できる状態のことです。その意味では、創造性とか表現とも言えるでしょう。
2「テクノロジー」は、世界をいかに変革するか?
スティーブ・ロー
技術という「暴走列車」の終着駅はどこか?
Q.(聞き手:五十嵐大介)一般の人たちが普通に利用することについて、人々の生活や教育、仕事の向上に役立つのでしょうか?
・二つの立場があります。
一つは、「AIはインテリジェント・アシスタントとして役に立つ」という肯定的な立場。もう一つは、「自動化された技術は、人の仕事を奪ってしまう」という否定的な立場。
・人間の業務とは、技能の束なのです。
・人と接するような立場では、いろいろな技能を組み合わせることも求められます。
・長い年月をかけて行われてきた仕事が自動化されていくのは、今後さらに進んでいくでしょう。
・農業を例に挙げれば、世界中で―とりわけ先進国ではー20世紀初頭の農業従事者数のわずか数%の人たちによって、当時よりもより多くの農産物を生産しています。製造業でも同様です。
・雇用数は減っていますが、生産量は増えています。
・AIツールを使ううえで、注意すべきことは、「信用しすぎるな」「みちびかれても、支配されるな」と言うことです。
・生産性を高め、自動化をさらにすすめる必要がある、労働力不足は世界共通の深刻な問題です。
・「孤独の問題」「高齢者の孤立」の問題全てがすべて片付くわけではありません。しかし、サービスにより少なくとも一つは解決するでしょう。
この分野には大きな可能性があり、様々な取り組みがなされています。
■AIが影響を与えるのは「カスタマーサービス(コールセンター)」「マーケティングと営業」「ソフトウェア・エンジニアリング」「研究開発」の四つの分野の雇用の影響の範囲。
・コールセンターの仕事はきつくて離職率が高い。自動化が進むのは必ずしも悪いことではない。有効な手段と言えるでしょう。
・ソフトウェア・エンジニアリングの分野では、自明の理ですが、テクノロジー労働者はハイテク業界に集中しているわけではなく、あらゆる業界に広がっているからです。
AIが研究者に取って代わることはできなくても、生産性や革新性の向上に寄与することはできます。
・マーケティングや営業部門でも同様です。
AIの利用は、ターゲット広告やおすすめ商品など、売り込みが成功する確率を上げることに焦点が置かれてきました。
なので、生成AIがマーケティング分野でより大きな成果をあげているのは、当然のことです。その分野の効率化は収益に直結します。
このように見ていけば、AIは有能なアシスタントにはなっても、仕事自体を奪われることはないでしょう。
・研究開発の分野では、弁護士と同じで、膨大な法律文献や科学文献を読み込んで検索することも自動化できます。また見落としも防げます。いわば顕微鏡のようなものです。これまで見えなかったものが突如はっきり見えるようになり、生物の仕組みの解明の手掛かりが与えられた。
ディープラーニング(深層学習)の、画像認識や単語認識、パターン識別によって、どこを見ればいいのかというところまで予測できるようになりました。
生成AIの、分子設計や製薬において、試験管やペトリ皿で行われていた実験がコンピュータ・シュミレーションとしてできるようになりました。
これにより、数千のリストから数個の標的薬物を絞り込み、本当に良いものを作れるようになります。そして、開発にかかる時間も大幅に短縮されました。こういったワクワクすることがもたらされたのも、生成AIのおかげでした。
・「AIが未熟練労働者の技術レベルを上げる」というのは、テクノロジーの最近の歴史をみると、労働者によってそれほど勇気づけられる状況ではありません。
・私が危惧しているのは、技術レベルの高い人と低い人の二極化が進み、中間層が空洞化する可能性です。
・中間賃金の仕事を行って生活を営む中間層の人々に適した仕事をどのように創造するかは、かっては、製造業が中間層の受け皿になっていました。しかし、今はそうではない。
・「新しいテクノロジーが是正の手段になり得る」というのは、歴史の教訓から言うと、私は少し懐疑的に思っています。
■AI時代に必要になってくる教育
・仕事で役立つ、目に見える技術的スキルとコミュニケーション能力
・対人関係を円滑に進められる幅広い能力は、社会にとって不可欠なものです。画面越しであっても、言葉によって意志を伝えあうことの大切さ
・人々の政府に対する関心を高めた
・この先どうなってゆくのか、インターネットを見れば、すこし想像がつきます。良いことも、革新的なことも、一方で、悪いこともたくさんありました。
・つまり、良いことも悪いこともたくさんあります。
・AIには、データの収集と蓄積が必要不可欠であり、膨大な計算能力が求められる
・鉄道時代と似ています。大手IT企業数社による、独占というより、「寡占」なのです。
・頑なに知ろうとしないのは、良い選択とは言えないでしょう。
・無暗に怖がるのではなく、慎重であること。大切なのはこれです。
メレディス・ウィテカー✖安宅和人✖手塚眞 鼎談
進化し続けるAIは、人類の「福音」か「黙示録」か
・AIという技術そのものが悪いわけではない。
■AIの進歩の裏にある「権力集中」という問題
・この業界における資本力や技術力などの、あらゆる集中を理解しなければなりません
■たった数年間で、AIはこれほどまでに改良された
■人間の肉体的な労働が、人工的な知能を支えている
・実際にかなりの人間の労働力を必要としている
・何千人、何万人、何百万人もの人々の労働とデータなしに勝手に出来上がるシステムなど何一つないのです
・学習の仕方や時間は、人間にとってかなり大切なものになってきます。
・「創造性」、人間の創造とは「0から1」を生みだすことではありません。
・過去から存在している作品から学習していますよね。
・自分自身の体験から得た知識や情報、これを自分の中で編集しています。
・創造の、「編集する技術」、「組み合わせの技術」「情報を学習し、組み合わせることで創造している」、これはAIができることです。
■人類は「AI」とともに生きていくしかない
「もうわれわれはこの技術と一緒に生きているんだ」と考えるしかない
・一般の人は、とりあえず使い倒すことから始めたほうがよいでしょう。従来型のデータサイエンスは、訓練なしには使用することができませんでした。しかし、生成AIなら使うことができます。
・AIと人間は「パートナー」のような関係
・未来はどこにも書かれていないので、私たち自身が未来を有益な形にする責任がある。
そのためには、現在地を明確に示す地図が必要。現在地を正しく示した公平なデータがなければ、適切な意思決定ができないからです。
・20世紀に自動化技術と工業技術の分野でリードしてきた日本
・アメリカと中国に挟まれた日本。地政学的な意味合い。
・「人間の尊厳」とは何かについて、われわれは深く考える必要に迫られるでしょう。そうした時代をわれわれは生きています。
・「免疫力」が、社会全体、全世界的に必要になるでしょう。
・日本のみなさん、現実から目を背けないでください。実際に起きていることからあなたの目をそらし、惑わせようとする言説に注意してください。
3支配者はだれか?私たちはどう生きるか?
マルクス・ガブリエル
戦争とテクノロジーの彼岸「人間性」の哲学
■「人間である」という共通点から始まる道徳
・哲学者スキャンロンの言葉、「私たちは人間性を共有しているという事実から、お互いに何かを負っている」。カント、「わたし達はお互いに何かを負っていて、それは相手の人間性への敬意なのだ」
岩間陽子×中島隆博 対談
・今から日本が核兵器を保有するということは、アメリカのシステムに正面から盾突くことになるわけです。そのコストが相当なものになることはわかりますよね。
・日本には二つの側面が重要になってくると思います。「自分で力をつける」という面と、「チャンスを見つけて対話の場を作っていく」という面。
・日本はもはや大国ではないが、相対的にはまだまだアジアのリーダー格の国であると同時に、多くの中小国とも友好的な関係を維持しています。その多義的な立ち位置を、外交上十分に活かしていくことが必要です。
・二つの側面の両方をやりながらチャンスをうかがっていくべき。戦争を望んでいるわけではないでしょう。
・ポイントは見失わずに、安定的な国際的コミュニティをどこに見出すか。そのチャンスを必死で探していく時代が、これからも続いていくのだろうと考えています。
おわりに -
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Audibleにて。
陰謀説が流行るのも、ステレオタイプ思考が表に出てくるのも根は同じなのかもしれないな。未知のもの=予測がつかないものは不安だから。同じ人間がやってる=「悪意」と解釈すれば、まだ想定の範囲内。その方が相対的な不安感は下がるのだろう。
人の脳は予測とその結果のズレによって自己に含まれるか、そして安全な環境かを判断している。同類の人間が抱いた悪意なら、パンデミックも世界の終焉も腹は立つけど仕方がいない…ということかな。反射による恐怖の処理だ。それくらいには追い込まれているからそうなる。
一方で、パンデミックはチャンスだったのかもしれない。「怖いのは分かる。でもだからこそ反射的な判断をするな。もう一度、人間とはどうあるべきかを対話によって考え直せ」というメッセージが投げかけられた…それ故に。
人間全体にとって良いことをしましょうというのが倫理。それに基づいた倫理資本主義の提唱。繰り返されるゼロサムゲームでは、結局のところ貧しく、破綻に向かっていくしかない。あらゆる判断、活動を倫理を軸にというのは納得の主張だ。ブリザードの中、螺旋を描くことで生き残る北極だか南極のペンギンたちに思いを馳せる。 -
Posted by ブクログ
何時の時代にも「考えてみるべきであろう」というテーマは在る。そんなことに関する話題を提供してくれるのが本書である。豊富な話題を提供してくれる一冊であると思う。
本書は識者達へのインタビューや鼎談、対談を色々と集めて纏めたモノである。幾つもの読み応え在る内容を纏めている。新聞の特集、その下敷きになるフォーラムというのが下敷きになっているようである。
幅広い話題が取上げられているが、敢えて一口で纏めるのであれば「揺らぐ世界の中で進む技術革新という様相が導く先は?」というようなことになるのだと思った。
ロシア・ウクライナ戦争のような大規模な軍事衝突が展開している他方、各国で民主主義体制が揺らいでいるかもしれないような様子も見受けられ、更に著しい人口減少という社会の行方がよく判らなくなるような傾向も強まり続けている。歴史が転換している真っ只中なのかもしれない。そんな中に、急速に進歩を遂げる「生成AI」なるモノのような新技術が台頭している。
本書では、「歴史の転換点」ということで、戦争や民主主義というようなことを論じる要素と、「AI」のような技術が辿った経過、現況、可能性、未来予想というような要素とが併存していると思う。結局「揺らぐ世界の中で進む技術革新という様相が導く先は?」ということだ。
正直、個人的には「生成AI」なるモノはよく判らない。
想い起してみると、自身が生きて来た年月の中、インターネットの登場と普及、携帯電話の登場と普及というような「そこまでの時代には考え悪かったような新技術と、それがもたらした社会の様相の変化」ということが起って来た。何れに関しても、自身が長じて、青年、壮年というような年代以降の出来事で、何となく「自身で勝手に適度なと想える距離感」でそうしたモノに接してきて、現在時点でもそうしていると思う。
「生成AI」なるモノに関しても、壮年というような年代以降に登場して普及しようとしているので、何となく「自身で勝手に適度なと想える距離感」で接したいと個人的には思っている。が、巷では何やら「利用を当然視」というように動こうとしているようにも感じる。例えば「生成AI」なるモノで文案のようなモノを作成出来るとされているが、そういう程度のことなら、自身で勝手に考えて綴る方が気に入るモノが簡単に速く出来ると思うことが在る。そういう感覚だが、そのうちに「少数意見」であることすら認められないような感じになるのかもしれない。新しいモノは、古いモノを塗潰してしまうような一面も在るように思う。
こうした感覚も持ちながら、本書のAI関連の色々な論に触れた。過大に信頼も出来ず、過大に無視も出来ないという、よく在る新技術の一つであるAIだが、最初期に登場した頃の経過を見て考えると、色々と恣意的な要素や偶然が入り込んでいるようでもある。
AI関連で、本書では「既に他界して久しい有名漫画家の、御本人が描く新作を想わせるようなモノを、AIで創ることを試みる」ということに取組んでいる方の話しが収録されていた。それを興味深く拝読した。「漫画作品を創る」という例を通じて、AIの可能性と限界というようなことを考え易い話しだったと思う。
AIを利用して「漫画作品を創る」となれば、人気作品の主要人物を有名漫画家御本人が新たに描いたかのように再現する、または新しい作中人物を御本人が描いたかのように創るようなことは出来るようになるらしい。そしてそれらしくストーリーも組み立てられそうだが、かなり困難なことがあるという。有名漫画家が人生経験を通して有している思想性、想いが作品には少なからず跳ね返っているが、そういうモノは再現する術が無いのだという。
こういうようなことは記憶に留めておかなければならないと個人的には強く思った。「人生経験を通して有している思想性、想いのようなモノはAIで如何こう出来る筈も無く、そういうようなことこそ大切にせねばならず、そう出来るのが人間である」とでも言い続けたいような気もする。
技術革新が目覚ましい中ではあるが、「冷戦の終結で段落したかのようだった歴史」がまた揺らいでいる中、「人が人らしく?」というような、遥かな昔からの哲学のような思索が益々求められているのかもしれないというような気もする。
本書は、広く色々な話題を巡る識者達の論を集めたというような感なのだが、「モノを考える材料」として貴重であると思った。 -
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「人類の終着点」とはエグいタイトル。終着点と言いつつ、副題で「戦争、AI、ヒューマニティの未来」と。未来、それが明るいのか暗いのかはわからないけど、歴史が続くのであれば、決して終着ではない。一方、今の不透明・混乱な時代に生きる我々からすると、今後どうなるのか=終着ということだろう。
民主主義の問題、資本主義の問題、リベラルの問題、、、、今の世界を覆う問題を解説するものは多い。しかし論点が複雑で、自分の理解が大雑把でも正しいのかどうか自信がなかった。この本は、インタビュー・対談方式の構成で、体系立ってはいないけれど、わかりやすく解説されている。
グローバリゼーションとテクノロジーが、急速に世界を変えている。マルクス・ガブリエルはTwitterやフェイスブックを禁止にすべきだと述べているが、これらがなかった時代が不便で困っていたかと思うとそうではない。むしろ今の社会の混乱や分断の原因がこれらにあるのであれば、規制するというのは自然な発想で、決して極論ではない。
今の世界を代表する知が、大いに語っていて、今の世界の状況を冷静に知ることができる良書。 -
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先だって読んだ本「人生百年の教養」に著者の亀山郁夫先生がこの本から「幸せになれるゾーン」が人間にはあると引用していたのでマルクス・ガブリエルの「つながり過ぎた世界の先に」を読んでみた。
最終章に「人には幸せになれるゾーンがある。ゾーンは人によって違う。このゾーンをみつけられたら、それは自分の運命。そしてその運命が幸せをもたらす。」と書いてありました。
パンデミックはじめの頃書かれた本ですが、トランプ大統領の政策 コロナ対策、外交、経済など間違ってなかったと論じてます。コロナがなければ選挙に勝っていたろうと言ってます。マスコミが彼を悪役にしたてたと。ガブリエルはメルケル首相は世界最高の指導者だとも礼賛して、倫理資本主義が広まることを行動している哲学者です。 -
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マルクス・ガブリエルは注目している知識人の1人なので、本書も手に取りましたが、とても満足しています。この手のインタビュー本ですと、内容がかなり薄くがっかりすることも多々あるのですが、さすが哲学者ガブリエルです、インタビュー用にわかりやすい言葉を使いつつ、かなり深いことも多数盛り込んでいました。ガブリエルは本書の中で「倫理資本主義」こそ我々が今後目指すべき道だと主張します。そしてこれは名称にもあるように資本主義と両立する、つまり今の資本主義の方向を修正すれば可能だというわけです。
倫理資本主義に向かうかどうかのカギを握っているのは「危機」です。実はガブリエルは、危機が生み出す全く異なる2つの推進力について本書で語っています。1つ目は、危機が人々を倫理的、道徳的にする力。しかし同時に、危機が恐怖を生み出すとしたら、それは非倫理的な行動を引き起こすわけです。ガブリエルは非倫理的な行動の背後には恐怖があると述べていますが、確かにパニックになると他人のことはどうでもよくなる、自分の生存だけに頭が向かうわけです。つまり「危機」は諸刃の剣であって、これをチャンスによりよい「倫理資本主義」に向かうこともできるし、ホッブズなどがいう「自然状態」になってしまう恐れもあるということでしょうか。まさに不安定な社会になっているわけです。
本書は「つながり」をキーワードにしていますが、著者が最後に神聖性についての見解を述べているのは秀逸だと思いました。つまり究極の「つながり」とは、言葉では表せない宇宙(全体)とつながっているというような感覚であって、人々はそれを得たときに神聖性を感じる、という主張です。仏教的な世界観もまさにそれを述べているわけです。そして芸術がそれを促進する、という主張もまさにその通りだと思います。個人的な話ですが、私はクラシック音楽のなかでもバッハとシューマンの楽曲を聞くと心が震えます。なぜかというと、彼らの楽曲を聴いていると、何か宇宙の真理がかなでる音、大乗仏教的にいうなら、大日如来がかなでている音楽はこういうものではないか、と感じるからです。ミヒャエル・エンデの小説「モモ」のなかに、主人公のモモが「時間のみなもと」を訪れるシーンがありますが、そこでは数えきれない種類の音がたえまなく新しいハーモニーを作り出している、という記述があります。そこではまさに、「私」を意識する人間という生命体が、宇宙(全体)とのつながりを実感しているのだと思います。 -
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哲学初心者ですが、世界で爆発的に売れたということで手に取りました。難しい個所も多くすべてを理解したわけではありませんが、本書の核となる「新しい実在論」の骨子は理解できました。これについてはかなり丁寧に説明されているので哲学初心者でもガブリエル氏の主張は理解できると思います(同意するかはまた別問題だと思いますが)。形而上学での存在の扱いをテーゼ、構築主義による考え方をアンチテーゼとするならば、そのジンテーゼとして「新しい実在論」が提示されていると解釈しました。
本書の前半では存在するとはどういうことなのか、ということで新しい実在論についての説明が続きますが、個人的に興味深かったのは後半部分です。後半では自然科学の世界観、宗教の世界観、そして芸術の意味について「新しい存在論」的視点から解説をしていますが、目から鱗が多数あり、宗教編にいたってはこれだけで本1冊にまとめてほしいというくらい面白い内容でした。宗教編を読んでいるときにふと密教が思い浮かんだのですが、密教では、宇宙の摂理としての大日如来がいるという点でガブリエル氏の主張と相容れませんが、無数の意味の場に我々が存在しているという主張は、まさに曼荼羅図で表現されていることです(我々は仏にもなれるし魔にもなれる)。物事は無限の視点から見ることができること、無限の意味の場に表象されること、人生とは意味の場を創造し通り抜けていくことだ、という著者の主張を、まさに本書を読みながら「体験」することができました。 -
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「本書では新しい哲学の原則を示してみせたいと思っています。~中略~すなわち「世界は存在しない」ということです」
といきなり大風呂敷を広げたうえで、「世界は存在しない!」というキャッチーな主張の理由を、今までの様々な哲学の歴史をおさらいしつつ、やさしく説明してくれます。とても読みやすかった。(と言っても自分は読むのに2ヶ月以上かかったけど)
それにしてもこの煮詰まった時代に、いきなり「新しい原則を示す」という野心がすごい。もはやロマンチスト。
そして説明されるガブリエルさんの主張は、多様性の時代にフィットした哲学という感じで、とても面白かった。
なぜ世界は存在しないのか、を要約すると、
1.存在とは何かが「意味の場」に現れている状態
例 - サイが草原に立っている場合は、サイは草原という「意味の場」に存在する
2.基本単位は「意味の場」。すべては何らかの意味の場に現象する
3. 「世界」とはすべての意味の場を包摂する意味の場。世界にはすべてが現象しているはず
4.とすると、その「世界」はどのような「意味の場」に現象するのだろうか?→「世界は、世界に現れてこない」
5.つまり世界は存在しない。そのかわり存在しているのは無限に多くの意味の場。
6.無限に多くの意味の場がある→すべてのものは存在する。ただし世界はべつである。
僕は「意味の場」を「おぼん」と置き換えるとわかりやすいと個人的には思いました。
つまり、何かが存在するためには、その何かを「おぼん」の上に置かないといけない。いろんな「おぼん」があるけど、すべての「おぼん」を乗せることができる「大きなおぼん」は存在しない。なぜならその「おぼん」ももっと大きな「おぼん」の乗ってないと存在できないから。つまり「大きなおぼん」=「世界」は存在しない。
さらに「世界は存在しない」ことよりも、だからこそ「無限に多くのおぼん=意味の場」が存在する、というのが、もっと大事なこと。つまり無限に意味の場があるということは世界以外は「あらゆるものが存在している」ということ。例えば「魔女」は草原にはいないけど、本の中にちゃんと存在する。わたしの見るさまざまな夢、進化、水洗トイレ、脱毛症、様々な希望、素粒子、月面に住む一角獣さえもが、それぞれの意味の場に存在する。
そして著者は「だからといって、あらゆるものが良いということにはならないからです。私たちは、何を維持すべきで、何を変えるべきなのかを、いっそうよく判断できるようにならなければなりません。」と結ぶ。
そもそも「意味の場」って?勝手に基本単位とか言うなよ!、しかもそれってそんなに革新的な考えなの?、とか批判もありそうですが、全体主義とか排他的な考えを批判しつつ、かといって「人それぞれでしょー」という冷めた意見でもないところが、モノの見方、考え方としてとても面白かった。
訳者の人があとがきで書いているように
「解説書でもなければ、日常生活に有益なヒントを与えてくれる人生論の本でもなく、じっさいに哲学的思考を行ってみせる書物であろうとしている」本なので、要約でなく全部読んでみて本当によかった。そして例えばメタバースに対する考え方とか何かしらのヒントを与えてくれる本だと思う。 -
Posted by ブクログ
一本の論文に4名による関連論文(反論)を4本足して再版論を付けて1冊の新書になっている。論文がわざわざこんな形で邦訳され,新書化されるってなかなかに凄いことだと思います。
「実存主義」を名乗る理由はいまいちピンとこなかったのだが,言いたいことはだいたい真っ当だと感じた。というか,自然主義というか物質一元論というか還元主義というかすなわちウィルバー的に言えば「フラットランド」がここまで猛威を振るい続けているとは思わなかった。え,まだそこ?というのが正直な感想である。
精神(ガイスト)と意識(コンシャスネス)と心(マインド)とスピリットとソウルあたりの述語を再度整理しないと訳が分からなくなりますね。
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Posted by ブクログ
私は以前から世の中には何か一つの真理があり、それをひたすら追い求めていた。その思考がロジカルであり、その最たるものが自然科学だと思っていた。
しかし、この自然科学だけを信じる思想は全体主義といって、その他の価値観、例えば宗教などを一切受け付けなくなってしまう。
実際に私は宗教を全否定していたし、空想に過ぎないと思っていた。
しかし、そうであるならば、国家という概念も空想に過ぎず、たしかに存在しているのに間違いではないことに矛盾する。
こういったように、すべてを一つのもので説明しようとしていた私にとって、とても心に刺さった内容だった。
現代は、デジタル化に伴い、公私の区別が曖昧になり、全体主義に近づいていると警鐘を鳴らされていたが、それに対抗しようとしているのがダイバーシティインクルージョンで、特にこのインクルージョンがキーなのだと思う。
一元論が多数存在して、相対主義になるのではなく、複数性、多元論の間にもがきながらも複合していくことが現代哲学なのだと。
資本主義や自然科学主義など一元論に陥らないように心がけていきたい。
あと、もう一つ驚いたことが、考えてみれば当たり前なのだけれど、哲学者も人間なのだということ。
自分が論破されそうになったら、誤魔化して正当化しようとする。ナチスよりの思想をもつハイデガーもその一人で、痛いところをつかれると「わからない」と答えることができないこともあったそうだ。
そう考えると、自分の弱さを受け入れて素直になることが本当に大切なのだろう。
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Posted by ブクログ
タイトルに興味があって読んだのではなく、現代の哲学界で天才と言われるマルクスガブリエルさんがこんなにも若い方だったということに驚いて読んだ。
ある程度哲学の本は読んで少しわかったつもりになっていたけれど、まだまだ分からない難しいことが多かった。
世界が存在しない理論についてもなんとなくそうなのかとくらいにしか理解できなかったけれど、読んでいてとても腑に落ちたことがあった。
世の中には無数の意味の場があって、しかもそれらが互いに独立しているわけでもなく、独立していないわけでもなく、複雑に絡み合って存在していると。
最近はすべてを自然科学で説明しようとする傾向があるけれど、それも一つの意味の場にすぎない。宗教を信じる人、国家という概念を信じる人、自然科学を信じる人、そこになんの違いがあるのだろうか。
個人的には、医療や科学技術を信じられず自然主義の人たちのことがなかなか理解できなかったけれど、この言葉を聞いて、すごく納得した。
自分自身、何か一つの真理で世界をとらえようとしていたけれど、そんなことは不可能なのだと理解できた。
すべてを包摂する意味の場は存在しないのだ。