佐々涼子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
まず驚いたのは、著者の佐々涼子さんが悪性脳腫瘍で余命宣告を受けて2022年末から闘病中だと知ったこと。
色んな媒体に掲載されていたエッセイを集めた本で、最後のほうに「私には時間がないのだ」というような記述があり、気になって読み進めたところあとがきに病気のことが書かれていた。
だからおそらく、この先佐々さんが新しく文章を綴ることはないのだろう。と思うと、何とも言えず辛い気持ちになってしまった。
これまでさまざまな「死を見つめる」本を著してきた著者によるエッセイ集。
元々は日本語学校の教師だったそうなので、日本国内にある日本語学校の現実が綴られている章が多めだった。
海外から働き手としてやって来 -
Posted by ブクログ
ここ最近、「最期」に関係する本をよく読んでいる。
小説が多いのだけど、ずっと読みたかったこの本はノンフィクション。
「現実は小説より奇なり」の言葉通り、まさにドラマのようなエンドオブライフが描かれていた。
人それぞれの寿命は決まっているという考え、この手の本を読むようになり、最近はすっかり自分の中に浸透している。
今回新たに考えさせられたのは、「病気になった途端に、人は患者さんになってしまう」という部分。
それまで普通に自分の人生を歩んでいたのに、急に「患者」になり、身体面はもちろん精神面も制約を受ける。その人自身は変わっていないのに…。
こういう部分が苦しみの一つなのかなと思う。
自分や家 -
Posted by ブクログ
良いノンフィクションが読みたい。と思い、開高健ノンフィクション賞受賞作から選んで読んだ。良い本と出会えた。人にも勧めたい。
「○○さんが無言の帰国を・・・」というような表現で、他国から遺体となって帰ってくる邦人のニュースは見たことがあったが、その裏で、”死後長時間が経過し、長距離移動の影響もあって大変な状態の遺体をきれいに遺族に届ける。”という、尊くて孤高な仕事があることに気づかせてくれた。
亡くなってしまった娘をフランスの家族に会わせに行くエピソードは、涙が止まらなかったし、この仕事の意義や必要性をとても感じた。
家族の死と正面から向かい合う、死を隠さないのであるならば、エンバーミング -
Posted by ブクログ
歌舞伎町の深い闇、そこで駆け込み寺をやっている凄腕の男の物語
親の愛なんてものを見たことも触ったこともない人間には、そんなもんわからんのや。愛情なんていう概念すらわからん
彼は自分からは決して喧嘩をしようとしなかった。売られた喧嘩もよほどのことがなければ買うことはなかった。何しろ彼のプライドは容易に傷つかなかったのだ
生きるためにものを盗って何が悪い。何もしなければ死ぬだけだ。社会道徳も、倫理も、何ひとつ俺を守ってくれなかったよ
そうする以外、生き延びるために何ができる?だからええんや。何ひとつ後悔なんかしてへんよ
秀ちゃんの小便、血がでとる おれの体、おかしかったんか
ヤクザより -
Posted by ブクログ
予想していたより読み進めやすかった。そして、かなり酷い想像をしていたにも関わらず、入管の収監者への扱いが酷かった。治安維持法と同列(より悪い)に述べられるなんて。ウィシュマさんのようなことが特別ではなく、恒常的な状態だなんて、おかしい。集団ですごす部屋のトイレに壁がない、ほぼ室内だけで過ごす、痛くて叫び続けたり血を貯められるほど吐くのに医療が受けられない…。四年収監されて仮放免になったナイジェリア人のエースがアルペなんみんセンターのクリスマスコンサートで脂汗を流してうずくまるように身体を曲げている(普通なら感情が揺さぶられるような合唱)のが、収容で極端に刺激がなかったための拘禁反応だと書かれて
-
Posted by ブクログ
人間が欲望や執着を満たし続けた時、その後には何が待っているのか。さらなる欲望と執着の連鎖なのか、破滅なのか、はたまた悟りなのか・・・。
そもそも、欲望や執着を満たし続けることができる人は多くはありません。そして、幸運にもそれを成し得た多くの人は、自らその山を降りることはなく、誰かに引きずり降ろされます。
それゆえに、欲望や執着を満たし続けた時に何が待っているのか、を知ることはとても難しいことのように思います。本書は、それを成しつつも、自ら山を降りた稀有な人間に焦点を当てています。
そしてそこに著者は、欲望と執着の連鎖でもなく、破滅でもなく、悟りでもないものを見いだし、読者である我々に提示 -
Posted by ブクログ
「クオリティ・オブ・ライフ」という言葉をよく聞く。しかし、そもそも人生の質とはいったい何だろう。もし無理をして、本人も家族も後悔するとしたら、それはチャレンジするほど価値のあることだろうか。
確実なことなど何ひとつない。もう一度過去に戻って選択をし直すことなどできない。だが、人間とは「あの時ああすればよかった」と後悔する生き物だ。もしかすると取り返しがつかないかもしれないと思うと、末期がん患者が4時間ドライブして潮干狩りに行くと言う要望に対し、スタッフたちは、「ぜひ、実現させてください」と患者の背中を押すことをためらってしまうのだ。
それにもかかわらず、なんとかして患者の希望を叶えようとする。