ボーダー 移民と難民(集英社インターナショナル)

ボーダー 移民と難民(集英社インターナショナル)

小説・文芸
1,782円 (税込)

8pt

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佐々涼子はかつて司法試験予備校で机を並べていた児玉晃一と偶然再会する。児玉は弁護士として難民問題のエキスパートとなっていた。彼の案内で茨城県牛久の入国管理センターを訪れ、そこに長期収容されている外国人たちと面会した筆者は、その窮状にショックを受ける。イラン、アフガニスタン、カシミール……。内戦で命からがら日本に避難してきた「難民」たちを本国に強制送還しようとする入管。帰還すれば死刑になる状況でも意に介すことはない。さらに日本で家族をもっていようが容赦なく親と子を引き離す非道な仕打ち。長期収容で身体を壊し、命さえ落とす収容者がいながら、一向に改善されない日本入管の待遇に対して、国連も国際法違反と指摘する。四半世紀にわたり、難民の受け入れ、入管の改善のために闘い続ける児玉の奮闘の日々を、日本語学校教師として在留外国人と関わってきた自身の体験と、現在入管に収監されている在留外国人の取材とともに綴る。

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ボーダー 移民と難民(集英社インターナショナル) のユーザーレビュー

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    Posted by ブクログ

    エンジェルフライトを読んで、佐々涼子さんの書かれたものを読んでみたいと思い、手を伸ばした。

    日本人として日本に住んでいると、友達でもいない限り、コンビニや工場勤務のユニフォームを着ている外国人がどんなビザで日本に滞在しているのか、どうやってビザを取得しているのかを想像する機会はあまりないように思う。ましてや難民に至っては、どうやって日本に辿り着いたのか、これまで深く考えたことがなかった。

    私は過去20年にわたり海外で生活してきた。学生ビザや労働ビザなど、それぞれの国で必要なビザを取得して滞在してきたので、一般の人よりは少し事情を知っているつもりだ。ビザ申請というのは本当に面倒で、時間もお金もかかる。時間とお金だけならまだいいが、英語力を証明するテストを受けたり、資産証明を求められたりすることもある。弁護士事務所を通して手続きを任せることもできるが、それにはかなりの費用がかかる。永住権を取得するまでは、数年おきに更新のための費用も必要になる。

    海外で生活するためにビザを取得するのは、とにかく大変だと感じてきたし、「これにどんな意味があるのだろう」と思う手続きも少なくなかった。また、外国人であるがゆえに保険料が高くなったり、教育機関では現地の学生より高い学費を支払う必要があったりと、負担の大きさも実感してきた。

    オーストラリアで英語に不慣れだった頃、ビザ更新についてどうしても理解できず、ビザセンターに問い合わせたことがある。その際「必要なことはすべてホームページに書いてある」と言われ、さらに「その英語が理解できないのであれば資格はない」とはっきり伝えられた。厳しい言い方ではあったが、自分なりに納得せざるを得なかったのを覚えている。

    一方で、オーストラリアでは仕事や住む場所に困ることはあまりなかった。これは前任の日本人の方々のおかげでもあると思うが、「日本人はよく働く」「きちんとしている」という理由で受け入れてもらえる場面も多かった。もちろん全員ではないが、さまざまな国の人と関わる中で、働き方や生活のスタイルの違いに戸惑うこともあったのは事実だ。

    本作の中で、日本人は相手の立場を考え、周囲に迷惑をかけないように育てられる、という趣旨の記述があったが、それは自分自身にも当てはまる部分があると感じた。ただその一方で、自己主張が弱くなりがちであるとも感じている。海外で生活する中では、主張しなければ不利な立場に置かれることもあり、その難しさも経験してきた。

    こうした自分自身の経験があるからこそ、本作に登場する日本の移民の方々に対して、単純に同情することが難しいと感じる部分もあった。劣悪な労働環境や不当な扱いがあることは問題だと思うが、現実には複雑な事情が絡み合っている場合もあるのではないか、と考えさせられた。

    日本に帰国した際、コンビニや飲食店で外国人の方が一生懸命に日本語で接客している姿を見ると、「日本語上手ですね、頑張ってください」と声をかけたくなることがある。おそらくそれは、かつて自分がそう言われたかったからなのだと思う。国籍や在留資格に関わらず、人として対等に扱われるべきだと感じている。

    難民問題については、正直これまでほとんど知識がなく、本作を通して考えるきっかけをもらった。現在生活しているイギリスでも難民問題は大きなテーマとなっており、国の方針に対する不満が表面化している場面も見てきた。外から見ていると、自国民よりも難民が優先されているように感じられることもあり、そのバランスの難しさを考えさせられる。

    一方で、日本の入国施設で起きているとされる非人道的な対応や医療体制の問題については、決して許されるものではないと思う。たとえ在留資格の問題があったとしても、必要な医療が提供されるべきであることは最低限の前提ではないだろうか。もしそれが維持できないのであれば、制度そのものの在り方を見直す必要があるのではないかと感じた。

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    2026年03月29日

    Posted by ブクログ

    牛久の東日本入国管理センターの収容者に対する扱いの酷さが際立ちます。
    裁判所の許可なく収容し、人道的とは思えない扱いをし、先の見通しを一切与えません。
    もちろん機を見るに敏な人たちに利用されないようにすることも大切ですが、一方で本当に困っている人を助けることが出来るシステムに変更する必要をつくづくと感じました。
    技能実習生という名の低賃金期間労働者に対する扱いも先進国とは思えないものであり、近々来てもらえなくなりそうです。

    0
    2026年03月13日

    Posted by ブクログ

    難民申請をしたり、移民の在留資格を取り消されたりした人々がどのような境遇にあるか、についてインタビューや体験、現地での観察を個人に焦点を当てて、具体的に書かれた本である。弁護士の話、技能実習生の話、人管の話、鎌倉にあるアルペなんみんセンターの話などもりたくさんである。入管の施設が監獄と同じであり、その職員がジンバルドの監獄実験のような高圧的になってしまうことは、韓国のイテウォンやセウォル号で助けなかった警察官や海上警察を責められない日本である。こうした入管留置された子どもの教育に直面せざるをえない教師の卵もぜひこうした実態をしるべきであろう。ハードカバーではなく、はやく文庫版になって大学生の手に届くようになることを願う。

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    2026年03月10日

    Posted by ブクログ

    数年前まで、都内のコンビニでは中国や韓国出身と思われる人が働いている姿をよく見かけた。最近は、東南アジアやインド系、中東系と思われる人が増えているように感じる。「お」と思った。本書『ボーダー』を読んで、その違和感に輪郭が与えられた。

    日本は島国であり、歴史的にも大陸諸国のように、常に人が行き交い、戦争のたびに難民が流れ込む国ではなかった。だから移民や難民の問題を、西洋的な価値基準だけで批判されることには、どこか暴力性も感じている。移民や難民の受け入れに拒否感や危機感を抱く人の気持ちは、正直よく分かる。私自身もそうだ。

    しかし、それでもなお、日本の入管における難民対応は明確に間違っている。
    ウィシュマ・サンダマリさんが入管施設で亡くなった事件は、以前ニュースで知ってはいたが、「一部の職務意識の低い公務員の問題」程度にしか捉えていなかった。本書を読んで、それが日本という国にとって“例外”ではなく、“通常の扱い”であることを知り、愕然とした。

    乳児の食事は一日一度。外に出られるのは一日30分。おもちゃもない。子どもを育てる母親として、めまいがした。犯罪者であっても、ここまでの扱いが許されるだろうか。
    昨年観た映画『ラーゲリより愛をこめて』では、日本人が終戦後、ソ連の強制収容所で非人道的な扱いを受ける姿に強い憤りを覚えた。その日本が、他国の女性や子どもに、さらに過酷なことをしているという事実に、言葉を失う。

    移民問題についても、本書は私の認識を大きく揺さぶった。
    「外国人が日本人の仕事を奪う」「税金を使われる」といった言葉は分かりやすく、反感を煽りやすい。しかし実際には、日本人がやりたがらない仕事――食品工場、コンビニのライン作業、介護、土木、動物の命を扱う現場――を、外国人労働者に依存することで日本社会は成り立っている。しかも、日本人に比べれば圧倒的に安い賃金で。(それでも彼らにとっては大金だ)

    それでも日本は、彼らを「住民」としては受け入れない。永住させない。不要になれば、不法滞在者として排除する。生活基盤がすでに日本にあったとしても、途端に犯罪者扱いだ。人手不足と言いながら、求めているのは「使い捨て可能な労働力」なのだろう。企業はこの構造という麻薬を覚えてしまった。この仕組みが持続可能なはずがない。

    いつまでも日本が、出稼ぎ先として魅力的な国で居続けられるだろうか。
    「ほら、日本に来られてうれしいだろう?仕事を教えてやるから、貧乏なお前の国に帰って生かすといい」「日本はきれいで安全で働きやすいだろう?でも、うちには住まないでくれ。住んでいいのは欧米人だけだ」――そんな声が聞こえてくる。

    日本好きの外国人が登場するテレビ番組が、日本にはやたらと多い。
    「日本をほめていただきました!」「やっぱり日本は世界から憧れられている!」
    ジャパンブランドにいつまでもしがみつき、思い上がってはいないだろうか。私も日本は好きだ。素晴らしいところもたくさんある。でも、正しく現状を見て変えていかなければ、自立もできないくせに虚栄心ばかりの、痛々しい国として、世界から冷ややかな目を向けられる気がする。

    学生時代に観た『からゆきさん』という映画を思い出した。戦時中、外貨獲得のために海外に売られ、戦後も帰国できず、帰ってきても蔑まれた女性たち。戦争孤児、復員兵――日本は歴史の中で、役目を終えた人々を切り捨て、見なかったことにしてきた。その「型」が、今も続いているのではないかと思わずにはいられない。

    では、どうすればいいのか。難民を受け入れるのか、移民を受け入れるのか。無制限にか。日本らしさとは何なのか。失われるものはあるのか。簡単な答えは出ない。
    それでも、地球に生まれた一人の人間として、日本人として、女として、母として、私はもう「知る前」には戻れない。移民を受け入れてきた他国の事例も含め、これからも学び、自分の考えを更新し続けたいと思った。

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    2026年01月15日

    Posted by ブクログ

    佐々涼子氏が日本の入管・難民問題を、日本語教師の経験と「難民弁護士」児玉晃一氏の活動を通して描いたノンフィクションで、「難民」と「移民」の境界、入管の劣悪な実態と人権問題、日本社会の偏見に焦点を当て、人々の尊厳を問う作品です。移民と難民は「境界」で区別されがちだが、実際には人々の心の壁や社会の構造にこそ「ボーダー」があり、入管収容者の非人間的な扱いを容認する社会のあり方、そして無意識の差別に警鐘を鳴らし、当事者一人ひとりが問題を考える重要性を訴えています

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    2026年01月14日

    Posted by ブクログ

    母国では命の危険等に晒されるから、やっとの思いで自分が住みなれている国を離れて、家族と離れ離れになっても、形上は難民条約に批准しているから、きっと助けてくれると思い日本を頼って庇護を求めてくる難民の人々。その人達を大人も子供も構わず、警察のような司法手続きを取ることもなく行政手続きだけで収容する法務省。在留資格がない状態でオーバーステイが発生している現状も、理不尽に高い難民認定のハードルを設けているからこそ発生しているもので、自らが問題の発生要因を作っておきながら、それを弱いもののせいにする。

    これとは区別した実質的な出稼ぎ移民政策の技能実習制度。表向きは移民がいないことにしておきながら、我々がコンビニやスーパーでいつでも安く物を買える恩恵を受けておきながら、それは棚上げにして、3年で使い捨てにして送り返している現状。移民と難民政策について国としてころころ政策や思惑で基準を変えながら、それを末端の一番弱い立場の人が命や人権を奪われいている。この現状そ知らずしてないことにしていることは無責任だし、いい面だけ恩恵を享受して都合の悪いことを見ていなかったことを大いに反省した。

    佐々涼子さんの作品は「紙つなげ」に続いて二作目。若くして亡くなられたこと、ご冥福をお祈りします。

    0
    2025年10月13日

    Posted by ブクログ

    移民問題、深刻なんだなあ。
    移民って、自国が大変だから逃げてきたのに、逃げてきたところでまた苦しむなんて、負の連鎖すぎる。
    移民が、安寧の地を得るのにはまだ時間がかかるんだろーか。
    生きることに頑張っている。
    尊敬するお。

    0
    2025年09月30日

    Posted by ブクログ

    昨年亡くなられた佐々涼子さんの渾身の一冊。
    大学の同窓生だった児玉晃一弁護士から入管収容の実態を聴いた佐々さんは、自らも難民への取材を始めた。その記録が前半に載せてある。
    「入管はなぜ難民を追い返そうとするのか」
    迫害の危険性や紛争、暴力など、状況が悪化し移動せざるを得なかった人々だ。難民認定もされず入管にとどめ置かれ、強制送還されないかと恐れ慄く。
    映画「ヒューマン・フロー(大地漂流)」で、ゴムボートに乗る大勢の人々を写した場面が思い出された。
    難民となる人々の数は毎年増加の一途を辿っている。受け入れ国の中で、日本の難民認定率の低さを知り唖然とした。
     (2021年 日本は74人で0.7%)

    後半は移民のなかの「外国人技能実習生」を取り上げる。ここ数年のうちに中国や韓国から来る実習生は減少し、ベトナム人が増加している。
    現地の「送り出し機関」について初めて知った。日本語教師を経てライターになった佐々さんは、国内外の日本語学校を訪れている。日常会話でなく職場で上手く立ち回るための「言葉」を教えられた実習生は、やって来た日本で使い勝手のいい労働力として自由を奪われ"管理"される。
    コロナで入国を制限されたり円安のために日本で働く意味が無くなりつつある。「働きたいのに働けない難民がいる一方で、働いてほしいのに日本から逃げていく外国人労働者がいる」ことをわかっていない政治家たち。日本の行く末を懸念するのは当然だと思う。

    入管から仮放免された難民を支援する
    「アルペなんみんセンター」が鎌倉に出来た。
    近隣住民やイエズス会から反対の声は上がらなかったという。ボーダーを越えた人と人との関わりに、取材を決して諦めなかった佐々さんの思いを見た気がした。

    心よりご冥福をお祈りいたします。

    0
    2025年05月19日

    Posted by ブクログ

    「技能実習生」「入管」など聞いたことがあるだけで、実質は何も見えてなかったのか。
    ウィシュマさん死亡事件がニュースになっても、稀なケースのように感じていたが、実際はニュースにもならずに、人としての尊厳も奪われている人が多くいることに愕然とした。
    それも過去ではなく、現在進行形であるということ。

    政治家に頼めば、ビザも簡単に取れてしまうというのもどうだろう。とりあえず、生きるために使える手段は使うというのはわかるが、それでは根本的に完結には進んでいかないと思う。

    まずは自分の心の中の「ボーダー」を無くすようにしなければと強く思った。

    0
    2024年10月22日

    Posted by ブクログ

    初めて読んだ「エンド・オブ・ライフ」が衝撃だった
    そして「夜明けを待つ」も深い感動を……
    その作家が先月、56歳という若さで逝ってしまわれた!
    ニュースにショック

    これは友人が送ってくれた
    中島京子の「やさしい猫」を読んだ後、読みたいと思っていたものだ

    〈そして「ウクライナ難民で始まった話ではない。
    ミャンマー、スリランカ、イラン、アフガニスタン、そしてアフリカの国々から……。
    命からがら、日本にたどり着いた人たちを、
    私たちは、どう受け入れてきたのか? 〉

    広範囲な取材に胸が熱くなる
    私たちってこんなにひどい国民なんですね
    知らないでは済まされないですよね

    佐々涼子さんの痛切な願いをしっかり受け止めたいと思います
    ありがとうございました

    ≪ 駆け回り ただ伝えたい 真実を ≫

    0
    2024年10月09日

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