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新宿歌舞伎町「日本駆け込み寺」代表、玄秀盛(げん・ひでもり)。彼はDV、虐待、借金、ストーカーなど深刻な問題を抱える相談者を3万人以上救ってきた。それも無償でだ。近年は出所者を雇用・支援する「駆け込み居酒屋」を始め、メディアを賑わせている。しかしこの強面(こわもて)の男はいったい何者なのか? なぜ人助けにすべてを捧げるのか? その秘密は玄の壮絶すぎる過去にあった――開高健ノンフィクション賞作家の出世作。『駆け込み寺の玄さん』改題。
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Posted by ブクログ
とても興味深く一気に読みました。 過去のやってきた事実は変えられないけど、解釈は変わってくるのだ。過酷すぎる人生で聞いた側は眉をひそめてしまうのは間違いないけれど。人は変わるんだと強く感じる一冊。そして私も強くなりたいなと思いました。
佐々涼子(1968~2024年)氏は、早大法学部卒、専業主婦として2児を育てつつ、日本語教師等を経てライターになった、ノンフィクション作家。2012年、『エンジェルフライト 国際霊柩送還士』で開高健ノンフィクション賞、2014年、『紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている 再生・日本製紙石巻工場』でダ・...続きを読むヴィンチ BOOK OF THE YEAR第1位等、2020年、『エンド・オブ・ライフ』で本屋大賞ノンフィクション本大賞を受賞。 2024年9月、悪性脳腫瘍のため死去。享年56。 本書は、新宿歌舞伎町に「日本駆け込み寺」を設立し、長年代表を務める玄秀盛氏について、本人及び多数の関係者に行った取材をまとめたもので、2011年に出版、2016年に加筆・修正・改題の上、文庫化された。 私はノフィクション物を好み、佐々さんは好きな書き手の一人で、『エンジェルフライト』、『紙つなげ!~』、『夜明けを待つ』、『エンド・オブ・ライフ』を読んできた。 私はこれまで(不覚にも)玄秀盛氏のことを全く知らず、本書については、他の作品と比べてやや地味に見えたこともあって、読むのを先延ばしにしていたのだが、読み始めてみると、第一印象とは全く異なり、テーマ(要するに、玄秀盛という人物)にも、佐々さんの取材や書き振りにも惹き込まれ、一気に読み切ってしまった。 その玄秀盛氏とは。。。1956年、大阪市西成区の在日韓国人の家庭に生まれ、両親の離婚などで4人の母、父のもとで育つ。中学卒業後は、自動車修理工、寿司屋、トラック運転手、キャバレー店店主などを経験し、更に、40代までに、建設、不動産、サラ金など10を超える会社を起こした。その間、ヤクザとの抗争も絶えなかった。1990年に天台宗の酒井雄哉大阿闍梨のもとで得度。2000年に白血病を発症する可能性のあるウイルスに感染していることがわかり、上記のビジネスを全て止めて、2002年にNPO「日本ソーシャル・マイノリティ協会」新宿救護センター(後の「日本駆け込み寺」)を開設。2014年に「再チャレンジ支援機構」を設立。 「日本駆け込み寺」では、DV、金銭トラブル、家出、ストーカーなどの相談、刑務所出所者からの相談に対応し、これまで数万人以上を救ってきたという。また、「再チャレンジ支援機構」では、刑務所出所者が働く居酒屋の経営ほか、出所者の就労支援などを行っている。 それにしても、壮絶な人生である。。。玄氏は、自分のことを「ひとつのイメージで描くことを、かたくなに拒んだ」というが、宜なるかなと思う。佐々さんは、「彼は、悪人であり善人、被害者であり加害者。捨てられた子どもであり捨てた親でもある。・・・玄秀盛は、この世のどんな人間模様も映し出すひとつの鏡でしかないのだ。他人や自分に対するイメージなど、どれもがつかのまのもので、一時のまやかしであっる。我々はほんの小さなできごとや、他人の無意識の言動によって、容易に誘導され、世間や他人によって、思い込まされてしまうニセモノを本物のように思っている。そして、そのイメージを、あたかも本物のように、後生大事に死守しようともがいている。」と書いている。どんな人間でも「善」と「悪」の両面を持っている、玄氏はそのことを常人の想像を超えて体現しているのだ。 そして、佐々さんは次のように加える。「もしも過去を捨て、他人へのものの見方や、自分へのものの見方、周囲の評判や、地位や名誉を捨ててしまうことができさえずれば、あとはただ、そこに自由な人間がいるだけだ。間違ったり躓いたりしたら、もう一度選択しなおせばいい。そうすれば、何にでもなれるし、どんなところへでも行ける。新しくやり直すことも、人生に感謝することもできる。そう玄は説いているのである。」 もうひとつ。本作品は佐々さんの出世作(実質デビュー作に近い)となったわけだが、「おわりに(文庫版のために)」の中にこんなフレーズが出てくる。「何度怒られただろう。しかし強烈なダメ出しをされながら、辛抱強く話を聞かせてくれた彼の懐の深さが、離れてみた今ならわかる。・・・彼が私を作家にしてくれたのだ。」ノンフィクション作家・佐々涼子を作った一冊でもある。 (2025年2月了)
ノンフィクションライター佐々涼子氏のデビュー作であり、歌舞伎町で駆け込み寺を運営した伝説的な漢のドキュメント。 あまりにも壮絶な人生のため、ノンフィクションとしての作品っぽくなく、また、主観的にしかまとめざるを得ない感じ。もちろん相当に引き込まれる内容である。
歌舞伎町の深い闇、そこで駆け込み寺をやっている凄腕の男の物語 親の愛なんてものを見たことも触ったこともない人間には、そんなもんわからんのや。愛情なんていう概念すらわからん 彼は自分からは決して喧嘩をしようとしなかった。売られた喧嘩もよほどのことがなければ買うことはなかった。何しろ彼のプライドは容...続きを読む易に傷つかなかったのだ 生きるためにものを盗って何が悪い。何もしなければ死ぬだけだ。社会道徳も、倫理も、何ひとつ俺を守ってくれなかったよ そうする以外、生き延びるために何ができる?だからええんや。何ひとつ後悔なんかしてへんよ 秀ちゃんの小便、血がでとる おれの体、おかしかったんか ヤクザより、普通の人間のほうがよっぱどこわい。ヤクザはいい。だいたいの予測がつくからな。でも、普通の人間は追い詰められると何をするかわからん。一見善良そうな臆病な男が刃傷沙汰をおこすんや がまんできない人は結局できないんです。だんだん年を取るとね、なかなか器用にはできないから ワルをやるのは、ひとりがいいわ。徒党を組むとアガリは全員と分けならんし、誰かがヘタを打つと芋ずる式にパクられる だが、17歳の時、彼は突然死のうとした 大量の市販薬を飲んで、自殺を図ったのだ 彼女たちはみなと同じだ。つぎ込んだものが大きければ大きいほど、必死になってだまされていることを否定する 未練はない?―ううん、ぜんぜん、私、今までの人生で、一度も人を信じたことがなかった 上にいたやつらがどんどん下へ落ちてきている。じゃあ、下にいるやつが上に上がれるかって?上げれるはずがない。下にいたやつは、もっと下に行く。底なし沼や。下から、上へ這い上がれへん。まともにやっていても上げれんよ。ただ下へ、どんどんどんどん下へ落ちていくだけや 人を見抜く術や―人を見るときはな、過去に照らしてプロファイリングなんかしたらあかんのや。自分のものさしを持っていると、必ず見立てに狂いが生じる。何もないまっさらな気持ちで、そいつを見る。 玄は自分を脅かす相手をそのまま放置しておくような男ではなかった。それが彼の中でのルールなのです 玄はものを所有することに何の興味もなかった。ロレックスであろうが、ベンツであろうが、同じことだった なあ、俺が何を頼りに生きてきたか知っているか?自分やで。俺のほかに何がいる? 目次 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 おわりに(文庫版のために) ISBN:9784150504748 出版社:早川書房 判型:文庫 ページ数:288ページ 定価:680円(本体) 発売日:2016年08月15日発行
エンジェルフライトがドラマ化されていたのを観てそう言えば佐々さんの作品で未読があったなと購読。 何と言うか原点と言うか。 かなりの主観が入っている様に感じるのも取材対象が人たらしと評される所以か。 人を助けることで過去の自分を救っていると言ってしまえば感傷的過ぎるのかも知れないが。 この世の彼方此方...続きを読むに玄的な人が居て救われている人もいるのだろう。 早く新作出ないかなー。
「駆け込み寺の男 玄秀盛 佐々涼子 ハヤカワノンフィクション文庫 2016年 680円」金や男女男男関係、仕事、DV、貧困などのトラブルをかけた人の逃げこむ場所を提供している実在の人物の壮絶な話。エグくて、自分の悩みが小さい物だとわかるのでこの手の本は好きだ。
人間が欲望や執着を満たし続けた時、その後には何が待っているのか。さらなる欲望と執着の連鎖なのか、破滅なのか、はたまた悟りなのか・・・。 そもそも、欲望や執着を満たし続けることができる人は多くはありません。そして、幸運にもそれを成し得た多くの人は、自らその山を降りることはなく、誰かに引きずり降ろされ...続きを読むます。 それゆえに、欲望や執着を満たし続けた時に何が待っているのか、を知ることはとても難しいことのように思います。本書は、それを成しつつも、自ら山を降りた稀有な人間に焦点を当てています。 そしてそこに著者は、欲望と執着の連鎖でもなく、破滅でもなく、悟りでもないものを見いだし、読者である我々に提示している。そんな奥の深いノンフェクション作品です。 【本書抜粋 玄秀盛】 子供ってなあ、大人よりはるかに適応力があんねんで。俺は家畜や。だから、家畜の考え方しか知らんのや。 別にかわいそうなことあらへん。なまじっか変な愛情を注がれて、それを突然取り上げられた方がずっとしんどかったやろうな。 でも、幸運なことに俺は知らんかった。 だから見える。執着なくして生きられない人間の弱さが。 ーーー
佐々涼子さん、9月1日に悪性脳腫瘍のためご自宅で永眠されたとニュースで知りました(享年56歳)。ショックでした。『エンジェルフライト 国際霊柩送還士』『紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている 再生・日本製紙石巻工場』『エンド・オブ・ライフ』『ボーダー 移民と難民』と読み、どの作品も読み応えのある素晴...続きを読むらしいものでした。一昨年の年末に、悪性脳腫瘍であることを公表し、その後『夜明けを待つ』を発表されこちらも読ませていただいています。「ああ、楽しかった」と言える人生だったかな…でも、ご自宅で最期を迎えられたのは、佐々涼子さんらしいと感じました。 で、こちらの作品は未読でした。いつか読もうと思っていたのですが、追悼読書になってしまいました…。この作品は、新宿歌舞伎町で「日本駆け込み寺」という機関を立ち上げた玄秀盛さんがDV・借金・不倫・家庭崩壊など様々な問題に対して相談援助活動を行うものです。なぜ、彼は様々な問題に的確なアドバイスを行えるのか…それは玄秀盛さんの生い立ちから今までの経験に基づくものでした…。 この表紙の方が玄秀盛さん、強面で迫力ありそうな感じですよね…。その過去は壮絶なもので、私の理解の範疇を超えたものだったし、読みにくさを感じてしまいました。でも、その見た目通り、頼り甲斐はあるし相談者に対して見せる優しさやアドバイスは的を得ていました。佐々涼子さんがノンフィクション作家を名乗る原点というべき作品、この作品を描けたから、その後素晴らしい作品を世に出せたんですね…。今後佐々涼子さんの新作を読めないのは残念ですが、謹んでご冥福をお祈りします。
壮絶な体験記には驚きました。 でも全てがつながって、知恵のある人助けを今職業としてできているってことがすごいと思いました。
『エンジェルフライト』『紙つなげ~』のノンフィクション作家佐々涼子のデビュー?作。いまのところこの著者は外れなし。
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