川田稔のレビュー一覧
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満州事変から始まる所謂15年戦争の過程を日本陸軍から検証するシリーズの第2弾。
川田氏の著作は何冊か読んでいるが、共通項として丁寧に組織だけでなく各個人の考え方、そこから繋がっていく決定プロセスも説明してくれるので非常にわかりやすい。
今作も永田vs小畑にはじまり、永田vs石原、石原vs武藤といった陸軍中枢部の戦略論による政策の決定過程は一読に値する。
一般的に陸軍は戦略論がなく、強硬論の行き当たりばったりという見方をされがちであるが、本書を読む限り、それぞれにそれ相応の説得力がある。結果として見込みが外れ、複雑怪奇な国際情勢に引きずられ最悪の結末を迎えることになるが、結果論から逆算した見方と -
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日本はなぜ、あのような無謀な戦争に突入していったのか?
日本を破滅へと引きずり込んでいった「昭和陸軍」を主導した人物たちにスポットを当て、破滅への道を辿る・・・
全3巻の第2巻、日中戦争・・・
満州事変から泥沼の日中全面戦争へ・・・
「日中戦争は、その発端においては、陸軍内の政策対立に起因するもので、武藤らが、石原の政策的指導権を破砕しようとしたことが重要な動因になっていた。
武藤ら拡大派も、事件当初は、中国の植民地化や領土分割を企図したというより、華北分離(華北の勢力圏化)を実現し、それを国民政府に、認めさせようとするものだった。
だが、中国側抵抗力への過小評価と、石原に対抗しその対中政策 -
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なぜ無謀な戦争は始められたのか?
日本を破滅的な戦争へと引きずり込んでいった昭和期の陸軍・・・
さらにその昭和陸軍を引っ張っていった人物たちにスポットを当てて、満州事変から太平洋戦争までを振り返る・・・
全3巻の第1巻、満州事変・・・
著者の前著の「昭和陸軍の軌跡」がとっても面白かった(勉強になった)ので購入・・・
その「昭和陸軍の軌跡」をより詳しく書いたのが今作ですね・・・
満州事変・・・
一般的には世界恐慌で苦境に立つ日本・・・
その困難を打開するために、関東軍の石原莞爾や板垣征四郎らが中心となって勝手に暴走し、政府や陸軍中央の首脳部は後手後手に回り、
事変拡大へと引きずり込んでいった・ -
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戦前、特に両大戦間期の日本の安全保障構想はどうだったかってのを山県有朋、原敬、浜口雄幸、永田鉄山の四人をあげて検討する。
全体の説明がくどいぐらいのところがあって、そこはおつむのそんなよくないおれには理解するのにありがたい。
明治末の山県有朋は欧米列強による中国分割を避けて保全しつつ、日本の影響化におこうと目論んでいた。また、日英同盟が空洞化し日米関係が悪化するにつれて日露同盟の道を模索する。1916年の第四次日露協約では開戦した場合の軍事援助の密約があった。しかしロシア革命で帝政ロシアが崩壊し、日露協約は破棄され密約が公表されると日本は国際的に孤立した。
第一次大戦期、山県有朋ら藩閥官僚勢力 -
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15年戦争の経緯をわかりやすく説明してくれた良本。今の時代から回顧すれば、100%無理だと感じる太平洋戦争になぜ陸軍は向かっていったのか。そもそも満州事変は何を狙い、日中戦争はどのような戦略のもと行われたのか。それを解き明かしていく。陸軍の流れは、山形有朋の長州閥→一夕会の永田鉄山による総力戦準備のための資源確保のための北支領有→対ソをめぐり主戦派の皇道派と時期尚早説の統制派の対立→統制派の勝利後永田暗殺と二二六事件で皇道派の失墜→石原莞爾の反拡大派→武藤の満蒙確保→日中戦争行き詰まりで武藤の非拡大と田中の対米戦不可避の対立という流れがわかる。
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この本、ちょっと新鮮な視点でございました・・・
戦前の日本軍、特に陸軍は何の戦略、見通しもなく、満州事変、日中戦争、太平洋戦争と暴走し、泥沼にハマって国を滅ぼした・・・
いやいや意外にそうでもないですよ、と・・・
本書を読むとわかる・・・
や、別に大日本帝国礼賛の本じゃないですよ・・・
念のため・・・
陸軍首脳は・・・
太平洋戦争開戦をどのように決意したのか?
何であんな無謀と言われる戦争を起こしたのか?
っちゅーのを、戦前の昭和を主導してきた陸軍の・・・
さらにその陸軍を主導していった永田鉄山、石原莞爾、武藤章、田中新一らの構想を辿って紐解いていく・・・
永田鉄山っ -
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近年のこういった分野を扱うものとしては抜群におもしろかった。
対米戦争については一般的には軍部、それも陸軍が無定見、無計画に突っ込んでいったというのが定説のような気がする。
しかし、永田鉄山から発するいわゆる「統制派」の流れは、まったくそうでなく、満蒙問題を解決し中国国内に資源を求め自主自衛の体制を整えてから、最終的な世界大戦に備えるというものだった。
それにむけて特に陸軍要職に「統制派」幹部を就かせるという人事をもって、その「構想」の実現に向かっていた。
その人事の強引さからか、永田は軍務局長の要職にありながら惨殺される。
そして、その衣鉢をついだ石原莞爾や武藤章がその思想を変容さ -
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太平洋戦争は、陸軍、特に統帥部が暴走し、海軍やその他の省庁がひっぱられて、戦争に突入したという常識がある。
しかし、この本は、丁寧に昭和陸軍の人物の思想、具体的には、永田鉄山、石原完爾、武藤章、田中新一の考えをおって、極めて冷静に現状を分析しつつ、戦争に追い込まれていく状況を明らかにしている。
個別の事項で認識を新たにした点と、教訓がある。
(1)上記4軍人に共通しているものとして、すばらしい構想力を持っているが、組織の指示、指揮権に従わすに、組織的判断を停滞させるという、陸軍に対する欠陥をつくりだした。
今の役人と同じく、局長、部長、課長という職種のものが、大臣の意向、あるい -
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戦争のやり方が大きく転換する契機になったと言われる第一次世界大戦。人類が登場してから様々な理由で人は争いを続けてきたが、この大戦では、殺傷力の高い大量破壊兵器や近代的な戦車、飛行機による空からの攻撃(当然命中率は今ほど高くなく民間人にも被害が出る)などが登場した。同大戦に於いては期間も4年と3ヶ月の長期に渡り、世界中の国々が連合国とドイツを中心とする同盟国に分かれて戦いが続く。その犠牲者の数は、死者数が戦闘員900万人以上、非戦闘員700万人以上、負傷者が2,000万人と、それまでの戦争を遥かに凌ぐ死傷者がでている。ちなみに使われた砲弾は、13億発。これは日露戦争で使われた砲弾の500倍にも上
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今年2025年は太平洋戦争終結から80年を迎える。何故国力で圧倒的に劣り、敵うはずもないアメリカとの戦争に突入したのか、当時の軍部や政治が何を基準に判断したのか、現在に於いても様々な研究が行われている。GDPでは10倍以上の差があり、重化学工業の製造力や資源の量も全く日本は及ばない。とは言え日清日露戦争の勝利、第一次大戦でも戦勝国として名を連ね、世界の列強のうちの一国としてのプライドも自信も持っていた事は間違い無いだろう。中国に進出し満州に多くの兵士、民間人を送り込むなど日本国内から飛び出して、アジアへ進出する日本。長期化する中国との戦争、北からはソ連の脅威、そして太平洋を挟んで睨みを利かすア
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A戦犯で最年少で処刑された武藤章についての本。
と言っても、取り扱う時期は、日米戦争決定に向かうプロセスが中心で、武藤章を中心とした戦前の意思決定プロセスを解説するという感じか?
武藤章はなんとなくあまり深く考えない武闘派というイメージを持っていたのだが、この本によるとなかなかの戦略家のようで、日本が勝つ見込みのない対米戦争を避けるべく最後まで頑張っていたらしい。
その戦略の鍵は、日独伊の三国同盟にソ連を入れた四国同盟を作り、英米などと対応することで、勢力均衡をはかり、アメリカとの戦争を回避しつつ、南方の資源を獲得すること。
四国同盟はできなかったが、日ソ流立条約は締結することに成功し