川田稔のレビュー一覧
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戦後80年・昭和100年に相応しい一書。NHKスペシャル「昭和16年夏の敗戦(猪瀬直樹)」とセットで読むのをお勧め。対米開戦の謎が少し解ける。
満州事変・日中戦争を経て日米開戦そして敗戦までの10年間、日本は陸軍の軍事政権だったと改めて思う。その政権を担ったのは、「東條英機陸相-武藤章陸軍省軍務局長-田中新一参謀本部作戦部長」の3名で、構想は武藤が担った。
武藤は米国の動向を最重要視し「対米避戦」を基本として世界戦略を構想したのは松岡洋右外相とスタンスを同じくする。
「日独伊+ソ連」の4国同盟で英米体制を牽制し、世界の新体制を構築する。
危うさはあるし、肝心のヒトラーが理解できていたか疑問だが -
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旧日本陸軍軍務局長を務めた武藤章が描いた戦略を解き明かす本作。
第二次世界大戦前夜の国際情勢、その時に世界を支配していたプラグマティズムを淡々と描き、そのプラグマティズムの中で採りうる大日本帝国の針路を探り続けた戦略家の思考を追う良作である。
武藤が対米戦回避に邁進したのはあくまで対米戦に勝利することが出来ないと確信していたからであって、国際協調などといった観点ではない点が当時の空気感を感じさせる。あくまで冷徹な現実思考の結果として導き出された結論が対米戦回避だった。
対米戦回避のため、中国からの撤兵を決意出来なかったのは、永田鉄山が追求した国防国家論が無に帰すことを肯んじなかった点は興 -
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満州事変以降、組織として政治化していく陸軍を「昭和陸軍」と定義し、永田鉄山を中心にした陸軍官僚の動きを追いながら太平洋戦争へ至る過程を明らかにしていく。永田鉄山は皇道派と統制派の対立の中で暗殺されたが、彼の構想は後継者たる武藤、田中らに引き継がれて昭和陸軍の動向を規定していた。
以下気になった記述のメモ
60ページ 満州事変は関東軍に陸軍中央が引っ張られたイメージだが、中央の一夕会系中堅幕僚は関東軍に呼応して陸軍首脳を動かしていたのが実態。
91ページ 対ソ戦略をめぐり一夕会は対立。速やかにソ連侵攻を目指すべきと考える小畑(皇道派)、ソ連侵攻前に未だ調整すべきことが多いので早急な侵攻は控え -
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昭和陸軍といえば、川田先生。今回は永田鉄山の後継者ともいえる武藤章を取り上げている。
武藤は陸軍内部ではいわゆる「統制派」の中心人物として、大東亜戦争開戦直前の日本の外交、政治をリードしてきた人物の一人でもあった。他の陸軍軍人と同様、地位があがることによって視野が広がり、それまでの方針を変更していくという過程は同じ(例えば、石原莞爾も似たような思考変化を見せている)で、その点は興味深かった。特に興味深い点が、石原と対峙したものと同じことを、開戦前に田中新一と立場を変えてやったのは、因果応報というものか。
どちらかというと軍政家であり、永田鉄山の理想を忠実に踏襲していく。いわゆる「昭和 -
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ネタバレ第二次、第三次近衛内閣という歴史的に枢要かつ重要な時期に内閣書記官長を務めた富田健二が、戦後に書いた手記の内、近衛内閣時代および大東亜戦争期の部分を収録した本である。
日本近代史において近衛文麿が果たした役割というのはマイナスのイメージが強いが、本書においては、近衛自身が意図していたものとは違った方向に事態が進んでいく場面もあり、この手記により近衛に対する評価をあらためて再検討する必要があると感じた。
解説は陸軍および昭和政治史に多くの論文や著作がある川田稔氏である。本書の1/5にわたって書かれた解説部分は、非常にわかりやすく纏められているだけでなく、既存の先行研究等も明記されているので -
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ネタバレ内大臣・木戸幸一を通して昭和史を考察する本書。
読み終わって改めて思ったのが、当時の日本が思い上がり、のぼせ上っていたのだという点。特に指導者層やエリート、軍部、上流階級といった上層部の思い上がりは甚だしい。
こういう時に出る、国民もという論法ではとても希釈できない体たらくである。
明治の第一世代、本当に国(藩、幕府)が滅びる事はどういう事かと肌身で感じていた世代が交代すると、ここまで視野が狭くなる(劣化する)かと忸怩たる思いを抱く。
本書の木戸幸一もその点では同罪であり、トップクラスの人物である。
勿論、終戦時の根回しなど功績に値する部分はある。それでもマッチポンプが酷す -
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2020/11/30木戸幸一 川田稔 ☆☆☆
太平洋戦争の傑作本 これまでの歴史書にはない明晰さ
「昭和天皇の日本国敗戦記」というほうが適切と思う
日本はなぜ日米戦争に突き進んだのか
「失敗の本質」が本書でかなりクリアーになった
これまでの歴史書を凌駕する
380116近衛「爾後国民政府を相手にせず」
400827近衛「新体制運動」 天皇に対する「幕府」との批判で頓挫
400927近衛「三国同盟締結」 米国の欧州参戦を牽制(ヒトラー)
4011 近衛「南京の汪兆銘政権を承認」重慶蒋介石との和平絶望
410413「日ソ中立条約」 米国を牽制 南方武力行使=対英開戦へ
410414「日米諒解 -
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政治外交史の専門家、特に日本の戦前政治史に詳しい著者による、石原莞爾の構想について書かれた本。永田鉄山を中心とした陸軍統制派の動きや考え方に焦点を当て、満州事変から日華事変、太平洋戦争へと突入していく中で、どのような決断に至ったかを詳細に記している。永田や石原は、日華事変や太平洋戦争がどのような戦争になるかを10年以上前から正確に予測しており、その行動力と相まって陸軍中枢で活躍する。戦後、厳しい批判が多い陸軍ではあるが、多くの逸材が存在したことがよくわかった。
「支那全体を観察せんか。軍閥、学匪、政商など一部人種の利益のために支那民衆は連続せる戦乱のため塗炭に苦しみ、良民また遂に土匪に至らん -
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全三冊!長かった。
昭和の世界対戦を、陸軍の視点から解剖する本。
とにかく情報量が多くて読むのけっこう大変でした(*_*)けど、読んで本当に良かった!!陸軍内の派閥争いが戦争をどのように助長させたのか。また、参謀本部と陸軍省との政治的対立とかも、興味深い。
どうして、日本は、勝ち目のない戦争へと突入したのか。WW2における日本の目的は、イギリスをアジア圏から追い出す(植民地支配を止めさせる)ためだった、とか、
アメリカVS日本 は本当は是が非でも回避したかったけど、日独伊、三国協定とロシアが絡んだ複雑な経緯によって、仕方なくそうなってしまった、、とか
ちょっと感想がうまくまとまらないんですが -
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永田が思い描く理想の日本とは、政治的、経済的、軍事的に苛烈な国際競争にさらされながらも自主独立を堅持する国家である。しかし理想を達するためには、来るべき次期世界大戦を勝ち抜かなければならないことが確信されている。彼にとってその勝ち負けが、日本が国際社会において落伍者になるか、先頭集団にキャッチアップし続けるかの分かれ道であった。
次期大戦は第一次大戦以上の総力戦になるという予想から、第一次大戦でドイツが敗北した決定的理由が探られる。それは軍事的なものに限らず、思想的、経済的なものが大勢をしめた。したがって日本での平時戦時を問わない国家総動員体制構築の重要性が語られる。
当時の国際社会を冷静に -
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ネタバレ◆内容メモ◆
陸軍内部の派閥対立(統制派のリーダー・永田鉄山と、皇道派のリーダー・小畑敏四郎の対立)かつての一夕会の盟友は対中国戦略を巡り対立・袂を分かつ
永田は同じ一夕会出身で皇道派であった真崎甚三郎教育総監を罷免する。このような陸軍内部での派閥抗争が激化した結果、皇道派の隊付青年将校らの手によって、永田軍務局長は暗殺され、その翌年、二・二六事件が起こる。
隊付青年将校国家改造グループの一部が、兵約千五百名を率いてクーデターを起こした事件である。この時、木戸幸一内大臣秘書官庁が事態収拾に一役買った。
永田が居なくなった後、陸軍省のトップに武藤章、参謀本部のトップに石原莞爾が立つことになっ -
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日本はなぜ、必敗の戦争へ突入していったのか?
日本を破滅へと引きずり込んでいった「昭和陸軍」を主導した人物たちにスポットを当て、その破滅への道を辿る・・・
全3巻の最終巻、太平洋戦争・・・
満州事変から泥沼の日中全面戦争・・・
そしてついに太平洋戦争へ・・・
何であんな無謀な戦争へ突入していったのか?
勝てるわけないじゃんね?
まぁ、確かに・・・
ではなぜか?
泥沼化した日中戦争の解決が困難になり、その状況を打破するために陸軍が強引に南方に進出し、対米戦へと突入していった、とか・・・
英米蘭に追い詰められたために戦争を始めた、とか・・・
いろいろありますが・・・
とりあえず軍人がアホだった、 -
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[両翼の相克]盧溝橋事件前の日本政治・外交において、それぞれ異なる思考と体制で運営を試みようとした浜口雄幸と永田鉄山。新たなる時代が到来するという点では認識が一致したものの、その時代が日本にとってどのような性格を持ち、日本はどう対処するべきかという点において、きれいな対比を見せた両名の考えを中心に据えた作品です。著者は、名古屋大学で政治外交史・政治思想史を専門とされている川田稔。
事実関係や本人たちの手記などを踏まえながら、浜口と永田の思考が見事に整理されている点に読み応えを覚えました。方向は異なりますが、政治・経済・社会体制・外交などの分野を横断するグランドデザインを描くことができ、それ -
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「昭和初期、満洲事変を契機に、陸軍は、それまで国際的な平和協調外交を進め国内的にも比較的安定していた政党政治を打倒した。その推進力は、陸軍中央の中堅幕僚グループ「一夕会」であり、彼らが、いわゆる昭和陸軍の中央を形成することとなる。
その昭和陸軍が、どのように日中戦争そして対米開戦・太平洋戦争へと進んでいったのか。その間の陸軍をリードした、永田鉄山、石原莞爾、武藤章、田中新一らは、どのような政略構想をもっており、それが実際にどのような役割を果たしたのか。筆者の主要な関心はその点にある。」(410ページ)
長大な昭和陸軍史全3巻を読み終えて、筆者の問題関心である昭和陸軍中枢の「政略構想」につ