ブックライブでは、JavaScriptがOFFになっているとご利用いただけない機能があります。JavaScriptを有効にしてご利用ください。
無料マンガ・ラノベなど、豊富なラインナップで100万冊以上配信中!
来店pt
閲覧履歴
My本棚
カート
フォロー
クーポン
Myページ
5pt
昭和十年八月十二日、一人の軍人が執務室で斬殺された。陸軍軍務局長永田鉄山。中堅幕僚時代、陸軍は組織として政治を動かすべきだとして「一夕会」を結成した人物である。彼の抱いた政策構想は、同志であった石原莞爾、武藤章、田中新一らにどう受け継がれ、分岐していったのか。満蒙の領有をめぐる中ソとの軋轢、南洋の資源をめぐる英米との対立、また緊張する欧州情勢を背景に、満州事変から敗戦まで昭和陸軍の興亡を描く。
アプリ試し読みはこちら
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。
Posted by ブクログ
満州事変以降、組織として政治化していく陸軍を「昭和陸軍」と定義し、永田鉄山を中心にした陸軍官僚の動きを追いながら太平洋戦争へ至る過程を明らかにしていく。永田鉄山は皇道派と統制派の対立の中で暗殺されたが、彼の構想は後継者たる武藤、田中らに引き継がれて昭和陸軍の動向を規定していた。 以下気になった記述...続きを読むのメモ 60ページ 満州事変は関東軍に陸軍中央が引っ張られたイメージだが、中央の一夕会系中堅幕僚は関東軍に呼応して陸軍首脳を動かしていたのが実態。 91ページ 対ソ戦略をめぐり一夕会は対立。速やかにソ連侵攻を目指すべきと考える小畑(皇道派)、ソ連侵攻前に未だ調整すべきことが多いので早急な侵攻は控えるべきと考える永田(統制派)。 201ページ 日中戦争は世界戦争に備えて資源を確保するために起こしたもの。日中戦争解決のために太平洋戦争に突入したわけではない。 218ページ 南方から資源を輸入しようとしても、対価となる工業製品を生産し輸出する国力は日本にはない。大東亜共栄圏といいつも、一方的な略奪経済とならざるをえないことを陸軍中央は認識していた。 267ページ 南部仏印進駐に対するアメリカの対日石油全面禁輸は、日本の更なる南方進出の抑制と同時に北方での本格的な対ソ攻撃を阻止するためのものだった。禁輸により資源に余裕が失われた日本は必要性の低い対ソ攻撃を断念するとの見通しに基づく。これにより、ソ連がドイツに敗北し、ドイツのイギリス侵攻を本格化することを防ぐ。アメリカにとって大英帝国の崩壊は安全保障上絶対に回避しなければならなかった。
15年戦争の経緯をわかりやすく説明してくれた良本。今の時代から回顧すれば、100%無理だと感じる太平洋戦争になぜ陸軍は向かっていったのか。そもそも満州事変は何を狙い、日中戦争はどのような戦略のもと行われたのか。それを解き明かしていく。陸軍の流れは、山形有朋の長州閥→一夕会の永田鉄山による総力戦準備の...続きを読むための資源確保のための北支領有→対ソをめぐり主戦派の皇道派と時期尚早説の統制派の対立→統制派の勝利後永田暗殺と二二六事件で皇道派の失墜→石原莞爾の反拡大派→武藤の満蒙確保→日中戦争行き詰まりで武藤の非拡大と田中の対米戦不可避の対立という流れがわかる。
満州事変から日米開戦へ至るまでの 陸軍における主要人物の構想と人間模様を描く。 日中戦争の深みにはまるまでの石原と武藤のやりとり、 日米開戦を回避しようともがく武藤と田中とやりとりが実に面白い。 従来とは異なる目線から開戦の経緯を知れ、非常に勉強になった。 実際はこれに加え、政界人や民間人の活躍もあ...続きを読むった訳であり、 さらに知見を深めたいと感じさせる一冊。
この本、ちょっと新鮮な視点でございました・・・ 戦前の日本軍、特に陸軍は何の戦略、見通しもなく、満州事変、日中戦争、太平洋戦争と暴走し、泥沼にハマって国を滅ぼした・・・ いやいや意外にそうでもないですよ、と・・・ 本書を読むとわかる・・・ や、別に大日本帝国礼賛の本じゃないですよ・・・ 念...続きを読むのため・・・ 陸軍首脳は・・・ 太平洋戦争開戦をどのように決意したのか? 何であんな無謀と言われる戦争を起こしたのか? っちゅーのを、戦前の昭和を主導してきた陸軍の・・・ さらにその陸軍を主導していった永田鉄山、石原莞爾、武藤章、田中新一らの構想を辿って紐解いていく・・・ 永田鉄山っていう、カリスマ性があって、頭のハイパーイイ軍人の・・・ 資源が超少ない日本が・・・ いずれ必ず起こるであろう世界大戦・・・ それも長期に渡る、経済競争も含めた国家の存亡を(勝手に)賭けた総力戦・・・ その国家総力戦に生き残る、いや勝ち残るためにはどうすべきか? そのための構想がすべての軸・・・ 満州事変から始まる、永田のその構想がのちの大東亜共栄圏など、昭和陸軍の源流となる・・・ 永田自身は陸軍内の永田率いる統制派と皇道派の激しい派閥争いの中、斬殺される・・・ けども・・・ その永田の亡き後を主導していく石原莞爾もまた、永田が属していた一夕会のメンバー・・・ ただ石原は永田に劣らずデカい構想(最終戦争論)があって、いずれ起こるであろう、アメリカとの世界の行方を賭けた最後の決戦へ向けて陸軍、ひいては日本を主導していく・・・ いや、いこうとしたんだけど・・・ 永田ほどの人望は無かったんですかねぇ・・・ 中国を巡る考えで・・・ 自分の部下なんだけど永田の影響をモロ受けている武藤章たちに激しく抵抗され・・・ 結局、途中で陸軍中央を去っていくという・・・ 石原を追い出した武藤章や田中新一は永田の構想を強く引き継ぎ、かつ各自拡大し、彼らが陸軍を主導していくことに・・・ そして対米戦争開戦時の首相、東条英機は永田の弟分的存在だったけども・・・ 構想や戦略は永田に遥かに及ばず、その武藤や田中に頼る形だったので・・・ 開戦後、武藤や田中が次々と東条と決別した後は・・・ もはやナァナァ(というには忍びないけど)という有様に・・・ 一気に戦略性が蒸発していくことに・・・ 永田鉄山の構想が源流にあったけども・・・ それに固執するだけで・・・ 状況が変わっても方向転換できず・・・ 皆、永田ほどの構想を新たに作れず・・・ 皆、永田ほどのカリスマ性、もしくはリーダーシップが無いので・・・ 対中、対独、対ソ、対米と、事あるごとにそれぞれの考えが対立し・・・ 毎回その時々の強硬派に掻き乱され、引っ張られ・・・ ズルズルと悪いほうへ悪いほうへ向かって行く・・・ そんな流れが見て取れます・・・ 結構明快に見て取れます・・・ これがヤバイ・・・ 知っといて損はない・・・ なのでゼーヒーでオススメ 永田が死ななければ、とも考えられるけども・・・ その永田にしたって主導権争いで殺されているのでアレですね・・・ ちなみに太平洋戦争は何故起きたか・・・ 中国を巡る日米の対立によるものではなく・・・ それは欧州戦線にて、ドイツに劣勢なイギリスを崩壊させないため、という・・・ いつもと違った話が展開されております・・・ 詳しくは読んでみてちょ・・・ 最後に・・・ この著者・・・ 読んでて何だかスゲー説得力を感じさせる文章をカマしやがるぜ・・・
近年のこういった分野を扱うものとしては抜群におもしろかった。 対米戦争については一般的には軍部、それも陸軍が無定見、無計画に突っ込んでいったというのが定説のような気がする。 しかし、永田鉄山から発するいわゆる「統制派」の流れは、まったくそうでなく、満蒙問題を解決し中国国内に資源を求め自主自衛の体...続きを読む制を整えてから、最終的な世界大戦に備えるというものだった。 それにむけて特に陸軍要職に「統制派」幹部を就かせるという人事をもって、その「構想」の実現に向かっていた。 その人事の強引さからか、永田は軍務局長の要職にありながら惨殺される。 そして、その衣鉢をついだ石原莞爾や武藤章がその思想を変容させながら突き進んでいく。 永田生きざれば対米戦争は行われたであろうか。 また、東京裁判の「共同謀議」というものが仮に当てはまるとすれば、この「統制派」流れが筆頭であることも指摘しておきたい。 今までの常識を覆す好著である。
太平洋戦争は、陸軍、特に統帥部が暴走し、海軍やその他の省庁がひっぱられて、戦争に突入したという常識がある。 しかし、この本は、丁寧に昭和陸軍の人物の思想、具体的には、永田鉄山、石原完爾、武藤章、田中新一の考えをおって、極めて冷静に現状を分析しつつ、戦争に追い込まれていく状況を明らかにしている。...続きを読む 個別の事項で認識を新たにした点と、教訓がある。 (1)上記4軍人に共通しているものとして、すばらしい構想力を持っているが、組織の指示、指揮権に従わすに、組織的判断を停滞させるという、陸軍に対する欠陥をつくりだした。 今の役人と同じく、局長、部長、課長という職種のものが、大臣の意向、あるいは、部長が局長に従わないといった行動が、実は、統一的な行動をとらせなかった原因ではないか。 自分も役人として上司の意向にあわないことはあるが、組織の長として、最終的には従わなければいけない、自分で単独でこれに反した行動はとらないと決意している。このような決意がなくなった組織は暴走することがよくわかる。 (2)先日読んだ『スターリン』では、日本が早々に対ソ戦を断念したため、極東軍をソ連が対独戦にまわせたという記述を読んだが、日本陸軍は、冬に入るのぎりぎりまで、むしろ極東軍の移送状況を分析して、30%しか、対独戦にまわされなかったことから、対ソ戦をあきらめたとしている。(p253) こちらの方が確かに説得力がある。ソ連も日本を十分に牽制して、日本が攻撃にでないと判断した後に軍隊を移送したのだろう。 (3)開戦時の陸軍省の軍務局長の武藤章は、対米戦開戦をできるだけ避ける努力をしていたが、参謀本部の作戦部長の田中新一は開戦やむなしと早期に判断していた。(p263) 対米戦になれば物量等で圧倒的に不利になるとわかっていて、陸軍の枢要な地位のある軍人でも対米戦を避ける努力をしていた。 (4)武藤軍務局長は、海軍に戦争に自信ないのなら海軍からそう発言すれば陸軍内を押さえるといっていたのにかかわらず、及川海軍大臣は自分で責任をとらず、近衛総理に一任すると発言した。(p292) 責任のあるものが、悪い予測であっても、責任をもって発言しないことがどういう悲劇を招くかがよくわかる。責任者はえばるだけでなく、まさに責任をとる必要がある。
皇道派・統制派の勃興から太平洋戦争の開戦の判断に至るまで.参謀本部なりの現状分析や判断,葛藤が興味深い.
陸軍は一貫して対ソを考えて行動しているな、という感想でした。それを周囲の政治家や海軍が忖度したり誤解したり、協同したり。全体的に日本がズルズル引きずり回されてしまったのか。
タイトルのとおり、戦前の陸軍を中心にしながら、どうして日本は対米開戦を決意するに至ったかを満州事変のあたりから説明する本。 その際に、陸軍の大きな戦略構想を担った永田鉄山、石原莞爾、東條英機、武藤章、田中新一などを中心に、その戦略思想の流れ、共通認識と対立点などを通史的に説明している。 この辺の...続きを読むながれは、すでにある程度理解していたつもりなのだが、あらためて陸軍にフォーカスして読んでみると、思想と思考の多様性がわかってくる。 また、これまで誤解していた点もいくつかわかった。 歴史に「もし」はないというが、日米開戦につながっていく必然性とともに、日米開戦が多くの偶然のなかにあり、いくつかの「もし」があったら、それは十分に避けれたものでもある気がしてくきた。
良書だと思う。 多くの方が、指摘する繰り返し、時間軸逆行もそほど気にはならない。 人間の営みの本質の多くは変わってなく、やはり歴史を学ぶことの意義を感じさせる。 本書の流れを企業の内部抗争と見立てて読んでもまた、現代の先進国と開発途上国との軋轢と読んでも十分応用が可能であろう。 自らの主張をぶつけ...続きを読むるだけで決定することの責任を徹底的に回避する大物たちの小物ぶり。裁定者不在(国家間であれば国を超越する機関の不在)か裁定できないシステム(閣議不一致→総辞職)に問題があっただろう。 以降人物別に思うこと 本書は永田を中心軸に語られるが、永田の分析にはそれなりのロジックを感じるが、そこから紡ぎだした永田の結論、行動は是なのか? ・長州閥の排除をしながら自身が派閥を作ることに 疑問を持たないのか?? ・世界戦争を誘発されるの想定から国家総力戦遂行 のための準備は軍人の思想の範疇としても 短絡的では? 石原については多く語られていない。日中戦争泥沼化を予測しその反対の施策を打とうと考えながらある意味身を自ら?引いたのかの理由が不明?中央からの左遷後の石原の行動にも興味が沸く。 武藤と田中の対立はある意味近い「夢」を見ながらそこへたどり着く「道」の相違なのだろう。日中戦争泥沼化は石原が予測しとめにかかったが強硬な姿勢をとった武藤。そして対ソ戦では、田中に対し石原のロジックで否定は、、、やはり人は経験からしか学べないのか?? 武藤は、東条に対し「万人が納得するまで手段を手段を尽くして戦争となれば国民も奮起する」と進言するが、自身は田中に対して自説を納得させる手段は尽くしたのか?? 総力戦の予測からの資源確保、その手段として「満州国」「大東亜」という構想が誤った「解」であったのであろう、他の「解」を示した指導者はいなかったのか?そもそもそも他の「解」はあったのだろうか?? 他の「解」を見出せないならまたどこかで、同じ不幸を目にする気がしてならない。
レビューをもっと見る
新刊やセール情報をお知らせします。
昭和陸軍の軌跡 永田鉄山の構想とその分岐
新刊情報をお知らせします。
川田稔
フォロー機能について
「中公新書」の最新刊一覧へ
「学術・語学」無料一覧へ
「学術・語学」ランキングの一覧へ
石原莞爾の世界戦略構想
木戸幸一 内大臣の太平洋戦争
近衛文麿と日米開戦――内閣書記長官が残した『敗戦日本の内側』
昭和陸軍全史 1 満州事変
昭和陸軍全史 全3冊合本版
戦前日本の安全保障
永田鉄山軍事戦略論集
永田鉄山の総力戦
「川田稔」のこれもおすすめ一覧へ
一覧 >>
▲昭和陸軍の軌跡 永田鉄山の構想とその分岐 ページトップヘ