万城目学のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ文庫になったら読みたいなと思っていた作品。
二作の短編からなる構成。どちらも駅伝と野球というスポーツが題材になっていて、京都に因んでか、新撰組が登場したり、沢村栄治がピッチングしたりエブリデイマジックの物語。不思議な感じがするが、京都の街角では得も言われない気配を感じることもあるので、納得の舞台設定だった。
二作とも素敵なストリーだが、『十二月の都大路上下ル』が個人的には気に入った。「走る」ではなく、「上下ル」なのが洒落ている。
補欠だった高校1年生女子がセンパイの故障から抜擢され、都大路をアンカーで走ることに。
戸惑いと緊張、闘争心と心情描写が巧みで女子高生の気持ちがリアルに伝わってきた。駅伝選手なのに超絶方向音痴とは?ハラハラしながら疾走を見守り、心の中で「頑張れ〜」と応援してしまった。
後書きが、日本を代表するアスリートの田中希実さんだったのはびっくりした。
高校女子駅伝ということと田中さんが同志社大卒だからか、「京都だから」という設定のエブリデイマジックに当てはまったのだろう。
田中さんらしい真面目で、走ることを極めようとしている真摯な姿勢が伝わる文章でとても良かった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ万城目学さんの「日常を見る目」がとにかく面白い。
何気ない出来事を独特の視点と言葉選びで切り取り、笑わせてくれるのに、ふと家族や友人、別れや人生についての文章が差し込まれると、今度はじんわり胸に響く。
軽妙なユーモアと、人生の切なさや温かさが同居しているのが魅力的。
十二か月を「色」で描く文章も印象的で、万城目さんならではの感性が光る。
さらに「待ち会戦記」では、直木賞をめぐる期待や不安が垣間見え、作家の素顔にも触れられる。
笑って、驚いて、少しほろりとして、読み終える頃には日常の景色まで少し違って見えてくる。
万城目学の文章そのものを存分に楽しめる一冊だった。 -
Posted by ブクログ
万城目学 直木賞受賞作『八月の御所グラウンド』文庫化。
『十二月の都大路上下ル』 12月、女子全国高校駅伝。急遽、代走として、アンカーで出場することとなった坂東。
坂東には極度の方向音痴だという不安が…
そして、当日、荒垣新菜とデットヒートを繰り広げる。そんな2人が都大路で見たものは…
『俺たちの箱根駅伝』からの駅伝つながりで、女子全国高校駅伝。
坂東の方向音痴は絶望的。そんな坂東が荒垣新菜とデットヒートを。
そんな中で2人は、新撰組のコスプレをしたひとたちが並走していることに気づく、が、それは…
だからなんなのかということだが…
歴史ある京都だから。
過去にたくさんのひとが戦乱の時代に生命を落とした京都だから。
そんなことがあっても不思議じゃないのかも。
坂東と荒垣。また来年、都大路を一緒に走って、競って欲しいな。
『八月の御所グラウンド』 8月、ほとんどの学生が京都から消える夏休み。彼女に振られた朽木は、高校時代からの友人・多聞から借金のかたに野球大会『たまひで杯』に参加することに…
寄せ集めチーム『三福』、多聞、朽木に加え、中国人留学生・シャオさん、見知らぬ青年たち…
シャオさんが信じがたいことに気づく…
『みんな、野球がやりたかったんだ』。
えーちゃんも、遠藤くんも、山下くんも。
戦争で野球どころじゃなくなった時代。
野球がしたくてもできなくなった若者たち。
考えると、朝っぱらから御所グラウンドで野球をすることが、いかにしあわせなことかと。
『みんな、生きたかったんだろなあ』。
今、生きる我々はこうしてしあわせに暮らしていることをありがたく思わないと。
世界では戦争、紛争はそこらじゅうで。
日本も人事ではない。
ちゃんと生きるべきだ。
『俺たち、ちゃんと生きてるか?』