平川祐弘のレビュー一覧
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崇高すぎて敷居が高く敬遠していたが、ドラマ「BORDER」の謎解きに出てきたので読んでみた。ダンテがラテン語ではなくトスカーナ方言で書いたのは、より多くの人に読んでもらいたかった故だろうし、分かりやすい平川訳で読んで正解だろう。
「神曲」というタイトルは森鷗外の紹介文からきていて、原題は「喜劇」という意味の「Commedia」だそうだ。当時の人物名をバンバン出し、地獄で大変な目に遭わせ糾弾するというジャーナリズム的な意味もあったらしい。知識があればもっと面白く読めたろうに残念。
大食らい、吝嗇、浪費、異教異端、暴君、自殺、男色、女衒、阿諛追従、聖職売買、魔術魔法、汚職収賄、偽善、窃盗、権謀術策 -
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いやあ楽しかった!ーー
目の前に現れるリアルな地獄の凄絶なこと!
おびただしい罪人がさまざまな苦行を強いられて、苦しんでいる。
それをただただ目にし、目的地へそぞろ歩いていく。
ダンテのおののきがこちらまで伝わってくる。
読む前はもっと抽象的で難解な作品だと思っていた。
それぞれの歌の前に訳者による「内容紹介」と、本文あとの注解により理解が進む。
とにかく情景が具体的で生々しい!その情景を見るだけで読書の醍醐味を与えてくれる。
おびただしい人名は読み飛ばして、ひと息に目を通しながら文章を味わうだけで大きく満足できる作品。
よーし、煉獄篇天国篇もサクッと読んでいくぞ!! -
Posted by ブクログ
眩しいばかりの光で目が眩みそうだった。
神学理論は難解で理解に苦しんだ。
ベアトリーチェの美しさは抜きんでていた。
聖母マリアの慈愛は心を溶かした。
聖母の助けによって至高天に昇った時、全てがわかった。
地獄を下り、煉獄の山を登り、天国で神の玉座まで上昇していく。
「神曲」という建築物を駆け上ることができたのは、平易な現代語訳があればこそであった。
ゴシック建築は立体的な聖書と言われるが、高校時代の無神論者であrと公言していた師が、フランスに旅行に行った折、シャルトル大聖堂に入り、思わず跪いて神に祈ったと語ったことが忘れられない。
たとえ全てが理解できなくともこの3冊を読み通すと同じように神 -
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日本人研究者の英語の主張が活字となり世界で認められてこそ意味がある。「日本人は日本語で」というのは島国根性で了見が狭い。羽田は日本の空港だから管制官は日本語でやれと主張する人はいない。p.30
宗教はどこの国でも戦争中は国に仕える。米大統領はGod bless youと米兵を祝福して戦地に送り出す。p.81
自国を批判することは大切である。しかし自国を悪く言う方が恰好がいいという知的ファッションだけの人間もいる。世間には親が嫌いな子供がいる。親に楯突くことで子は育つ。反抗期の子に親孝行を説いても無駄だろう。だが気づいてみると、孝行しようと思うときに親は亡い。p.104
日米開戦をせざるを -
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ネタバレ上巻・中巻に続き、本巻が最後。8-10日にわたる30話を収録しています。
話の内容は相変わらずトンデモ話やエロ話なのですが、一番強烈だったのは第9日第10話。ピエトロ親父の妻を神父さんが魔法で雌馬に変えるお話。生々しくて粗筋を書くのも躊躇する笑。興味がある方は是非読んでみてください。
他方、第10日は「愛やその他のことについて、立派なことをした人の話」というテーマが掲げられます。ここではこれまでと趣向がやや異なり、理性・忠節・貞節・騎士道といった美徳・人徳が発揮されたエピソードが描かれます。
ですから、とりわけこの下巻を読み終えて感じたのは、人間の振れ幅の大きさ。邪悪にもなれれば気高く振舞 -
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ネタバレ3巻からなる大作の中巻は4日目から7日目の計4日間・40話を収録しています。
当『デカメロン』ですが、実は毎日テーマが決められ、話が展開していきます。例えば4日目は「その恋が不幸な結末を迎えた人の話」、7日目は「女たちが夫に対してやらかした悪さの数々」など。でも、艶話・面白話もこうも続くと、多少の変化が日々ついているとはいえやはり少し飽きを感じてしまいます。
そんなことをたらたら考えながら読んでいましたが、訳者平川氏の渾身の解説に大きな学びがありました。それはダンテとの対照性です。
端的に言えば、ボッカチヨは寛容である、という主張。
ボッカチヨはダンテを尊敬し、作品も相当読み込んだらしく -
Posted by ブクログ
ネタバレ世界史でボッカチョを習うまでは、デカメロンと聞けば私には「少年隊」しか思い浮かびませんでした(ほとんどのかたの頭に?が浮かぶことでしょう)。
ボッカチョは世界史ではルネサンス期の文学者として登場しますね。そして、本デカメロンは、ペストで人口の2/3が死に絶えたフィレンツェで男女10人が10日間にわたりとっておきの話を披露するというものです。
全体に渡り艶話が多いのが特徴。とりわけ出家した修道士が性欲むき出しであれやこれやといそしむ話や、連れ合いが居る身なのに「真実の愛」とか何とかでもう手八丁口八丁で合体しちゃう話とか。700年弱前に完成した作品ですが、今読んでも大分ストレートだなあ、とたじ