【感想・ネタバレ】神曲 地獄篇のレビュー

あらすじ

一三〇〇年春、人生の道の半ば、三十五歳のダンテは古代ローマの大詩人ウェルギリウスの導きをえて、生き身のまま地獄・煉獄・天国をめぐる旅に出る。地獄の門をくぐり、永劫の呵責をうける亡者たちと出会いながら二人は地獄の谷を降りて行く。最高の名訳で贈る、世界文学の最高傑作。第一部地獄篇。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

地獄に住む魂たちの中にも、ダンテが共感や尊敬を抱いている人物たちが、幾人か登場します。
第5歌のパオロとフランチェスカ、第10歌のファリナータ、第15歌のブルネット、第26歌のオデュセウス、等。

そして誰より、ダンテを導いてくれる準主役のウェルギリウスがそうです。
彼らが当時のキリスト教会の価値観では、天国に行けないという事に、必ずしもダンテは納得してなかったのではないでしょうか。

ウェルギリウスは、天国に座を占めるベアトリーチェから頼まれて、ダンテを救済することになりました。
しかし、地獄にいる魂は、神に見棄てられ、天国からその存在自体を完全否定されている者たちです。
キリスト来臨という例外は有りましたが。
ですから、ダンテを救済するために、地獄の住人にそれを依頼することなど、本来はあり得ないでしょう。

それでもウェルギリウスは、こうして天国のベアトリーチェと接点を持ち、地獄のみならず煉獄をも旅をし、地上楽園までたどり着いています。
『神曲』全体の約3分の2の間ダンテを導き、「天国篇」の導き手であるベアトリーチェの約2倍の出番が、ウェルギリウスに与えられているのです。
こういったところに、ダンテなりの、当時のキリスト教会の偏狭さに対する、アンチテーゼが込められている気がします。
つまり、キリスト教会の定義を越えて、ウェルギリウスたちをも神の愛は包み込んでいる、というダンテの願いが見出だせる気がするのです。

以上はあくまで私の、推察とすら言えない、妄想にすぎません。
ですが『神曲 地獄篇』には、直接には表現できなかったダンテの本当の想いが、比喩的に描写されていると思っています。

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2025年01月23日

Posted by ブクログ

ネタバレ

私が『神曲』を初めて読んだのは大学三年生の頃でした。今から10年以上も前です。ですがこの地獄の最下層の氷漬けの世界を初めて目にした時の衝撃は今でも忘れられません。

「キリスト教の地獄の一番底は氷の世界なのか!仏教と真逆じゃないか!」と私は仰天したのです。

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2024年08月21日

購入済み

好きこそ物の上手なれ

訳者の平川さんは、ダンテ の神曲を原語イタリア語で読みたい訳したいという子どもの頃からの願いを持ち続けて、その夢を果たされたと記憶しています。
神曲大好きという思いがヒシヒシと伝わってきて、ほんと読みやすいと思います。訳してくださってありがとうございます!といった感じです。

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2020年08月14日

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2009年1月16日~17日。
 右のほほを打たれたら相手の左のほほを殴り返せ!
 というキリスト教の教えの本(キリストはそんなことはもちろん説いていないが)。
 自意識過剰男ダンテ(作者が作中の登場人物)が自分の気に入らない人間を地獄に落として呵責に苦しませている。
 そんな感じ。
 つまらなかったか?
 いやいや、物凄く面白かった。
 詩的な文章はそれこそ「文学!」って感じがするし、なによりもダンテ(作者としても、登場人物としても)が人間臭くて。

 それにしても、キリスト教ってのも自己中心的な教えだなぁとも感じた。
 洗礼を受けなかっただけで地獄(ま、辺獄ではあるが)に落ちてしまうんだから。
「信じる者は救われる」=「信じない者は救わないもんね」

 西洋、特にキリスト教圏の国々の人たちはまた違った見方をするんだろうな。
 イスラム教圏の国々では「悪魔の書」と言われているらしい。
 なにしろマホメット(ムハンマド)を地獄に落として真っ二つにしちゃってるんだから。

 翻訳、および解説を書いておられる平川氏の「ダンテは良心的な詩人か」も良かった。
 この解説は西洋人には書けないものかも知れない。

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2018年01月06日

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崇高すぎて敷居が高く敬遠していたが、ドラマ「BORDER」の謎解きに出てきたので読んでみた。ダンテがラテン語ではなくトスカーナ方言で書いたのは、より多くの人に読んでもらいたかった故だろうし、分かりやすい平川訳で読んで正解だろう。
「神曲」というタイトルは森鷗外の紹介文からきていて、原題は「喜劇」という意味の「Commedia」だそうだ。当時の人物名をバンバン出し、地獄で大変な目に遭わせ糾弾するというジャーナリズム的な意味もあったらしい。知識があればもっと面白く読めたろうに残念。
大食らい、吝嗇、浪費、異教異端、暴君、自殺、男色、女衒、阿諛追従、聖職売買、魔術魔法、汚職収賄、偽善、窃盗、権謀術策、裏切、何でもかんでも地獄行き。心して生きよう。
漆黒の六枚羽の意味がやっと分かった。

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2014年06月08日

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いやあ楽しかった!ーー

目の前に現れるリアルな地獄の凄絶なこと!
おびただしい罪人がさまざまな苦行を強いられて、苦しんでいる。
それをただただ目にし、目的地へそぞろ歩いていく。
ダンテのおののきがこちらまで伝わってくる。

読む前はもっと抽象的で難解な作品だと思っていた。
それぞれの歌の前に訳者による「内容紹介」と、本文あとの注解により理解が進む。

とにかく情景が具体的で生々しい!その情景を見るだけで読書の醍醐味を与えてくれる。

おびただしい人名は読み飛ばして、ひと息に目を通しながら文章を味わうだけで大きく満足できる作品。

よーし、煉獄篇天国篇もサクッと読んでいくぞ!!

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2013年11月13日

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僕の予想に反し、結構わずかな時間で読み終えた。面白かったというのもあるし、訳がよかったのも大きいと思う。地獄で苦しんでいる人の描写が、人間的で生き生きしてるのが楽しい。煉獄編もこの勢いで読めてしまうかも。

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2013年08月19日

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 2000年のロンドンの「タイムズ」紙で「過去千年間の最高傑作は何か」というアンケートで選ばれた、700年以上も前の作品。

 ダンテがウェルギリウスの案内によって地獄・煉獄・天国への旅に出る。そこで様々な地獄絵図に遭遇する。

 蛇に巻かれた男が出てきたり、自分で自分の首を取って手で持ち歩く男がでてきたり・・・日本では出てこないような地獄の発想ばかり。

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2013年06月05日

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ダンテの想像力、構成力に脱帽。それを大変解りやすく訳し、そして注釈をつけている、平川氏に感謝です。

当時のイタリアで、l知りうる限りの歴史、自然、天文、数学などをふんだんに散りばめて死後の世界を描いてあり、おどろおどろしい場面がたくさんありながらも、楽しんで読めた。

注釈のなかに『往生要集』がでてきたが、仏教の地獄絵巻とかなり重なる部分もあり、比べながらでも面白いかもしれない。

先達のウェルギリウスが知的で包容力があって、素敵すぎます。
続いて煉獄編を読みます。

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2013年04月27日

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想像よりもずっと読みやすい。近所のに住む嫌いな人に対して、地獄に落ちているという描写をしてしまう、なんとも俗な感じがたまらん。面白い。

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2012年10月18日

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ずーっと読みたかったもの。難解なのかなと思っていたけれど、翻訳が良いのか面白い読み物として読めた。(叙事詩なので小説扱いではないと思う)続きがとても気になる。地獄は七つの大罪に関するもの。

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2024年12月18日

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ようやく読み終えたという感じ。
かなり読みにくい印象。
キリストを裏切ったユダや、カエサルを暗殺したブルータスやカシウスが地獄の底にいるのはわかるが、マホメットさえも地獄にいるのには驚き。
ローマカトリックのようなキリスト教の立場からすれば異教徒であるマホメットは大罪なようである。
善悪で人を捌くこの本だが、個人的には好き嫌いで物事を見る方が好きだ。
しかし、地獄の様はなかなかに激しい。
天国を見る前に、しばらく地獄篇で休暇になりそうだ。笑

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2022年08月17日

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一日一歌読み進めたが、その一時一時は非常に贅沢な時間だった。

序盤は舞台設定の目新しさに惹かれるものの、半ばこれが不朽の名著たる所以ってなんだ?と悶々とし、終盤になってようやく朧げにその輪郭が見えてきた。

とは言え、原語(トスカーナ語)の詩的な情緒だったり、ウェルギリウスやホラティウス等の詩を味わうことなしに僕の中で名著だと断言はできない。んー歯痒い。

そんな中でも、確実に言えるのはダンテの想像力と描写力、教養の深さは並大抵ではないこと。恐らくそれが名著たらしめている大きな要因だと個人的に思う。

ダンテは実際に見たことのない地獄の世界を行ったかのようにありありと描写する。絶妙な比喩もその一助になっている気もする。そこに人文学、物理学、歴史学などあらゆる学問の教養がスパイスのような役割を果たす。

注釈も詳しく、文庫で手軽に買えることに感謝!

さて、煉獄編へ〜




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2020年08月06日

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西洋古典として名高い『神曲』。
格式高いイメージでしたが、全部で100歌に分かれていて、それぞれのボリュームは大きくないので、割と読みやすかったです。
地獄篇は、詩人ウェルギリウスをお供にダンテが地獄を巡ります。キリスト教社会の死生観や当時のイタリア国内の状況が垣間見ることができます。地獄で刑を受けている人物にダンテの知り合いが多数おり、中には師匠までが責め苦を受けています。特に、ダンテの政敵が出てくるあたり、ダンテの怨念というか私情が感じられて面白いです。
また、世界史上で見知った偉人が出でくる辺りも、当時の価値観が見えて面白いです。サラディンが出てきて驚いた。とはいえ、皆地獄行きとして書かれていますが。
また、ケロベロスやベルゼブブ等、西洋の地獄や魔界の生き物達も一通り出てきます。
非常に深く解読できる名古典ですが、軽い気持ちで一歌ずつ読んでいっても十分楽しめる作品です。

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2020年04月08日

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挿し絵豊富だし注釈も親切で宗教・歴史的教養の無い私にも優しい・・・
平川先生訳の神曲、訳文も読みやすいし文章の固さがちょうど良くて(これは人によって好みありそう)理屈的に「?」てなるところは注釈で他の文献からも引いて来つつ解説されてるから痒いところに手が届きますありがてぇ~賢い人の教養お裾分けありがてぇ~
イスカンダルも地獄の下層で人の血を流し産を掠めた暴君として赤々と煮えたぎる血の川で煮られていますからね…所変わればですね
宗教、自殺者に厳しいよね。。。
最後の審判の日に己の亡骸を探しに行くも自分で捨てたものを再び身につけることは許されず地獄の森で自らの魂の茨の木にその肉体が吊るされる。。。

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2019年03月29日

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"この本に興味を持ったのは、松岡正剛さんの書評を読んだため。是非読んでみたくなった。神戸への出張の車中で地獄篇を読んだ。平川?弘さんの訳、河出書房のものだ。
キリスト教とギリシャ神話がベースに組み立てられている。この後の、煉獄篇、天国篇を読むと印象が変わるかもしれない。
古典の名作といわれている本。注釈が丁寧に記載されているので、背景や人間関係などもわかりやすい。"

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2018年10月19日

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ネタバレ

ご存知でしたか?
これは詩なんです。

一応ダンテが実体験したことになっていますが、生きたまま地獄を巡るわけです。
当時はキリスト教が法王派と教皇派に分かれて争い、法王派であったダンテは政争に敗れて追放されていました。
そんな失意のダンテの前に、古代ローマの詩人ウェルギリウスが現われ、神が創りたもうたこの世界を見て、この世の人たちに正しく伝えるように言うのです。
で、まず地獄から。

文字を読める人が少なかった中世の頃、夜、薄暗いろうそくの明かりの下で武器や農具の手入れ、織物などの手作業をしながら誰かに読んでもらって聞く地獄の様子は、それはそれは恐ろしく感じられたと思います。
死ぬほど地獄に行きたくない→神様の教えに従って、善い人生(正しい人生)を送らなければならないと思うのは、自然な流れでしょう。
そういう意図をもって書かれたのが、この神曲。
だから地獄の住人たちは歴史的に有名な悪人だったり、個人的にダンテが気にくわないヤツだったりとかなり恣意的。

もちろんキリスト教ができる以前にお亡くなりになった人は天国へ行けません。
でも、地獄にはいますけれども罰は受けていません。善い人は。
天国へ行くための第一歩は善い人であることではなく、洗礼を受けることなのです。

小難しい理屈もありますが、詩なのでテンポがいいです。
そしてダンテは、庶民に受け入れられやすいようにラテン語ではなくトスカーナ地方の方言で書いたそうなので、余計に耳から入りやすかったのではないかと思います。

“ゲルマン人のゲーテの『ファウスト』と異なって、ラテンの人ダンテの『神曲』は非常に緻密に構成された芸術作品で前後照応する場合が多く、それが精読の興味にたえる理由の一つともなっている。”(訳者あとがき)
ゲーテ、ディスられてる。

目に浮かぶような描写で地獄の様子を、罰を受けている人々の様子を、延々と語ります。
キリスト教の教義では魂は不滅です。
生まれ変わることもありません。
だから永久に罰を受け続けなければならないのです。
反省したから許されるとか、水に流すなんてことは一切ないのです。

泣いて罪を悔いても、一度やっちゃったことは取り返しがつきません。
最後の審判の日まで、地獄に落ちた亡者は苦しみ続けます。(地獄に落ちちゃった人が最後の審判の日に救われるとは思えないのですが、そこのところはどうなんでしょう。とても気になります)
この容赦のなさが、私には何より恐ろしかったです。
「罪を犯したことのない人だけが罪びとに石を投げてよい」とイエスは言ったのじゃないの?
なぜ許さん?

一章ごとに一編の詩。
詩の前にまず内容が書いてあって、全体像を念頭に置きながら詩を読み進めます。
その後には詳しい訳注。
何行目の○○について、一編につき20~30ほどの注。
それが34章。
あちらを読んだりこちらを確認したりと、思いのほか時間のかかる読書でした。

ダンテが付けたタイトルは『喜劇』
後の人たちはこれを『神聖喜劇』と呼びました。
日本語タイトルの『神曲』は、森鷗外がつけたらしいです。
キリスト教にほぼ初めて触れたであろう明治の文人たちは、この作品のどこに心を打たれたのでしょう。
作品の文学的な部分なのか、信教の厳しさなのか。

私はこの本を読んで、どうせ落ちるなら仏教の地獄に落ちたいものだと思いました。
とりあえず蜘蛛には親切にしておきます。
そして、糸が切れそうになっても皆を励ましながら、心をひとつにして極楽をめざそうと思います。←お釈迦さま、その際はよろしくお願いします

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2017年01月20日

Posted by ブクログ

まぁ…どちらにしてもダンテさんの頭のなかはこうだったんだということが出ているんでしょう。西洋の人の極端さが認められてん〜んって感じ。
日本にも地獄思想があったので、人間ってそんなものなのかとちょっと落胆しましたが、脳は変われますから希望は持ちましょう。
個人的にはギリシャ神話やローマの英雄なんかがちょくちょく出てきて楽しめました。
乗りかかった船なので仕方がないから、気は進まないけど煉獄篇、天国篇も一応読んでみます。

訳者の平川先生のボッカチョ作の「デカメロン」はきっと池田先生テイストなんじゃないかと読んでみたくなりました。

Mahalo

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2015年01月01日

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なんとなく読み始めたら、面白くてついつい読み切ってしまった。想像力をかき立てる描写もすごいけど、何より凄いのは人々を一元的に断罪するキリスト者の狂気だと思う。まだキリスト教が宗教としての意義を持っていた時代の、だからこそ垣間見せる狂気には現代の新宗教と共通するものがある。

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2014年02月21日

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事前の知識も全くないまま興味と勢いだけで購入。当初は本の厚みにビビリましたが、読み始めると意外とさくさく大変興味深く読み進めることが出来ました。地獄巡りの旅の描写には想像力をかき立てる凄みがあって、思わず自分はどの地獄に落とされるのか・・・なんて考えちゃったりしました(笑)

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2014年01月25日

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ネタバレ

なんかもっと深遠な、とてつもない哲学が語られるのかと思っていたが、何のことはない、上方落語にもある地獄めぐりの物語だ。それに付け加えるものがあるとすれば、ふんだんに登場する実在の人物たち。彼らの生前の所業を断罪するその手際が当時の人々の目からすればジャーナリスティックに映ったのかもしれない。
ただ、ディティールの表現は確かに秀逸。蛇が人間に、人間が蛇になる描写など、さしずめSF映画のようにビジュアルに訴えかける。想像力をかきたてる描写は圧倒的。

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2013年12月27日

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すいぶんかかって読破。
地獄篇~煉獄篇~天国篇と、あわせて1000ページを軽く越えるボリューム。
ちなみに、宗教的な興味がとくにあったわけではない。

「分かりやすい」と好評の訳だけあって、さながらダンテと旅する気分。地獄篇では、さまざまな罪によって罰を受ける人々を見て、ちょっぴり自分の罪を悔いてみたりもした。
煉獄から徐々に抽象的になっていき、天国はまったく理解を越えていた。まだ私の魂はそこに到達できないらしい。(笑)

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2013年04月09日

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歴史に名を残すダンテの文学作品、「神曲」です。政治活動に深く関わっていたダンテが政変に巻き込まれてそこから永久追放された後に綴った文学作品であり、まずこの地獄編は人間省察の本であるとも言えるでしょう。人間が地上でどのような悪行を重ねるとどのような地獄に落ちるのかと言うことを詩的に文学的にこれでもかと言うほどの文章では表現できないような恐怖や狂おしいほどの苦悩の様の有り様を生生と活写している本です。
ダンテがこの本を通して一貫して訴えたいことは因果応報と言う理念のもと、現実に名誉を得て現世では有名だった方などが地獄で生々しく激しい責め苦を受けている姿を描写している様は非常に面白いものがあり、何故そのような責め苦を受けているのかの理由なども記載しており、因果応報とはこのような事かと理解されます。
一生の間に1度は読んで起きて本であると言えるでしょう。

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2022年02月14日

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よくぞここまで....というほどの、(当時の時点で)ありとあらゆる想像しうる責苦が、生きている中で犯した罪の応報として描かれていて興味深い。
宗教・歴史上、差別的な思考や記述というのもあるし、作者の偏っているように思える思想も捉えられるが、作者含めた登場人物の強い個性や信念としての印象を残しているような感じ。
よく「崇高な思想」とか「敬虔さ」みたいな表現を見ることがあるが、本書を読んでいると、それはどれほど窮屈なのだろうかと思ってしまった。

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2021年10月31日

Posted by ブクログ

歴史や宗教の背景がないので、注釈を頼りに読み進めることに。
上方落語の『地獄八景亡者戯』だ!と理解してから、読みやすくなった。歴史的にはもちろんダンテが先。

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2021年05月03日

Posted by ブクログ

もっと難しく読みにくいものかとおもっていたら、註釈や挿絵がかなり多かったおかげもあり、わかりやすく面白く読めた。

もっと抽象的な話かとおもっていたら、結構ダンテの私情や私怨が多かったようにおもう。

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2020年12月10日

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地獄篇、煉獄篇、天国篇の3篇。壮大な構想と、綿密な構成、そして巧みな表現ということで文学史上に屹立する作品(だそうである)。

ダンテの生きた時代への理解が不十分なので読みづらくはあったが、読み応えは確かにある。ダンテが、キリスト者として当時の世界観のなかで、あらん限りの要素をこの詩の中にぶち込んでいる所が凄みか。書いている者の思いも、読む者の受け止め方も、今日とはまた違うものであったろう。また、神の世界を描いてもあくまで世俗的なところから離れていないのも魅力だ。

最近読んだ「ディアスポラ」にちょっと近いところを感じる。変な比較か?

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2018年11月05日

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ネタバレ

左手の堤へ鬼たちは向かったが
 出かける前にみな自分たちの隊長に向かって
 合図にしたでべえをして見せた。
すると隊長の方は尻からラッパをぷっと鳴らした。

時代を超えて読まれる名著中の名著。お堅いのかと思いきや、放屁場面が出てきた…。ルネッサンスの時期に、キリスト教の世界がどのように思われていたかがよくわかる本。口語訳である上に、背景が注に書かれているので分かりやすい。地獄、煉獄、天国編があるのだが、登場人物が実話や神話に基づいているのに驚いた。つまり、ダンテが地獄に落としたいと思っていた人は見事に地獄でお会いすることになる。マホメットはキリスト教を信じていたが、そこから分裂してイスラム教を作ったなど、古代の常識や慣習を知ることができるのも魅力の一つ。相当の知識がないと読み砕けないので、博学になってから読むのでも遅くはないと思った。

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2015年07月17日

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有名な作品なので、一度は読んでおこうと思い読んでいる。
歴史的背景や、宗教的背景もあまり知識がないので理解がなかなか難しい。
詩の訳というのは原文のニュアンスとかを正しく伝えるのは難しそうであるが、表現が独特で面白い。
視覚的なイメージはゲーム「デモンズソウル」が近いのではないかと思う。

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2013年11月23日

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難解として知られるダンテの『神曲』だが、地獄篇は様々な作品の引用元として使われているためか多少冗長に感じつつも楽しむことができた。興味深いのは『ニコマコス倫理学』からの引用がさらりと出てくること。アリストテレス哲学は十字軍遠征時にイスラム圏から逆輸入された思想であり、『神学大全』でそれがキリスト教内に体系化されてからまだ数十年しか経っていないはず。またギリシャ・ローマ時代の偉人達がイエス以前に生まれていたという理由だけで地獄の第一層に落とされている描写は、中世におけるキリスト教の絶対性を物語っている。

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2013年03月17日

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ネタバレ

ダンテ『神曲』地獄編,河出書房,2008(初版1966)
 再読(2009/8/12)。基本的にはウェリギリウスに導かれて、ダンテが地獄を旅する話である(ちょっと『西遊記』みたいだ)。
 ダンテ(1265-1321)はフィレンツェに生まれ、法王党として政治にかかわり、1302年、故郷を永久追放された。『神曲』は1300年頃の設定で書かれており、ダンテの敵が地獄で手ひどく罰せられ、大便のなかでのたうちまわっていたり、自分の首を提灯のようにさげて彷徨っていたりする。師匠がじつは男色の罪を犯していて、引かれていく途中だったり、亡者が地獄の鬼(悪魔?)に鞭打たれていたり、貪欲な亡者がぐるぐる回って、ぶつかって罵りあったりと、地獄はまあそんな所である。冷たい雨が降ったり、火の粉が絶えず降ってきたり、空気がくさっていたり、ときどき、ケルベロスだのミノスだのミノタウロスなどの怪物や、巨人がでてきて、悪態をついたり、予言をしたりする。キリスト教徒じゃなかったホメロスは辺獄(リンボ)の片隅で淋しくしている。マホメットやアリーは二つに裂けている。キリスト教を分離させた者に応報の罰らしい。
 たぶん、現代の映画なんかで消費しつくされたイメージだからだろうか、偉大な作品ではあるんだろうが、内村鑑三のように身の毛がよだつこともなく、こんな所かと読んでいる。地獄編が面白くないのは、ダンテが敵をいじわるく痛めつけているからもあるけど、そこには人間の「生活」がないからだと思う。ちなみに地獄でも、派手に痛めつけられている「主人公」は大悪人で、凡人は地獄に落ちても脇役である。悪人としては、恋に身を忘れた者から、偽金作り、裏切り者までたくさんいて、みな因果応報の罰をうけている。貪欲なものは生前自分がサイフにつめこんだように、地獄では自分が穴に詰め込まれていて、足だけでていたりする。
 ウェルギリウスとダンテは地獄を底まで下りていき、地球の重力があつまるところで、悪魔大王(ルシファーとかベルゼブルとよばれる)をみる。大王はキリストを裏切ったユダと、カエサルを殺したブルータスとカシウスを三つの首でかみ砕いている。彼らは悪魔大王の毛をつたって、南半球にでていくのであった。
 「神曲」の「神」は形容詞で、「神のごとき」の意味で、後に冠せられた。もともとの名称は「コンメーディア」とのこと、「ハッピーエンドの話」の意味だったが、のちに転じて、「喜劇」の意味になった。「光も黙る」とか「年老いた裁縫師が針に糸を通すような目つき」とか、うまいなと思う比喩はある。
 『神曲』はイスラム圏では悪魔の著らしい。平川祐弘(『マテオ・リッチ伝』の著者)による注釈は詳細、カーライルやブルクハルト、正宗白鳥や内村鑑三、与謝野晶子などの意見を事細かく、引いてくれている。訳としてもよみやすい。『神曲』はその後の地獄のイメージなどに影響を与えた作品で、中国に宣教したイエズス会士などの頭にもあった作品だろうと思う。

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2014年12月11日

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