上間陽子のレビュー一覧
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沖縄の女の子たちが家族や恋人、面識のない男から暴力を受けながら育ち、そこから必死に逃げて自分の生き方を探すまでの過程を調査した記録。
ここであえて「女の子」と書いたのは、本書に出てくる女性はもれなく10代で妊娠して、暴力を受け居場所を追われているからである。著者の上間さんは、この女の子たちから聞き取り調査を行うだけでなく、人生の決断にまで踏み込み、調査対象者の人生に寄り添いながら調査をしている。
社会学の調査では、通常は調査対象者から一歩引いた立場で、調査対象者の決断には影響を与えないようにするのが一般的だろう。(参与観察という社会学の調査方法からも分かる通り、やはり「観察」が基本な -
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上野千鶴子の担当する章が興味深かった。
ホモソーシャルな集団(往々にして男性中心のコミュニティを指す)では、同性愛嫌悪(ホモフォビア)とミソジニー(女性蔑視)を持つことで成員資格が与えられる。つまり、異性愛者として女性を性の対象として扱うことができてはじめて「仲間」として認められる。
ホモソーシャルの考え方を使えば、非モテ男性や弱者男性、インセルといった現象も説明できる。
冷静に考えたら別にモテなくて落ち込む必要はないのに女性に性的にモテなくて落ち込む人が存在する。
それは実は女性にモテないのではなく、自分が男社会で「仲間」と認められないから落ち込むのではないだろうか?
そういうのは本当 -
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ネタバレ「海をあげる」が良かったので手に取り。著者のメイン研究ということですが…すさまじかった。
このような女の子たちの話を他でも読んだことはあったと思うけれど、何と言うか土地柄と言うか地域性もあるのかな、東京などとは少し感触が違うように感じました。
そうしなければ生きていけない、という状態の究極に追いつめられている感じというか彼女たちのような人こそをサバイバーというのだなと。
どの人の話も苦しくなりますが、鈴乃さんの話が一番自分は揺さぶられた。
そこまでよく自分を引っ張ってきたなぁと、自分だったらとても同じようにサバイブすることはできなかっただろうなぁと。当たり前の事を当たり前にさせてくれない社会 -
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上間陽子さんの作品、「海をあげる」に続き2作目。この作品の方が早く出版されたのだが。
「海をあげる」を読んだ後、しばらくしてNHKの100分de名著フェミニズム編で上間陽子さんが出演していた。
落ち着いた、とてもいい印象だった。
で、その後の読書なので、前回よりも好意的に読むことができた。沖縄の少女たちに寄り添うことを決意した生き方を応援したい。
研究者の本としては、自分の感想がゆるゆるに書かれているのが、前回違和感があったのだが、今回は、ま、いっか、と思いつつ読めた(笑)
上を向かないと涙がこぼれる、といった筆者の気持ちが挿入されるのが、どうも苦手ではあるが、こういう書き方が必要なのだな、 -
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ネタバレ勉強になった。『侍女の物語』に見られる女性の分断は、男女雇用機会均等法や派遣法などによって現実に起きている、といわれると、たしかにそういう見方もあるなと気付かされた。専業主婦、一般職、総合職…
ルネ・ジラールの欲望の三角形の話は聞いたことがあったので、それが上野千鶴子さんの話に出てきて嬉しかった。たしかに、頼朝の女ばかり口説く「鎌倉殿の十三人」の三浦義村はそれだなと思う。
男は男に認められることで男になるが、女は男に認められることで女になる、その性の非対称性もわかりやすかった。結局この社会はそんな家父長制の尾っぽを引きずったホモソーシャルな社会だけれど、会社と半身で関わる・プライベートを大切に -
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2023.1.2放送のものに、放送では伝えられなかった内容を加えさらに充実させた1冊です、とディレクター山田氏の「はじめに」弁。
「伊藤野枝」は番組では辻潤と大杉栄との関係と28歳までに7人の子供を出産、というのがとても印象に残ってしまってあまりいい印象は無かったのだが、加藤陽子氏の活字を読むと、思索の人ではあったのかもという印象が少し増えた。明治28年の生まれで生家は没落はしていても潤沢だったころの生活の名残があり、労働者の開放を思想しながらも、女工たちの生活との間には一線がひかれている、などのことが改めて分かった。
「侍女の物語」では筋書きや登場人物の意味付けが書かれていて、気づかなか -
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紹介されている本はどれも興味深かった。
ジュディス・ハーマンの心的外傷と回復は、特に読みたいと思った。
・伊藤野枝の「階級的反感」にはめちゃくちゃ共感する。
正義に燃え、階級による格差や差別をなくしたいと思って活動しているのに、(活動による救済の対象である)労働者階級と仲良くできない。相手には拒まれてしまうし、相手のそんな振る舞いに自分も苛立ってしまう。
それを率直に認めて見つめるのは勇気がいるがとても大切なこと(今のリベラル知識人に足りていないこと)。
そして、上間陽子の「階層的な違いや壁は確かに存在する。でもそこからだけどな、そこからスタートすればいい」というのは説得力があった。
・アト