Posted by ブクログ
2021年01月09日
読んでいてこんなに辛く苦しい本はなかなか無い。だけど読み終えた後には、読んで良かったと心から思った。
著者の上間さんは琉球大学の教授(教育学)で、1990年代後半から2014年までを東京で、それ以降は故郷である沖縄で、未成年の少女たちの調査と支援に携わる活動をしている。
10代の若いうちに出産をし...続きを読むたり、性風俗の世界で働く少女たちと関わってみると、そういった少女たちの多くが家庭で虐待(性的虐待を含む)されていた経験や、強姦された経験、そして恋人からの暴力を受けていた経験などを持つことが分かっていく。
この1冊の本に6人の少女が登場する。
彼女たちは、普通の少女であれば中学から大学あたりまでの青春を謳歌している時代を壮絶に生きている。
性的に早熟であるため10代のうちに妊娠をして産む道を選ぶ少女、稼ぐためまたは恋人に貢ぐために性風俗で働く少女、親や恋人から凄惨な暴力を受けてきた少女など、どうしてこんなに若い女の子に苦難ばかりが降りかかるのかと感じてしまう少女たちのノンフィクションが紡がれている。
精神的な分野については明言はできないけれど、彼女たちの多くは、大切にされた経験がないからそのような苦難の道を選んで進んでしまうのかもしれないと感じた。
恐らくそれを回避する方法はいくらでもあるはずなのに、彼女たちにとっての最善が、奇しくも辛い道になってしまっていたりする。
読んでいて辛く、もどかしいのだけど、それが既に過去のこととして語られている章では、その先にあった晴れやかな現在についても知ることが出来てほっと一息つけたりもする。
この本に登場する少女たちは、壮絶な人生ではあるけれど、みな真っ直ぐ懸命に生きていて、とても美しい。
自分のためじゃなく、誰かのために生きるという身の削り方をしていて、もっと自分本位に生きていいのに、とつい思ってしまう。
そんな彼女たちにいつも寄り添う上間さんの存在がとても優しい。上間さんがいなければ、とっくにこの世から飛び去ってしまった少女もいただろうと思う。
身内のほとんどが信じられない存在である彼女たちにとって、他人である上間さんこそがいつでも信じられる味方なのだと読んでいて感じた。
ずっしりと重くて、だけど温かさや少しの希望も感じる本。
ささやかでも自分の居場所を見つけられた少女たちの本物の笑顔は、やはりとても美しい。