柞刈湯葉のレビュー一覧
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横浜駅SFの人の短編集なのでめちゃめちゃな設定のバカSFみたいなのを期待したが、わりと予想を裏切られた。
・冬の時代
あんまり印象に残ってない。長編の導入1章だけ読まされたような気分。
・たのしい超監視社会
1984のパロディで現代風刺。題材が手垢にまみれているように感じてしまった。
・人間たちの話
生命の定義の変遷とか、国際会議の感じなんかはそれっぽい。でも話としては煮えきらない感じ。SFとしての外連味に振り切らず、家族の話になってしまったのが個人的肩透かしポイント。
・宇宙ラーメン重油味
よかった。これは文句なしバカSF。作者のバイオ経験はこっちの方でむしろ活かされている感じがする。
・記念日
これはなんというか不条理文学というやつなのでは。オチはうまいと思った。たしかに家で待ってる猫と岩ってだいたい同じだよな。
・No Reaction
ちょっとバカSFしてて好き。あとオチのダークマター人間もよい。 -
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作者ならではのものごとの捉え方がわかるような、そういうものの見方をするんだなということが伝わる作品ばかりであった。
作者自身が大学の研究に携わっていたということもあり、専門的な用語や難解な言葉もそれなりに出てくるのだけれど、それでも読み返せば意味は通るし楽しめる。
『たのしい超監視社会』は、監視社会と言われたら自分が監視されることを想起するのが一般的だと思われるで、互いに監視し合うことで、実は監視することに楽しさを覚えるのではという点が、もうすでにSNS等でそれに近しい世の中が出来上がりつつあるのではと思わされる作品だった。
他の作品においても、新たな見方を開眼させてくれるようなものばかりで、他の作品も読んでみたいと思えた。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ短編集 一編ずつは短いのでサクッと読みやすいかと思いきや、設定があまりにも壮大すぎて、ん?って立ち止まりながら読んじゃう。
「まず牛を球とします」
牛肉を食べたい、でも動物の生を尊重したい。という人間が誰しも(?)が持つ相反するこの矛盾する気持ちを、解決するために、大豆を遺伝子組み換えして作った球体の牛を、大豆の一種ですと言い張る世界の話。あとは逆に牛の遺伝子から作られた人間の話しとか。世界をシンプルにするとこうなるのかなぁ。感想がとても難しいが、小川哲さんが言ってた「世界に対する皮肉をぎゅっと凝縮してる」ってのが一番しっくりきました。他の生物を尊重できることが、人間としてのひとつの優位性みたいなもので、それをつきつめると、じゃあ牛(大豆)を球体にしちゃえばいいじゃんってなって、でもそれだと結局よくわからんくなって。
「数を食べる」
3個あるリンゴから、3とリンゴに分けて、それぞれ食べる話。まじで意味がわからない。でも、数字って何か他の概念に絶対にくっつかないと存在できないもので、それを他の概念からひっぺがした時に、残された「モノ」は何になるんだろうねっていう問い。
「東京都交通安全責任課」
AIが発展して人間が不要となった世界。人間はAIのミスの責任を取ることでしか、社会的な役割を果たせなくなっている。めっちゃ皮肉だけど、一番響いた。 -
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重力を司る重素の発見により、現実とは似て非なる発展を遂げた世界。大塚大学理工学部重素工学科に進学した僕は、一人暮らしを楽しんだり、友人とひと夏の冒険旅行に出たりする日常の中、一冊の本との出会いをきっかけとして、重素を用いないで空を飛ぶという「飛行機」なるものを作ることを決意する。
重素の過剰採掘により膨張化する地球や反重力を使用した航空機といった、かなり綿密に構築された世界観を、大学生の一人称の中で小出しにしながら明らかにしていくスタイルのSF長編。青春小説としても歴史改変SFとしても楽しめる作品。
時にユーモラスでありながらも、あくまで淡々とした筆致は青春の過剰さを強調しすぎない、平熱青春SFといった趣で評価が分かれるところかもしれない。
「飛行機」に主人公が唐突にのめり込んでいく様も、現実との接続を試みる作者の意図は分かるものの、少し無理がある気がした。
余談だが、作中で出て来る四国独立というモチーフから、ある名作を思い起こした。また再読したい作品が増えてしまったようだ。 -
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たまにSuicaのタッチがうまく反応せず、自動改札機に引っかかることがある。
サッと体を止められた瞬間、「お前、本当に運賃を払っているのか?」と改札機に問い詰められている気分になる。
あの瞬間は自動改札機が意思を持っているかのように感じられる。
だから「横浜駅が人間を支配する」というこの物語にもすんなり納得して、設定には一気に引き込まれた。
設定にはすごく惹かれたんだけど、心理描写が淡々としていたせいか、人物には最後まで感情移入できず、世界にも入り込めなかった。
世界観があまりにも壮大で、自分の頭の中ではうまく映像化できず残念。
もっと理解できたら、きっと何倍も面白かったんだろうなと思うと悔しい。
フェアだけど、『横浜駅SF 全国版』はちょっと飛ばそうかな…。
これに懲りずに次へ行こう!
Audibleにて。 -
Posted by ブクログ
人間たちの話
いすかり湯葉
イラスト、あらゐけいいち
早川書房
●人間たちの話
まず、生命が生まれるっていうのは、とてつもなく複雑な化学反応なんだ。
こう分子がきっちりと並んでいると、隣同士の原子でしか反応が起きないので、とても生命が生まれるような複雑なことは起きそうにない。
いってみれば、学校の授業中だ。
液体の水ができる。これは休み時間だ。
宇宙生命よりも難題じゃないか、と境平は思った。居場所を失った子供がどこに行くかなんて、境平は人生において一度も考える機会がなかった。
ちゃんと家族をやろう。とりあえず、そこから、始めよう
●宇宙ラーメン重油味
温度は体温よりやや高い。
なお彼らの体温は85℃で、このスープは105℃である
●記念日
人間には死ぬ機能がある
●No Reaction
ぼくは透明人間だ。名前はまだない。