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駅監視システムとの情報戦に挑む『京都編』、横浜駅の崩壊と再構築を観測する『群馬編』、駅の侵食から逃れた代償に暴力が許容される『熊本編』、消息不明になった北の工作員の行方を追う『岩手編』を収録。
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Posted by ブクログ
面白かった!横浜駅SFのサイドストーリー的な全部繋がってる短編集。「京都」「群馬」「熊本」「岩手」。 ヒロトに影響を与えた二条ケイジンの娘、ケイハがキセル同盟を立ち上げていく経過が面白かった。キセル同盟はてっきり、両端区間だけ払って、中間運賃を払わない不正乗車のキセルからきてると思っていたが、本書内...続きを読むに出てくる煙草密売業から由来していることになっている(もともと、語源はタバコのキセルで正解なんだが)。多分全部つながっているんだろうが、こういう設定や仕様がとても面白い。JR北海道のアンドロイド工作員のところも面白かったが、結局ユキエさんは話にしか出てこず、ユキエさんが主役の作品も読みたい。あと、サマユンクルのその後とか。 存外気に入ったのが、あとがき。あとがきではなく、あとがきという題の面白いSF短編になっている。 p253「英語なんて海外行けば勝手に覚える」というのはまるっきりの嘘だ。喋らなければ覚えない。そして日本もアメリカも、ほとんど人と会話せずに過ごせる程度には文明化されている。」 これはその通り、フィクションではなく本当。2017年にあのTタワーの富豪がプレジデントをしてたときに、メキシコとの国境で壁を作るという実際の話が出てきて、それを構造遺伝界を伝播させることで、自己増殖的に構築させる、という計画が描かれたりとか、実際の体験談というか事実レポートをパラレルワールド的にズラせて、横浜駅SFシステムにのっけているところが、非常に脳味噌が煮えた感じで楽しい。そして、結末がすごい。 この”あとがき”は必読である。 実は、 横浜駅SFの前巻を読んだ後、 あまりに面白かったので、慌てて同じ古書屋に行って、 全国版も回収してきた。 横浜駅SFの横に並んでたのは見ていたが、同じものだと思っていた。 特装版、みたいな。 確か、価格が百円違いぐらいだったので、なんにせよ捨値であったが、 より安い方を選ぶわな、読むだけやし。 で、この、私がよく行く古本屋、他所の同チェーンに比べると、 いくらかお安い設定になっているので、、 時折、デジタルセDリが居座っていて、不快ではある。 本をよく知っていて、目利きで行っているのは、まあ許せるんだが、 バーコードリーダーで片っ端から差額チェックしていく姿は 羅生門で死体から髪の毛を引き抜くあのシーンを連想させられる。 まあ、私としては興味のないジャンクなハウツー本から狙われるので、生息域が違うといえば、違うのだが、それでも本愛のカケラもないところがどうにも辛い。 ただ、ひどいことに、 そのバーコードセDの人、青い顔でめちゃゴホゴホと嫌な咳をしていたので、 咳に気づいた瞬間に、ささっと目的の本だけゲットして(残っててよかった) 他の本は物色せずに店を出た。 本屋で本以外のことも注意せなあかんというのは 嫌な時期やな、と思う。
「プロローグ」は青函トンネルの作業現場から始まる。そこはJR北日本が「横浜駅」と戦っている前線。 この本は2017年12月24日に販売された「横浜駅SF」の後、2018年8月10日に発売された番外編の短編集。収録内容のタイトルは以下の7つ。 ●プロローグ ●瀬戸内・京都編 A Harash Mi...続きを読むstress ●群馬編 Self-Reproduce ENGINE ●熊本編 Confectionery 451 ●岩手編 Scabbers Live in Your Brain ●エキナカ都市案内 ●あとがき 自己増殖を繰り返して日本全土を覆いつくさんばかりの横浜駅だけれど、海中を侵略することはできない性質になっているので、北海道の人々は青函トンネルで横浜駅上陸を阻止していて、九州の人々は関門海峡で横浜駅進行に抗っている。四国は瀬戸大橋があるので残念ながら横浜駅の魔の手に。 本州は「横浜駅」に覆いつくされてしまうけれど、境界線の形が多少変わることがあったとしても、土地の座標は変わらない。 横浜駅化で失ったであろう伝統があろうとも、人々は横浜駅内で新しい地域性を獲得している。その生活の雰囲気が端々に感じられて面白い。その土地に生きる人々の生活にこびりついている地域性が味わい深い。ご当地ルールというのはともすれば馬鹿馬鹿しい時もあるし、あまりに固執されているとうんざりもするけれど、やっぱり人間らしさもある。抗いがたい可笑しさがある。 前作も色々な地域が絡み合った話だったけど、長編のストーリーだったのでそれぞれの地域を移動する様子も強く書き表されていて、蔓延った横浜駅の大きさを感じさせると共に、土地に「地続き」感があった。でも、今回は一話が大体一つだけの地域に焦点をあてている。読み進めるうちに短編の一つ一つが自分の中で比較できて、前作より地域差が顕著に感じられる。 人間の生活様式に多大なる影響を与えながら増殖する横浜駅は、生活する「場」としては実はそんなに悪くなさそうに見える。雨風を凌げ、食料もあり、巡回ロボットが安全を保証してくれる。しかし、それはルールに従えている間だけだ。ルールをひとたび破れば、すぐに駅から追い出される。何でも飲み込んでくれるように見えても、横浜駅は誰もを受け入れてくれる世界では無い。 枝はそれぞれの方向に伸び、さらに分かれていく。しかし結局「一本の木」であることからは逃れられない。 色々な登場人物たちが出てくるけれど、勝手気まま、自由に振る舞っているように見える者でも、やはり所属している何かや信条を出し抜けない。この世界は政府も「日本」という概念も「東京」という首都も失った。芯を失ったように見えるが、人々はなお何かに囚われて生きている。一方で、ルーツを持たず「目的」を与えられて生み出されるアンドロイドの姿が、時に図々しく、時にいじらしく描かれていて印象的だった。連綿と続くルーツが無くても生み出されれば、やっぱりアンドロイドだって何かに囚われながら生きていくことになる。そして、囚われていることが良いことなのか悪いことなのかは一概に答えが出ない気もする。 絶対に本編を読んでから読んで欲しい感を出している「あとがき」が番外編の番外編みたいになっていてとっても面白かった。本編読んだ人へのおまけをもらったみたいな気分になれてちょっと嬉しい。 現実世界では丁度この頃、メキシコに壁を作るとかそういう話が出てきてた頃なんだなぁと「あとがき」を読んで思い出した。筆者が読む人へ突きつける先のまぁるい言葉遣いは柔らかく、どのお話も面白かった。
増殖した横浜駅が本州を覆い尽くして170年が経過した未来の話。あまりにも突飛な設定なのだが、緻密に組み立て立てられた話なっている。発表された順番としては2作目だが、前作の20-30年前の時代の札幌、和歌山、四国、岩手、京都、群馬、博多の話。オーディブルで散歩/ドライブしながら聴くのにちょうど良いお話...続きを読むだった。
横浜駅SF2巻。(と言っていいと思う。1冊目のスピンオフっていうよりは、横浜駅オデッセイの2冊目という感じ) またまたおもしろかった! そして、3巻も(書く気になってくれさえすれば)きっとある! この人ネタは絶対作ってる! っていうか仕込んでたし!と思った。 この著者の描く人物がとても好きだなぁ...続きを読む、と思う。 いや、人物の描き方が好き、の方が正しいかも。 みんな自分に嘘がつけない人たちばかり(含アンドロイド)。 前作を読んだ時から思っていたけど、ある人物について、もう一人の人間があれ?と思う瞬間、の描写にたまにドキっとすることがある。人間が二人以上いて初めて起こるある種の化学反応とか感情の動きとか。 よくこんな巧みに言語化できるなぁ、と何度か感心した。 著者はきっと、人や物事をすごく正確に見ている人なんだろうな、と思う。 理系なのに文系分野も強いなんて・・・と一瞬思ったけど、よくよく考えたら、言語って左脳(論理)の領域よね。もしかして理系の方がうまいものなのか! 全然関係ないけれど、巻末にカドカワBOOKSの宣伝が、派手なイラスト入りで何ページか付いており、ふだん全く読まないジャンルだったので、妙に興味深くて、じっくりとページの隅々まで見入ってしまった。 横浜駅SF関連本以外に3作品宣伝されていたのだが、そのキャッチコピーが以下。( )内は本のタイトル ・薄給サラリーマン、週末だけ異世界で冒険者ライフ(『週末冒険者』) ・副業でオーク狩り? フリーダムなおっさん公務員の無双始まる!(『デーモン・ルーラー』) ・デスマーチ真っ只中のプログラマー、(中略)気がつけば見たこともない異世界に放出され・・・(『デスマーチからはじまる異世界狂想曲』) つまり、最近のファンタジー系ラノベは完全にサラリーマンがターゲットなのね、と少し衝撃だった。昔は異世界を冒険するのは小中学生の特権だったけどなぁ。 週末だけ(あるいは期間限定で)モンスター狩りとかしてみたいなぁーなんていうゲーマー・リーマンの夢を叶えるカドカワBOOKS!っていう位置づけなのかな? なんとなくだけど、割と楽しく仕事ライフもエンジョイしてそうな読者イメージ。 個人的には特に読みたいとは思わなかったけど(すいません)、このページは楽しんで読んだ。本そのものじゃなくて宣伝だけもっと見たいと思ってしまった。
横浜駅SFの続編。前作の続きではなくスピンオフ短編集。JR北日本のユキエさんの謎や冬戦争の詳細が明らかになる事は期待しないで読むのが吉。まったく明らかになりません…が、それはそれとて面白かったです。 横浜駅SFの世界で生きるいろんな人(と、アンドロイド)のエピソードを中心に、「やっぱり生き物の目的...続きを読むって、自分自身が生存し続けることなんだよな」という当たり前な事を思い出させてくれる一冊だと思います。 数日前まで國分功一郎先生の『暇と退屈の倫理学』を読んでたので、よいタイミングでした(笑)。
キセル同盟の成立と瓦解が語られる「瀬戸内・京都編」、工作員アンドロイドの思索を巡る「岩手編」などを含む「横浜駅SF」前日譚。 各地で独自に構築された社会システムや工作員アンドロイドの内面などが語られ、より世界観がクリアになった一作。明晰な文章や緻密な設定も相まって個人的にかなり好みの作風。
横浜駅sfを再読したくなりました。 個人的にはこちらの方が世界観がある程度わかっていたので、話がわかりやすかったです。
横浜駅SFのキャラクターや世界観が好きだったので楽しめた。スピンオフ的な位置付けなので、単体としては消化不良なところも残るけれど。 ハイクンテレケ、シドウ、ケイハ、二ジョー、青目先生、ミイカ、大隈などが活躍。
期待通りに面白かったのは間違いない。一応前作のスピンオフではあるけれど、登場人物が重複していること以外前作のストーリーの大枠に大きく関わっているわけではないので、同じ世界観を共有した独立した作品として楽しむことができる。 コロポックル達がみんな個性的で魅力的なキャラクターだったな。彼らが出る話をも...続きを読むっと膨らませて書いてほしかった。特に岩手編、謎を謎のまま残して少し尻窄みな終わり方だったので中長編でもよかったのに…と思ってしまう。 このユニバースの他の時代の話も見てみたい、例えば冬戦争終了直後とか。もしくは同時代の外国はどうなってるのか、とか。ということで続編を楽しみにしています。
本編で残された謎はあらかた遠回しに解決されたけど、消化不良感もあるなと思った。 でも、こういう形だからこそ読み終わった後の余韻にひたれるのかも
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