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Posted by ブクログ
万人に面白い本ではないかもしれない。
でも、刺さる人にはとことん刺さる本。
なのでこれはおすすめではなく、ただただ私の「好き」を語るレビューです。
旅行記とちょっと変わった斜めな視点。
どちらも大好物な自分にとって、柞刈さんの旅行記は面白くないわけがなかった。
1行1行が面白すぎて噛み締めて読むから、ちっとも前に進まない。
とにかく、いちいち全部面白い。
最初は面白いところに付箋を貼ろうと思ったけど、3行に1枚ペースになったので、諦めて電子書籍を購入。
結局は電子書籍もマーカーだらけになって読みづらくなったので、「そういうことだ」とそこからマーカーもやめた。
自分と似ているのは、止まらないぐるぐる思考、気になるとすぐググる習性、相手の言うことをすぐファクトチェックする性分、面白いと思うポイントやツボ。
決定的に違うのは、頭の構造と「もの」を見る視点。
【理系出身者はギリシア文字がだいたい読めるので、キリル文字の発音も類推で結構わかる。】らしい。
何でわかるのかは、説明されても全然わからない。
理数が苦手な自分からすると新鮮で、ただただ憧れる。できることならば、私も理系の人になりたかった。(絶対ムリだから憧れる)
印象的だったのがモンゴルでの子羊の解体シーン。
私はつい、子羊側の感情を勝手に想像して、信用していた人間に襲われる裏切りや恐怖や痛み、子を殺された子羊のお母さんの気持ちまでをセットで一気に想像してしまう。
柞刈さんは、感情を入れずに生物学的な視点で淡々と観察しているように私には見えた。
これは私には全くない感覚なのでとても斬新だった。
カエルの解剖で教室を飛び出して保健室に逃げ込んだ自分とは、頭の構造が根本から違う。
だから私はグロが苦手だったのかと何だかわかった気がした。
グロ描写は絶対NGなはずなのに、柞刈さんの脳内を通すとなぜか不思議と平気で読めてしまう。
目の前にない感情を想像してしまう自分と、目の前にある物体の仕組みを探求する柞刈さん。
自分とは全く違う頭の中をここまで覗けるのは、本でしかできない体験だと思った。
そして、柞刈さんは理系頭脳だけでなく、文章も面白いからずるい。
言葉選びのセンスがたまらない。
随所に散りばめられたオタク的で秀逸な例え話が、ことごとくツボだった。
自分にとっては心から楽しい特別な一冊だった。
もっとたくさんの国を旅して、その脳内を覗かせてほしい。
★10
Posted by ブクログ
エッセイってこんなに伏線張っていいのか。気を張らない旅行をしているので文体も全体的にゆるくて読みやすいし、クスッと笑えるユーモアや比喩が多くておもしろい。個人的に好きだったのは石川県の垂水の滝を「滝というのは水が垂れるものなので、「音速のソニック」のような冗長性がある」というところや、牛久大仏を「超大型巨人が2人分」と例えた部分で、SF作家のエッセイだけど身近さを感じた。自分が旅行する時も作者のような視点で旅行してみたいなと思った。
海外編ももちろん全ておもしろかったけど、意外と一番近場の千葉編が短編としてよくまとまっていて一番好きかもしれない。
Posted by ブクログ
面白かった!!
いま一番好きな日本人作家は、と聞かれたらこの人かも。
旅行記はそんなに好きなジャンルじゃないけど、ご本人にとても興味があるので読んでみた。
予想をはるかに上回って面白かった。普通の日常エッセイも読みたい。ものすごく読みたい。有料でそういうのを配信されているらしいけれどできれば本でまとめて読みたい。
全部おもしろかったけど、やっぱりカナダ編、モンゴル編の海外ものが特におもしろかったな。
旅先でユニークな体験をした、とかいうことよりも、その体験についての考察がコテコテの理系目線なので、私には思いもよらない方向に深掘りされていて楽しい。一緒に旅行して、延々と喋りを聞けたらいいのにと思う。
あと、乗馬大好きなのでモンゴルに行きたくなった。ギャロップとかしてみたいよ。
研究職と作家業の両立が時間的に不可能となり、作家業を選んだ、とあったが、「本当は兼業を続けたかった」と書かれていて、なんとなく哀しい気持ちになった。
状況は全然違うが、私も夫の転勤により、辞めたくない仕事を何度も辞めてきたので、自己都合じゃないけど自己都合としか言いようのない理由で仕事を辞める悲しみが心の中に何重もの地層をなしていて、その上に無理やり蓋をして鍵をかけて開かないようにして生きているので、研究職を辞める決意をしたことについて、柞刈さんの控えめな(だけど、何度か繰り返し出てくる)表現が逆に胸に刺さった。人に話してもどうしようもない話だし、本当の悲しみは分かってもらえないので、ふだん話題にしないが、こういうのを読むとふっと表に出てきてしまう。
ところで、架空編になると、とたんに興味が失せた。自分でも不思議なくらいに。この架空編の二編、だるーと思いながら読んだ。
小説だって架空の話なのに、こうならず面白く読めるのはなぜなのかしら。両者の違いは何?!と自分でも謎だった。
あと、やけに誤字の多い本だった。柞刈さんと編集さん、忙しかったのですかね。
研究者らしく、事実に関してやけに厳密な人なだけに、余計タイプミスみたいなものが気になったかも。
好きなので、評価には全然影響しないけど。
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