柞刈湯葉のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
湯葉先生大好き。どの話も面白かった!
SF× 宇宙、科学、化学、アート、人々の営みを掛け合わせてつくられていて、作品ごとにそれぞれ違う内容を楽しめる。
解説を読むと、どんな経緯でそれぞれが書かれたかが分かります。
宇宙ラーメンはSF×グルメだが、将来本当にこんなふうに星別の食事を提供する店ができるかもしれないと思ってしまう。
マルグリットの石の話、「記念日」。どこ着地するかと思ったらそうくるか!部屋に石がある風景がバッチリ浮かんできてなんだか好きです。
ラストの透明人間の話「No reaction」は幽霊でもなく、どんな存在なんだろう?やや切ない。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ「横浜駅が自己増殖して本州の99%を覆ってしまう」という大胆すぎる設定に、まず度肝を抜かれる。
しかも、少し前までの横浜駅に付きまとう「いつまで経っても工事が終わらない」というイメージを、ここまで壮大なSF世界へ発展させてしまう発想力がすごい。(現在では全ての工事が完了している、よね?)
横浜駅の増殖というネタっぽさがありながら、エキナカ社会の仕組みは驚くほど緻密。
さらに18きっぷや自動改札、Suicaといった身近な鉄道アイテムが未来世界の重要な要素として組み込まれているのも面白い。
普段から利用している身近な「横浜駅」をここまでSF的に膨らませた着想に脱帽。 -
Posted by ブクログ
斜め上をいく発想でおもしろかった!
特に「東京都交通安全責任課」。
自動化技術の発達で人の仕事はなくなり、人にできる仕事は責任を取ることだけだという。
タクシーは無人化し、運転自動化で事故もあまり起こらないけどいざという時は人が辞職することで責任を取らないと被害者が納得しない。
学校では教師はいなくて、責任を取る校長しかいない。
完全にSFの世界とは言い切れず興味を刺激される。
他、犯罪者に田中が多いとされた過程とそれによる影響の話の「犯罪者には田中が多い」と、
物から数字だけを取り出すという発想の「数を食べる」もおもしろかった。
(ちょっと長くて意味のわからない話もあったけど。)
あとがきにある、どんなことから発想のヒントを得たかの話もおもしろかった。
-
Posted by ブクログ
表題作である「まず牛を球とします」というタイトルに惹かれて購入した。
書き出しの「球よりも立方体のほうが、隙間がなくて効率的では?」という一文だけで、
もう「牛を決まった形に整形して育てるべきか?」という疑問ではなく、
そんなことは当たり前で「牛をどういう形にするべきか?」という議論に至っているという世界に引き込まれる。
そうそう、こういう奇想天外なSFが読みたかったんだよ、という気持ちにさせられるのだ。
どの短編も奇想天外な世界で、実際には起こり得ないと思いながら読んでいくのだが、「犯罪者には田中が多い」「東京都交通安全責任課」「ボーナス・トラック・クロモソーム」など、実際こうなる可能性もあるのかもと疑ってしまう話もあり、
どの短編も単なるフィクションに見えて、人間への皮肉がたっぷり込められている。
我に帰ってゾワっとするが、それが面白い。
-
Posted by ブクログ
私も幽霊を信じたことがない。
何なら「幽霊を見た」と話す人を、どこか信用できないと思ってしまうタイプだった。
でも母が亡くなってから少し変わった。
幽霊を信じるようになったわけではない。
夢に母が出てきたら「何かを伝えに来てくれたのかな」と思ってしまうし、お墓参りには行くけど、母はお墓ではなく今までどおり母の部屋にいるような気がする。
霊は信じていないのに、母のことは信じているという、なんとも矛盾しているような感覚がずっと私の中にある。
この本の主人公もまた、幽霊を信じない理系大学生。彼が霊媒師のバイトを通して「信じてはいないけど…」というグラデーションのような感覚に共感した。
随所に笑えてやっぱり楽しい。
霊媒師が霊に対して、相手が何を必要としているのかを考えて寄り添っていた。
もし自分が死者の立場なら、形式的な儀式よりもそうやって普通に寄り添ってもらえる方がずっと嬉しい。
幼馴染の西田も良かった。
幼い頃の時間を共有しているからこその特別な距離感が、この作品には描かれていた。
引っ越しを機に音信不通になってしまった幼馴染のことが、読みながら無性に懐かしく、会いたくなった。あの頃ちゃんと手紙の返事を書いていれば、と今でも時々思う。
物語を読んでいたはずなのに、自分の心の奥にしまっていたものまで思い出していた。
やっぱり本っていいな。
『柞刈湯葉さんフェア』も残りあと1作品に。
終わってしまうのが寂しい…。 -
Posted by ブクログ
ネタバレタイトルからして面白そうだった。
この話の最も面白い点は
「幽霊を信じていないまま、物語が進んでいく」
というところではなかろうか。
こういった類の話だと、
『類まれな霊媒の実力をまざまざと見せつけられて、
科学的には到底あり得ない話だけれども、
どうしたって納得する他ない』みたいになって、
バディ感が生まれる…というのがセオリーな気がするが、
この話に限っては最初から最後まで彼の主張が一貫していて
全くぶれることがない。
途中一般人ならやっぱいるんじゃない?となりそうなところも
華麗にスルーしていたまま、かといって斜に構えるでもなく、
物語が進行していくので、読み手としては
どっちのスタンスを取ればいいのかよくわからなくなる時がある。
それと類まれな才能とか、代々続く伝統とかって
とかく最大限の尊重をされがちだけれど、
(それこそ個人の意志をなかったことにできるくらい)
この話はたとえ何かが終わろうとも、
自分の欲しいものを欲しいと言っていい、というのも
新しいというか、時代が変わったんだなと思う。
サクラちゃんがそれを飛び越えるほどの才能の持ち主、
っていうのもあったのかもしれないけど。
全体的に面白かったけど、最後がなんとなくふわっとしてるというか、
ん?これで終わり?っていう尻すぼみ感がちょっとあった。
ただ、日常を綴るとしたら本当はこんな感じなんだよね。
つい小説読んでると、劇的ですっきりした終わり方を期待してしまうけど、
物語の中では彼らの日常は続いているわけで、
この本はその中から9ヶ月の思い出を聞いただけの話。
その淡々とした感じも、もしかしたら理系っぽいのかもな。 -
Posted by ブクログ
無秩序に自己増殖する横浜駅に本州がほぼ飲み込まれて数世紀。ひょんなことからヒロトは横浜駅が秘匿する「42番出口」へと赴く。
-----------------
先に「全国版」を読んでしまっていた本作なので、読んでいて先に答えを見てから問題を解くような気持ちになってしまった。その点はちょっと残念だったのだけど、十分に面白かった。特に最後に畳み掛けるように謎が解かれていく部分はなかなかのカタルシスだった。
しかし横浜駅ば無限に増殖していくとかいうぶっ飛んだ設定をよく考えてくれたもので、そこから広がる世界観にはどっぷりとハマらせてもらった。楽しい時間だった。