柞刈湯葉のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
私も幽霊を信じたことがない。
何なら「幽霊を見た」と話す人を、どこか信用できないと思ってしまうタイプだった。
でも母が亡くなってから少し変わった。
幽霊を信じるようになったわけではない。
夢に母が出てきたら「何かを伝えに来てくれたのかな」と思ってしまうし、お墓参りには行くけど、母はお墓ではなく今までどおり母の部屋にいるような気がする。
霊は信じていないのに、母のことは信じているという、なんとも矛盾しているような感覚がずっと私の中にある。
この本の主人公もまた、幽霊を信じない理系大学生。彼が霊媒師のバイトを通して「信じてはいないけど…」というグラデーションのような感覚に共感した。
随所に笑えてやっぱり楽しい。
霊媒師が霊に対して、相手が何を必要としているのかを考えて寄り添っていた。
もし自分が死者の立場なら、形式的な儀式よりもそうやって普通に寄り添ってもらえる方がずっと嬉しい。
幼馴染の西田も良かった。
幼い頃の時間を共有しているからこその特別な距離感が、この作品には描かれていた。
引っ越しを機に音信不通になってしまった幼馴染のことが、読みながら無性に懐かしく、会いたくなった。あの頃ちゃんと手紙の返事を書いていれば、と今でも時々思う。
物語を読んでいたはずなのに、自分の心の奥にしまっていたものまで思い出していた。
やっぱり本っていいな。
『柞刈湯葉さんフェア』も残りあと1作品に。
終わってしまうのが寂しい…。 -
Posted by ブクログ
ネタバレタイトルからして面白そうだった。
この話の最も面白い点は
「幽霊を信じていないまま、物語が進んでいく」
というところではなかろうか。
こういった類の話だと、
『類まれな霊媒の実力をまざまざと見せつけられて、
科学的には到底あり得ない話だけれども、
どうしたって納得する他ない』みたいになって、
バディ感が生まれる…というのがセオリーな気がするが、
この話に限っては最初から最後まで彼の主張が一貫していて
全くぶれることがない。
途中一般人ならやっぱいるんじゃない?となりそうなところも
華麗にスルーしていたまま、かといって斜に構えるでもなく、
物語が進行していくので、読み手としては
どっちのスタンスを取ればいいのかよくわからなくなる時がある。
それと類まれな才能とか、代々続く伝統とかって
とかく最大限の尊重をされがちだけれど、
(それこそ個人の意志をなかったことにできるくらい)
この話はたとえ何かが終わろうとも、
自分の欲しいものを欲しいと言っていい、というのも
新しいというか、時代が変わったんだなと思う。
サクラちゃんがそれを飛び越えるほどの才能の持ち主、
っていうのもあったのかもしれないけど。
全体的に面白かったけど、最後がなんとなくふわっとしてるというか、
ん?これで終わり?っていう尻すぼみ感がちょっとあった。
ただ、日常を綴るとしたら本当はこんな感じなんだよね。
つい小説読んでると、劇的ですっきりした終わり方を期待してしまうけど、
物語の中では彼らの日常は続いているわけで、
この本はその中から9ヶ月の思い出を聞いただけの話。
その淡々とした感じも、もしかしたら理系っぽいのかもな。 -
Posted by ブクログ
無秩序に自己増殖する横浜駅に本州がほぼ飲み込まれて数世紀。ひょんなことからヒロトは横浜駅が秘匿する「42番出口」へと赴く。
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先に「全国版」を読んでしまっていた本作なので、読んでいて先に答えを見てから問題を解くような気持ちになってしまった。その点はちょっと残念だったのだけど、十分に面白かった。特に最後に畳み掛けるように謎が解かれていく部分はなかなかのカタルシスだった。
しかし横浜駅ば無限に増殖していくとかいうぶっ飛んだ設定をよく考えてくれたもので、そこから広がる世界観にはどっぷりとハマらせてもらった。楽しい時間だった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレタイトルを見て面白そうだなと思って読みました。
幽霊を信じない主人公だが、アルバイトの雇い主のハルさんが実はハルさんの娘のモモコがハルさん自身の身体にを降霊させていただけで、本当のハルさんは30年前に亡くなっていたことが分かった時に涙が出てきたシーンが印象的だった。
ほんとうのハルさんに主人公は会ったこともないし、主人公は幽霊を信じないので、主人公があっていたハルさんという人は、結局娘のモモコがハルさんのようにうまく演技をしているか、精神病で多重人格になっているだけ。と頭では思っているのに、ほんとうのハルさんがもうこの世にはいないとわかって悲しんでいる。
理系の理屈っぽい性格の人であっても理屈では片付けられない感情があった。
神や幽霊、妖怪は科学の時代には嘘だろうと言われがちだが、そこからしか語り得ないのもがあり、それが人間という生き物なんだと思いました。 -
Posted by ブクログ
小川哲さんの帯に面白い!と書いてあり半信半疑で購入し、読んだが間違いなく面白かった。
表題作はじめ、柞刈湯葉さんの頭の構造の異次元的な着想力に驚愕とした。
そもそも地頭が良いのかもしれないが、科学とフィクションが組み合わさり、SFなのだが日常的な問いの深みを突き詰めると、物語はこうも面白くなるのかと感じた。
令和2年の箱男という安部公房の現代版の話もあったり、まさにそういう系統が好きな人には刺さるし、頓珍漢の中に物事の本質が隠れているような複雑な面白さを体感したい人にはおすすめ。
柞刈湯葉さんの他作品も必ず読みたい。
そして小川哲さんに感謝を述べたい。