濱野智史のレビュー一覧

  • 平成史【完全版】

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    1989年に始まった平成時代は、30年後の2019年に幕を閉じた。本書は平成が終わり、令和が始まった2019年に、平成史を書くという試みのもとに編まれた本である。編者は小熊英二、それ以外に7人の執筆者が参加している。最初に小熊英二が、「総説」を書き、以降、政治・経済・地方と中央・社会保障・教育・情報化・外国人/移民・国際環境とナショナリズムというテーマで、それぞれの専門家が執筆している。

    小熊英二は、「総説」の中で、平成について下記のように述べている。
    【引用】
    「平成」とは、1975年前後に確立した日本型工業社会が機能不全になるなかで、状況認識と価値観の転換を拒み、問題の「先延ばし」のため

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    2022年12月24日
  • 平成史【完全版】

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    厚みがすごい。平成という時代が多様な時代であったためか、中身は骨太な思想がひとつ詰まっているというより、ぺらぺらな印象がしてしまうが、そのぺらぺらな時代をよくこのようにまとめ切ったな、という雑感をもった。日本のインターネットはタイムマシン的であり、アメリカの発展をなぞるようなものだという濱野智史の主張や、小熊英二のいうような、昭和のハコモノ的な、工業的な発展から、平成は情報通信的な、細かい技術的な発展があり、目に見えやすい変化ではなかったという指摘は興味深い。

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    2020年08月19日
  • 希望論 2010年代の文化と社会

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    宇野さん・濱野さんがこれまで主張してきたことの再録+α版。1章は原発の議論+『リトルピープルの時代』を基にした宇野さんパート。2章は濱野さんによる情報社会論の捉え直し。個人的にはここが胸熱。濱野さんがなんで『アーキテクチャの生態系』で日本社会論にこだわったのか。それは日本的な(ひろゆき的な)ネット空間を分析しなければ、日本独自の「フロンティア」が見えないから。このパート、普通に情報社会論の基礎的な流れの確認としても読めるし、そこに+αで濱野流の情報社会論の日本的な捉え直しもあって熱い。「梅田望夫的(アメリカ的)」と「ひろゆき的(日本的)」という括りは実感としてはすごく納得で、日本の土壌を受け入

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    2018年08月29日
  • 前田敦子はキリストを超えた ──〈宗教〉としてのAKB48

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    ネタバレ

    いい意味でも悪い意味でも「狂気の書」であると思った。AKBと宗教との対比、アーキテクチャとしてのAKB、といった論については、ただただ舌を巻くばかり。確かにAKBというシステムは、オウム・エヴァンゲリオン後の社会やコミュニケーションのかたちの縮図である。

    しかし「たかがアイドル」――しかも、資本主義におけるモンスターよろしく大規模な搾取を続けている商品に対して、この国を代表する批評家が評価を与えている理由について、私が納得いくような回答は得られなかった。

    筆者は日本のサブカルチャーやアーキテクチャの専門家であり、アイドルという卑俗なモチーフを扱いながらも有名な学者の言を引用しながら論を進め

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    2013年06月29日
  • 希望論 2010年代の文化と社会

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    ネタバレ

    「自己承認なんてものは、もはや断片的で確率的なものでしかあり得ない」

     失われた10年だったのがいつの間にか20年になって、僕たちが青春を過ごした時代が無意味だったかのようなことを言われちゃって、それを聞く僕たちも、何となくそんな気分になっていたけど、それに異を唱える人がいる。そのうちの二人が著者。何反省しちゃってるんだふざけるなと。
     おっちゃんたちが見ていた世界は確かに停滞の時代だったかもしれないけれど、オッチャン達が見ていなくて僕たちが見ていた世界では時代は確実に進んでいる。僕たちの青春時代は決して反省の対象にされるものではないのだと。著者は、着実に発達してきた自由の拡大を、最大元に享

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    2013年03月16日
  • AKB48白熱論争

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    気になった論点とかをノートにまとめていたら4ページにもなりました。本当は皆さんにも本書を読んでもらうのが一番なんですけど、宣伝も兼ねてその中のいくつかを紹介します。

    1.「ゆきりんに居場所がない」問題。優子→あっちゃんのいないAKBを守るという物語。まゆゆ→次世代センターの本命。ゆきりん→前田政権での有力閣僚だったけどナンバー2ではないので後継者にはなれない。

    2.大島優子には「嫌われる才能」がない。アンチがいるからスターが生まれる。あっちゃんと違い、優子にはアンチがほとんどいない。

    3.よしりん「AKBの選挙には同情票が膨大にある。単なる美少女コンテストで票を入れていない」

    4.総選

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    2012年12月24日
  • AKB48白熱論争

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    最近読んだ本の中で一番おもしろかった。
    教養のある大人がマジメにアイドルにハマり、政治まで絡めて議論するバカバカしさ。
    エヴァンゲリオンの謎解きをサイト上で議論するのに似た、二次的な楽しみ方という感じ。

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    2012年12月02日
  • AKB48白熱論争

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    ネタバレ

    (印象的な箇所)
    <ソーシャルメディア時代のアイドルAKB>
    ・AKBはマスメディアに頼らず、ソーシャルメディアを駆使して、ファンとアイドルの新しい関係を作った。
    ・AKBは、おにゃんこやモーニング娘。に似ていると言われるが、ガチの度合いが全然違う。
    ・おにゃんこもモー娘も、所詮フェイク・ドキュメンタリー。楽屋の生の様子を視聴者に見せているようでいて、製作者側が何を見せるか、繊細にコントロールしていた。
    ・AKBは、もうフェイクじゃない。ガチの人気競争をファンに見せている。毎日劇場で公演して、女子たちにGoogle+やブログを好き勝手に更新させることで、アイドルの日常をソーシャルメデ

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    2012年11月04日
  • AKB48白熱論争

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    その昔、カルトQという一般人には絶対分からないマニア向けの難問ばかりのクイズ番組がありました。わからないけど、なんかもう回答者の無駄知識がすごすぎて面白いという番組。この本の面白さはあの間隔に似ている。マニアの熱さは伝わるよ。しかも社会的にも論陣はったりする人たちだから説得力もすごい。こういう大人は楽しいだろうなぁ。

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    2012年10月11日
  • 希望論 2010年代の文化と社会

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    東日本大震災によって既存の枠組みに対する絶望感が生まれる中、日本人はどこに「希望」を見出したらいいのか?
    戦後日本の社会構造、日本におけるインターネットの発達史などを紐解きながら、2010年代の「希望」へとつながる萌芽を探っていく本。

    実世界とコンピュータがより密接につながりリアル空間を広げてくれる「拡張現実」という概念は、世界中で着実なムーブメントを起こしている。
    (例:Facebookを通じた実名による社会交流の拡大、ネット選挙による政治活動の多様化)

    もちろん、日本でもこういうムーブメントは起きている。
    しかし、この本ではそれ以上に、日本からスタートした、特有の動きにも注目している。

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    2012年09月03日
  • 希望論 2010年代の文化と社会

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    今までの社会構造の矛盾や限界に対して、大変共感できる整理と今後の方向性を打ち出している事に感銘を受けた。この考え方に立った何らかの試みを実現したいと思う。

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    2012年04月01日
  • 希望論 2010年代の文化と社会

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    いやー、面白かった。特に第Ⅲ章「希望」を考えるはすごくなるほどと。目指すべき方向性は全く同感。私ももっと勉強せねば。

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    2012年01月31日
  • 地下アイドル潜入記 デフレ社会のなれのはて

    匿名

    購入済み

    マスメディアに露出しないけど、無数に存在する地下アイドル。なぜ、進化を遂げているか? 失われた20年と呼ばれる経済低迷中に生まれた新社会の可能性があった。

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    2022年11月13日
  • 平成史【完全版】

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    日本の平成を、政治・経済・地方自治・社会保障・教育・情報化・移民政策・ナショナリズムの観点からまとめた本。

    総じて言うなれば、日本の平成とは、変化するさまざまな環境に対して、昭和の枠組みをその場しのぎで改変することで対応してきた時代であり、その綻びがあらわになってきた時代といえる。

    重要な観点は、ポスト工業化における個人化。昭和はある意味一定のライフコースしか想定しておらず、そこから漏れ落ちた人々に対しては想定をしていなかった。だからこそ、こうしてそれぞれの観点からまとめてみると、ちぐはぐな対応に見えてしまう。

    システムは入れた途端陳腐化するが、それは全ての精度に対しても言えるのかもし

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    2020年03月15日
  • AKB48白熱論争

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    48のムーブメントは縮図であったりコードであったりとして機能できうるのではないかなぁと感じていたんだけどそれを使っていろいろな話をしている。それ自体に可能性がある事や、それを使って様々なことが語られていて面白かった。

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    2017年12月18日
  • 前田敦子はキリストを超えた ──〈宗教〉としてのAKB48

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    この本が出たのは五年前。あまり深く考えずに手に取ったのですが、この時差がけっこう面白いかも。私はアイドル界のことはよく知りませんが、当時は的を射ていた分析も、年月が経つとまた違って感じられるかもね。前田敦子さんも結局は消費されていく芸能人の一人だったのかなあと思ったり、頂点を極めたらあとは落ちていくのが自然の理なのかなと思ったり、いろいろ感慨深かったです。

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    2017年11月27日
  • 希望論 2010年代の文化と社会

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    対談は良い。その人がいま考えていることの「原石」が直接提示される。本書のそれは、非常に目映い。本書が語るのはお定まりの「希望」そのものではなく、個々人が自分の間尺にあった「希望」を探すための基本戦略であり、そのために「現代という時代をどのように位置づけるか」という問いが、くり返し問い直されている。

    見田宗介による戦後史の区分(「理想の時代」「夢の時代」「虚構の時代」)を受けて、大澤真幸は現代(1995年以降)を「不可能性の時代」と呼び、東浩紀は「動物化するポストモダン」と呼んだ。宇野氏は両者を止揚するかたちで「拡張現実の時代」と言う。このアイデアには正直痺れた。

    《ここで言う拡張現実的なも

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    2015年07月05日
  • 前田敦子はキリストを超えた ──〈宗教〉としてのAKB48

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    この著者、AKBの追っかけしてるからじゃなく、
    自著の想定読者に届く言葉かどうかを全く斟酌せずに専門用語を轟々と語りまくる、その一人よがりっぷりが
    正真正銘の「オタク」なんだと思った。

    AKBというシステムを宗教と対比させた視点は面白い。
    資本主義社会の中では、こ~ゆ~カタチでしか純愛は成立しないのかも…とも考えた。

    でも、これって決して新しいシステムでもなんでもなく、郭や茶屋の女たちだって、古くは白拍子だって、同じように「女」を売って―いや売られて、商売道具にされてたんだよね。
    人気があれば着飾った絵姿なんかも出回った訳でしょ?
    ぶっちゃけ水商売って普遍の商売なんだろぉな…。

    ただ昔は

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    2014年03月24日
  • AKB48白熱論争

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    みんななぜAKB48にはまるのか。人は何故人を推すのか。
    ここまで熱く語れるAKB48を解いていて、とても面白い。モテない男を救うシステムは果たして世界に通用するのだろうか。
    なお、12年8月当時「SKEで一枠取れないから紅白は不公平だ」と嘆いていたが、13年NMB,SKEで出場し、予想を超えたパワーを示していて驚きだ。

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    2014年01月25日
  • 前田敦子はキリストを超えた ──〈宗教〉としてのAKB48

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    AKB48の魅力とは何か? なぜ前田敦子はセンターだったのか?後に『不動のセンター』と称せられた前田敦子ちゃんを徹底的に分析することによってAKB48の持つ「宗教性」をあぶりだしていきます。

    『前田敦子はキリストを超えた』

    このセンセーショナルなタイトルは筆者の友人であり評論家の宇野常寛氏のツイートがきっかけとなっているのですが、時代と場所が違えば恐らくこれは轟々たる批判を浴びていたであろうなぁと思いながら本書を手にとって見ました。

    内容はというと、自らもまたAKB48の『ヲタ』を自認する筆者があっちゃんこと前田敦子(性格には元メンバー)と筆者自身が『推しメン』として大ファンであるぱる

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    2013年09月26日