篠森ゆりこのレビュー一覧
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誰かが加害者の一面しか持たないことはないし、被害者の一面しか持たないこともない、ということが徹底されていると感じた。
それまでの価値観が揺らぎ始めたとき、その価値観を維持するか捨てるかで、生活がガラッと変わるかもしれない恐ろしさを垣間見た。
フランス革命とかロシア革命とか、歴史では淡々と習うけれど、この作品の登場人物のように、どちら側につくべきか、恐れたり迷ったりした人がいたのかな。
幸せな物語でも温かい物語でもないけれど、食べ物の描写だけは温かさを感じられて、どんな状況にあっても、ひとは食事によって多かれ少なかれ希望や幸せを感じられるのかなと思う。
最近河出文庫が好き。
河出文庫の取り -
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読後丸一日経ったというのに、まだ悲しみの余韻。物語はシャオアイという少女が毒を盛られた、一体誰に?というミステリ仕立だけど、犯人探しが主題じゃない。
ミステリと思って読むともどかしくて途中で嫌になると思う。
作風で言うと村上春樹と江國香織を足した感じ。両者好きな方は飽きずに読めるかも。
しかし、文体は美しいんだけど、好きな系統なんだけど、読みにくいのは、訳者ばかりのせいでもないような。原書読んでないからなんとも言えないんだけど、この作者が中国人だけど、英語で書いた小説だからっていうのも少なからず影響してるのではと予想。英語を母語とする人とは違う言語体系、が産む違和感というのか。それがある種の魅 -
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既読の「理由のない場所」は長男が自死した後の本だったが、なんと2024年に次男も自死してしまったとのことでこの本が書かれたそう。次男のジェームズ君は内向的で無口な性格だったらしく、この本は対話形式ではない。二人の死を受けて母である著者が考えたこと、思い出などが混ざりあってつづられている。
自分の経験を書いていながら文章はどこか客観的で、感情と対応を論理で解析するような内容になっている。それは解離というよりは性格に由来するのだろう。奈落の底で、言葉にならない思いが、周辺をぐるぐる回るように叙述されていくのに胸がギュッとなる。
この人の本はいつもそうだが、中国人の著者が英語で書いたものを日本語訳で -
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翻訳小説が苦手なこともあって、なかなか没頭するのが大変だったが、他の方のレビューを読んで、あとがきを先に読んでみたら、初めて読む彼女の世界観の根底にあるものに触れることができ、グッと読みやすくなった。「目に見えないところに、心をかき乱すやっかいな何かが本質的に存在しているという確信があります。その部分を覆い隠すよりも、発見するために書きたいのです」「悲しみと不幸は大きくちがうとも考えています。不幸と喜びは両立しない場合が多いのです。不幸というのはむしろつらい状態に似ていて、それはよくないことです。そして、私は不幸だとは感じていません。悲しいのです。とても悲しいとは言えます。悲しい過去があるので
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自殺した息子とその母親が言葉だけで繋がろうとする話。二人の会話を中心に進むけれど、結局は母親の頭の中で繰り広げられているので、「」はなくて、母が思っていることは筒抜けで、過去と現在がシームレスに移り変わっていく。
初イーユン・リー。
登場する親子は揃って言葉の正確さやそれらが孕む意味に鋭敏で、繊細で、彼らの話は比喩が多くて文そのもの私には共感できないというか分からないところも多かった。ただその中でやっぱり母親の愛情や、その裏側にある悲しみの深さにどきっとさせられたし、この物語そのものが安易な答えに辿りつくものじゃないんだろうなってことは分かる。本当に悲しいことは言葉にできないから、その他の部