篠森ゆりこのレビュー一覧
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愛を遠ざけて生きると決めたとき、人に残されるものは何なのか。
結婚、子供、仕事、財産といったステータスは、結局は他人との距離を測るための物差しに過ぎない。自らを飾るものを剥がしていったとき、手離せずに残る本質は、孤独だけなのかもしれない。
誰にも傷つけられないために、あるいは自らを罰っするかの如くに 、人は孤独を選び取り、身につけてゆく。
心の奥を突き刺すような数々の警句と、ひんやりとした無情さを湛えた筆致によって、イーユン・リーは僕を荒涼とした地平へと導いてゆく。
だが、人の本当の姿が孤独であるならば、『Kinder than solitude(独りでいるより優しくて)』というタイトルが -
Posted by ブクログ
フランスの田舎町に住む13歳の少女アニエスとファビエンヌ。ストーリーを作るというゲームを2人きりで楽しんでいた。やがて、アニエスのほうが字がきれいということでストーリーを文字に起こし、町の郵便局長でやもめ暮らしのムッシュ・ドゥヴォーに見せると、ドゥヴォーは興味を示し本として出版することに力を貸すことになる。二人で作ったストーリーだが、ファビエンヌの提案でアニエスの名前で世に出ることになる。
アニエスは、天才少女とマスコミに取り上げられパリへ呼ばれる。やがて、将来のためにとイギリスのフィニィシングスクールで教養とマナーを教えられる事になり、家族やファビエンヌと離れ一人ロンドンへ。
フランソワー -
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文化大革命後の中国で、紅衛兵だった29歳の女性が処刑されるところから物語は始まる。
市井に生きる人たちの感情や生活が、仔細に淡々と描かれていて、時代を知る、時代の犠牲者になった人たちを知る、っていうペシミスティックな目線に立っているんじゃないところが、この小説の特長だと思う。
自分が知らない時代の、土地の話になると、歴史ものだと思ってその中に出てくる人たちを遠くに感じがちなんだけど、それが本望でないっていう著者の思いがこもった筆致でした。
ああ、みんな、自分とおんなじ人間だって思う。
こういう小説を読んで、出てくる人たちを自分の身近に感じて初めて、歴史に起こった事実とかを本当にきちんと学べ -
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ネタバレほぼ覚えていなかったから再読
舞台は文革時の中国。反革命分子として処刑される女性がおり、彼女が暮らした街の住人達が、処刑を中心にぐるぐると回っていく感じ。
でも文革も中国も超えて、普遍的な人間の愚かしさや、人生のままならなさの話。
失うものがある人は、綺麗事ばかりでは生きていけない。綺麗事を言って胸を張れるのは、周りに守られているか、無知だからだ。
何も持たない人だけが、こころ安らかに生きていける。でも、好きで物乞いをしているわけではないし、彼らも苦痛を経験している。
登場人物がみな人間臭くて、みっともなくて、非常に面白かった。 -
Posted by ブクログ
誰かが加害者の一面しか持たないことはないし、被害者の一面しか持たないこともない、ということが徹底されていると感じた。
それまでの価値観が揺らぎ始めたとき、その価値観を維持するか捨てるかで、生活がガラッと変わるかもしれない恐ろしさを垣間見た。
フランス革命とかロシア革命とか、歴史では淡々と習うけれど、この作品の登場人物のように、どちら側につくべきか、恐れたり迷ったりした人がいたのかな。
幸せな物語でも温かい物語でもないけれど、食べ物の描写だけは温かさを感じられて、どんな状況にあっても、ひとは食事によって多かれ少なかれ希望や幸せを感じられるのかなと思う。
最近河出文庫が好き。
河出文庫の取り -
Posted by ブクログ
読後丸一日経ったというのに、まだ悲しみの余韻。物語はシャオアイという少女が毒を盛られた、一体誰に?というミステリ仕立だけど、犯人探しが主題じゃない。
ミステリと思って読むともどかしくて途中で嫌になると思う。
作風で言うと村上春樹と江國香織を足した感じ。両者好きな方は飽きずに読めるかも。
しかし、文体は美しいんだけど、好きな系統なんだけど、読みにくいのは、訳者ばかりのせいでもないような。原書読んでないからなんとも言えないんだけど、この作者が中国人だけど、英語で書いた小説だからっていうのも少なからず影響してるのではと予想。英語を母語とする人とは違う言語体系、が産む違和感というのか。それがある種の魅