篠森ゆりこのレビュー一覧

  • 黄金の少年、エメラルドの少女

    Posted by ブクログ

    自らの少女時代、自らを育てた国を「想っている」物語たち。
    リーの声には何も求めない静かな寂しさの弦が鳴っていて、ふとよぎる、全てを受け容れる優しさ、一瞬一瞬のその視線。物語たちはリーの声に語られるのを静かに待っている。彼女の声が聞こえるまで、静かに。
    表題作と「獄」が好き。どの作品にも中国に深く根付いた家父長制や女性の結婚に対する伝統的な考えや、それから国外へ移住していく多くの中国人の思いがある。代理出産をテーマにした「獄」は、その重い選択ゆえに払う代償をそれでも淡々と描いている。リーがそっと包んだ悲しみから、誰も出られない。

    リーの小説は比喩と、中国の古い言葉をリーの感覚で英語に訳し、そし

    0
    2021年02月11日
  • 独りでいるより優しくて

    Posted by ブクログ

    『その年配の男がお茶を飲み干してから、二人で少艾(シャオアイ)の火葬の書類を丹念に調べた。死亡証明書。死因は急性肺炎の後に起きた肺不全だ。それから、抹消の公印が押された黄ばんだ戸籍簿。身分証。受付係は泊陽(ボーヤン)の身分証も含め、書類を念入りに点検した。泊陽が記入した数字や日付の下に、鉛筆の小さな点がついていく』

    火葬場の押し殺したような雰囲気の中で交わされる言葉の射程の短さ。何を言っても接ぎ穂が思い浮かばないような遣り取りの情景が、孤独、という状態の本当の意味を教えてくれる。それは身を守るための鎧であると同時に、他者に自己の内面に蠢くどろどろとした感情を吐きかけないための方法でもあるのだ

    0
    2020年10月07日
  • ハウスキーピング

    Posted by ブクログ

    目と心を凝らして、やっとわずかな変化が感じられる物語の進み方。小さく小さく、ささやかに出来事は起こる。最終盤は唯一ドラマチック。橋を渡るシーンが名場面。分かりやすい希望には繋がらない。閉塞した、アイデンティティを明かせない、この世に根を持たない人々の物語。

    0
    2019年10月20日
  • さすらう者たち

    Posted by ブクログ

    中華人民共和国の文化大革命後の話。とにかく重くて辛い物語。しかしページを繰る手が止まらない。
    反革命分子として処刑される若い女性とその周囲を取り巻く人々の日常が描かれている。
    ひどい生活環境の中、逞しく生き抜く人々。中華人民共和国民の力強さを感じる。しかし、あらゆる人々が最後まで救われない…。重く、つらい小説だが、それでも読んで良かったと思わせる本である。

    0
    2019年05月28日
  • 独りでいるより優しくて

    Posted by ブクログ

    登場人物の孤独に長い時間取り囲まれて孤独感にひたった後に、最後少しそれがほどける兆しで緊張感が緩んで、読んだ後涙とまらない。

    とても好き。孤独というテーマが響くのもあるけれど、登場人物や世界観が好きなのか、同じ作者の他の作品も読んでみよう。

    存在の耐えられない軽さを好きなのと、独りでいるより優しくてを好きなのと、似ているかも。

    誰かとの深い繋がり、心動かされる人間関係があることが幸せと分かりつつ、敢えて避けて孤独でいることで自分を守っている。後書きに、登場人物にとって孤独でいることは抗議と作者が発言したと書いてある。それはそれですごく良くわかる。うまくやれない、自分の幸せをかけて抗議した

    0
    2016年12月07日
  • 独りでいるより優しくて

    Posted by ブクログ

    物語は小艾(シャオアイ)の葬儀のシーンからはじまる。この章の視点人物は三十七歳の泊陽(ボーヤン)で、彼は小艾の母の代わりに火葬場に来ている。小艾は伯陽より六歳上だったが、誤って或は故意に毒物を飲んだせいで、二十一年間というもの病いの床にあった。その毒物は、泊陽の母が勤務する大学の薬品室から盗み出されたものだった。その日、彼と共に大学を訪問していた同級生の黙然(モーラン)と如玉(ルーユイ)の関与が疑われたが、はっきりした証拠といえるものがなく、解毒剤の投与で命はとりとめたこともあり、事件は有耶無耶のままに終わった。

    年齢の近い四人の若者とその家族は、中庭を囲んで四棟が方形を描く北京の昔ながらの

    0
    2016年05月14日
  • 黄金の少年、エメラルドの少女

    Posted by ブクログ

    「やさしさ」は、しんしんと降り積もった雪のように私の心に残り、単純作業の時などに、ふと思い出す。不幸な生い立ち、切な過ぎる思い出を、主人公は記憶に留め、生きている…。確かにそれらは愛「やさしさ」だから、主人公の心で生きている。

    人間として生まれたからに、感じる孤独をとても上手く描ききった珠玉の作品達。どうにも上手く回らない人生が、愛しい。

    0
    2016年04月08日
  • レシタティフ

    Posted by ブクログ

    自分自身の差別的な気持ちが浮き彫りになるような体験をした本でした。自分の無意識下に潜むものをえぐり出され、また自分の中につねにそうしたものがあるということ、つまりは白人黒人の問題ではなく、いつでも自分が差別する側であるのだという当事者性も感じました。

    0
    2026年07月14日
  • レシタティフ

    Posted by ブクログ

    訳者様のスキルがすごいです。
    頭の中のに映像をイメージしながら読むことが多いと思いますが、不思議な読書体験が出来たと思います。

    0
    2026年07月13日
  • 理由のない場所

    Posted by ブクログ

    YouTube「出版区」に町屋良平さんが出演されていて。
    著者の別作品をお勧めしていらっしゃったのですが、
    それが在庫切れで購入できず。
    いくつか見ていく中で、本書が気になり手に取りました。

    自殺した16歳の息子と母親の対話形式で進む本書。
    著者の実体験をもとに描かれているとのこと。

    母親の頭の中で繰り広げられる会話で、
    カッコもないため、とても曖昧ななか。

    エヴァンゲリオンのシンジと綾波が
    LCLのなかで溶け合って会話してるみたいです。

    そして私の読解力のせいか、
    とりとめもなく何を言いたいのかもわからず、
    言葉が散らばっている印象を受けました。

    仕事で疲れていて、何が書いてあるか

    0
    2026年06月27日
  • 自然のものはただ育つ

    Posted by ブクログ

    長男に続き次男をも自死で失ったリーの、母親として、そして作家として、起きたことといかに向き合うかという一つの答えとしての作品。読み手が共感や人生の学びなどを得るためのものではなく、書き手が自身のこれからの人生のため、そこが「奈落」であっても生きてゆかねばならない自らのために、書かずにはいられなかった作品なのだと思う。

    子の選択を受け入れてやりたいという気持ち、子を喪失したことの耐え難い空虚。自らの内の親としての葛藤を客観的に見つめ、感情的ではなく論理的に綴られた文章は知的で静か。でもその分、夫以外の誰とも分かち合えないその痛みを、決して読み手に軽々に「共感」や「同情」として消費することを許さ

    0
    2026年05月19日
  • ガチョウの本

    Posted by ブクログ

    出版区というYouTubeチャンネルで、宇垣美里さんが買っていた本。気になって自分も購入しました。2人の少女のお話。なんか難しい話だなと思って、やめようとしてもなんか気になり、結局どんどん読み進めてしまった。余韻が深く残る作品。好みは分かれるだろうな。

    0
    2026年05月04日
  • レシタティフ

    Posted by ブクログ

    ノーベル文学賞受賞作家の
    唯一の短編にして実験小説

    読者は例外なく、半強制的に
    ある実験に参加させられる
    そうしなければ
    読み進められないからである

    そのとき、一体何が起こるのか?

    ある二項問題について
    己の潜在意識が明確に浮かび上がる
    例えば、アメリカなど
    今なお根深く残る国の人々ほど、
    より鮮明に浮かび上がる
    また、別の国の
    二項問題に置き換えても成立する
    それは日本も例外ではない

    本編は50頁ほど
    行間も空いてるから、すぐ読み切れる
    残りは解説やあとがき
    それらを読んで、より深く
    著者の伝えたかった事が理解出来る
    非常に密度の濃い作品

    0
    2026年05月03日
  • レシタティフ

    Posted by ブクログ

    完全な早とちりなのだが、カバーの折り返しを見て、2人の少女の名前を順番に白人黒人として読み始めたものの、途中頻繁にわからなくなるため、何度も何度も折り返しを見返しながら読んだ。

    0
    2026年03月01日
  • さすらう者たち

    Posted by ブクログ

    「反革命分子が処刑される」という物語を軸にそこに直接、間接的に関係する登場人物たちの人生で起こることが、著者の独自の感性をもって書き上げられています。
    物語が大きく動く、ドラスティックな展開にはならないけれどそこで生活する者の生活感、人生観を見事に書き表せています。

    文化大革命後の中国が舞台で、中国人の彼女が時には共産党を批判的に書く場面などは中国人からするとラディカルな描写に映るかもしれません。
    それが出来るのも筆者がアメリカに居住していることで、少し俯瞰的に母国を観れている証拠ではないでしょうか。
    ただ、本人はやはり共産党及び母国への愛情は有るように感じることも所々で感じさせてくれること

    0
    2026年02月23日
  • 自然のものはただ育つ

    Posted by ブクログ

    次男ジェームズの死を悼みながら、またイーユン・リーの類稀なるパーソナリティに驚かされながら読んだ。どうして二人の息子の死を「因果応報」と切り捨てるような母親から、このような女性が育ったのか。

    言語から詩的で音楽的で感覚的な喜びを見出していた長男ヴィンセントの死の際は、対話というフィクションの形を取った『理由のない場所』。哲学的な喜びを見出していたジェームズの死を扱った本作はノンフィクションとなった。

    「子どもたちの母親でいた長い歳月、ずっと油断なく気を配っていた」という意識の重さ。それでも結局リー家はどこまでも自由意志を信じ尊重する一家である。「彼は命を絶つ決断を私たちが尊重するのを知って

    0
    2026年02月20日
  • 理由のない場所

    Posted by ブクログ

    亡くなった者との会話、に興味を持った。でも、自らそれを選んだ子どもであることは大きく意味合いが違うと感じる。その違いと、違わないところを探しながら読み進めた。死者とのコミュニケーションを知るために、何度か読んでみたいと思う。

    0
    2026年02月16日
  • 自然のものはただ育つ

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    小説の答え合わせのために著書の人生を覗きたいタイプではないが、『理由のない場所』(イーユン・リーは、それをヴィンセントの本と呼ぶ)に込められた思い、希望のない場所で生きることの意味を知りたくて本書を手に取った(悲しいことに、彼女はこの本をジェームズの本と呼ぶのだ)。

    イーユン・リーの言葉を引く。
     “子供たちがーそれぞれの自己に成長する場をできるだけ持てるようにーその感性や特性を尊ぶことは、母親として私にできる最善のことのように思われた。私が子供たちを愛していたのは確かだし、今でも愛しているけれど、愛より大事なのは子供たちを理解し尊重することだ。そこには何より、命を絶つという選択を理解し、尊

    0
    2025年12月20日
  • ガチョウの本

    Posted by ブクログ

    子供時代の友情の尊さと儚さが丁寧に描かれてる。
    ファビエンヌとアニエスがお互いに“自分にないもの”を持っていて惹かれ合う気持ちもとてもよく分かった

    0
    2025年12月03日
  • 理由のない場所

    Posted by ブクログ

    言葉で紡ぐことが難しい心の領域を、小説という形で見せてもらった気持ちになった。主観的でうつろいやすい気持ちを、著者の知性的な言葉でコーティングし外に出したような印象。この小説を、分かりやすさや客観性などの指標で評価することはナンセンスなのだろうと思う。

    0
    2025年09月27日