【感想・ネタバレ】自然のものはただ育つのレビュー

あらすじ

長男を16歳で、次男を19歳で相次ぎ自死により失った作家が、息子たちについて語る思索に富むエッセイ。「この本は悲しみや哀悼の本ではない。私の悲しみに終わりはない」

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Posted by ブクログ

ネタバレ

2人の息子を自死により亡くした女性のエッセイ。著者自身も自殺未遂をしたことがあるようだ。「私たち(著者とその夫)はジェームズ(著者の息子)が何を考えていたかよくわかっていないけれど、このことだけは確信が持てる。彼は命を絶つ決断を私たちが尊重するのを知っていたこと。」(p.41)という一節が非常に苦しく、けれども親と子供の間にある信頼関係は美しいと思った。子供が自殺する決断を尊重する親だと子供が理解している…究極の信頼関係…。

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2026年02月01日

Posted by ブクログ

次男ジェームズの死を悼みながら、またイーユン・リーの類稀なるパーソナリティに驚かされながら読んだ。どうして二人の息子の死を「因果応報」と切り捨てるような母親から、このような女性が育ったのか。

言語から詩的で音楽的で感覚的な喜びを見出していた長男ヴィンセントの死の際は、対話というフィクションの形を取った『理由のない場所』。哲学的な喜びを見出していたジェームズの死を扱った本作はノンフィクションとなった。

「子どもたちの母親でいた長い歳月、ずっと油断なく気を配っていた」という意識の重さ。それでも結局リー家はどこまでも自由意志を信じ尊重する一家である。「彼は命を絶つ決断を私たちが尊重するのを知っていた」という言葉の重さ。死は別種の新生児、死によって四人家族であることが変わることはない。

編集者や友だちの聡明さや誠実さには舌を巻く。「彼は去りたかったのですから、受け入れなければなりませんね」

「苦しみをわかってて、苦しみについてそんなに上手に書くのに、どうしてぼくたちを生んだの」というヴィンセントの言葉。常人にはこのような子どもを持つこともこのような言葉を受け止めることも難しすぎるだろう。

「ただできることをする」というイーユン・リーの慰めが、ピアノや製菓やガーデニングというところが興味深かった。奈落の底で心安らかに生き続けてほしい。

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2026年02月20日

Posted by ブクログ

ネタバレ

小説の答え合わせのために著書の人生を覗きたいタイプではないが、『理由のない場所』(イーユン・リーは、それをヴィンセントの本と呼ぶ)に込められた思い、希望のない場所で生きることの意味を知りたくて本書を手に取った(悲しいことに、彼女はこの本をジェームズの本と呼ぶのだ)。

イーユン・リーの言葉を引く。
 “子供たちがーそれぞれの自己に成長する場をできるだけ持てるようにーその感性や特性を尊ぶことは、母親として私にできる最善のことのように思われた。私が子供たちを愛していたのは確かだし、今でも愛しているけれど、愛より大事なのは子供たちを理解し尊重することだ。そこには何より、命を絶つという選択を理解し、尊重することも含まれる。”

そしてリーの友人が書き送った言葉。
 “知らせを目にして、あなたに何と言うべきか悩み苦しんでいます。ジェームズが自分の居場所を見つける手助けをするために、あなたはできるだけのことをしました。でも、彼は去りたかったのですから、受け入れなければなりませんね ー”

おそらく、多くの拒絶や戸惑い、もしかしたら反感を引き起こす考え方かもしれないと思う。
だがこれは、宗教的な救いだとか、悲しみをくぐり抜けるとか、自分を何とか納得させるとか、そんな陳腐な自己本位な考えから出た言葉ではない。
奈落の底でも、論理と事実を投げ捨てずに、我が子について考えて、絞り出した言葉だ。
だから僕は、生半可な共感も理解も及ばない本書の言葉の数々を、静かに黙って、敬意を持って受け取りたいと思う。

ーー
 “人生に生きる価値はあるのか。もしヴィンセントに訊いたら、あると言っただろうと信じている。それでも、彼なりの言葉で、こんな質問に答えるよう迫ってきただろう。この人生は生きる価値があるかもしれないが、苦しむ価値はあるのか。苦しむ価値があるなら、苦しみに限度をもうけるべきなのか。それとも生きるという名のもとに、疑問を持たず何でも苦しまなければいけないのか。”

 “ジェームズは真剣に考えた。深く哲学的に、ひそやかに。そして思考で死んだ。生きられる人生には、苦労するほどの価値はなかったのかもしれない。きっと、生きられる人生など求めてないという結論に至ったのだろう。”

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2025年12月20日

Posted by ブクログ

既読の「理由のない場所」は長男が自死した後の本だったが、なんと2024年に次男も自死してしまったとのことでこの本が書かれたそう。次男のジェームズ君は内向的で無口な性格だったらしく、この本は対話形式ではない。二人の死を受けて母である著者が考えたこと、思い出などが混ざりあってつづられている。
自分の経験を書いていながら文章はどこか客観的で、感情と対応を論理で解析するような内容になっている。それは解離というよりは性格に由来するのだろう。奈落の底で、言葉にならない思いが、周辺をぐるぐる回るように叙述されていくのに胸がギュッとなる。
この人の本はいつもそうだが、中国人の著者が英語で書いたものを日本語訳で読むというまどろっこしさのせいか、なんだか頭に入ってきにくい感じがしてもどかしかった。いっそ英語の方が読みやすいのかもしれない。

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2026年01月09日

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