なんとも不思議な読後感があった。話はある女性の服毒による死から始まる。それに関わる三人の男女が21年に亘り、その事件を引きづり、人生の舞台から降りて自分の人生を謳歌することを回避し、孤独であることを選びとって生きている。
その3人の人生も女性の死によって変化が起き、”独りでいるより優しい”方へと流れてゆく。
作者の巧みな心理描写が主人公たちの猜疑心や悲しみ、孤独を描き出し、服毒事件というスリリングな設定であるにもかかわらず、人の心の葛藤を説得的に描いている。読み始めると手放すことができない魅力を持っている。