松尾匡のレビュー一覧

  • 資本主義から脱却せよ~貨幣を人びとの手に取り戻す~

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    2人の経済学者と不安定ワーカーによる共著。資本主義が現代になり機能不全になった問題点を指摘し、貨幣を人々の手に取り戻すことを語った本である。章ごとに各人が担当しており、3人の間に共通しないこともきちんと描かれているため、様々な視点から見れて面白い。
    思えば書店でも資本主義の限界を指摘する本は勢いを増しているように感じられる。その中でも本書は経済学的な視点から生活の視点、果ては幸福や自由といった哲学的視点まで幅広く論じられており、コストパフォーマンスに優れた一冊と言えるのではないだろうか。

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    2021年03月29日
  • 資本主義から脱却せよ~貨幣を人びとの手に取り戻す~

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     最近この手の本が結構多く、その中でも出色なのは「人新生の資本論」だったのだが、この本も新しい社会を提言する意欲的な内容であることを期待して手に取ったものである。
     結論的には資本主義経済システムのうち「市場経済」というシステムを否定するのではなく「銀行中心の貨幣制度」を否定することを主張するものでした。そしてAIの進化によって、脱労働社会が実現するとすれば、BI(ベーシックインカム)の導入が大事だという。
     貨幣発行益を銀行が独占させずに、国民に分配するという考え方が新しいと思いました。この本の著者の一人高橋真矢氏は婚姻関係のない両親の子として生まれ、高校中退した「現役不安定ワーカー」という触れ込みであるが、この本は実質彼が書いたと言っても良いだろう。MMT論者と似ているところもあるが、新しい社会を論じている点で、MMT論者よりも深く考えていると言える。いわゆる経済学者ではない点が好感が持てる。

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    2021年03月21日
  • そろそろ左派は〈経済〉を語ろう――レフト3.0の政治経済学

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    英国在住のライター・コラムニストブレイディみかこと、慶座学者の松尾匡、社会学者の北田暁大による、左派視点での経済談義。

    本書を読むまでは、緊縮財政はしょうがないよね~、プライマリーバランスは大事だよね~、などをうすぼんやりと信じていたが、本書を読んでそれらが必ずしも正しくないことを知った。

    学者2名の知識量が膨大なため、ときどき言っていることについていけなくなったが、それを差し引いても再分配と経済成長は対立しない、や左派、右派という視点だけでなく、上か下かのの視点を忘れてはいけない、等の提言は非常に腹落ちした。

    本書の著者たちと、右派経済の論客の人たちで討論し、それぞれの主張とそれらに対する反論をまとめてみたら日本の経済のこれからの指針になるように思うので、ぜひどこかの出版社が企画、出版してくれないかな~。

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    2020年12月19日
  • MMT現代貨幣理論入門

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    「自国通貨を発行できる国は、財政赤字を膨らませても問題ない」という衝撃的な主張をしている現代貨幣理論(MMT)の入門書。アメリカの経済学者による著作であるが、日本では中野剛志氏などが同様の主張をしている。財務諸表については勉強したばかりであるので、ある程度は理解できたが、難解で理解できない部分もある。お金はいくら刷っても問題ないとはいえ、インフレへの警戒も強調しており、要は程度の問題なのかもしれない。確かに巨額の財政赤字を抱えながら更なる国債発行を行っている日本も、一向にインフレに向かう気配はなく、MMTは正しいようにも思える。貨幣についての考え方も納税の所要からその価値を説いているが、ビットコインなどを否定している点では、多くの研究者と考えは一致しているようだ。正しいか否かは定かではないが、概要は理解できた。

    「政府と民間という2つの部門から成る経済においては、民間部門によって保有される純金融資産は政府によって発行される純金融負債にぴったり一致する。もし政府が支出と租税収入を常に一致させ、均衡財政を保つならば、民間部門の純金融資産はゼロになる」p54
    「(国内民間収支)+(政府収支)+(海外収支)=0」p59
    「(ケインズの倹約のパラドクス)総消費を減らして貯蓄を増やそうとすると、貯蓄は増えず、所得が減ってしまう」p75
    「GDP=消費+投資+政府購入+純輸出(これは国民総所得に等しい)」p103
    「(貯蓄—投資)+(租税—政府購入)+(輸入—輸出)=0」p105
    「租税の不払いに対して課される罰を避けるために、納税者は政府の通貨を手に入れる必要がある」p120
    「金利(γ)がGDP成長率(g)を上回っている場合に限って、債務比率は上昇する(ガルブレイズ)」p145
    「非政府部門の純貯蓄は、所得と貯蓄を創造する政府の赤字支出の結果だと考えるのが最もよい」p228
    「貨幣が租税などの強制的な義務を履行するために必要とされる限り、そうした義務が貨幣に対する需要を創造する。つまり、納税者が貨幣を必要とするので、政府は貨幣を発行してモノを買うことができる」p272
    「租税が貨幣を動かす。主権を有する政府は、支出をするために自国通貨での歳入を必要としない」p272
    「米国(あるいは、英国や日本、いずれも巨大な赤字国である)の現在の、あるいは将来見込まれる条件の中に、ハイパーインフレはもちろん、高インフレを予想させるものは何一つない」p456
    「重要なのは、政府は物価安定とともに完全雇用を促進すべき」p484
    「「モノとしての貨幣」の制度としての本質は何か?最も明白な共通の特徴は「負債の証拠」だということである」p496
    「(金利を下げても企業は簡単に投資はしない)企業をだまして投資させるためには、妖精の粉を大量に撒く必要がある」p505
    「(金利と投資と需要)投資を増やすことは需要不足の解決策にはなりえない。つまり、投資を増やすと総需要が増える以上に総供給が増える」p506
    「(MMTは、債務や赤字の持続性に関する議論に負けている)政府がキーストローク(お金を刷る)によって支出することは「不道徳」だからだ」p520
    「(まとめ)
    ・通貨発行権のある政府にデフォルトリスクはまったくない。通貨が作れる以上、政府支出に財源の制約はない。インフレが悪化しすぎないようにすることだけが制約である。
    ・租税は民間に納税のための通貨へのニーズを作って通貨価値を維持するためにある。総需要を総供給能力の範囲内に抑制してインフレを抑えるのが課税することの機能である。だから財政支出の帳尻をつけることに意味はない。
    ・不完全雇用の間は通貨発行で政府支出をするばかりでもインフレは悪化しない。
    ・財政赤字は民間の資産増であり、民間への資金供給となっている。逆に、財政黒字は民間の借入れ超過を意味し、失業存在下ではその借入れ超過(貯蓄不足)は民間人の所得が減ることによる貯蓄減でもたらされる」p528

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    2020年10月05日
  • MMT現代貨幣理論入門

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    理論として現実味を除けば、就業保証プログラムなど、画期的であり面白いと感じた。
    しかし、あまり現実味はないような気もする。また、キーストロークの部分であったり、恒等式に関しては、わざわざMMTという学派を打ち立ててまで取り上げるものでもないような気がする。ただ、やはり画期的であるという点で評価できる。
    あと、文体が非常に読みづらい。カギカッコが多すぎる。そこをどうにかして欲しかった。

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    2020年06月28日
  • そろそろ左派は〈経済〉を語ろう――レフト3.0の政治経済学

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    経済、つまりどうやって食べていくか、がまず大事なことなのだということを考えさせてくれる。グラスルーツとか地べたというけどさ、理念うんぬんよりもまず食べていく不安をどうするのか。ナチスが支持率では決して高いわけじゃなかったにもかかわらず、強くなったのは、食べていくことへの不安になんとかしてくれるという信頼を勝ち得たからだ、という。そしてそれは現代においても、見られる話でね。

    右とか左とかわかんないけど、面白かったな。自分が右か左かなんて、わかんないし、どうでもいい。ただ、生活していかなくてはいけない以上、いろいろ考えることは必要だよな。

    ふだん見過ごされているような人たちに対して、何を求めているのかを聞いていくことが出発点になるんだ、というのは政治にかぎらず、あらゆる仕事、社会的な存在にとって必要なことだと思った。日本企業の凋落なんて、消費者は何を求めているのか、そこを忘れたからだよね、なんてさ。もちろん、自分自身にも言える話かもしんないんだけど。

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    2020年05月20日
  • MMT現代貨幣理論入門

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    ネタバレ

    MMTとは「主権を有し、不換通貨を発行する政府は、その通貨において支払い不能になることはない」と『説明』してるのであって、「無尽蔵に支出してもよい」とは主張していません。本書を通じ、マクロ会計の仕組みと実際のオペレーションがよく分かりました。

    よってMMTのことを「ハイパーインフレを発生させる」「財政の不健全化をまねく」と主張する人は、年金を「払ったって貰えない」と言ってる人と同じレベルだということです。

    何事もよく学び・理解してから主張する大切さを実感しました

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    2019年09月29日
  • そろそろ左派は〈経済〉を語ろう――レフト3.0の政治経済学

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    「リベラルは自由や平等や人権を訴える金持ち。レフトは自由と平等と人権を求める貧乏人」とは著者の一人の英国人の夫が息子に言った言葉らしいが、支配層であるリベラルの意識がレフトから乖離し、経済成長に気を配らなくなったことが特に欧州の経済停滞の原因だというのが、著者たちの共通認識だ。

    経済政策を初め、安倍政権の政策に理由も示さず否定的コメントをするところはいかがかと思うが、それ以外は、欧州の実例を踏まえつつ、経済政策の変遷をまとめていて、参考になるし、ブレグジットやトランプ支持の背景がよくわかる。

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    2018年12月06日
  • そろそろ左派は〈経済〉を語ろう――レフト3.0の政治経済学

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    3人の論者が「反緊縮派」という立場から日本の取るべき経済政策について、議論した本。現代政治経に関心はあるけど知識がない私にとっては格好の入門書だった。現代の国際政治では何が起きているのか、旧民主党系のどこが問題なのか、安倍政権の長期化の要因とその問題とは何か、など現代政治の様々な問題について経済政策の観点から一定の見識が得られるし、彼ら「反緊縮派」の主張には説得力もある。ただし、現代政治経済の入門になるとはいっても著者たちの議論が、「反緊縮派」という特定の政治的立場に立ったものであることには注意が必要ではある。いずれにしても、この本は現代政治に関心のある人に真っ先に勧めたい良書である。

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    2018年11月14日
  • そろそろ左派は〈経済〉を語ろう――レフト3.0の政治経済学

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    「無駄遣いヤメろ」も良いんだけど,それしか言うことないのかよ⁈
    どうやったら豊かになれるのか,明日のメシにも困り,1年後の身分保障もままならない不安から抜け出せるのか⁈
    何でそれを大声で言わないんだよ⁈
    観念的な綺麗事ばっかり並べてんじゃねーよ!
    って思うから,左派は信じられないんだ〜って,ずーっと思ってきた.

    この本には,左派がそこから脱却するヒントが溢れていると思う.今までの左派の歩みに対する論評もなるほどと膝を打つものばかり.

    願わくば,同じ内容で右派,特に虐げられてるにもかかわらず,安倍政権を熱烈に支持しているような人達が手に取るようなタイトルと切り口で再編して出版して欲しい.

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    2018年11月11日
  • そろそろ左派は〈経済〉を語ろう――レフト3.0の政治経済学

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    レフト3.0…いい響きだ(^-^)
    小生もリベラルではなく、レフトを名乗ろう(^o^)/

    もっと早く本書を読んでおけば良かった、と後悔。対談形式なので、分かりやすい、けど難しい議論もあり、という感じで、ボブの知的好奇心をくすぐってくれる。
    経済学の再々々勉強をしなくては…と考えるわけだが…(^^;;

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    2018年09月21日
  • ケインズの逆襲、ハイエクの慧眼 巨人たちは経済政策の混迷を解く鍵をすでに知っていた

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    時代遅れの大きな政府の推進者とみなされがちなケインズと、新自由主義の祖の一人にかぞえられることのあるハイエクという、二人の経済思想家が考えていたことをみなおしつつ、ベーシック・インカムやインフレ・ターゲットといった、現代において議論の的になっているトピックについても検討をおこない、現代の日本経済が直面している問題に対する著者の処方箋を提示している本です。

    著者の主張の根幹にあるのは、政府の役割は人びとの予想を確定させることだというものと、リスクと責任と意思決定が一致するような制度を構築するべきというものに、まとめることができるでしょう。著者は置塩派の経済学者ですが、右と左の政治的な対立構造が生む不毛な議論に巻き込まれることなく、柔軟なスタンスと平易な語り口を武器に、具体的な問題にも果敢に切り込んでおり、非常におもしろく読みました。

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    2018年08月19日
  • そろそろ左派は〈経済〉を語ろう――レフト3.0の政治経済学

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    経済運営で何とかいっている安倍政権。ただ、消費増税圧力に抗うことは難しく、東京五輪後の景気後退に対処できないとの予測は明快。では、対抗勢力は何をすべきなのか――という一考に値する内容。

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    2018年06月05日
  • そろそろ左派は〈経済〉を語ろう――レフト3.0の政治経済学

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    左派が語るべき経済のあり方を学ぼうとすると期待外れ。そういう話題になると不思議と話がそれて、断片的にしか把握できない。対談本に書いてする必要があったかなーとも思う。対談をもとにもうすこしまとまりのある構成をとれたのではないか。反緊縮ってとこやケインズ的に需要を作り出すべきってあたりかな、せいぜい把握できたのは。需要が不足していたというのはアベノミクスによろしくという本でも学んでいたため、すとんと腹に落ちた。
    左派が経済を語る必要性を啓蒙するための本としては、優れている。左派思想史としても鋭い分析が随所にある見られ、目を開かされる。過去の左派の思想へのツッコミは的確だし、新たな時代の左派像にも共感する。
    地に足つけて金の話をしようや、という当たり前のことに改めて気づかせてくれる良書。

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    2018年06月01日
  • ケインズの逆襲、ハイエクの慧眼 巨人たちは経済政策の混迷を解く鍵をすでに知っていた

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    リスク、決定、責任の一致しなければ有効な政策は実行できない。
    リスクも決定も現場で取れる体制が必要
    サービスの低下を伴う効率化は本当の効率化ではない。
    政府は予測可能な一般的ルールでバックアップする。

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    2017年10月16日
  • ケインズの逆襲、ハイエクの慧眼 巨人たちは経済政策の混迷を解く鍵をすでに知っていた

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    ネタバレ

    経済政策の流れの「軸」が整理されて分かりやすかった。
    日本では、右派たるべき自民党が社会党の影響の下に、本来左派の取るケインズ的な大きな政府介入を行い、これに代わる連合の支持を受けた民主党が、緊縮財政の小さな政府を目指したことから、話がややこしくなっている。逆に言うと、それができるほど決定的な違いでないということ。

    ケインズはともかくハイエクも、大きな政府に繋がる財政出動を否定していない。小さな政府と誤解されているのは、政府がルールキーパーに徹することで、各人の予想可能性が高くなり(リスクが低減し)、安心して経済活動に従事できることだ。非常時の財政出動もルールキーパーの重要な役割であり、治安や衛生、災害、ベーシックインカムなども、これに含まれる。小さな政府とは、政府の裁量や恣意的な政策でなく、ルール(法の支配)のみによって、参加者が安心して経済活動ができることが重要という意味である。
    小さな政府が「民間活力を利用して、これまで税金で賄ってきた赤字事業を立て直すこと」ではないことがよくわかった。財政再建の意味合いはあるにしても、微妙にニュアンスは異なる。

    予想可能性という意味では、年金を確実に受け取れる世代と、そうでない世代で消費行動に差が生じるのは当然であり、インフレやデフレがスパイラルに陥るのも納得できる。ベーシックインカムが自由主義の考え方であることも新鮮だった。社会主義陣営は、これにより様々な社会保障が削減される可能性について、かえって危惧することも多いようだ。いずれにしても、国としては目先の個々の政策よりも、トータルの社会像(ぶれることのないルールの全体像や非常時の安全策)を示さなければ、意味がなく、ましてや倫理的価値観を押し付けるようでは、どうしようもない。

    筆者は、ソ連の経済システムの崩壊が生産手段の共有自体や個人のモティベーションにあったのでなく、リスクと責任の分離→現実と離れた無責任体制にあったと指摘する。いわゆる官僚支配による負の側面であり、現場の裁量でなく、現場を知らない官僚による計画経済は、現実を離れた過剰投資や過小生産など、無駄が多く、それは判断者の無限責任どころか有限責任ともならない。そのため、最終的には物の不足によって崩壊したとハンガリーのコルネイは指摘している。ノルマがロシア語とは、初めて知った。
    その意味では、無駄な公共施設や施策に税金を使う日本の自治体も同様であり、官僚の裁量を増やすことが、賄賂や腐敗につながることも同様である。→これを廃して、ルールキーパーとセーフティネットに徹することが、小さな政府ということだろう。
    リスクと責任の一致と分離という意味では、自己の資産をつぎ込んでいる個人経営の社長と、サラリーマン社長も類似の関係にあるかもしれないが、これは意図的なリスクの軽減かもしれない。

    リスクと責任の一致の観点からは、物の生産とは違って、画一的な対応が難しい介護等のサービス業においては、中央集権的なコントロールは難しく、営利団体よりも(形式的でなく実質的に)協同組合やNPO法人のような、ボトムアップの意思決定が望ましいという意見は傾聴に値すると思った。リッツカールトンの現場主義(現場の人間の裁量権が大きい)も、それに通じるところがあるかもしれない。
    一方、国が実施するとなると、無駄な税金を使わないように、細かい基準を作って厳密に対応しようとすればするほど、役所の仕事は複雑になってコストも増え、裁量も発生し、利用者も不便になる。→利用者の選択の自由も尊重されるべきであり、後方支援で十分だという。

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    ○大不況(ケインズ:財政出動)→インフレ拡大(→ハイエク:小さな政府・あるいは無分別の財政出動が問題だった?)→格差増大・失業(→第三の道:マイルドに修正)・・・→再び財政出動

    ○福祉のスタンス:新自由主義(削減・供給側・受益者負担)→第三の道(ワークフェア・供給側・官民共有)→新スウェーデン形式(アクティベーション・需要側・資金の公的負担)

    ○政党分類:
    ・自由ライダー党
    規制のない自由闊達でイノベーティブな経済社会。
    カジノ・麻薬・売春・臓器売買すべて自由化。
    資産課税の廃止・無駄な公共事業廃止。
    ベーシックインカムに一元化(年金制度廃止)
    インフレ目標で不況やインフレを防ぐ。
    自由貿易推進・外国人労働者・女性・高齢者の就業促進

    ・人民戦隊・党レッド
    充実したベーシックインカムの導入により、転職、協同組合の起業、再学習がいつでも可能な自由な人生を保障。
    福祉・医療・教育・子育て支援では、現場の裁量や自治に基づいた活動を公財政で手厚く支援。
    インフレ目標を設定し、不況のときは財政出動、インフレのときは大企業の課税強化で対応。

    ・ウルトラの党
    自立した国民経済。輸入品すべてに高額関税。
    企業の海外進出も、外国企業の受け入れも外国人労働者の受け入れも禁止。
    日本人への福祉供給は十分な審査の上支給。支給決定者の不正監督の審査員も設置。

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    2017年10月04日
  • ケインズの逆襲、ハイエクの慧眼 巨人たちは経済政策の混迷を解く鍵をすでに知っていた

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    ちょっとタイトル詐欺はいってると思う。

    小さな政府だー新自由主義だー市場に任せろーいや第三の道だー といった叫ばれ続けてけっこう経つが評価の安定しない──評価することが無視されている──近年の政治的経済政策について、ケインズやハイエクといった経済学者がなにを問題にしていたのかに軸足をしっかりと置いて整理されている本。
    ケインズやハイエクの主張に共通するもの、「リスク・決定・責任の一致」「予想は大事」という立ち位置からそれぞれの主張、当時の状況に対する解説、今必要な政策を考える内容。

    作者の立ち位置(マル経)よりの言葉が付け加えられてたりはするけれど、なるべく様々な立場に立った理論だけの話になっている。
    個人的には(理論で説明しにくい、推測でしか話せない)政治的思惑まで踏み込んで、未だに「勘違い」が続いている原因の考察も欲しかった。

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    2016年05月01日
  • ケインズの逆襲、ハイエクの慧眼 巨人たちは経済政策の混迷を解く鍵をすでに知っていた

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    訳あって敢えて止めていた読書再開です。
    どういういきさつで購入したのか忘れましたが、政局・経済情勢を見るとなかなかタイムリーな内容なので積ん読からこれを選びました。

    大きくは経済学における大きな二つの流派が現在はどのようなスタンスを取って政治につながっているか、そしてそのどちらもが経済の変遷の本質を見誤ったことで誤ったポジショニングを取っている事を分析した内容です。

    私は経済には全く疎いですが、これは面白かった!

    著者の主張は、「リスク、決定、責任は同じとろこにないと、無責任かつ恣意的な自己拡張の歯止めが効かない」というもので、序盤に「そごう問題」が例に引かれていますが、経営やリーダーシップに関する深い洞察があります。

    また、政府の役割を「人々の予想を確定させるルールキーパー」であるべきと説き、裁量的なマネジメントへの介入は細かなニーズを無視する事になるので後方支援に徹し、民間及び個人の意思決定が「望ましい方向への均衡する」よう振る舞うべきだというところは、そのまま企業運営に活かされる内容で、私が影響を受けたスティーブン・R・コヴィー氏の「リーダーシップとマネジメントの分離」にもつながる主張なので納得性が高かったです。

    個人的に特に興味深かったのは、失われた10年と呼ばれた不況と、戦後の終身雇用・年功序列・企業特殊技能優先のキャリアパスについてゲーム理論とナッシュ均衡を使って分析をするところ。

    不況については、ポール・グルーグマンの言う「割に合わない円高がまねいたもの」と藻谷 浩介氏の言う「人口減少が招いた定常的経済成長ステージ」というのが私の主な理解だったのですが、著者はそれを「人災」だと断じています。

    また、日本の労使構造については『痛快!経済学 2』で中谷巌氏が説明してた政府主導の政策的な性格が強いと理解していましたが、労使が「同じ手」を使うならば複数ある「ナッシュ均衡」の一つとしてごく自然な状態であるというのは目から鱗でした。

    ただ、企業競争や企業そのものがグローバル化していく過程でゲームのルールが変っていっているので、汎用技能の担い手としてしかホワイトカラーを雇えなくなってきている日本という指摘は身につまされます。

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    2015年10月26日
  • ケインズの逆襲、ハイエクの慧眼 巨人たちは経済政策の混迷を解く鍵をすでに知っていた

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    自由主義経済政策と社会主義経済政策の歴史を振り返りつつ、これからの経済政策・社会政策を考えていく上で重要な論点について、作者の意見を具体的に述べてくれている本です。それほど期待せずに読み始めたのですが、予想以上に面白かったです。
    経済政策としては、何よりも人々の「予想」に働きかけることが重要であり、そのための政府の役割は、明確なルールによって予想を確定させることであるということ、また、情報を持つ者がリスクと責任を負って決定する権限を持つべきであり、組織規模の小さいスタートアップの段階では独裁制が良くても、事業が安定してくれば現場中心の分権型意思決定の方が望ましいとする考え方には、十分納得・共感できました。
    左翼の新しい方向を目指そうとする作者の最終的な方向性にはあまり共感はできませんでしたが、途中の議論はとても勉強になりました。安倍政権への対抗軸を見いだすのに四苦八苦している民主党には、特によく研究していただきたい考え方だと思います。

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    2015年04月02日
  • 対話でわかる痛快明解 経済学史

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    経済学史という書籍を読んだことがなく、高校は日本史専攻、アダムスミスは、そう言えば30年ほど前に中学の世界史で聞いたような…というレベルわたしが大学院の講義で経済学史を学ぶ予習で手に取りました。
    当たり前でしょうが、経済学史はミクロ経済学やマクロ経済学に繋がっていることがよく分かりました。マクロやミクロをより理解する上で、経済学史は興味深いですね。まだまだ足りないと思いますが、参考になりました。

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    2024年10月03日