松尾匡のレビュー一覧
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最近この手の本が結構多く、その中でも出色なのは「人新生の資本論」だったのだが、この本も新しい社会を提言する意欲的な内容であることを期待して手に取ったものである。
結論的には資本主義経済システムのうち「市場経済」というシステムを否定するのではなく「銀行中心の貨幣制度」を否定することを主張するものでした。そしてAIの進化によって、脱労働社会が実現するとすれば、BI(ベーシックインカム)の導入が大事だという。
貨幣発行益を銀行が独占させずに、国民に分配するという考え方が新しいと思いました。この本の著者の一人高橋真矢氏は婚姻関係のない両親の子として生まれ、高校中退した「現役不安定ワーカー」という -
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英国在住のライター・コラムニストブレイディみかこと、慶座学者の松尾匡、社会学者の北田暁大による、左派視点での経済談義。
本書を読むまでは、緊縮財政はしょうがないよね~、プライマリーバランスは大事だよね~、などをうすぼんやりと信じていたが、本書を読んでそれらが必ずしも正しくないことを知った。
学者2名の知識量が膨大なため、ときどき言っていることについていけなくなったが、それを差し引いても再分配と経済成長は対立しない、や左派、右派という視点だけでなく、上か下かのの視点を忘れてはいけない、等の提言は非常に腹落ちした。
本書の著者たちと、右派経済の論客の人たちで討論し、それぞれの主張とそれらに対 -
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「自国通貨を発行できる国は、財政赤字を膨らませても問題ない」という衝撃的な主張をしている現代貨幣理論(MMT)の入門書。アメリカの経済学者による著作であるが、日本では中野剛志氏などが同様の主張をしている。財務諸表については勉強したばかりであるので、ある程度は理解できたが、難解で理解できない部分もある。お金はいくら刷っても問題ないとはいえ、インフレへの警戒も強調しており、要は程度の問題なのかもしれない。確かに巨額の財政赤字を抱えながら更なる国債発行を行っている日本も、一向にインフレに向かう気配はなく、MMTは正しいようにも思える。貨幣についての考え方も納税の所要からその価値を説いているが、ビット
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経済、つまりどうやって食べていくか、がまず大事なことなのだということを考えさせてくれる。グラスルーツとか地べたというけどさ、理念うんぬんよりもまず食べていく不安をどうするのか。ナチスが支持率では決して高いわけじゃなかったにもかかわらず、強くなったのは、食べていくことへの不安になんとかしてくれるという信頼を勝ち得たからだ、という。そしてそれは現代においても、見られる話でね。
右とか左とかわかんないけど、面白かったな。自分が右か左かなんて、わかんないし、どうでもいい。ただ、生活していかなくてはいけない以上、いろいろ考えることは必要だよな。
ふだん見過ごされているような人たちに対して、何を求めて -
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3人の論者が「反緊縮派」という立場から日本の取るべき経済政策について、議論した本。現代政治経に関心はあるけど知識がない私にとっては格好の入門書だった。現代の国際政治では何が起きているのか、旧民主党系のどこが問題なのか、安倍政権の長期化の要因とその問題とは何か、など現代政治の様々な問題について経済政策の観点から一定の見識が得られるし、彼ら「反緊縮派」の主張には説得力もある。ただし、現代政治経済の入門になるとはいっても著者たちの議論が、「反緊縮派」という特定の政治的立場に立ったものであることには注意が必要ではある。いずれにしても、この本は現代政治に関心のある人に真っ先に勧めたい良書である。
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「無駄遣いヤメろ」も良いんだけど,それしか言うことないのかよ⁈
どうやったら豊かになれるのか,明日のメシにも困り,1年後の身分保障もままならない不安から抜け出せるのか⁈
何でそれを大声で言わないんだよ⁈
観念的な綺麗事ばっかり並べてんじゃねーよ!
って思うから,左派は信じられないんだ〜って,ずーっと思ってきた.
この本には,左派がそこから脱却するヒントが溢れていると思う.今までの左派の歩みに対する論評もなるほどと膝を打つものばかり.
願わくば,同じ内容で右派,特に虐げられてるにもかかわらず,安倍政権を熱烈に支持しているような人達が手に取るようなタイトルと切り口で再編して出版して欲しい. -
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時代遅れの大きな政府の推進者とみなされがちなケインズと、新自由主義の祖の一人にかぞえられることのあるハイエクという、二人の経済思想家が考えていたことをみなおしつつ、ベーシック・インカムやインフレ・ターゲットといった、現代において議論の的になっているトピックについても検討をおこない、現代の日本経済が直面している問題に対する著者の処方箋を提示している本です。
著者の主張の根幹にあるのは、政府の役割は人びとの予想を確定させることだというものと、リスクと責任と意思決定が一致するような制度を構築するべきというものに、まとめることができるでしょう。著者は置塩派の経済学者ですが、右と左の政治的な対立構造が -
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左派が語るべき経済のあり方を学ぼうとすると期待外れ。そういう話題になると不思議と話がそれて、断片的にしか把握できない。対談本に書いてする必要があったかなーとも思う。対談をもとにもうすこしまとまりのある構成をとれたのではないか。反緊縮ってとこやケインズ的に需要を作り出すべきってあたりかな、せいぜい把握できたのは。需要が不足していたというのはアベノミクスによろしくという本でも学んでいたため、すとんと腹に落ちた。
左派が経済を語る必要性を啓蒙するための本としては、優れている。左派思想史としても鋭い分析が随所にある見られ、目を開かされる。過去の左派の思想へのツッコミは的確だし、新たな時代の左派像にも共 -
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ネタバレ経済政策の流れの「軸」が整理されて分かりやすかった。
日本では、右派たるべき自民党が社会党の影響の下に、本来左派の取るケインズ的な大きな政府介入を行い、これに代わる連合の支持を受けた民主党が、緊縮財政の小さな政府を目指したことから、話がややこしくなっている。逆に言うと、それができるほど決定的な違いでないということ。
ケインズはともかくハイエクも、大きな政府に繋がる財政出動を否定していない。小さな政府と誤解されているのは、政府がルールキーパーに徹することで、各人の予想可能性が高くなり(リスクが低減し)、安心して経済活動に従事できることだ。非常時の財政出動もルールキーパーの重要な役割であり、治安 -
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ちょっとタイトル詐欺はいってると思う。
小さな政府だー新自由主義だー市場に任せろーいや第三の道だー といった叫ばれ続けてけっこう経つが評価の安定しない──評価することが無視されている──近年の政治的経済政策について、ケインズやハイエクといった経済学者がなにを問題にしていたのかに軸足をしっかりと置いて整理されている本。
ケインズやハイエクの主張に共通するもの、「リスク・決定・責任の一致」「予想は大事」という立ち位置からそれぞれの主張、当時の状況に対する解説、今必要な政策を考える内容。
作者の立ち位置(マル経)よりの言葉が付け加えられてたりはするけれど、なるべく様々な立場に立った理論だけの話に -
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訳あって敢えて止めていた読書再開です。
どういういきさつで購入したのか忘れましたが、政局・経済情勢を見るとなかなかタイムリーな内容なので積ん読からこれを選びました。
大きくは経済学における大きな二つの流派が現在はどのようなスタンスを取って政治につながっているか、そしてそのどちらもが経済の変遷の本質を見誤ったことで誤ったポジショニングを取っている事を分析した内容です。
私は経済には全く疎いですが、これは面白かった!
著者の主張は、「リスク、決定、責任は同じとろこにないと、無責任かつ恣意的な自己拡張の歯止めが効かない」というもので、序盤に「そごう問題」が例に引かれていますが、経営やリーダーシ -
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近代日本の左翼の運動史を、簡潔に解説している本です。
著者は、NHKの大河ドラマ『獅子の時代』の主人公である苅谷嘉顕と平沼銑次について、嘉顕が理想や理念を抱いてそれに合わない現状を変えようとする道を選んだのに対し、銑次は抑圧された大衆の中に身を置いて戦う道を選んだと述べています。その上で、日本の左翼運動史を、「嘉顕の道」と「銑次の道」の相克として描き出しています。もちろん中心になるのは山川・福本論争から講座派と労農派の対立を経て、戦後の共産党と社会党の二つの流れが生まれるまでの流れで、もちろんこの一冊で左翼運動史の全貌を知ることはできませんが、大きな流れを把握できるようになっています。
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Posted by ブクログ
自由主義経済政策と社会主義経済政策の歴史を振り返りつつ、これからの経済政策・社会政策を考えていく上で重要な論点について、作者の意見を具体的に述べてくれている本です。それほど期待せずに読み始めたのですが、予想以上に面白かったです。
経済政策としては、何よりも人々の「予想」に働きかけることが重要であり、そのための政府の役割は、明確なルールによって予想を確定させることであるということ、また、情報を持つ者がリスクと責任を負って決定する権限を持つべきであり、組織規模の小さいスタートアップの段階では独裁制が良くても、事業が安定してくれば現場中心の分権型意思決定の方が望ましいとする考え方には、十分納得・共感