松尾匡のレビュー一覧
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昨今課題となっている「「下から」の社会変革路線とその問題点の克服方法」(18頁)について,なぜ日本でうまくいかないのか,1世紀にわたる近代社会運動の歴史をサーベイした良書。右翼・左翼の概念的イメージとして,「世の中を横に切って「上」と「下」に分けて認識し,「下」に味方するのが左翼で,世の中を縦に切って「ウチ」と「ソト」に分けて認識し,「ウチ」に味方するのが右翼」(254頁)と定義したのは,実にわかりやすい。また冒頭において,日本の社会主義思想は,明治期における社会主義の誕生から日本資本主義論争に至るまで,常に2つの道(「理想や理論を抱いて,それに合わない現状を変えようとする道」と「抑圧された
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ネタバレ左派と呼ばれる人たちは人権問題や環境問題等は取り上げるが、経済問題に真剣に取り組んできていなかったが、今政治の実権を握っている人たちに対抗して人間らしい暮らしをみんながしていけるためには、これからの暮らしを経済の観点からどう変えていくのかを語らないと人心を掴むことはできないということを語った本。
北田さんと松尾さんの話が高度すぎてたまについていけなくなるんだけど、ブレイディさんが庶民的な目線で理解したことを話してくれるので助かった。
ここでいう左派というのは平等主義とか平和主義とかではなく、稼いだものをきちんと分配して、働いたらきちんと食べていける世の中を作ろうと言っているにすぎないという -
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鼎談形式ではあるが、内容はかなり高度。それだけに議論が錯綜し、わかりづらい印象がある。しかし、本書の主張は一貫しており、左派(リベラル)も反緊縮経済政策を訴えよう、というのもである。日本の左派は、人権などの問題と経済とを別問題と考える傾向がある。それをあらためようという主張。社会福祉へ財政を投入すればそれが雇用を創出し、経済も活性化する。要は経済の舵の切り方を右派と違う方向に切ることで、経済を発展させ、かつ福祉も充実させようというとする試み。魅力的な考え方ではあるが、はたして本当に債務超過に陥っている日本で、財政出動を積極的に続けることができるのか、不安がぬぐえない。もっと、勉強をしないといけ
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これからは左派も経済について語ろうというお話。現在の左翼の凋落は経済無策が招いたことの反省です。ここで語られる経済政策は、右派である私にとっても違和感のないものです。というか、現在のデフレ下では当然の政策ばかりです。驚いたのは欧州では反緊縮が左派(リベラル)の専売特許になっていることでした。日本では右派と目されている経済学者が反緊縮を主張してますね。マルクスとケインズがつながるという解説は目新しかったです。経済政策については著者たちに合意できるけど、その以上の思想はやはり私とは違うなあと思いました。この本はコロナ禍以前に出版されたものです。今は、さらに反緊縮が必要な時期です。
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貨幣の本質=債務証書と、GDPの恒等式をシステム思考的に突き詰めた、みたいな感じ?
そんな簡単なことでいいの?とも思うし複雑だなとも思う。
本質的な役割で見たら、貨幣は債務証書。政府が発行する通貨は、まず政府が負債として支出し、後に税金や罰金などで受け取って償還される。政府は、中央銀行の負債に数字を追加する…「キーストローク」で支出する。
なるほど。
政府の赤字は民間の黒字。貿易の黒字は政府か民間どちらかが赤字。
ゼロ金利は投資を刺激しない。
政府は完全雇用を目的に赤字支出せよ、失業者を直接に雇用せよ、そこまでがMMTだ、と。
純粋に、経済の仕組みに関わるところと、熱く語る思想的主張が混 -
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MMTが主張するところによると、「通貨発行権のある政府にデフォルトリスクはまったくない」。通貨が作れる以上、財源の制約はなく、インフレが悪化しすぎないようにしさえすれば、財政赤字を気にする必要はないという。
さてここで気をつけたいのは、本書にも指摘があるように、政府がデフォルトを選択することはありうるということだ。特に対外債務に頼っている場合は、自らデフォルトすることで借金をチャラにするという誘いが常に存在し、実際にそのような事例は歴史上たくさんある(『国家は破綻する』参照)。したがって、国債所有者から見たデフォルトリスクは存在するわけで、そのリスクを踏まえた金利設定がされるはずだ。政府はこ -
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主流の理論が間違っている
キーストロークだから大丈夫
...の2点しか頭に残らない。
ところどこと面白い議論もあるので、無駄だったというわけではないが、知りたいところに手が届かないモヤモヤが残る本でした。
理論の骨格とかロジックを知りたかったのだが、主流派批判に邪魔されてピントがぼけてしまっている印象を受けました。
既存の理論との違いはを知りたいのですが、何が争点なのかよくわからない。(もちろん結論はちがっているのですがそこに至る何処に違いがあるのか)
最初はすごく丁寧に説明しているくせに、後半、もっと丁寧に説明がいるのでは、というところが、主流派批判の勢い優先でかかれていて論理展開につい