昔,人を救うヒーローはボランティアか公務員でした。「ボランティア型ヒーロー」の代表が仮面ライダー。「公務員型ヒーロー」の代表がウルトラマン(正確には地球防衛軍)。とにかく,人助けは金にならない,金になってはいけないというのが,数十年来のヒーロー業界の伝統でした。
しかし最近,この伝統が崩れつつあります。新たに登場した「企業型ヒーロー」は,地球防衛軍のような公的機関ではなく一企業がヒーローを雇用し,人助けを行うことによって利益を上げているという設定です。その典型例が「TIGER & BUNNY」で,登場するヒーローはスポンサーから資金援助を受けているため,スポンサー名がでかでかと書かれたヒーロースーツを着て戦っています。ヒーローが活躍するほどスポンサーにとっては宣伝になるので,広告料が入ってくる,という仕組みです。
ところが先日,本屋の棚をなんとなく眺めていたら,すごいマンガを見つけてしまいました。それがこの『ヒーローカンパニー』です。
この作品も「企業型ヒーロー」が主人公です。しかし「TIGER & BUNNY」よりもすごいのは,助けた相手から直接報酬を受け取るという仕組みで利益を上げていること。ちょっと装備のいい警備保障会社みたいなもんです。「TIGER & BUNNY」は企業型ヒーローとはいえ助けた相手から直接金を取るわけではなく,あくまでも広告収入を得るというある意味迂遠な仕組みで利益を得ており,この辺にまだ「人助けが金になってはいけない」という伝統の名残が見えるのですが,『ヒーローカンパニー』ではそれをもう一歩先へ進んで,完全な形の企業型ヒーローを描いてしまっています。極言すると「契約した人しか助けない」。すごすぎます。
しかしそこは島本和彦,冷たい感じのヒーローものではありません。主人公アマノ・ギンガは「正義大好き」を公言するほどの熱血正義感。ヒーローカンパニーの入社試験に向かいますが,こんな日に限ってスリ,置き引き,痴漢,コンビニ強盗,武装銀行強盗などなどが行く手に立ちふさがり,正義感の強いギンガは見過ごすことができません。「たどり着けば合格」という入社試験に遅れずにたどり着けるのか?というのが第1巻の内容です。
「正義より命令」──自分だけの薄っぺらい正義感をふりかざして力を行使する者は,ヒーローにはふさわしくない,というキバ部長の話にも一理ありますが,こういう会社でギンガは「正義」をどうとらえ直していくのかが気になります。