溝口ケージのレビュー一覧
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青春ブタ野郎はガールフレンドの夢を見ない
著者:鴨志田一 イラスト:溝口ケージ
### あらすじ
『青ブタ』シリーズ第14弾。麻衣がステージ上で「実は、私が霧島透子なんです」と衝撃の言葉を観衆に放つところから始まる本作。ついに夢見たその日が訪れた彼らに、どのような試練が待ち受けるのか――青春と奇跡が交錯する、最終章の幕開け。
### 感想
前作からの間が少し空いたため、内容を思い出すのに時間がかかってしまいました。そのせいか、最初はストーリーに入り込むのに少し苦労しましたが、記憶が戻るとともに再び『青ブタ』の世界に引き込まれていきました。今作は分量が控えめだったため、せっかく思い出して熱中し始めたところで読み終えてしまったという印象です。
シリーズものは、完結した後に一気読みするほうが物語の流れに没入できると感じていますが、やはり気になると最新巻をつい手に取ってしまいます。この「最終章開幕」という展開も読者としては非常に心が揺さぶられるポイントで、これからどんなドラマが待っているのか、次巻が出るのを期待せずにはいられません。結局、また出ればすぐに読んでしまうのでしょう……。 -
Posted by ブクログ
殆どのシーンをかえでか花楓視点で進行しているため、原作とは異なる進行となっているシーンも幾つか見られるのだけど、その分だけ彼女は如何にしてあの時間を過ごしていたのかという点が見られる形になっているのは良いね
花楓の知り合いとの遭遇により、より学校へ行く事を焦り始めたかえでの在り様は少し怖いけれど、それ以上に進む覚悟を持ち始めた姿は応援したくなるもの
ただ、そんな覚悟の源泉がもうすぐ自分が消えてしまうかもしれないという恐れに起因しているのが何ともね…
危うさを感じさせながら前に進むかえでに関し、咲太が傍で支え続ける構図は本当に良いね
かえではお兄ちゃんの為に学校に通えるようになりたい。お兄ちゃんはそんな妹の頑張りを叶えてやりたい
二人暮らしの兄妹が見せる絆に感銘を覚えるよ
けれど、気持ちとは裏腹に通学チャレンジは簡単な話ではないわけで
気持ちに反して一歩も動けなかった彼女の姿はあまりに悲しい…
そのような状態だったからこそ、応援する立場の咲太が多少の搦手を用いた上で学校へ連れて行くシーンは本当に良いね
妹の願いをなんてこと無いように叶えてしまう最高の兄ですよ
咲太のような兄が居るからかえでも学校へ行ける予感が高まる、幸福感に浸れる
それはかえでにとってきっと最高の1日で
だからこそ、その瞬間が区切りとなってしまったんだろうなぁ……
驚きだったのが花楓に戻ってからも彼女視点の構成を変えなかった事かな
原作5巻では様々なシーンが心を揺さぶってくるのだけど、その一つである咲太の慟哭が描かれるシーンを本コミカライズでは描いていないのだから
でも、それってかえででも花楓でもなく、咲太の物語だから描かれたものとなる訳で
また、花楓はそれを知らない事で兄のイメージを崩さずに済んだとも言える
そもそも花楓が戻って来た辺りでの咲太の対応って本当に素晴らしく感じられる。かえでに花楓を押し付けなかったように、花楓にかえでへと戻るよう要求もしない。唯一パンダを見に行こうと誘ったくらい
その心中にどれだけの悲しみがあったとしても、それは咲太とかえでの間の思い出なわけで
だから花楓に手渡されたかえでのノートは咲太からの押しつけではなく、花楓が直前2年間を「空白」と感じない為の措置と言えるのかもしれない
花楓にとっては見ず知らずの他人。けれど、似たような立場で学校へ行こうと奮闘していた少女の記録。そして彼女が幸福を感じられた為か自分は戻って来られた
だからこそ、花楓のこれからしたい事が「学校に行きたい」になったのだろうしね
結構良いコミカライズと感じられたのでこの調子で『おでかけシスター』もコミカライズしてくれたら嬉しいけれど、流石にそれは我が儘かな… -
Posted by ブクログ
かえで視点で描かれる本作、原作5巻部分からスタートするのではなく、咲太が麻衣と出会う前の時期から物語が始まる。それにより咲太とかえでの2人生活がどのようなものだったか見えてくるのが良いね
家にずっと居るかえでにとって咲太となすのが居る生活は不変で安全
けれど、麻衣を始めとして咲太が多数の少女達を家に連れ込むようになった事が良い意味でかえでに影響を与えたのだと判りやすくなっているよ
かえでが定めた目標は彼女の境遇を知らない人が見ればあまりに小さな目標と呆れる程のもの
けれど、目標の最後に小さな字で「学校へ行く」と書いてある事で、それら前段階の目標がかえでにとって欠けてはならないものであり、最後の目標がとても勇気の要るものなのだと感じられるよ
それに寄り添う咲太は当然として、麻衣やのどかがかえでの目標に係る勇気を察して手伝ってくれる展開は心温まる様子となるね
家の外に出るのも、誰かのお家に行くのも。かえでにとっては簡単な事ではなくて
熱や痣を出しても独り立ち目指して奮闘するかえでの成長には目を見張るものがあるね
そのように出来る背景はかえでの勇気だけじゃなく、咲太が傍で見守っているという点もあるのだろうな
記憶を無くして自分を自分として見てくれる人なんて居ないと、誰にも心を預けられなかった生まれたばかりの頃、本当の彼女を見つけて「かえで」という名を与えてくれた
かえでにとって咲太は兄であり恩人のようなもの
そんな彼の為だから、かえでは奮闘できる。そのように再認識できる作品となったよ
あんまり作品の流れとは関係ないのだけど、動物の作画が滅茶苦茶良いのは何か理由というか、こだわりが有ったりするんだろうか……? -
Posted by ブクログ
原作6・7巻に相当し映画化もされた翔子のエピソードを翔子視点で描くという事になれば、俄然期待は沸いてしまう。それだけに前半は少し肩すかし感があったというのは否めなかったかも
原作6・7巻は翔子という人物をどのように描くかにより感動の度合いが変わってくるけど、そこに咲太や大きな翔子の覚悟も関わってくる
それだけに小さな翔子のみで描かれる視点はどこか歯抜け感を覚えてしまっていた
だからこそ、中盤で手術が成功するシーンが描かれた事で本作がどのような物語かを突きつけられ衝撃を覚えてしまったよ…
本作はいわばエピソード0のようなものであり、翔子が二重の意味で咲太と出会う物語。原作6・7巻のコミカライズというよりシリーズ全体を裏側から描く作品となっていくのかもしれない
そのように考えると本作の前半部で行われる翔子と咲太の触れ合いも別の意味をもって見えてくるね
小さな翔子にとって咲太は憧れのお兄さん。彼女も居て自分を助けてくれて励ましの言葉もくれた。そういった憧れの存在に幼い慕情を抱くのは当然の話で
だからこそ翔子の心臓が咲太によって齎されたという衝撃が彼女を揺さぶる。移植による回復を咲太は喜んでくれるかもしれないが、その咲太は何処にもいない。それはどうしようもない喪失
大きくなった翔子が咲太に再会できたシーンというのは彼女にやり直しの機会を与えつつ、咲太への恩返しを行わせる機会となるね
それまで丁寧な物言いだった翔子の言動が咲太との会話シーンでは悪戯気味なお姉さんみたいな感じになるのは印象的
その変貌は今の自分より年下の咲太に対して、かつての自分が授かったように導き励ます、そういった存在になろうとするものだと伝わってくる。だからこそ、やさぐれていた咲太に響く言葉が彼女から出てくる
というか、あそこまでやさぐれている咲太の姿は衝撃的だったな
本編においては思春期症候群に悩む少女達の隣に居てくれる頼りないけど頼りになる少年といった印象が強かった。心理的ダメージを受けるシーンがあっても基本的には飄々とした態度な彼が完膚なきまでにやさぐれている
それくらいにこの時期の咲太は花楓の件でダメージを受けていたし、頼れる誰かが居なかったという話になる
本来なら有り得ない二人の邂逅は翔子と咲太に明るい兆しを齎す
でも、それが有り得ないならしっぺ返しが生じてしまうもので
本編では咲太の良きアドバイザーだった理央が行おうとする忠告が想像できるだけに、これからの翔子の選択が気になってしまうね……