二木真希子のレビュー一覧
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ネタバレ上橋菜穂子のデビュー作。なんの前情報もなく手にとり、他の作品同様ファンタジーだろうと思っていたら、SFだったので驚いた。とはいえ、雰囲気はかなりファンタジーっぽいけれど。
純粋に面白いか面白くないかでいうと、詰め込みすぎて読み疲れる感じがあったのだけど、歴史を改ざんする政府や、滅ぼされた先住民・ロシュナールに対する視線に、この作者らしい鋭さを感じた。先住異星人を技術レベルでABCに分けて、勝てそうだったら滅ぼしちゃえ! みたいな方策をとるほど、地球人が愚かで傲慢だとは思いたくないけど。
あと、上橋さんは親と子について書かせたらホントぐっとくることを書いてくれるよなあ。(引用参照)闇の守り -
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ネタバレ異世界の人の夢を食べる花に囚われてしまったタンダの姪っ子カヤ。そして同じ様に眠り続ける一の妃。
カヤを救うために魂のみとなって花の世界に入ったタンダは、騙されて化け物となり、自分の体が傷つくのも構わず、リー・トゥ・ルエン<木霊の想い人>の歌い手ユグノを襲い続ける。
今回もおもしろかったけど、前作2つの方が良かった。
気まぐれなユグノがどうしても好きになれないのと、花の世界観がいまいちつかみきれなかった。
チャグムとの再会は嬉しかったけど、一気に賢く理知溢れる性格になってしまっていてちょっとさみしい。
でも、シュガとチャグムのやり取りや王宮の描写はかなり面白かったし、タンダの性格やトロガイ師の -
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この頃『守り人』シリーズで大分色々なところで見かける方のデビュー作だそうです。
ファンタジーだろうと思って読み始めたら違うのでちょっとびっくりしました。
細かいSF的観点からの突っ込みは色々したいところですがこの作品の語りたい部分はきっとそんなところではないだろうと思うので。地球外知的生命体との接触はもう少し慎重になされるだろう、と思うのですがそれも又置いておいて。確かに自分もこの頃かじった程度ですがアフリカ史を読み、いかに歴史と言うものが征服者の立場によって語られているかと言うことを実感したのでこの作者の懸念には共感します。アメリカ先住民だってそうですよね。まあ今では野蛮人、劣等民像と -
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守り人の原点~環境破壊で地球に住めなくなった人類は,さまざまな星へ移住した。少年ヤマノシンの住むナイラ星も人類が移り住んでから二百年を迎えようとしていた。ところが,シンの従妹リシアが突然,滅びたと伝えられるナイラ星の民「ロシュナール」の<時の夢見師>の力にめざめてしまう。彼らには滅び去った精霊と共に生きる「ロシュナール」に血が入っていたのだ。ロシュナールは意図的に人類によって滅ぼされたのだが,時を超える術を持っていたのだ~血の系統を遡る。西部劇で駅馬車を襲うインディアンが悪者で,ガンマンが正義の味方であった時代は過ぎた。アボリジニーに対する仕打ちも冷静に公正な立場で振り返らねばならない
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ずっと心の底に押しかくしていたものが、暗い、その底の闇から頭をもたげていた。それを見てはいけないと、思いつづけてきたのに。
チャグムは、ふるえながら息を吸いこんだ。
自分が選んだ道はまちがっていない――これが北の大陸のためにはもっともよい道なのだと思いたかった。けれど、ほんとうは……心の底では、そうなのだろうか、という迷いがある。自分がこの道を選んだために、もうすでに何人もの人の命をうばってしまった。これから先は、もっと多くの人が死ぬことになる……。
同盟が成功したら、自分は、カンバルやロタの兵士たちを、新ヨゴへみちびいていくことになるのだから。
(異国の兵たちに、新ヨゴ皇国のために戦 -
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(……ずいぶん、大人になったんだなぁ。)
頭の中ではわかっていたつもりでも、実感できていなかった歳月の長さが、あの便りを読んでいるうちに、くっきりと心にせまってきた。
十一歳のチャグムを、ふいに背負いこんでしまったあのときは、命を守ることだけを考えればよかった。
だが、十六になったチャグムをとりまいているのは、複雑で巨大な、国と国とのかけひきの渦だ。それに……、
(チャグムは、そのことをちゃんと知っている。自分がどんな道を歩いているのか、わかって歩いている。)
チャグムはもう、為政者となる道から逃げようとはしていない。皇太子になるのがいやで、宮の暮らしがいやで、いっしょに旅をしたいとい -
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「だけど,まあ,あんたが,この娘を見殺しにできなかった気持ちは,わからないでもない。あんたも,孤児だったわけだしさ。似たような境遇の子を,ほっておけなかったわけだろう?あまいよねぇ,あんた。一見こわもてだけど,そういうところはさ……。」
アスラは,その言葉を聞いて,はっとした。ジグロという養い親がいたことは聞いていたから,そうではないかと思っていたけれど,やはりバルサも孤児だったのだ。
あまいといわれて,バルサは肩をすくめた、
「たしかにね。――でも,他人をあっさり見捨てるやつは,自分も他人からあっさり見捨てられるからね」
カイナがにやっとわらった。
「名言だね。」
(本文p102-10 -
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(――お兄ちゃんは,どうしているだろう)
胸の底がぎゅっと痛んで,鼻の奥が熱くなった。……いますぐ会いたい。
カミサマにお願いすれば助けられるはずなのに,チキサを助けにいかない自分を,アスラは,心の中で責めつづけていた。
でも,チキサの傷を見てしまった瞬間から,アスラはカミサマがこわくなっていた。たとえ自分たちが生きるためでも,カミサマにすがって人を殺すのは……いやだった。
それに,人を殺すことを願ってしまったら,カミサマを信じる清らかな思いが,穢れてしまうような気がした。
けれど,カミサマを招く力を使わなければ,アスラは,ただの十二歳の少女にすぎない。なにもできずに,運命が自分たち