中谷友紀子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
7歳のときに母と二人の姉を惨殺されたリビー。彼女の目撃証言によって兄のベンが殺人犯として逮捕される。それからから24年、心身に傷を負い、定職にも就かず、殺人事件の哀れな犠牲者として有志からの寄付金を食いつぶしながら、無気力に生きるリビーのもとへ、有名殺人事件の真相を推理する同好の士である「殺人クラブ」から会への出席依頼が。集まりに参加し、殺人クラブのメンバーが自分の家族に起こった忌まわしい事件に関心を抱いていることを知り、リビーは謝礼金を目当てに、事件の真相を探りはじめる……。
現在のリビーの視点と、事件当日の兄ベンと母パティの視点から物語が交互に語られ、やがて悲劇的な真実が明らかにされる衝撃のダーク・スリラー。「ゴーン・ガール」でブレイクしたギリアン・フリンだけに、キャラクターの心の中にある闇を描き出す手腕は見事。一家惨殺事件の生き残りになってから働きもせず事件後に寄せられた寄付金で暮らし盗癖がありウソつきな主人公リビーや酒と金にだらしなく奥さんのパティにたかることしか出来ないラナーや4人の子供を育て上げるのに精一杯で農場を手放す寸前まで追いつめられているパティやどこにも居場所が見つからず苛立ちを募らせるベンなど問題を抱えウソつきで弱さを抱えたキャラクターの人間性をリアルに描き出す緻密なキャラクター描写、一家惨殺事件の謎解きをする中で浮かび上がってくる若者による悪魔崇拝者や農業危機にさらされ借金に追われる農家の苦しみや借金で生活に行き詰まった人々の救世主気取りで人々の自殺に手を貸す謎の男や噂と偏見に縛られた田舎街の閉塞感、容疑者ベンやパティのへそくりを狙っていたラナーやベンがいたずらしたとされるクリッシー・ケイツや予期せぬ妊娠のため金が必要なディオンドラなどの容疑者が登場して惑わせながら、リビーやベンやパティの視点が交錯していく巧みな語り口で衝撃的だけど家族愛が沁みるオチまで惹き付けられます。 -
Posted by ブクログ
ヴィスティング警部シリーズ第13作、邦訳3作目にして、コールド・ケース・カルテットの2作目である。
「今回はいつもと次元の違う捜査になりそうだ」、冒頭でヴィスティングはそう独りごちる。それもそのはず、検事総長に直々に呼び出されたヴィスティングは、先般心臓発作で亡くなった大物政治家バーナール・クラウセンの極秘調査を命じられていた。彼の別邸から、段ボールに詰め込まれた530万ドル以上の、出所不明の大金が発見されたのだ。国内外に知られるこの政治家は不正を働いていたのか。ヴィスティングは部下のモンテルセン、娘のリーネとチームを組み、捜査を開始する。
事件の鍵穴にしっかりはまる鍵は果たして見つかるのか。クラウセンの息子の死、現金強奪事件との関連など、様々なことが絡んできて、最後までまったく読者を飽きさせない。今回も未解決事件ということで、前作でヴィスティング親娘を振り回した国家犯罪捜査局のスティレル捜査官が再登場する。出番はさほど多くないが、味のある役柄を演じている。
本シリーズは親娘の物語でもある。本作のリーネは報道の立場ではなく、非公式ながら捜査協力というかたちで捜査に加わる。父の指揮下に入ることで、普段とは違う父の一面に接し戸惑うものの、随所で父をも超えたひらめきを見せる。しかし…、毎度ながら捜査機密をマスコミの娘に簡単に開示して、あまつさえ捜査チームに加えてしまうヴィスティングはいかがなものかと思うが…。
それはともかく、おもしろい。次の作品が早く読みたい! -
Posted by ブクログ
ヴィスティング警部シリーズ12作目。邦訳としては『猟犬』に継ぐ2作目。今回もヴィスティングは過去の事件と向き合うことになる。
24年前、主婦カタリーナ・ハウゲンは、忽然と姿を消した。キッチンに不可解な暗号を残して。警察は徹底的に捜査したが、カタリーナは発見されないまま現在に至る。かつて捜査を担当したヴィスティングは、年に一度、夫のマッティンに捜査の報告をしに訪問を重ねるうちに、彼への疑惑を抱きつつ、友情に近い感覚も覚えるようになっていた。
そんな折、スティレルという国家安全捜査局の人間がヴィスティングを訪れる。マッティンが、同時期に起きたナディア・クローグ失踪事件の犯人と目されるというのである。スティレルはヴィスティングに、マッティンとの関係性を利用して自白に追い込むよう持ちかける…。
本書でも人間心理を捉える描写は現在である。また娘のリーネも絡んできて、ヴィスティングのパートと静と動が交互に入れ替わり、飽きさせない。リーネには娘が生まれており、なんとヴィスティングはおじいちゃんになって、孫娘に目尻を緩める姿も描かれる。
ヴィスティングは優秀だが、天才型の警官ではない。コツコツと証拠を漁り、積み重ねた知識が沸点に達した時点で天啓を得るタイプの捜査官だ。家族思いだが、完璧な男でもなく、不器用で、我々と同様に些細な嘘もつく。そこが彼の魅力でもある。
本書最大の山場は、山小屋でのヴィスティングとマッティンとのヒリヒリするようなやり取り。どんどん緊張感が高まり、このままどこへ進むのかと、手に汗握らずにいられない。このシーンだけでも読む価値あり!
本書から版元が早川書房から小学館に移り、コールドケースシリーズと銘打たれて3作が訳出されている。ヴィスティングものの迷宮事件を扱うということか。これは次も読んでしまおう。 -
Posted by ブクログ
ネタバレノルウェー産、正統派警察シリーズもの。
キレの良い直球。完成度高し。
労働党の大物政治家バーナール・クラウセンが急逝した。
死因に不審なところはないが、別荘から多額の現金紙幣が発見される。
検事総長から直々に、警部ヴィスティングのもとへ真相究明の極秘指令が寄せられるところから始まる。
鍵となるのはクラウセン関与について名指しで告発状のあった過去の未解決失踪事件と、同じく未解決の、同日に発生していた空港での現金強奪事件。
『鍵穴』というタイトルながらも印象的なのは、”捜査の喩えにふさわしいのは鍵ではない。ジグソーパズルだ”という示唆。
まさにそのとおりの進行で、外枠が埋まり、次第に図柄が見えてきたところで、ピースのはめ違いやどうしても埋まらないピース、行き詰まりに出会う。
そうかと思えば急に霧が晴れることもある。だがまだ何か足りない。
といった風情で北欧ミステリらしくしっとりとした始まりから、尻上がりに疾走感を増し、最後は息もつかせぬ展開。
前作『カタリーナ・コード』もなかなかの出来。
今作も含めて未解決四部作(コールド・ケース・カルテット)の2作品とのこと。
次作も邦訳済みのようで、期待大。