河野裕のレビュー一覧

  • つれづれ、北野坂探偵舎 感情を売る非情な職業

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    全体像が見えて来るからか、巻を追う毎に難解さが薄れて、段々と読み易くなる。五年前を知ることで当時編集者だった佐々波の人物像がぐっと飲み込み易くなった。佐々波の恋人の萩原春の死や、賞に向けて奮闘する後輩編集者の工藤凜や、目覚めたばかりの雨坂にも引き込まれた。文章の良い意味で色のない感じが心地好くて、朽木続の「トロンプルイユの指先」の圧倒的なところも印象的だった。溢れるような校正者に対する尊敬が眩しくて、校正の仕事や文章を磨いていく作業のプロフェッショナルさが格好良い。一巻で読むのをやめなくて良かったなあ。

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    2018年10月19日
  • 最良の嘘の最後のひと言

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    『鋼鉄都市』のSFミステリを思い出させるような
    超能力者同士のMF(マジックフィクション?)ミステリ
    『ジ・エンターテイナー』のリズムでさくっと読める一冊
    『サクラダリセット』もそうだったけれど
    よくぞこの設定で破綻なくミステリ仕立てに出来るものだと感心する
    ただライトノベルだった『サクラダ』と比べると
    登場人物の造形着地点がもうひとつ定まらない感じ
    感心はするが娯楽小説として不可欠の感動に至る押しがどの作品でも弱いと思う
    悪い意味であざとくなく自然に押し付けがましくない
    より印象深く記憶に残る揺り動かしとなる舞台上の場が欲しいところ
    『ジ・エンターテイナー』が示すようにそういう効果を狙ったお

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    2018年10月17日
  • 凶器は壊れた黒の叫び(新潮文庫nex)

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    小二の七草の傍らで正しさを追求する幼い真辺が昔の自分のようで、変わらない高校生の彼女が閉じ籠もる堀を追うのがきつい。もう一人の七草が抱えていた、七年前の小三の彼と堀の階段島創造ともう一人の魔女候補とその当時の意外な魔女にわくわくした。議論や敵に回る宣言やその受け入れが相手を潰す為でない所が印象的。

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    2018年10月13日
  • サクラダリセット2 WITCH, PICTURE and RED EYE GIRL

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    あいかわらず淡々と描写されていって、すとんと終わる/ 文体による山場の盛り上げっていうのが基本的にない/ でも構成が凄く良かった/ ストーリーに都合の良い能力しか出てこないのはどうかと思うけど/ リセットの能力と他人を巻き込んでしまう責任とか、よく考えられている/ 

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    2018年10月08日
  • 魔女と思い出と赤い目をした女の子 サクラダリセット2

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    河野氏が語る優しさや強さは一般的な定義とは少しずれているものの、作品の世界観に浸るうちに徐々に自分の中にも染み込んでくる感覚が好きだなあ。
    能力の使い方が想定外であることが多いけど、こんな展開を想定して能力を設計していたとしたら凄い想像力ですね。

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    2018年07月22日
  • 猫と幽霊と日曜日の革命 サクラダリセット1

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    淡く薄い描写が光る作品。サクラダリセットのころは合わないと感じていたが、静かなイメージを言葉にし、幻想的で不思議なストーリーに心惹かれてしまいました。その中で、ラスト主人公の選択は読めながらも魅力的で、読み進めていくシリーズとなりました。

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    2018年06月30日
  • 夜空の呪いに色はない(新潮文庫nex)

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    だいぶ煮詰まってきた。前巻までに階段島の秘密が明らかになって、今回で大地の秘密もほぼ明らかになった。次が最終巻。どう決着がつくんだろう。

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    2018年06月23日
  • 猫と幽霊と日曜日の革命 サクラダリセット1

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    階段島シリーズと同じく、特殊能力の存在を前提にしつつ人間の本質を問うような作品です。
    一見するとライトノベルの雰囲気なのですが、自分の感覚と全く違う切り口で物事を捉える河野氏の視点が新鮮で引き込まれます。

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    2018年06月08日
  • 夜空の呪いに色はない(新潮文庫nex)

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    信頼とは愛情よりも尊いのかもしれない。

    主人公の少年少女の間に交わされる会話やその寄り添い方は、表面的には信頼だ。根っこにはお互いへの深い愛情があるのだろうが、それをいわゆる男女愛ではなく、信頼の形で付き合えるのはすごいし、羨ましい。

    階段島や魔女の始まりが語られ、大人と子供、責任と覚悟の在りようが語られる。階段島という区切られた空間の中だが、描かれる命題は普遍的だ。

    幸せになるために決断をすることは、誰かを傷つけることかもしれない。魔法をどのように使い最適の幸いを目指すのか、続巻が楽しみ。

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    2018年05月16日
  • 少年と少女と正しさを巡る物語 サクラダリセット7

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    ネタバレ

    2018/4 14冊目(通算66冊目)。シリーズ最終巻。結果的には「大団円」という形で話が終わるので自分的には満足。ただ、この作品のキモは「話の伏線」だと思う。すべてのキャラの出番に意味があり、一度話が終わってからも何らかの形で話に絡んでくる。大げさではあるけれど、非常に話が計算された作品であるといえると思う。その点ではすべてを理解できずに読み終わってしまった自分に対して残念な気分になる。今このアニメも同時に見ているが、その残念な点はアニメを見て補完したいと思う。感想はこんなところです

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    2018年04月25日
  • 汚れた赤を恋と呼ぶんだ(新潮文庫nex)

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    階段島の現実サイドの物語。
    表の世界では七草、真辺、大地の正しさと純粋な優しさが一層鋭利で心が苦しくなりそう。
    表裏を両方描くであろうことは想像できたのに、両者の関連性を正しく把握するために前作までをもう少しキチンと読んでおくべきだった。

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    2018年04月10日
  • ブラックミステリーズ 12の黒い謎をめぐる219の質問

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    水平思考パズルで有名な「ウミガメのスープ」のミステリー版。

    ある古い洋館に集められた5人の男女。
    一癖も二癖もある彼らが出す問題は、全12問。

    不可思議な問題を出題者が提示し、回答者が出来るのは、イエス、ノーで答えられる質問のみ。
    果たして、真実に辿り着く事は、出来るのか。

    カードも小道具も、何も使わない、言葉だけのシンプルなルール。それ故に、深い謎と真実に辿り着くプロセスが興味深く、楽しめます。

    「熱烈なキスを交わした結果、2人は二度と会えなくなった」
    「赤、赤、赤。どこまでも続く赤に絶望し、男は自殺した」
    「計画は予定通り完了した。最後に被害者の顔を見て、誘拐犯は絶望した。」
    など

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    2018年03月27日
  • 汚れた赤を恋と呼ぶんだ(新潮文庫nex)

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    ネタバレ

    登場人物の言葉の一つ一つに意味があり重みがある。

    終わりに今までは捨てられた人しかいない島に奪いにくる人がやってきてどうなるのか気になる終わり方だった。

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    2018年03月19日
  • 夜空の呪いに色はない(新潮文庫nex)

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     階段島シリーズ5巻目。
     島での唯一の郵便局員にして元魔女の時任さんメイン回。

     堀から魔法を奪うべく真辺を魔女にしようと画策する安達だが、そうなると困る七草は堀の側に立つ。
     七草は大地の事実を堀に聞き、大地がなぜ母を嫌う自分を捨てたのかを知ることになる。
     しかし、現実の七草に会った時に、島の七草は拾われる。
     七草のいなくなった階段島で、時任は堀から魔法を再び戻すことにした。
     大地の母親の過去には、時任が深く関わっている。

     現実と島での人格が微妙に違うから分かりにくくなってきたのに加えて、現実での話も増えてきてややこしい。

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    2018年03月17日
  • ベイビー、グッドモーニング(角川文庫)

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     ベイビー、グッドモーニング。
     そのタイトルの意味は命の循環。

     ユニクロのシャツを着たラフなスタイルの少女、彼女が死神だ。
     死ぬ予定の人間の魂を集めている。
     月に魂いくつのノルマがあるらしい。

     あなたはあと数日で死にます。
     それを死神の少女に告げられた人たちが、最後にやりたいこととは。
     そして、集めた魂の行先は。

     最後の道化師のおじいさんの話、かなりグッときた。
     子どもが泣きながら頼み事するシチュエーションに弱い。

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    2018年02月17日
  • ベイビー、グッドモーニング(角川文庫)

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    読み進めないでくれと懇願される小説ははじめて。
    人の死を描きつつ、生きることを説いている。描かれる死はあっけなく何の余韻もない。故にある意味でリアルだ。死ぬ者があれば、生まれる者もある。そんな物語。

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    2017年12月23日
  • 汚れた赤を恋と呼ぶんだ(新潮文庫nex)

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    3巻目まで読んでふと思ったことだけど、この本は登場人物達みんな落ち着いて一定のルールに従って会話が成立しているように感じた。
    正しい解釈まではできないけれど、基本的に誰も怒ったり、決めつけたりせずに相手の話を聞いているなと。
    隠し事や嘘や探りを入れるようなことをしたら、普通は怒ったり嫌がったりして人付き合いがしにくくなるようなものだけど、他社を尊重しているのがどの登場人物達のやり取りからも感じられた。
    そうじゃないと小説として成り立たなかったり、作者が描きたい世界を描くことができないからかもしれないが、現実を生きている身としてはなかなかこうはいかないよなと思ってしまった。ただの僻みかもしれない

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    2017年11月05日
  • 凶器は壊れた黒の叫び(新潮文庫nex)

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    これはミステリではなく青春ファンタジー。階段等の秘密が次々と明らかになっていく。そんな中、密かに(?)魔女の対決が行われていた。
    面白いんだが、段々と分からない点が増えてきた。特に魔女の部分はゴールはないのか?魔女の寿命は?など。まぁファンタジーなので答えはないだろうが。
    次くらいがラストと思われる。綺麗な着地を期待してる。

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    2017年10月29日
  • 最良の嘘の最後のひと言

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    超能力者のだましあい。
    舞台設定も含め、一捻りした展開と、隠されたキバの強さに終始驚かされた

    だましあいのような頭脳戦が好きだが、特にSF的な要素があるのは面白い

    作中、最良の嘘とは?という問いかけがある。
    嘘にもいい嘘と悪い嘘があるなんていうが、「いい嘘」のルールが分かると、少し生きやすくなると思う。

    よく考えてあると思うので、参考にしたい

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    2017年10月24日
  • 少年と少女と正しさを巡る物語 サクラダリセット7

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    とうとう終わってしまった。来週DVDが出るから、とてもいいタイミング。
    シリーズすべてを読み終えて、この話にはまって受け入れられる人と、そうでない人両極端にわかれるだろうと思った。
    どうしようもなくわがままで、それでもそれは自分のためではなく人のためでしかない。フィクションの中の感情はこんなにも美しいのに、それを現実に反映させるのはとても難しい。

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    2017年10月23日