倉山満のレビュー一覧
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大正デモクラシーの旗手で中国革命に命を賭ける青年を支援した日中友好論者の吉野作造は、中国の暗黒面を熟知していた。
職がなかった若い頃、袁世凱の息子である袁克定の住み込み家庭教師をしていたときに不潔で約束を守らない中国人を嫌いになり、袁一族ら政治家・軍閥の腐敗を目の当たりにしている。
吉野は国際協調論者であるからこそ、国益をしっかりと確保しなければ安定は生まれないとの立場なので、「十四か条の要求」と「七か条の希望」を生温いと切って捨てた。
民権派と言われている吉野作造ですら、国際社会のパワーゲームを知っているリアリストであった。
東アジアにおけるパワーゲームは、満州事変に発展。
満州事変以降、日本は日中戦争の泥沼と欧米列強との軋轢を生むことになる。
第一次世界大戦の外交を取り仕切り、第日本帝国を世界の大国として認めさせた外務大臣である石井菊次郎は「宣伝にかけてはわが日本ほど遅れた国はない」と慨嘆していた。
昭和初期から外務省の能力低下が問題であったのである。
満州事変が問題になった際、当時の外務大臣であった幣原喜重郎は、「我が国の従来かつて国際審議の破りたることなき態度と国民性を了解し、極めて着実にして毫も宣伝がましき行動に出でず」と、何も言わなくても日頃の行いがいいのでみんながわかってくれるという態度。石井菊次郎の懸念が現実のものとなる。
そして、国連に訴える中国側のプロパガンダが欧米列強を動かし、日本は孤立を深めて行くこととなる。
一方日本国内においては、満州事変によって大正デモクラシー的な言説は吹っ飛び、「強くて清廉で純粋な軍人さんならば、この腐った世の中をなんとかしてくれる」という空気が蔓延する。朝日新聞と婦人公論がこういった風潮を先導し、婦人公論のグラビアを本庄繁関東軍司令官や荒木貞夫陸軍大臣が飾るような時代になった。
そして、満州事変後の微妙な国際社会の空気の中、関東軍は熱河作戦を計画する。
満州皇帝溥儀以下満州人たちは、満州人たち父祖の地である熱河に執着。
「熱河が入っていないので満州にならない」との言をまともに受けて熱河作戦を決行。
日本は、国際社会を敵にまわすという困難な状況に陥ることとなる。
敗戦後、溥儀は全ての責任を陸軍の吉岡安直中佐(溥儀のために人生を捧げたような軍人)になすりつけ、「私は常に吉岡に監視されていた人形のような存在だった」などと言い出す始末。
これでは何の為に日本は国際社会を敵にまわしてまで熱河作戦を決行したのかと忸怩たる思いにとらわれてしまう。
本書でも、日本を地獄の底にたたき落とした戦犯として近衛文麿が挙げられている。
近衛文麿の側近にスターリンのスパイが多数潜り込んでいたことが根拠になっている。
ゾルゲ事件に連座した尾崎秀実は近衛文麿の側近であり、近衛自身も河上肇に師事するほど共産主義に共鳴していたと考えられる。
日本の北進派と南進派の対立が日本を泥沼に引きずり込んだことはあきらかで、ソ連への攻撃を回避し、軍を南及び日中戦争の泥沼に引きずりこんだ勢力は、近衛を中心としたメンバーであったのだろう。
国際社会・日中関係・軍閥・アジア主義・コミンテルンなど、複雑な当時の日本の状況を理解するのは困難である。
本書は問題を整理し、解説も簡潔なのでこの時代に詳しくない方でも充分理解できる内容になっていると思います。
近現代史に興味のある方にはオススメの一冊。 -
Posted by ブクログ
韓国歴史ドラマが流行しているらしい。
ドラマチックな展開、豪華絢爛たる衣装などが、その魅力として挙げられるが、李氏朝鮮時代を通じて、半島に染色の技術がなかったというのだから驚きだ。絢爛豪華な衣装などは想像上の産物にすぎない。
そもそもが、水車を自力で量産できない低技術の国であったらしい。
李氏朝鮮時代末期の南大門周辺写真を見た事があるのだが、貧民窟のような様相で、国力が備わっていた国家とは感じられなかった。
李氏朝鮮の建国以来、明・清の属国であったこの国が揺れたのは、清の弱体化とロシアの南下政策、そして日本の近代化である。
弱体化した清は、朝鮮の統治責任に関しては「我々の属国だが、独自の内政外交を行っているので、責任は負えない」というご都合主義な発言に終止する始末。
日本側の「内政外交の権利を持っている国は独立国だ」との主張をのみ、日朝修好条規が結ばることとなる。
この批判の多い日朝修好条規(不平等条規)だが、日本はそれ以前に清と日清修好条規を結んでいる。これは日清双方にとって最初の対等条約である。
清は満州人の王朝とはいえ、朝鮮に対しては中華皇帝として接しているため、日清が平等なのに日朝もまた対等なら清国の面子が立たない。
日本の狙いとしては、清から朝鮮を切り離す言質を引き出しつつ清の面子を立てて事を荒立てないという外交方針であったため、日朝修好条規の内容となった。
この一連の流れは当時の東アジア世界の常識に沿った形であった。
台湾領有に関しても、発端は明治初期におけるひとつの事件。
沖縄県民を含む日本人が台湾において殺される事件が発生した。
清はその責任を認めず、賠償金を払うどころか犯人の逮捕すらしなかった。
そこで日本は領有権を主張するならば賠償金を払え、さもなければ日本が討伐するのを黙って見ていよと迫り、「台湾は化外の地である」との言質を引き出して台湾出兵を行い、現地の治安維持につとめたという歴史もある。
明治三十八年、日露戦争で勝利した日本は日韓協約を結んだ。
日本は朝鮮統監府を置いて、朝鮮を保護国とする。
韓国は日本に外交権を日本に譲渡。
日本は朝鮮を属国にする意思はなく保護国のまま現状維持するのがベストシナリオであった。
経済的にメリットのない国と併合するのは、本土の経済的大混乱を招く恐れが懸念されたからだ。
現代の東西ドイツ統一やEU統合をみればあきらか。
それが伊藤博文の暗殺によって水泡に帰する。
その後日韓併合の時代となり、日本は朝鮮半島を植民地化したと批判されることになる。
しかし、「植民地」というのは搾取の対象となる国。
当時日本は朝鮮半島に投資するという当時では考えられない行動をとっている。朝鮮名のまま陸軍中将まで出世した人材まで排出しているのだから、欧米的な植民地支配とは全く違う。
欧米列強で植民地出身の人材が将軍になった例があっただろうか?
よく日本統治時代の朝鮮半島では独立を求める民衆が立ち上がったという事が語られるが、その多くはロシア革命によって成立したソ連の支配下にあるコミンテルン(国際共産党)という謀略機関の暗躍といっていい。
ちなみに、コミンテルンは朝鮮半島には朝鮮共産党をつくらせ、満州のパルチザンをを取り込みます。そのメンバーのひとりが金日成。
日本と朝鮮半島の歴史において不幸な点は、
1)日本が敗戦したこと。
2)日韓併合に至ってしまったこと(保護国のまま維持する方がベター)
3)日本の半島支配が欧米植民支配のように徹底できなかったこと。
などが挙げられるのかもしれない。
アジア主義の宮崎滔天や吉野作造など思想的な成熟と国益が結びつかないジレンマを感じさせる時代である。
朝鮮半島の歴史から、日本の近代を見つめることで、アジア主義と国家主義で揺れ動いた当時の日本が見えてくるかもしれない。
また、本旨とは関係がないが、現在の竹島問題における韓国の根拠というのが、日本の林子平が描いた地図らしい。日本においては市井の学者の描いた私文書なのだが、竹島が韓国のものであるという根拠の脆弱さを物語っていると思う。 -
Posted by ブクログ
憲法=constitution=政体・国体ということで憲法を語るなら国家論は抜きにはできない。本書は国家論に正面から取り組んでいるので「国家論なき憲法論」(百地章先生の指摘)となってしまっているタコツボ憲法学者の本よりはいいと思う。
とはいえ著者が帝国憲法ファンダメンタリストであるので主張の部分は割り引いて聞いたほうがいい。読み物としては面白く情報としては相応の価値があると思った。
帝国憲法の再評価の本としては八木秀次先生の『日本国憲法とは何か』も読んだが、憲法3条の解説と、社会契約説の理解においては本書の方がいい。
天皇親政の建前でありながらたくみに立憲君主制としての統治機構を組み上げている帝国憲法は、19世紀の憲法典としてはよくできていると私も評価する。
が、非常時に大権を奉還することで危機を乗り越えることを意図してそのようにできている、というのは、「危機管理」などという言葉が普及する前の時代でそこまで考えてあるのか、私はちょっとここは同意しかねる。
思うに、天皇の権威を最大限政府が利用し統治力を高めるように考えた結果ではないか。じっさい、国民が立憲君主制に気づいて「天皇機関説」とか語りだすのはだいぶ後のことだ。親政は建前ではなく実態だと信じられた時代は長い。
帝国憲法も現行憲法もいいとこ取りをして次の憲法に生かせばというのが私の今のところの考え。帝国憲法が優れていても現代に復活させればやはり時代に合わないところがあるだろう。現行憲法に内閣の規定や文民統制が取り込まれたのも意義のないことではないし。
なお、文民統制が軍部の独走を抑えるという機能だけで語られず、戦争に勝つために必要な体制、と指摘したあたりは鋭いと思う。日本だって文民統制がなってなくて負けたし、第一次大戦のドイツも例示されている。 -
Posted by ブクログ
『嘘だらけの近代史』シリーズは3冊目。
今回もとっても楽しみにしていました。
とはいえ、相変わらず人の名前とか時代の流れとか、
なかなか頭に入ってこない私。
もーどんだけ頭が悪いんだろう、と自己嫌悪。
頭に穴でも空いてるんじゃないか?と思いたくなるほどです。
我ながら情けない。
人に説明できるくらいにならないと、ちゃんと理解したことには
ならないと言われるのですが、いつになったらそうなれるやら。
「朝鮮の歴史は完全にファンタジー」とか
「こうなったのもすべて、朝鮮の自主性のなさからです。」とか
はっきり言い切ってる部分や、ところどころに散りばめられてる
チクチクとした倉山さんの一言、私は好きです。
読みながら貼っていった付箋が結構な枚数になってるので、
どれどれと読み返してみたら、そうやってチクチク書かれてる
部分に多く貼ってありました(笑)。
ずいぶん気に入ってたっぽい。