高嶋哲夫のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
小学校で出会った取海と相場。二人は算数で突出した成績を残しますが、ふとしたきっかけから将棋に没頭します。算数だけではなく、将棋でも突出した才能を発揮する二人。近所の将棋教室では相手になる大人がいなくなり、その才能を認められ小学4年にして二人同時に奨励会に入会。そして6年生の時、プロ昇格をかけた最後の1局は取海vs相場という組み合わせで、勝った方がプロ昇格というシチュエーションに。取海は勝利し中学生プロ棋士の道を選び、相場は退会して数学を極める道を選びます。時を経て、取海は七冠を保持する将棋界の第一人者に、相場は人工知能の世界的研究者へと成長を遂げます。取海は人工知能のアルゴリズムを理解できる棋士として、相場は将棋の素養を持つ人工知能の開発者として、12歳の時にお互いの人生の方向性をかけた対局の再戦に臨みます…。
成長してからの取海・相場と、小学生当時の二人を描く2つの時間軸が同時並行に描かれ、最後には成長を遂げた二人が対局するシーンに至るという構成です。「人工知能と人間のどちらが勝るのか」というよくあるテーマで描かれている小説ですが、人間vs人工知能という対立軸にしていない著者の構成が見事でした。数学・将棋の両方の才能を持つ二人なので、「人工知能のアルゴリズムを理解している棋士」と「プロ棋士並みの棋力をもつ人工知能研究者」が対局するという構図は、ある意味では人間vs人間の個性のぶつかり合いにも思えて、大変興味深く読むことができました。 -
Posted by ブクログ
1.著者;高嶋氏は、大学・大学院で機械工学を学び、通産省で核融合研究した技術屋。「イントゥルーダー」でサントリーミステリー大賞を受賞し、作家デビュー。東日本大震災の6年前に「TSUNAMI 津波」を発刊し、2010年には「首都感染」を発表。今回の新型コロナウイルス感染症拡大を予言した内容が話題となった。本書の解説には、「高嶋さんの作品は、日本を繰返し襲う天災を忘れさせない為の警告の書」とある。
2.本書;中国で発生した毒性インフルエンザによるパンデミック(感染症の世界的な大流行)を描いた小説。2010年に出版されたフィクション。「感染症の拡がり~国の対応」まで今のコロナ感染と酷似。主人公の瀬戸崎医師と総理大臣(父)が連携し、空前絶後の東京封鎖作戦で日本を救う。「人類の敵は、肉眼で見る事が出来ず、意思も持たない、ただひたすら自己増殖を続けるウィルス」。対策の効果で世界を震撼させたパンデミックが終息と結ぶ。4章構成;第一章(対策)~第四章(拡大)。
3.個別感想(印象に残った記述を3点に絞り込み、感想を付記);
(1)『第二章;感染』より、「人間のやる事だからさ。情に流され、怠慢に満ちている。だがどんなに注意しても、どこかでミスは起きる。針先程のミスも数秒後には鉛筆になり、バットになり、人が通れる位の穴になる。最初のミスを責めたり詰るのではなく、ミスを共有し検討してよりミスのない方向に導く。謙虚になれという事さ」
●感想⇒「人間のやる事だから、どんなに注意しても、どこかでミスは起きる」は、理解出来ます。ミスは影響が小さいうちに、対策しなければなりません。失うものが大きいからです。経済的損失は言わずもがな、信用という財産を失います。ミスを未然に防ぐ方法の検討、原因分析と対策(チェックのリスト活用、組織体制の見直し等)の徹底に尽きます。話が反れますが、最近のニュ-スで大企業の不祥事が頻発しています。ミスではなく、嘘のデータ報告だけに、罪深いと思います。品質を蔑ろにした会社ぐるみでの法令違反(うその報告)は、H社・M社・・と、枚挙に暇がありません。日本の真骨頂、品質第一は何処へ。経済重視の弊害でしょうか。事実の前には謙虚になる事が求められます。
(2)『第三章;封鎖』より、「“・・・情報の公開と正しい説明、それが封鎖の成功に繋がります、”東日本大震災の原子力事故では初期対応がでたらめだった。その為、国民が以後の政府の言葉を信じなくなった」「東日本大震災、それに続く原発事故はすべて後手に回った。政府の対応のまずさが被害を拡大し、復旧、復興を妨げ遅らせた」
●感想⇒原発事故の問題点の振返り。事故調査委員会の指摘です。①政府と東電は複合災害を想定せず対策も講じず(15.7メートルの津波リスクが判明したのに無視) ②東電現場は原子炉を冷却する為の、非常用復水器の作動経験なし ③❝首相官邸×原子力安全・保安院×東電❞間で情報共有が出来ていなかった・・・等。これを読めば、「原子力事故の初期対応がでたらめ、続く原発事故はすべて後手に回った」事は自明の理です。東電は、津波対策には巨額の費用が必要なので、投資を見送ったのでしょう。企業人であれば分からなくもありませんが、人命尊重こそが安全文化の頂点です。経営者が保身に走り、中長期の視点でものを考えずに、当座の問題に終始した結果でしょう。代表的企業の経営の杜撰さに怒りを覚えます。また、口頭指摘だけで、対策工事を求めなかった監督官庁には呆れます。第二章の文章「非常時のリーダーシップの欠如、判断の誤りは国民の不幸を倍増し国を滅ぼす」は至言です。
(3)『第四章;拡大』より、「僕の知らなかった医者や看護師の姿を知りました。僕は頭はあまりよくありませんが、最先端医療だけが医者の仕事ではない事を知りました。患者に寄添い、共に治ろうと努力する事も医療だと。僕なりの、患者の助けになる医者になるように努力します」「医者は患者の身体を救うと共に心も救う事が出来る。神聖でやり甲斐のある仕事だ」
●感想⇒世の中には様々な仕事があり、職業に貴賤はありません。人々を幸せにする為にあるのです。ここで言う、医者は人命を預かるだけに重要です。だからこそ「患者の身体を救うと共に心も救う医者」になり、患者はもとよりその家族にも接してほしいものです。蛇足ですが、教師には、❝読み書きソロバン❞だけでなく、人生の道標を教える師を期待します。私は永年モノづくりに携わってきました。製品が❝世の為人の為❞になると信じ、仕事にやりがいを見出しました。プロと言われるように、多くの人や書物に学び、頑張ったつもりです。仕事にはもちろん生きる為のお金を稼ぐ意味もありますが、それ以上に、自分なりのやりがいを持ち、刻苦勉励骨身を惜しまない人生を送りたいものです。
4.まとめ;本書を読んでの最初の感想は、本当に2010年の本かという驚きでした。コロナ終息の今こそ読んでおきたい本です。「インフルエンザウィルスは非常に頻繁に変異を続けている」「手洗い、うがい、マスクをする事を徹底」等、コロナで言われてきた事そのものです。常識の対策と言うかもしれませんが、私のような素人には新鮮です。コロナはようやく沈静化しましたが、医療関係者の昼夜を問わない対応に敬意を払うと共に、多くの犠牲者に哀悼の意を表します。高嶋氏は言っています、「歴史と科学を調べれば災害は起きるものだと分かります。これから首都直下型地震も南海トラフ地震も必ず起きます」と。これを、悲観的に捉えず、有形無形の準備を心掛ける為の警鐘と考えたいものです。(以上) -
Posted by ブクログ
高嶋哲夫『落葉』幻冬舎文庫。
書き下ろし。
冒頭の熱量を感じるネット配信のダンスイベント。これがパーキンソン病とどう関わってくるのか……
確かに感動はするものの、何もかもが上手く行く過ぎて、逆に醒めてしまうな気がする。
パーキンソン病を患いながらも懸命に生きる還暦の元空手家で鍼灸師の内藤真輔は、ある日、街中で姿勢を保てなくなり倒れてしまう。偶然、そこに居合わせたユーチューバーの葉山理沙、元大手広告代理店に勤めていた長谷川優司、浪人中の予備校生の倉持剛志の3人が、内藤を自宅に送り届けたことから、不思議な縁が始まる。
世の中のパーキンソン病に苦しむ患者たちに光りを届けようと彼らが挑んだことは……
本体価格710円
★★★★ -
Posted by ブクログ
ネタバレ欧州をはじめとする多くの国が、2030年以降に販売される全ての自動車をEV(電気自動車)に置き換えるという方針を打ち出したところから物語は始まる。
コロナ禍を乗り越えた世界で、人類の課題は二酸化炭素排出量を実質ゼロとするカーボンニュートラルである。その鍵となるのが電気自動車(EV)であり、都市のスーパーシティ化である。
ハイブリッド車を含むガソリン車から、モーターのみで駆動するEVに移り変わることによる大規模な自動車産業の方向転換は、自動車関連産業で働く人のみならずガソリンを扱う石油産業など多くの産業に影響を与えることが予想される。
世界の自動車産業がEVへの転換を目指す2030年を節目に、自動車関連だけでなく、あらゆる業界がカーボンニュートラルに向けた取り組みを加速させていく流れになると感じた。
蓄電池と燃料電池の違いすらわからない状態から読みはじめたが、そういった技術的な事もわかりやすく説明してあり読みやすかった。
かつての石炭が環境負荷を理由により環境への影響が少ない石油や化石燃料に置き換わっていったように、新たなエネルギーへの移行が急激に進むという世界的な流れが想像できて勉強になった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ最近地震が多く感じ、富士山付近を震源とするものもあったので、富士山噴火に至るまでの現象や噴火が本格的になってからの被害状況・住民避難の描写等、リアリティをもって読めた。
富士山はその姿を大きく変えてしまう程大規模に噴火した。非常に多くの犠牲者が出たが、災害規模を考えるとそれでも被害を抑えたように書かれていると感じた。
その要因は、超人的なヘリ操縦スキルを持つ元自衛官の新居見をはじめ、その仲間や家族、自衛隊・行政組織の適材適所の奮闘にあると思うが、責任感があり(ありすぎる部分もある)、統率力もある黒田市長の存在が大きいと思えた。
現実の日本で、いざという時に、黒田市長のように行動できる自治体の首長が少しはいるのだろうかと思ってしまった。
大地が変動する時の流れは、一般の人間が感じるそれよりはるかに永い。エピローグでの、秋山有紀博士の壮大で楽観的な言葉からそれを感じることができた。 -
Posted by ブクログ
首相官邸をテロ集団が襲撃!とは、現実にはあり得ないだろうシチュエーションのクライシス小説。
しかし、日本の安全保障政策をはじめとする政府の対応の現実から見ると、あり得るか。以前、ドローンが官邸の上空に飛来したこともあるし・・・。
テロ集団が、日本初の女性首相とアメリカの国務長官との会議中に、彼らと招待客たちを人質にし、官邸を占拠。
そして、途方もない要求を打ち出す。
日米の警護官はは次々と銃撃され、立ち向かうのはたった一人、首相付きの女性SP。
果たして彼女は、人質を救い出し、テロ集団を排除できるのか。
ロケット弾やスティンガーミサイルまで飛び出し、手に汗握る展開は、読み応え十分。