小栗虫太郎のレビュー一覧
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ネタバレつまり、1番複雑に思われるものが1番簡単なんだよ」
いや、そんなもんわかるかーい(^O^)
独特のルビと難解な文章で幻惑されながら読むと、意外にもごく普通の探偵小説の様式を纏っていた。実現可能性や論理性が微塵もないのが逆に好きだけど、過剰な装飾と奇想天外なトリックは7割が意味不明なもので、もはや誰にも到達できない域に達している。百年前の作家なのに一人だけ千年先のミステリを書いているのでは…?
これ誰かが我々一般読者にも伝わるように分かりやす〜くリライトしたら、小栗虫太郎のトリックメーカーとしての資質がバレるんじゃないかな。『後光』の心理トリック、『聖アレキセイ寺院』の鐘トリック、『夢殿』の硬直トリック、『失楽園』の膜嚢(てなんやねんw)トリックなどは普通に面白く、正直ここまでトリックを凝っている作家だとは思いも寄らなかった。個人的には『失楽園』>『後光』=『夢殿』>『聖アレキセイ』>>>『オフェリヤ』>『人魚』かなあ。まあ理解できた順ですが。
ちなみにヴァン・ダインの『ケンネル殺人事件』のネタバレがあったので未読の方は注意。
以下ネタバレ
『後光殺○事件』
主な謎は合掌したまま無抵抗に殺された住職、足跡の謎、死亡推定時刻の後に目撃された謎など。時計のアリバイトリックは理解させる気がないだろうが、凶器とそれを可能にした心理誘導というか洗脳トリックが斬新である。
『聖アレキセイ寺院の惨劇』
共産革命後にロシア人家族がひっそりと住むアレキセイ寺院。1日に2度しか鳴らないはずの鐘が定刻ではない時刻に鳴り響き、近くに住んでいた法水麟太郎は駆けつけた。 詳細な部分は意味不明であるが、時間差で鐘を鳴らす物理トリックが本筋とはかけ離れて実に探偵小説味があって良かった。メインは観念の殺人とも言える動機と罪に問わなかった法水。戦争が被害者の心を貧しくしたのだろう。
『夢殿○人事件』
主な謎は血を抜かれた遺体、遺体に残った梵字型の傷、孔雀の足跡、そして密室。冒頭からなんとも魅力的な探偵小説。まあそうはならんやろトリックと死者蘇生にまつわる動機。日光と窓の二重の使い方good!
『失楽園○人事件』
孤島に療養所を設立した博士の真の目的は非道な人体実験を行う屍蝋研究であった。法水への依頼はその孤島で起こった連続○人の解決。主な謎は犯行時刻に見えるはずのないの怪しい白光、グーテンベルクより先に活版印刷を発明したとされるコスターの初版聖書の行方。結構読みやすくてブーメラン膜嚢トリックにも笑わせてもらった。上手いのは"紙"状胎児と活版印刷、グーテンベルクとコスターを犠牲になった双子に喩えたダブルミーニングの親父ギャグ。
『オフェリヤ○し』
今回は法水麟太郎が「ハムレット」を改変し、失踪した俳優の代わりに自らが主演を務める。その舞台で殺人が起こるという内容。法水さん、なぜか探偵や弁護士としてだけでなく劇作家・俳優としても一流というマシマシ設定が追加(笑) 主な謎は失踪者からの手紙と、亡霊が殺人に関わっているということ。ですが…これがまあやたらめったらわかりにくい。動機は結局腹違いの父親と姉への内なる憎悪ということか?
『人魚の謎お岩事件』
こちらも『オフェリヤ』と同様に舞台中における殺人を扱った話だが、今までの法水短編とはガラッと雰囲気が変わって、トリックがほぼ皆無。探偵小説味が薄れているのが残念。人形に関する手記から冒険小説に入ってくれても良かった。 -
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ネタバレ■江戸川乱歩「鏡地獄」
既読を再読。
■谷崎潤一郎「人魚の嘆き」
未読のまま。
水島爾保布の挿画ありの中公文庫で読みたいので。
■小栗虫太郎「方子と末起」 ★
初読。まさことまき。
百合、スール、手紙のやり取りという少女小説、にして不思議の国のアリスモチーフ。
推理小説<恋愛小説。
■泉鏡花「妙の宮」 ★
初読。
たった4ページだが、なんでこんな風景を思い描いたのだろう? と。
■木下杢太郎「少年の死」
高原英理・編「少年愛文学選」で既読。
■坂口安吾「蝉―あるミザントロープの話―」
初読だが、混乱をそのまんま文章にした風情で、よくわからなかった。
Misanthrope はフランス語で「人間ぎらい」の意味。
■夢野久作「死後の恋」 ★
どこかで読んで、ポッドキャストで朗読を何度も聞いて、また読んだ。
グロテスクと美が結びついたらこうなる。
■芥川龍之介「疑惑」
初読。
まあまあ。
■小川未明「百合の花」
初読。
太郎。勇。独楽。泉。お花。百合の花。
言葉と絵で描く夢のような。
■中島敦「文字禍」 ★
再読、かもしれない。
いわゆる「ゲシュタルト崩壊」を、その概念が提唱されるもっと前に小説化している。
しかもある意味残酷童話的な話として。
これは面白い。 -
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ネタバレ総題の漢字よし。
収集箱じゃつまらない、蒐集函なのだ。
カバーイラストも素敵。
新潮文庫nexというレーベルで、ヤングアダルトにこの作品たちを差し出した編集部、GJ!
■坂口安吾 桜の森の満開の下
既読を再読。
■芥川龍之介 影 ★
初読。
芥川といいえばドッペルゲンガーなのでそういうことかと中盤で思わせておいて、ラストなんと映画だった? 夢だった? というオチ!
しかもそれすら真実かどうか不明な放り出し方。凄い。
しかし、「歯車」でも感じたことだが、狂気に飲み込まれそうな感覚を、それでも作品化「しちゃえる」ことが、逆に悲劇だったのかもしれないと考えたりもした。
■江戸川乱歩 芋虫
既読を再読。
■泉鏡花 浮舟 ★
初読。
少年士官、袂の懐中時計が消えたと思いきや、遭遇した赤ん坊が持っている。
赤ん坊は落ちないよう橋に赤い帯で結ばれている。
という、それだけの話。
それだけなのに、耽美で禍々しい予感だけが、際立つ。
■折口信夫 身毒丸
初読。中公文庫で読み切れなかったのだ。
で、実際読んでみても、あまり文意が読み取れず。
俊徳丸伝説をもとにした謡曲や説教はもとより知らず。
中上健次や三島由紀夫文脈で名前を聞いたことがあるくらい。
wikipediaに、
>折口信夫は俊徳丸伝説から仏教的・教義的な要素を取り払い、近世芸能の原始的なかたちを再現することを意図して短編小説「身毒丸」を書いた(大正6年発表)。「身毒丸」は「しんとく丸」にこの字を当てはめたもので、主人公は先祖伝来の病を持つ田楽師の息子として描かれている。折口信夫は「しんとく丸は『俊徳丸』と表記されることが多いが、もともとは『身毒丸』と表記されていたのだろう」と語っている。
とあるが。
なんとなくホモホモしい雰囲気で、いいといえばいいのだが。
■小栗虫太郎 白蟻 ★
初読。
面白……かったかどうかはわからないが、なんだか凄みのある文章だった。
というのも、人里から隔絶された家族は全員狂って、野生に返っていると思いきや、実際は明朗な滝人という女。
明朗というか、小栗式衒学を織り交ぜる形で、木の根っこに対して延々語りかける、その絵面はもう狂人。
しかも子供はフリークスで、足元の草むらをザザザーッと這い進む、それを殺人の道具にしちゃう、という、もうドウカシトル話。
その背後には、夫が入れ替わっているのでは!? という疑念があるわけだが、その犯行理由が凡庸に思えるくらい、クルットル設定で、あー確かに「黒死館殺人事件」でもワケワカランが勢いは凄まじかったなと思い出した。
■谷崎潤一郎 刺青
既読を再読。
■夢野久作 瓶詰地獄
既読を再読。
■太宰治 駈込み訴え
既読を再読。
耽美幻想という函に入れられることで、別の見え方。
■夏目漱石 夢十夜
既読を再読。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ耽美とは何なのか未だ理解できていないが、収録作から思うに愛憎、背徳、情念、倒錯、フェティシズム、幻想、狂気etcが入り混じったものか。そこにタナトス≒死への衝動が加味された、名だたる文豪らによる10編。
「桜の森の満開の下」(坂口安吾)や「瓶詰地獄」(夢野久作)は本書のコンセプトをまさに体現している作品か。作家のフェチ全開「刺青」(谷崎潤一郎)、美しくニューロティックな幻想「夢十夜」(夏目漱石)、サスペンスからの意外な結末「影」(芥川龍之介)もそこに沿ったものかと。
"美"という点では泉鏡花の「浮舟」、折口信夫「身毒丸」なのだろうが、個人的には独特の文体含め作品世界にハマれず味わいきれなかったのが正直なところ。「芋虫」は愛憎や倒錯という点ではそうかもしれないが、乱歩の"耽美"な作品というなら「人でなしの恋」辺りでもよかったのでは。
上州の山間に住む逼塞した一家。落盤事故からの生還後変貌した夫に疑念を抱く妻の執念がやがて……という「白蟻」(小栗虫太郎)は異彩を放つ一編。終始陰鬱な情景描写、狂気を帯びた女性の独白と晦渋で読み辛い地の文が続き(一体何を読まされてるんだ……)という思いを抱えたまま一家の運命を見届けることになる。何となくだが平田弘史氏の画が非常にマッチしそうな気がする。ただし異形の息子だけは日野日出志風かも。
裏切者の代名詞として歴史に名を残す男の訴え「駆込み訴え」(太宰治)。ラストに男が名乗るが大半の読者は前半部で彼、そして"あの人"が誰なのか気付くだろう。敬愛を募らせた余りの独占欲からの憎悪。2000年前の裏切りの真相は最早知るべくもないが、収録作中で"愛憎"を明確に最も描いているのはこれかもしれない。
レーベルはライトノベル、YA向け中心の新潮文庫nexではあるが、「桜の森の満開の下」「芋虫」「瓶詰地獄」ら有名作品と共に「影」「白蟻」「駆込み訴え」などややマイナー?な作品も収録する凝った構成。10代のそれも早い内にこんなのを読んだらその後の人格形成に影響が出そうな気がしないでもない、が。 -
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『黒死館殺人事件』で有名な名探偵・法水麟太郎。法水麟太郎物の短編を発表順にすべて集めた短編集。
衒学趣味ってどういう事なのかいまいちつかみ切れていなかったのですが、この本を読んで何となく理解できた気がします。
他の方々も書いている通り内容は難解ですし、トリックや動機もそんな事ある? と驚くものばかり。「そうはならんやろ」「なっとるやろがい」という懐かしのネットミームが頭をよぎりました。
とはいえ、お寺や礼拝堂、劇団などを舞台にした様々な事件の数々は神秘的でとても心惹かれます。詩的な幻想怪奇の世界に溺れるような雰囲気を楽しむくらいでも良いのかも。
メインとなるトリックや動機の中に、病気や障害、精神疾患や信仰などのセンシティブな要素を大胆に組み込んでいる所は現代の小説などではほぼ無くなっている事だと思うので、そういった部分は時代を感じて興味深いです。
1つ困ったのが、事件の見取り図について。細かな図面に手書き(手書き風?)の雰囲気ある説明が書いてあるのですが、細かすぎる上画数の多い漢字+雰囲気ありすぎる独特な文字のせいで字が潰れてしまい読み取れない箇所があります。
せっかくの素敵な図なので、もう少し大きく載せて欲しかったです。
ちなみに、一番最初の事件が一番難解で、徐々に読みやすくなっていくので、いっそもう逆順に読むのもアリではないかなと個人的には思いました。 -
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法水麟太郎モノの短編を発表順に収録(残りの長編2編、黒死館と二十世紀鉄仮面は既刊アリ)。
年代順に並べて読んでいくとやはり後半の作品になるに従って描写が読みやすくはなっていってるなぁという印象。(当時流行の秘境冒険モノテイストも入ってきて大衆小説色も強くなってくるからかもしれませんが)
しかしそれにしても、ページを繰る度に迸る法水の衒学趣味には翻弄されるし、肝心の事件のトリック部分は頭の中に「???」が飛び交ってしまうのですが(笑)、だがそこが良い。その翻弄される感覚含めての虫太郎テイストなので、存分に堪能いたしました。
後光殺人事件、聖アレキセイ寺院の惨劇、夢殿殺人事件、失楽園殺人事件、オフェリヤ殺し、潜航艇「鷹の城」、人魚謎お岩殺し -
Posted by ブクログ
これ、ミステリというより冒険活劇モノですね(冒険伝奇探偵小説と本書では謳ってますが)。三銃士とか巌窟王とかその系統。私が今まで知ってる虫太郎作品と作風が思いっきり違うので驚きました。かろうじてペダンチック溢れる描写に黒死館風の痕跡があるぐらいで。
一応人が死んだりモノが無くなったりと『謎』はありますが、それはあくまで法月の冒険譚のスパイスでしかない印象。そして常にピンチに陥る法月(これは雑誌連載の作品だから、毎号、山場や見所を作ろうとするとこうなるんだろうなぁと……)。
とにもかくにも『黒死館』などで慣れ親しんだあの名探偵・法月と、この作品の主人公の法月は別人なんじゃないか?!というほどキャラが違うので、開き直って楽しむが勝ちですね。40目前のオジサマで妻帯者設定の法月が、出会う女性(十代の乙女から人妻まで!)に片っ端から恋し、恋される超展開も凄い。そんなにイケメンなのか! 描写はないけど!! とツッコみたくなる。
海洋冒険! 敵であるフィクサーとの欺し欺されの対決! 友情! 麗しい乙女との恋愛! 一族の抱える因縁と莫大な遺産の相続者! そして謎の鉄仮面の男! とロマン溢れる作品でした。