岩田規久男のレビュー一覧
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ー 企業の場合を考えましょう。企業が人を雇おうとするときに注目するのは、その人を雇うとどれだけ生産量が増え、その増えたモノやサービスがどれだけの価格で売れるかです。この増えた生産量に予想されるその生産物の価格をかけた値を、労働の限界生産物の価値といいます。この限界生産物の価値の定義から、限界生産物の価値はモノやサービスがいくらで売ることができるかに依存することがわかります。この売れる価格には不確実性があります。さらに、雇おうとする人がどれだけ生産的であるかも、不確実です。企業はこのような不確実性に直面しているので、支払ってもよいと考える賃金には幅があるのが普通です。その幅は企業によって異なりますが、現在の賃金相場からそれほど大きくは離れていないと考えられます。したがって、企業が、最低賃金がこの比較的狭い幅の中に納まっていると判断すれば、当該の人を最低賃金で雇うでしょう。しかし、最低賃金がこの幅を超えれば、雇うと損すると考えて、雇わないでしょう。その結果、最低賃金以下でも働きたい人は、失業しなければなりません。
このように、賃金引き上げを最低賃金の引き上げによって達成しようとする政策は、企業の利潤最大化という行動原理を考慮すれば、ごくわずか、賃金を引き上げるだけにとどまらざるを得ず、所得再分配政策としては効果が小さいのです。
このように考えれば、政治家はもっと効果のある所得再分配政策を考えるべきである、という結論に達します。そのためには、政治家も経済学の基礎知識を学ばなければなりません。 ー
なるほど!
とは言え、筆者の言っていることが全部正しいのかどうかは、あいにく今の私の知識では分からない。
少なくとも、彼の言っていることが正しいのかどうか、あるいは“正しいかどうか”ではなく、“許容できるかどうか”という判断軸で考えられるようにはなりたいなぁ。
だってそれが、政策を理解する上でも重要なことでもあるし、それがこの国の未来を決めていくわけだから。 -
Posted by ブクログ
初版は1996年。
物価が上昇し続けている。緩やかなインフレ気味。長い間デフレだったのに、いつの間にか物価が高くなり続けている。リフレーションと言うようだ。リフレーション(リフレ)とは、デフレから抜け出たが、本格的なインフレには達していない状態のこと。リフレは不況を克服しようとする経済政策で、今の日本経済状態は政府・日銀の思惑通りのリフレなのかもしれない。
先月これまでバブル期の最高値を更新して日経平均が史上初の40000円超えをしたものの、今日は日経平均が落ちて37000円ほど。円はドルに対して154円の円安。最近日銀が金利を上げた。などの情報を頼りに、日本経済の状態を把握する日々。そういった日本経済の現状を説明する要因は何?ということを学ぶのがマクロ経済学の分野でもある。
さて、本著はとても読むのに苦労した。読むのに時間がかかってしまい読むスピードがとても遅い。一文一文丹念に何度も行ったり来たりしながら読んだ。何でこんなに遅々としてページが進まないのか?と考えたが、ほぼ勉強したことのない分野だからだろう。もっと早い段階でマクロ経済学を学んでおくべきだった。頻繁に眠くなって、頭フル回転。 -
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初版は1994年。
日本経済新聞を読んでいて、日頃からもっと深読みしたいなと思っていた。ちくま新書は今から25年位前の学生時代、出版される本はどれも興味を喚起させる書名ばかりで、読みたい本がたくさんあり、実際に何冊か読んではいたが、全然追い付かない状態だった。筑摩書房はいい新書出すと好印象をもてる出版社だった。現在は当時ほど注意して書名をチェックしていないのでわからないが、この本はちくま新書の30年前の経済学の本である。
当時の社会状況は今となっては少し古いが、経済学の内容は古くなく普遍的。この本を読んでみて基本的なことを説明するのに、わかりやすさの点で、この本を超える経済学の本はなかなか無いような気がする。ちなみに、著者岩田規久男のちくま新書の本である「マクロ経済学を学ぶ」「日本経済学を学ぶ」もこれから読む予定だ。何とも贅沢、ハズレの可能性もあるが…。ちなみにちなみに、以前岩田規久男は日本銀行副総裁を務めている。
これまで経済の本は数冊読んではいた。しかしこの本のように経済学の初めを言葉の定義から丁寧に経済学の内容を適宜、例を示したり、喩えを用いたりして内容を発展させて説明してくれる本はなかった。既知のことは頭の整理になったし、未知の経済学の特殊な思考を要する部分は、読む速度が異様に落ちたり、止まったりしたが、考えると必ず腹に落ちるように説明されているので、自分に足りない部分を補えるとても良い教科書だと思った。経済学を語れるほどではないので、全体のどのレベルかというのも気になるけどね。
具体的な内容面では、比較優位の原則の所で、職業は1つしかつけないですよ、という説明はとても印象的で、最近自分の力で色々考えて、人が就ける職業って1つだなと気づいたのに、経済学で簡単に説明されている。また、需要(供給)の価格弾力性が大きい(小さい)の説明は、初めて出会った概念で、例に当て嵌めて考えるのにやや時間がかかった。最後に、不完全雇用の方が一般的、というのもそう考えた方が自然だと唸ってしまった。登場した人物はアダム・スミスとケインズで、アダム・スミスは「神の見えざる手」と言ったが、彼こそ神だと思う。 -
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著名な経済学者による、デフレ脱却の重要性を説いた本。著者は最近『日本型格差社会からの脱却』という名著を出版しているが、その中でも主題となっているデフレからの脱却について、詳しく述べているのがこの本。著者としては、欧米では当たり前の主張ではあっても、日本ではなかなか理解されないといったもどかしさを訴えている。説得力がある。
「(FRBの徹底したデフレ対策)FRBは、01年から景気減速が明確になったため、同年8月までに累計3%の利下げを実施しました。しかし、同年9月11日に同時多発テロが起き、不確実性が高まったため、さらなる利下げをせざるをえなくなりました。しかし、こうした連続の利下げにもかかわらず、03年にはコア・インフレ率が2%割れになったため、FOMCメンバーの間に「デフレ懸念」が高まり、同委員会はさらなる利下げを決定しました(FRBは、デフレに陥った日本について徹底的に研究し、デフレ回避の重要視を認識していた)」p33 「(Caballero and Hammour)不況によって、社会的にまだ有用な企業が退出する、という「無益な破壊」は増大するが、社会的に有用でなくなった企業が退出するという意味で、望ましい「「シュンペーター的破壊」はむしろ減少する。さらに、不況は新規参入を困難にし、老朽化した企業の存続を助ける。こうした結論が実証的に導かれるのは、不況期に生き残るためには、大きな純資産をもっていることが必要であるが、新規企業は十分な純資産をもっていないため、参入が難しいことによる」p69
「(竹森俊平)新たに創業する事業は通常、ハイリスク・ハイリターンであり、そのための資金調達手段としてはエクイティファイナンスが適切である点は言うまでもない。つまり、増資による資金調達が可能となる環境こそが創業が増加する条件であることは自明である。また、その意味では、株価が低迷し、増資による資金調達も困難であるデフレ下で、創業が増加することを想定するのは無理がある。「デフレによって採算性の低い企業を清算することによって、創造的破壊が実現され、新産業が台頭する余地が出てくる」という「シュンペーター仮説」は誤りである」p70
「資産価格暴落ではない不況の原因としては、モノの過剰供給があります。この場合には工場を閉鎖したり、採算の合わない事業を売却したり、人減らしをしたりして供給能力を落とすことによって、景気は回復に向かいます。しかし、資産価格暴落がもたらす信用危機、あるいは金融危機の場合には、設備も人も債務もすべて過剰になってしまう傾向があります。それは、金融危機の前には経済主体が多額の借金をして資産投機に走り、その結果、資産価格の高騰によるブームが存在するのが普通だからです」p95
「(資産デフレ)事業法人と金融機関は資産ブーム期に拡大した雇用の縮小、すなわち厳しいリストラを迫られることになります。資産ブーム期に債務、実物資産、金融資産、雇用をあまりにも増やしすぎたために、これらすべてを縮小すると、消費と住宅投資及び企業投資は総崩れとなり、総需要の減少が止まらなくなります。その結果、資産デフレ不況はデフレ不況に転化し、不良債権を処理して銀行の信用仲介機能が回復しても、デフレは続きます。したがって、資産価格が暴落したときには、リーマンショック後にFRBが採用したような大規模な金融緩和によって、資産価格の暴落を止めることが不可欠です」p98
「日銀の金融政策決定会合の議事録は十年後に公表されますが、その公表が進むにつれて、政府委員として金融政策決定会合に出席していた竹中大臣は、日銀に対して「インフレ・ターゲッティング(インフレ目標政策)」の採用を求めていたことがわかります」p102
「「強く、かつ、長く続いた追い風」に乗りながら、物価安定目標を2%に設定し、その達成にコミットしつつ、実際よりも大規模な量的緩和を実施すれば、竹中大臣が担当していた不良債権処理が進むとともに、デフレ脱却にも成功したと考えられます」p103
「日本には、13年4月以降に、日銀新執行部が始めたQQEやYCCを批判する多数の経済学者、エコノミスト、政治家、マスメディアが存在します。この日本の風景は、海外の中央銀行関係者や多くの経済学者やエコノミストから見れば「日本はまだデフレから脱却していないのに、懲りもせずQQEなどの非伝統的な金融政策を批判し続けているのか」と呆れられている」p162
「(T.Hatta & S.Ouchi)「90年代以降、日本のIT産業の生産拠点が台湾に移動した要因の1つとして、台湾が日本よりも正規社員の解雇が容易である」点を挙げている」p290
「(銀行の追い貸し説(Caballero, Hoshi, Kashyap))景気の悪化さらに長期経済停滞が「ゾンビ企業」を発生させたのであり、CHKが主張する、「ゾンビ企業」の大量発生が90年代から2000年代前半にかけての長期経済停滞の原因ではないことを示しています。つまり、CHKは因果関係を逆にとらえていると考えられます」p292
「(政府の産業政策)基礎研究のような外部経済が存在しない限り、どういう投資を実施するかは、企業が自主的に決めるべきものです。返す必要のない他人のお金で、投資するようでは、お金は無駄に使われるだけで終わる可能性が大きくなります」p303 -
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リフレ派の代表で元日銀副総裁、黒田日銀総裁の異次元の金融緩和を指導した人なので、そのことについてコメントを期待して読みました。ですが、そのことについてはほとんど触れられていませんでした。
デフレこそ不況の原因であり、これを根絶しないと日本経済の成長はないというのがリフレ派の理論です。そしてデフレを引き起こしたのは日銀の金融政策が間違っていたからなのだ、というリフレ派の理論的核心については凄い自信なのですが、黒田日銀総裁がその論理を使ったのだから、どうして効果があまり出ていないのか説明が欲しいところです。
もう一つ「MMT」についても語って欲しかったのですが、岩田教授はMMT論者じゃないことがよく分かりました。給付付き税額控除制度の導入やら新相続税や資産所得課税について積極的です。
リフレ派理論を実際に政策として実行した結果についての考証があればもっと良かったのですが、とても面白い本でした。 -
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「経済学を学ぶ」の続編としてのマクロ経済入門。
できる限り文章で説明されているので、ロジックを追いやすく、頭の訓練もかねて、マクロ経済学の基礎を復習することができる。
★×4としたが、限りなく5に近いイメージ。
一方で、文章で説明されているので、わかりづらい面もある。図などで、自分なりに整理するとよりわかりやすくなる。
国民総生産、需要、供給、国民総所得、消費、貯蓄、投資の関係など。
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(登録時コメント)
経済の勉強、続きの続き。
自分のわかっていないことが見えてきているような感があるので、一度、ノートにまとめてみた方がよいかもしれない。
(目次)
第1章 国民総生産の決定
第2章 景気の変動と雇用
第3章 不況と財政政策
第4章 金融と総需要
第5章 貨幣と金利
第6章 金融政策とGNPと物価の変動
第7章 為替レートとマクロ経済
第8章 経済成長の諸要因 -
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『経済学を学ぶ』(ちくま新書)の続編で、マクロ経済学の基本的な考え方を分かりやすい言葉で解説しています。
難解なマクロ経済学ですが、本書ではほとんど数式を使わず、定性的な記述で押し通しているので、一気に読み通すことができます。むしろ、立ち止まってしまうところがないために、どこがポイントなのか分からなくなってしまうのが本書の問題ではないか、と思えてしまうようなところがあります。
『経済学を学ぶ』と同様、すべての人に役立つ内容だと思いますが、とはいうものの、前著に比べると若干ですが、強硬なリフレ論者として知られる著者自身の主張がにじみ出ている度合いが強いように感じます。 -
Posted by ブクログ
サブプライムローン問題に端を発する世界同時不況の原因と仕組みを解き明かすとともに、過去の大不況を顧みることで現在の危機に対処する方途を探っている本です。
じつのところ、経済学に疎く思想史に関心を抱く者としては、もっぱら理論的な立場から現在や過去の世界的な不況を論じている本書は、ややとっつきにくく感じてしまい、もっと包括的な立場から経済という人間の営みについて考える必要があるのではないかと感じてしまうのも事実です。
そうした私にとってもおもしろく感じたのは、石橋湛山の経済政策についての著者の評価です。反グローバリズム志向の強い左派の論者からは、石橋を評価する声は多く聞かれますが、著者のようにイデオロギー・フリーな理論的立場から石橋の経済政策を詳しく検討し評価したものはこれまであまり目にしたことがなかったので、興味深く読みました。