あらすじ
日銀の責任を問い直す。なぜデフレを怖れず、利上げを急ぐのか? もっとも信頼される学者が金融政策の病根に迫る! 日本経済最悪のシナリオ、デフレが進行している。内需も外需も総崩れの現在、政府は日銀に金融政策をまかせきりにするのではなく、インフレ目標を設定せよ。信頼の高い学者の緊急提言! (講談社現代新書)
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Posted by ブクログ
内容については、日銀の組織の説明、金融政策の是非、日銀改革の提案など素晴らしいものであり一読することを薦めます。
ただ、読後の感想としては、この提案されている改革案が実行されなければ(その可能性は高いのだが・・・)日本経済はまだまだ失われた○○年の○○の年数が伸びていくんだろうな、とつらい気持ちになった。
Posted by ブクログ
日本銀行が日本経済に与えた影響や、日銀の取るべき方針について論じた本。
結論から言えば、日銀の問題点はプラザ合意以降、円高・デフレ容認(金融引き締め)の方針を採用したことに尽きる。そのため、内需が冷え込んで産業空洞化=地方経済衰退を招き、外需に依存する経済体制になり、「失われた10年」を迎えることになった。
では、なぜ日銀はこのようにデフレを恐れず、インフレを過度に恐れるようになったのか。著者はその原因を速水優総裁の発言に求める。曰く、昭和恐慌の際、高橋是清蔵相が日銀に国債を引き受けさせたため、戦後の国債処理の際にハイパーインフレを起こすことになった。
しかし、実際は1936年に高橋が今度はインフレに対処するため日銀引受をやめて軍事費削減を図ったところ、二・二六事件で青年将校に暗殺されました。そのため日銀引受が続き、戦後の物価統制令を布いても物価上昇が止まらずハイパーインフレが起こった。このように、ハイパーインフレの原因は日銀引受ではなく政府と軍部にあったのだ。
著者は日銀内部の問題にも言及している。総裁をはじめとした政策委員会には金融政策失敗による引責辞任はないし、そのメンバーの選考基準も「経済・金融の高い識見」を有するものとは必ずしも言えない。業界・学界の代表者が中心になっている。「日銀の独立性」を維持するために政府の方針に同調しないこともあるが、単なる「反対のための反対」になっていることも問題視されている。
そこで著者が呈示する改革案は
・責任を問われるインフレ目標設定
・日銀の政策監視・評価を行う委員会の設置による金融政策の透明化・明確化
というシンプルなもの。データも多く提示されており、文章も読みやすいのでお勧めしたい。
Posted by ブクログ
日銀の過去の過ちについて客観的な論拠とともに述べられています。本書が執筆されて以降日銀の黒田総裁の判断は前例主義を脱しているように感じますが課題は山積みです。
本書で触れられる日銀そのものの構造へのメスも必須条件と言えるでしょう。
Posted by ブクログ
著者が、日銀副総裁になったこともあり興味深く読んだ。
主張には概ね共感できるが、他国の中央銀行のインフレターゲットの場合、「過度のインフレを押さえ込むためにとっている政策」との点が、日本と違うので、今後の成り行きが多少気になる。
所詮、景気の上がり下がりは、循環するもので、あまりジタバタしても、仕方ない気もする。
Posted by ブクログ
【ソーシャルライブラリーから引っ越し中】
以前読んだ高橋洋一氏と同じようなスタンスの本。
日本銀行へのガバナンスが必要との意見にはとても同感である。専門家だから大丈夫ではなく、専門家だからこそ好き放題やらせないようなガバナンスが必要。
しかし日銀の政策委員に金融の素人がいるなんてびっくり。これからは議事録にも注目していこう。
日本銀行は我々の生活とは遠い距離にいながらとても影響力のある存在。日本人はもっと日本銀行に注目していったらいいと思う。
Posted by ブクログ
本書は、現在リフレ派の総帥とも言われている岩田規久男氏によるものだが、その内容はわかりやすく説得力がある。
「日本銀行」の陣容や機能、他国の中央銀行との比較。その仕組みや金融政策の理論と実際。詳細な考察は、専門的ではあるが、とてもわかりやすい。
最終章の「日銀改革の進め」までを読み終わると、まるで釘の頭をげんのうで叩き潰すかのような徹底した日銀批判の論理にスッキリした小気味よさを感じた。
本書を読むと、なぜ「日銀」は本書のような方針を採らないのかと思うが、日銀の人々も一流の経済専門家であるのだろうから、本書への反論も是非知りたいと思った。
とにかく、日本経済は「失われた20年」を更新中であるのだから、経済専門家は、責任問題はともかくとして、そこからの脱出策を指し示して欲しいものと痛感する。本書は、そのひとつとして高く評価できると思う。
Posted by ブクログ
日本銀行のガバナンスの在り方、デフレを防止できなかった理由、そしてインフレ目標など金融政策における議論を新書版でまとめた作品。特に、重要なのはインフレ目標とガバナンス設計がつながっているということの確認であり、「独立性」の意味合いについてきちんと理解することが可能になる一冊である。
Posted by ブクログ
[ 内容 ]
日銀の責任を問い直す。
なぜデフレを怖れず、利上げを急ぐのか?
もっとも信頼される学者が金融政策の病根に迫る。
[ 目次 ]
序章 日本銀行の金融政策は信頼できるか
第1章 どんな人が金融政策を決定しているのか
第2章 日銀の金融政策で大不況を脱出できるか
第3章 責任逃れに使われる「日銀流理論」
第4章 平成デフレ不況をもたらした金融政策
第5章 日銀はなぜ利上げを急ぐのか
第6章 日銀に「インフレ目標」の錨を
第7章 日銀改革の勧め
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
Posted by ブクログ
日銀も官僚と同じく前例主義である実態がよくわかった。言われてみりゃ、経済学部出身者でなく法学部出身者が大半というのはおかしい。やっぱり責任は取らないけど大きな権利を持ってる組織はだめだなー。
デフレがなぜ悪いかも良くわかった。
Posted by ブクログ
現在の日銀が抱える問題点を整理・列挙し、著者の意見としての解決策まできちんと示した本。非常に納得ますが、インフレターゲットについてはちょっと疑問が残りまる。それを除いても今読まれるべき本。
Posted by ブクログ
本書の概要は次のとおりである。
日本銀行(日銀)の金融政策は前例主義を原則とする東京大学法学部卒をトップとする「官僚」によって運営されており、独特の「総合判断」に基づく裁量的金融政策をとっているが、それでは今の日本の大不況からは脱出できない。日銀のゼロ・インフレ政策はデフレ不況をもたらすとともに、過度の円高をもたらした。日銀は金融政策の達成目標を曖昧にしたまま「総合判断」という名の裁量で金融政策を運営しているため、国民は日銀の金融政策に対して、真の意味での「説明責任」を求めることができない、という点に問題の根源がある。成果を出しているインフレ目標を採用している国を見習い、日本でも、政府が日銀の達成すべきインフレ目標を決定し、日銀を国民がガバナンスする仕組みを作れば、日銀の金融政策は国民に信頼されるようになり、その結果、日銀の金融政策の成果も格段に改善されるだろう。
本書の内容は、一応筋は通っているし、それなりの説得力はあると思うのだが、自分がインフレ目標政策に懐疑的なこともあり、十分に納得できたとは言い難かった。例えば、高いパフォーマンスを発揮しているインフレ目標政策を採用している国の多くは、高インフレから低インフレへの移行に成功したものであって、日本のようにデフレから低インフレへの移行を目指す場合とは状況が違うのではないか、日銀の政策決定が経済の非専門家で決められていると指摘しているが、岩田氏が特に批判している白川総裁や翁氏は経済の専門家なのではないか、政府に「金融政策の目標設定」を行わせることは本当に妥当なのか(政府こそ、経済学的観点でなく政治的な観点から意思決定しがちなのではないか)、といったような疑問点が浮かんだ。
また、これは後知恵的な批判だが、岩田氏が実際に日銀副総裁に就任して以降、本書に書かれているとおりのことを実践しているとは思われないことは確かである。
Posted by ブクログ
この本では日銀のデフレ回避へのアクション(金融政策のあり方)を否定的に評論を加えている。日銀副総裁になった氏だが、今後の動向に注目するきっかけになる。
Posted by ブクログ
日銀の金融施策を企画立案しているのが経済の専門家ではなく、施策を決定する政策委員会のメンバーも全くの素人。新日銀法に規定されている「経済又は金融に関して高い識見を有する者その他の学識経験者」とはかけ離れた人たちで構成されている。政策目標設定の権限を牛耳り、第三者専門機関からの監視・評価もない。デフレを放置し極端にインフレを怖れる。諸外国と比べても特異な日銀の体質を様々な視点から浮き彫りにする。著者は大胆な日銀改革を提言している。日銀自らが先頭に立つ改革を期待したい。