藤田孝典のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
悲惨な老後を送る貧困高齢者への支援活動を実際に行っている著者だけあって、実態を描いた第1章から第3章はリアリティと迫力がある。たしかに、老後の生活崩壊は、特殊な人に訪れる特別な事態ではなく、誰にでも起こりうる話である。他人ごとではない。われわれはそれを覚悟しておいた方が良い。
著者は、「社会システムと社会福祉制度の機能不全」が、このような下流老人を生み出す原因であるという。そのとおりだと思う。ではどうすればよいか。社会システムや社会福祉制度を変えればよい。それもそのとおり。
だが、問題は、社会システムや社会福祉制度をどう変えれば、下流老人の出現を食い止め、一人ひとりが幸せな老後生活を送ることができるのか、それを誰も知らないということだ。
なぜならば、われわれが迎える超高齢社会は、従来とはまったく異なる人口構造を持つ社会だからだ。この社会に適合する社会の仕組みは、当然のことながら、これまで誰も構築したことがない。これまでのさまざまな社会システム及びそれに関する議論は、所詮、労働者がたくさんいて、その余剰部分で老人を支えることが前提であって、圧倒的多数を高齢者が占めるようになった社会をどう維持していくかについては、だれも想定してこなかった。資本主義とか社会主義とか共産主義をめぐる議論も、基本的には従来型の人口構造の上に成り立ってきた議論にすぎない。
こういう根本的な視点を欠いたまま、従来型の社会システムの延長線上で貧困老人問題の解決を図ろうとしてもうまくいかないだろう。
著者の実践活動に深い敬意を表しつつも、問題解決に向けての提案がつまるところ「社会が悪い、国が悪い」ので「行政がなんとかすべきである」といった平板な主張にしか感じられないのは、その点の認識の欠如が一因ではないかと思う。
などと小難しいことを書いたが、じつは、本書でもっとも印象に残ったのは以下の部分。
「仕事一筋できたならば、夫は妻に逃げられてはいけない
わたしが今まで見てきた経験上からも、妻は月15万円の生活費でも暮らしていける方が多いが、夫の場合はほとんど絶望的と言っていい。とくに団塊の世代よりも上の層の日常生活力の乏しさには驚くべきものがある。
…いまだに「家事は女性がするもの」という発想が抜けきれない男性高齢者も多いのだ。
だからヘルパーが自宅に生活支援にきても、まるでメイドか何かのように小間使いにしてしまう男性もいる。それはそのまま今まで妻にやらせてきたことでもあるのだろう。
家事や炊事など日常の生活能力が低いというのは、単に「料理が下手」とか「洗濯物がたためない」というレベルの問題ではない。自炊できなければ、出来合いの惣菜を買うか、外食することになり、当然栄養は偏る。また、掃除もできないので生活環境が不衛生になる。
そんな状態が続けば、当然病気になりやすく、医療費がかさむ。加えて節約意識もないため光熱費もバカにならない。つまり、一人暮らしになって生活能力がない場合、夫婦で過ごしていたときと同じくらい、あるいはそれ以上の食費や光熱費、医療費を支払わなければ、生活を維持できなくなってしまうのだ。
このような事態に陥らないためには、まず離婚しないこと、されないようにすることだ。とくに仕事一筋できたならば、なおさらだ。
男は金さえ稼いでくればいいという昔ながらの考え方を捨て、家庭における男性の役割を変えていかなければならない。高齢期になる前から少しずつ仕事から家庭のほうに重点をシフトさせ、精神的にも経済的にも「一緒に暮らしていく」ことを妻とよく相談して決めることが重要ではないだろうか」(p97-98)
う〜む。
余計なお世話と言いたいところだが…
当たってそうなだけに、こわいなあ。 -
Posted by ブクログ
「下流老人」を始めとして貧困問題を積極的に訴えてきている著者の最新作。
我が国では「貧困」が広がっているが、「絶対的貧困」ではなく「相対的貧困」が広がっているため問題が見えにくい。著者は「下流老人」で高齢者の貧困を明らかにしたが、雇用の破壊が進行している現在、若者や中年、女性にも貧困が拡がり、それが更に高齢者の貧困を進行させ、社会保障の削減がそれに拍車をかけていることを実例を通じて論じているので説得力がある。最終章で、それでも個人で行える策はあると、現在使える社会保障制度を説明されている。最後はとどのつまりは政治を変えることが社会保障政策を存続・維持していることにつながると結ぶ。 -
Posted by ブクログ
2015年新語・流行語大賞にノミネートされた「下流老人」を生み出した筆者による続編。前著から1年半という期間しか経っていませんが、深刻さが増す高齢者をめぐる貧困と格差の状況等を伝えています。
先の臨時国会では年金カット法案が強行可決され、1月末から開会される通常国会では介護保険法改定法案が上程される予定です。自己責任に押し込めない権利を保障する制度のありようについて、基本的な方向を確認すると同時に徹底的な議論が必要です。税の使われ方を主権者としてきちんとチェックすることも大事だと感じます。この本を読んで、自分としてもよく考えたいと思いました。 -
Posted by ブクログ
<目次>
はじめに
第1章 社会から傷つけられている若者=弱者
第2章 大人が貧困をわからない悲劇
第3章 学べない悲劇~ブラックバイトと奨学金問題
第4章 住めない悲劇~貧困世代の抱える住宅問題
第5章 社会構造を変えなければ、貧困世代は決して救われない
おわりに
<内容>
衝撃の書だと思う。うすうす感じていた若年層の貧困問題。とても分かりやすい論理的な文章で、白日の下にさらしてくれたと思う。確かに我々「大人」は、20代~30代の貧困層の問題を過小評価している。「働き口はたくさんあるではないか」、「もっと努力を」…などなど。私よりも高年齢の人ほど、その思いは強いだろう。ただ、時代は変わっている。経済的にも、社会構造的にも日本は劣化した国となっている。それは、「古き良き」時代を維持しようとする「大人」と、そうではないことを伝えられない(伝える手段が少ない)若者の、ギャップである。政治の問題、と一蹴することもできない。社会が変わらないといけない。そして、若者が声を上げ、政治を変えていけないといけない。第5章で、著者は5つの提言をしている、いずれも難しい提案だが、ゆっくりとおこなっていては、「日本」は滅んでしまう… -
Posted by ブクログ
老後に貧困に苦しむなんて、人生設計ができてなかっただけだろう。浪費のつけがまわっただけだ。真面目に働いてこなかったんだから自己責任だ。
それに比べて自分は真面目に働いているし、贅沢はせず所得のいくらかは毎月コツコツ貯金している。だから大丈夫!
なんて自信を持っている人!あなたももれなく下流老人候補です。
めでたく定年退職して、退職金を満足いくだけもらえたとする。65歳で貯蓄は3000万。そんな人でも下流老人になる可能性はある。
なんといっても病気だ。保険の利かない先進医療を受けたら、まずがっつり減る。高額医療費助成制度を利用しなければ、持ち出しばかりで戻ってくる金はない。
痴呆の問題もある。本人には自覚はないので家族がいない独居老人はその兆候に気づかない。悪い奴に金をだまし取られることがあるかもしれない。
熟年離婚もある。退職金をもらったら、ここぞとばかりに妻から離婚を切り出され、安泰だと思っていた老後資金は半分に。妻が専業主婦だった場合、年金も半分にされることもある。
子供が老後の面倒をみてくれることも期待できない。逆に学校でのいじめやブラック企業に就職したことにより精神を病み、ずっと働けない状態になることもある。収入がなくなっても子供の面倒を見続けなくてはならない。
とまあ、このような実例が紹介されてる。
貯蓄が3000万以下で、年金だけで生活をしていかなくてはいけない人は、基本的にピピンコロリで逝かない限り、ほぼ下流老人予備軍だ。
下流老人にならないために重要なのは、生活が困窮してくる前に、助けてと手をあげることだと著者はいう。生活保護を恥だと思う風潮を改め、権利だと思う必要がある。貧困ビジネスや、一部の悪意のある人に、税金が使われてしまう可能性はあるが、本当に必要な人が助けてと声をあげられない環境は良くない。そのために人とのつながりが大事。早い段階に対処していれば、救えることが多いし、なおかつ自立への道も開けるから、トータルで考えれば税金の節約になるという。
また現状の生活保護を受けるためには、資産をすべてつかいきってからでないと基本的に受けられない。つまり貯金ゼロ、資産ゼロの破産状態にならないと役所は相談に乗ってくれない。そこにも問題があると著者は言う。
例えば病気の治療費だけ援助する生活保護、家賃の半額だけ援助する生活保護、などがあれば、どん底になってから生活の全てを保護するより結果的に税金を使わないんじゃないか、と言ったような提案は、本当にそうなるのかはわからないが検討に値する考えだとは思った。
下流老人は個人の力だけでは解決しない問題であって、政治によって改善できる問題だ。
なんか先行き不安になったけど、読んで良かった。