あらすじ
昨年『下流老人』が20万部超えのベストセラーとなった著者の新書第2弾!今回は若者の貧困に着目し、「一億総貧困社会」をさらに深く読み解く。これまで、若者は弱者だとは認められず、社会福祉の対象者として扱われなかった。本書では、所持金13円で野宿していた栄養失調状態の20代男性、生活保護を受けて生きる30代女性、脱法ハウスで暮らさざるを得なくなった20代男性などの事例から、若者の貧困を分析する。
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Posted by ブクログ
現代の若者がいかに厳しい社会状況に置かれているかについて書かれた本。
近年、若者の貧困が提言されるようになり、興味があったので本書を読んでみたのだが、その実態の深刻さに驚かされた。何より驚いたのは、私自身の状況も、周りの環境によっては貧困に陥る危険性があるということに気づかされたことだ。
私は現在社会人1年目であり、実家に住みながら毎日片道1時間半ほどかけて通勤している。
なぜ独り暮らしをしていないかというと、私の会社は関東圏出身者には住宅補助が出ず、今の給料では東京での独り暮らしは厳しいと考えたからだ。
それでも、私は幸運なことに家族との仲が良く、また通勤時間も読書等に当てることができるので、特に不便を感じることはなかった。
しかし、それはあくまで家族との関係が良好であるという「幸運な」環境があるからに他ならない。もし家族との仲が悪く、家を出ていかなければならないとしたら、たちまち貧困に陥るだろう。
また、私の同期には地方出身者が多いのだが、その中の一人に話を聞いたところ、住宅補助(月5万)をもらっていても、入社してから今まで(12月)の9ヶ月で貯蓄できた額はたった5万円だと言っていた。ちなみに、彼女は奨学金の返済を行っている。
もう一人の同僚(男性)は、貯金が少ないために、今付き合っている彼女に、結婚しようと言うことができないと言っていた。
貧困は、こんなにも身近にあったのだ。
現代での消費の落ち込みと共に語られることの多い、「若者のモノに対する興味の薄さ問題」だが、今の若者たちの状況では興味を持ちたくても持てないのではないだろうか。それこそ車なんて「贅沢の極み」なのではないだろうか。
著者も述べていたが、現在の若者の置かれている状況を改善しなければ、少子高齢化、消費の落ち込みなどの問題を止めることはできないだろう。
唯一の希望は、このような本が出版されることで、私のように貧困がいかに身近にあり、深刻な問題になっているかということに気づく読者が増えるとこである。
今後の日本がより良い社会を創り上げていくためにも、もっと多くの人に関心をもってもらいたい問題である。
Posted by ブクログ
「下流老人」で高齢者の貧困と格差の問題をあぶりだした著者が若者の貧困について「貧困世代」という衝撃的なネーミングで暴き出した。若者の貧困は、バブル景気の崩壊以降、人件費を削減するため、若者を犠牲にしながら、企業の成長や経済成長、あるいはシステムの延命や存続を進めるようになった。そのために1990年代後半以降に増えている非正規雇用は意図的に作られており、若者の貧困も同時に拡大を続けている。この構造的な変化に社会自身も若者自身も気づいてない中で声をあげれないでいる実情がある。また世界で最も高等教育に自己負担が多い日本では、親世代の収入減でバイトに頼らざるを得ず、また、そのバイトもブラック化が進んでいる実情、奨学金も米国並みにローンとなっている実情など、想像以上に現代の若者が置かれている状況が大変なことが分かる。加えて日本の福祉政策に住宅政策が抜けている点を指摘し、少子高齢化の原因を貧しい住宅政策を指摘する点は論理が飛躍しすぎな感じもしないわけではないが、納得の論考であった。貧困問題に関心がある人は必読本であると思った。
Posted by ブクログ
20160518
下流老人に続き、日本が抱える社会福祉の問題点を具体的に明らかにした一冊。
現代の若者たちが感じる生きづらさ。日本に蔓延る閉塞感の根本が、若者たちが当たり前に生きることすら難しいという状況にあるのだろうと思える。
例えば、日本が進める住宅政策。持ち家が当たり前にあり、誰もが目指すべきというような考え方事態がおかしいのだろう。それでも、住宅ローンの金利が低いと言って、35年ローンを組ませ、新築で住居を買うことを進め、そこへの控除を行う政策。また、持ち家を持つことが人生の目標とも言えるような世論。
こういった認識を変えることが、まず一歩であると著者は言う。
自分自身、教育現場に携わるものとして、学費が賄えないために教育を受けることができない若者に出会う機会が非常に多く、とても他人事には思えない。
少しでもこのような認識が広まり、私たち貧困世代が生きやすい世の中になるために、行動をおこさなければならないと強く感じた。
Posted by ブクログ
衣食住を整えるために精一杯で、健康で文化的な最低限度の生活ができかねる若者がいる日本の現状に暗い気持ちになった。
年代が貧困世代にあたるので、この内容は切実だった。現状を直視し向き合うことは、痛みを伴うことでもあるけれど、現状を知ることは次のステップへ進める糧になる。
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現代がいかに若者にとって厳しい時代なのか、そして国としての対策がいかに遅れているかについてかかれた本。
現状に厳しさについて学べるので、とてもためになった。 しかし北欧ではこんなに福祉が充実してますよ、と書かてれいる箇所が多いのだが、北欧では税率が70%くらいあるので、その辺もきちんと検証したものも読んでみたい。
現状は厳しく、そしてこれからさらに悪くなるだろうと思うと暗澹たる気持ちになる。その中で何が出来るのかを、きちんと考えていかなくてはならないと思う。
Posted by ブクログ
社会的事象としては「ふむぶむそうなんだな全くだ」と思いつつ、その解決策としては「ん〜そうかな〜」という余韻が残る。社会の現状を「まず知る」ための一冊として。
Posted by ブクログ
色々と納得させられたり、考えさせられました。
子育てしている中で薄々感じている、周囲の境遇や、
何かふと、レールから外れてしまった後の苦しさや怖さの正体を、
活字として知れた感覚でした。
自分(40代後半)も、比較的貧しい境遇のなか、生き抜いてきた思いがあるし、
親の世代は更に、苦労しながら頑張って育ててくれていたことを
同じ世代になり、子どもを育てる中で、より深く感じていますが、
今の子供たちは、より搾取的で複雑な環境に置かれている事を知り
愕然としました。
まずは自分の子ども、周囲の子供たちを丁寧に見守りたいです。
住宅の問題や、奨学金ローンの件など、もっと改善できるのではないか?
生まれてきた人が、そのまま当たり前に暮らせる環境を整備することが
政治や福祉の原点ではないのか?
なぜ日本では、頑張らなければ暮らせない社会なのか?
そもそも、の所を、考えさせられ、変えていく必要性を強く感じました。
Posted by ブクログ
重大かつ深刻な問題について新しい労働組合の設立や個別性の対応など社会的な構造の変化の必要性とツイッターでも良いので思い考えを表出する事の重要性を説く。
それにしても労働万能説、家族扶養説、青年健康説、時代比較説、努力至上主義説と大人たちの無知と思いやりの無さは嘆かわしい。
闘技的民主主義と言う言葉を初めて知ったが、建設的な意見だと思う。
Posted by ブクログ
下流老人が出版されてから気になっていた著者の若者の貧困に焦点を当てた著書
十数年前に、これからの時代は貧困格差がもっと二極分化する。と講演で聞いた誰かの言葉が
どんどん現実味を帯びて来たと実感してきてる今
貧困家庭の子供の貧困率の高さには驚く
著者のように全ての子供に平等に教育の門戸は開かれるべきだし、そのために大人が子供に生き方教えられる知識も必要だと思う
二極分化された著者の言う貧困世代の若者も
下流老人も、文化的な生活を取り戻せるような政策が実現するのはいつになるのか……
Posted by ブクログ
読後、日本の若者の未来を思うと暗くなる。ここに書かれているような悲惨な若者が大半ではないはずだ。でも、無視できない人数が苦行のような人生を歩んでいかねばならないのだとしたら、先行するものとして何か力になってあげたいと思う。
Posted by ブクログ
社会福祉は若者を対象にしていない。奨学金を返せない、返すのに年月がかかり結婚、家庭を持てない。賃金が低すぎて実家から出られない、独立できない、イコール家庭を持てない、子供を産めない。親からの負の連鎖…「一億貧困社会」は否めないのか。真剣、政治を変えないと。
Posted by ブクログ
ここに書かれているような現状があることを理解していませんでした。
高額な学費、辞められない学生の状況につけ込むブラックバイト、頼りになるどころか負担にさえなる家族の存在、住む場所さえ借りられない現状。
貧困は思った以上に深刻であり、そしてそれは決して当人だけの問題ではなく、社会全体の問題です。
進路ガイダンスで高校生に対して話をする機会が多いのですが、「貧困世代」の実状を理解し、話すべき内容を再考する必要があると強く感じました。
Posted by ブクログ
<目次>
はじめに
第1章 社会から傷つけられている若者=弱者
第2章 大人が貧困をわからない悲劇
第3章 学べない悲劇~ブラックバイトと奨学金問題
第4章 住めない悲劇~貧困世代の抱える住宅問題
第5章 社会構造を変えなければ、貧困世代は決して救われない
おわりに
<内容>
衝撃の書だと思う。うすうす感じていた若年層の貧困問題。とても分かりやすい論理的な文章で、白日の下にさらしてくれたと思う。確かに我々「大人」は、20代~30代の貧困層の問題を過小評価している。「働き口はたくさんあるではないか」、「もっと努力を」…などなど。私よりも高年齢の人ほど、その思いは強いだろう。ただ、時代は変わっている。経済的にも、社会構造的にも日本は劣化した国となっている。それは、「古き良き」時代を維持しようとする「大人」と、そうではないことを伝えられない(伝える手段が少ない)若者の、ギャップである。政治の問題、と一蹴することもできない。社会が変わらないといけない。そして、若者が声を上げ、政治を変えていけないといけない。第5章で、著者は5つの提言をしている、いずれも難しい提案だが、ゆっくりとおこなっていては、「日本」は滅んでしまう…
Posted by ブクログ
社会的弱者層の貧困問題の研究者であり、かつNPOの代表として彼らへの支援を行っている著者による、「貧困世代」の若者たちの実態と対策を述べた本。
2013年刊行。
「貧困世代」(Poor Generation)は、著者の創作語であり、1973年以降に生まれた日本の若者たちを指す。
現在の52歳以下で、約3600万人存在している。
貧困世代は、教育や国主導の福祉から排除され、奨学金返済や年金保険料支払いの重苦を背負っている。劣化した雇用・労働環境におかれ、家族機能の縮小、住宅政策の不備によって追い詰められている世代だ。
この現実を反映するように、若年層(15〜34歳)の自殺率は10万人あたり20人で、2位のカナダに8ポイントの差を開けて先進国の中でもっとも高い。
また、直近20年間で20〜24歳男女の貧困率が10ポイント上がっている。
本書は、「貧困世代」の実状を、統計データと著者の教育者、支援の現場にいる立場としての経験から描いている。
この説得力は高く、著者が提起する課題がよく理解できた。派生して「少子化」「ブラックバイト」問題にも切り込んでおり、著者の実例から帰納的に導出される全体像は興味深い内容だった。
ただし、この対策については白紙も良いところで、示唆のある提言はほとんどなかった。
奨学金を現在のローンから、スカラシップ(給付型)に変えるという「What」は良いが、どうやって実現するか「How」の説得力がない。
その財源に富裕層への金融所得課税強化や企業の内部留保への課税強化を使うと言っているが、この意義が分からない。
今求められているのは増税による国家としての「投資」の増加ではなく、「支出」の見直し、リターンが見込めるところへの投資を増やしていくことが必要だ。
具体的には、社会保障制度の大規模な縮小、或いは廃止が必要だと考える。
既に日本の国民負担率は50%を超えて、60%に届く勢いである。自分の努力で稼いだ額の6割が掠め取られ、それが自分たちではなく老人を生かすために使われている。
こんな理不尽なことはない。
生涯のうちにどれぐらい社会保障を負担して、どのくらい受益を受けるかを世代別に算出する「世代会計」という考え方がある。
これを算出・比較したカリフォルニア大学の研究に依ると、日本は世代会計格差が先進諸国の中でぶっちぎりのトップで、ジュニア層はシニア層の2.69倍の負担をしているという結果だった。
このファクトにどんな反論が出来るのか?
若年層の犠牲によって老人を生かしていることの紛れもない証明である。
本書で提示されるように、出自によって享受できる教育水準が異なることもまた事実である。
だから、「機会」の平等は成し遂げるべきである。親の収入や資質によって、子どもたちの選択肢がいっさい狭められることがない社会を実現しなければならない。
具体的には、公立校の大学までの無償化などが良いだろう。
しかし、「結果」に対しての補償は不要である。
何十年も生きた人間が恵まれないことを憐んでやる必要はない。
一定水準の教育の機会を与えられ、まともな環境で働くことができた中で自分の収入が劣るのは、本人の努力不足以外の何者でもない。
日本には良い言葉がある、「自業自得」だ。
長生きも贅沢だ。
老いてからも長生きしたいと願うなら、若いうちに努力して、競争に勝ち、高い収入を得るべきだ。
或いは、自らの家族を持ち、助けてもらえるように良好な関係を築くべきだ。
間違っても見知らぬ若者の犠牲の上に長寿を得たいなどと願うべきではないし、社会はそれを許してはならない。
繰り返すようだが、本書が提示する「貧困世代」への課題意識と、それを裏付ける経験とデータは素晴らしい。
しかし、対策は的外れだ。
我々は、本書のようなファクトを集めながら、いかにそれを解消するべきかを論じていくべきだ。
Posted by ブクログ
●『下流老人』の著者の次作とあって、すぐに読んでみた。
●「貧困世代」問題が、「下流老人」以上の日本の問題であることを理解する。
●後半が少しまどろっこしく、前著『下流老人』の内容ほどインパクトがなかった。
Posted by ブクログ
アルバイト労働も正社員労働も、一昔前と比較すると条件が劣悪になってきていて、働けども働けども昇給はなく、家を持つことはおろか結婚も出産もできない…
悪条件の労働に加えて、奨学金の返済や実家の貧困も重なると、もう目もあてられない状況で豊かな生活を送るビジョンが全く見えない…
今の20~30代は、そのような「貧困世代」になってしまっているというのが反貧困のNPOに属する筆者が見てきた現実のようです。
富の再分配システムに問題があるというのが筆者の指摘ですが、高等教育の機会均等はより徹底されるべきというのは私も同意するところです。
Posted by ブクログ
現代の若者たちは、一過性の困難に直面しているばかりではなく、その後も続く生活の様々な困難さや貧困を抱え続けてしまっている世代である。社会環境や雇用環境が変わらない限り、報われないし容易に社会困窮する。
65歳以上の1/4は下流老人。40〜65歳は下流老人予備軍。15〜40歳3600万人は貧困世代。子どもの貧困。大国のはずなのに、誰も安心できないなんて。
Posted by ブクログ
2017.06.04
私も貧困世代ど真ん中です。
読んで暗〜い気持ちになりました。
いわゆる『持たざる人』が立ち直れる、行きていくための術や助けがあまりにも少なすぎます。
仕事、住宅、家族、教育…。何にも頼れない。
八方塞がり。もう日本は終わりですね…。
Posted by ブクログ
まあそうなんだろうな。
問題提起には良い本だろうが、やたら、レッテルを貼ってしまうのがハナにつく。牢獄とか。そっから生まれるイメージは本来の問題を覆い隠してしまう。
下流老人もそうだけど、まあ、カテゴライズすることで問題が明確になることは良いとは思うんだけど、他の部分が見えなくなるような気がするな。
で、やっぱり統計の我田引水感も否めない。検証してるわけではないから何も言えないんだが、一言で言えば、引く。
お隣の半島なんかは先進国ではないってことだろうな。
昔との、大学の進学率の検討はどうなんだろう。
大学に入ってる奴が、本当に高等教育受けて受けてると思ってんじゃないだろうなあ。
ま、気持ち悪いが先に立つ。
Posted by ブクログ
困窮者の生活支援の最前線で日々社会の不条理と向き合っている実践者ならではの焦りや苛立ちが伺える文章で、一言で言えばアジテーションの書という印象を持った。ただ、いくら労働市場が劣化してきているのが厳然たる事実とはいえ、働くことを拒否して給付を求めるような論調は誤解を招きかねないと些か危惧を覚える。若者の困窮自体は早急に対処を要する喫緊の課題であることは間違いないとは思うが、著者も認識している通りこれが日本の現在の社会構造的問題の一表層に過ぎない以上、ひとり若者のみを支援せよとばかりの声高な論の運びはかえって反発を招きかねない。こうして書籍として広く社会に問う際は、あくまで社会構造への包括的なアプローチを訴えるのと並行した対処療法としての若者支援というスタンスを維持するべきではないか、と門外漢ながら思う。
Posted by ブクログ
これまで高齢者や子どもの支援ばかりに目を向けられていた社会福祉について(もちろんそれも大切なことですが)、若者の環境についても整えるべく様々な具体的ケースや提言がわかりやすくまとめられていました。
そういう私も、貧困世代ど真ん中。思い当たる節がありすぎでした。
福祉といえば高齢者や障がい者のためにあるものという固定観念があったので、海外の事例は目からウロコでした。特に、住宅関係。
「辞めたいなら辞めればいい」とか、「根性が足りない」とか、「生活保護は甘え」とか、とにかく精神論で語りたがる日本社会ですが、メンタルではカバーしきれないハードモードすぎる現実があるわけで……。まずはその認識の格差から是正していかないといけないという、長い長い道のりでさありますが、特に教育という未来への投資がもっと充実することを願って止みません。