畑野智美のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
この作者の本は2冊しか読んだことないけど、2冊ともなかなか良かったので、新刊が出たのを買ってみた。
弱小の芸能事務所に所属する芸人さんとそのファンの境遇を綴った短編が8つ。
成功は一夜にして訪れることもある一方、そうした幸運は一握りの人にしかやって来ず、その他大勢にはいつまで経っても売れない立場だけが残される。
売れなければ、芸人というより寧ろフリーターと言ったほうが相応しい生活の中で、必ずしも積極的に選んだとも言えない世界でズルズルと歳月を重ねる様がこれでもかと描かれる。
最初の話の新城くんの芸人を志した動機がイマイチ薄かったり、何かしら浮世離れをした世界を舞台にしたこともあって、なんだかいつもよりは作り話めいた話になったところはあるように思うが、それでも、この作者、至るところでの日常のグダグダ感を描くのがやっぱり巧い。
人生って、何かしらのその時々の曲がり角を曲がった結果の今の立ち位置なんだろうけど、私らが育った時代は、普通に努力していれば、どちらに角を曲がろうとも、それなりに自分の努力がそのまま成果に反映された時代だったように思える。
保子師匠が生きてきた時代も凄まじいものがあるけれど、それでも夢があったという時代からすれば、今の若い人たちは努力をしてもそれが報われるとも限らない時代に生まれたという点では自分ではどうしようもなかった大きな曲がり角を最初に曲がって生まれてきたように思え、この本の登場人物のように、そうした世の中にあって、更にその下層に近いところにあって、もがき苦しみながら生きることは切なく哀しいなぁ…と思わせる。
これからというところでお話は終わり、帯に『シリーズ第1弾!』と書いてあるので続きがあるのだろう。そう言われれば、今回は登場人物の人となり紹介だったような感じも。というわけで続編にも期待。 -
Posted by ブクログ
畑野智美は良い、と言われて三冊目。
線が細くて、なんだか軽い主人公涼太は『国道沿いのファミレス』を彷彿とさせる。
不登校になった富君、かつてリトルリーグでイジメたらしい西澤、自分によく似た風貌を持つ3.11の震災被害者久野ちゃんなどなど。
いろんな意味で、ややこしい登場人物ばかりなのに、話がシリアスになり過ぎないのは主人公の軽さだな。
自分に関係のあるテリトリーと、そうではないテリトリーを見極めていく涼太の目は、時に熱く、時に残酷なほどキッパリとしている。
ただ、一部の大切だけに、純粋で真っ直ぐな想いを貫く姿勢に、いわゆる青春小説とはチガウ味がした。
涼太のテリトリーに入らなかったアレコレは、もちろんどうにもならないし、描かれもしない。
けれど、それはそれで、まあそういうもんか、というザックリした構成の切り落としを受容させてくれる。
ストーリーとしてすっきりまとまらなくっても、思うがままに生の感情のまま動いてくれよ!と願う人にはうってつけだと思う。